Appendix

広告

Entries

テロリストを生むものは何か? 空爆・排外主義・人種差別など


 イスラム国を育てたアメリカ フセイン・ビンラディンも米が援助で書いたように、アメリカの中東での活動はうまく行っていない部分が見られます。一時的には協力関係を構築しても、結局、反米になってしまうのです。

 そのため、軍事制裁や対抗勢力への軍事支援はあまり有効じゃないのではないか?と、このところ考えていました。


●ISISが喜ぶことをしている西欧社会

 やや単純化しすぎている嫌いがあるものの、そういった中で私が考えていた話に近いものがありましたので、紹介しておきます。
元人質が語る「ISが空爆より怖がるもの」(ブレイディみかこ) - 個人 - Yahoo!ニュース ブレイディみかこ | 在英保育士、ライター 2015年11月19日 10時18分配信

戦争や紛争とまでいかなくとも、例えば地べたレベルの喧嘩でも、普通は敵の欲しがるものは与えないのが戦いの鉄則だ。が、どうも対IS戦に限ってはこの鉄則が完全に無視されている。

ローマ教皇はテロを第三次世界大戦の一部だと言い、英国のキャメロン首相はISをヒトラーやナチに例える発言をしている。いくら何でも極端というか、「もっとパンチの利いたタイトルをください」と言われたライターが苦渋の末に思いついたような言葉を教皇や政治指導者まで使わなくとも。と思うが、ISに人質として捉えられ、彼らと共に過ごしたことのあるフランス人ジャーナリストによれば、こうした反応こそがISの大好物だという。彼はこう書いている。
ネット上のニュースやソーシャル・メディアを追い、今回のパリ襲撃後に書かれている様々の反応を見て、彼らはおそらく今「我々は勝利している!」と大声で連呼しているだろう。彼らは、すべての過剰反応、分裂、恐怖、レイシズム、排外主義の兆しに気分を鼓舞される。ソーシャル・メディアの醜さのすべてが彼らを惹きつける。

出典:The Guardian:"I was held hostage by Isis. They fear our unity more than our airstrikes” by Nicolas Henin

●ISISの兵士らは残酷さより幼稚さが目立つ

 記事では、ISISの兵士らが"みな非常に子供っぽく幼稚"で、「イデオロギーと権力に酔っているストリート・キッズ」であるというところに妙に反応がありました。

 あんまりここをピックアップするのもどうかと思いますが、私も他の記事を感じて似たようなところは感じていました。

  ■日本人だけでなく欧米人もイスラム国参加の理由は意外に軽い
  ■なぜISISに魅力を感じ参加する?日本人やヨーロッパ人戦闘員の理由

 これは彼らの心理を考える上でポイントになってきます。


●難民を受け入れてほしくないISIS

 "彼らの世界観の中核を成すものは、ムスリムとその他のコミュニティーは共存できないというものだ"そうです。そのために前述のような「戦争だ!」とか「ナチスだ!」とか、レイシズムだとか、排外主義だとかは、大歓迎だとされています。彼らの主張が正しかったことを証明しているわけですからね。

 一方で、"ドイツの人々が移民を歓迎している写真は彼らを大いに悩ませた"とのことです。これは彼らの信じる世界を揺るがすものだからでしょう。

 今シリアのパスポートが見つかったという話もあって、難民にやっぱりテロリストが紛れ込んでいた!となっていますが、実はISISは難民がヨーロッパに行くことを非常に嫌っています。
ISが「欧州に行くな」 呼びかける動画 NHKニュース(9月21日 1時09分)

シリアやイラクを拠点とするISは、先週ごろから、インターネット上に、相次いで動画を投稿しました。これらの動画には、ISの支配下で暮らす一般の住民 とされる男性たちが登場し、「私もヨーロッパに住んだことがあるが、彼らはイスラム教徒を決して好きにならない」とか、「ヨーロッパに行けば子どもたちは 間違った考えに影響される。ここにいるほうが安全だ」などと述べ、ヨーロッパに行くのを思いとどまるよう呼びかけています。さらに、ヨーロッパ各国が難民 を受け入れているのはイスラム教徒の国を破壊しようと目論んでいるからだなどと主張しています。

●「クソコラは正しかった」は本当か?

 なぜか人質事件のときに流行ったISISの合成コラ画像、通称クソコラは正しかったんだ!という反応が多数見られました。さっきの「イデオロギーと権力に酔っているストリート・キッズ」と「ドイツの人々が移民を歓迎している写真は彼らを大いに悩ませた」のせいだと思われます。

 ただ、これはかなり解釈がズレていませんかね?

 「ドイツの人々が移民を歓迎している写真は彼らを大いに悩ませた」というのは、西洋社会で疎外感を覚えたなどで「ムスリムとその他のコミュニティーは共存できない」と考えていたのに、実際にはムスリム(イスラム教徒)を社会に受け入れる行動が起きたためです。

 クソコラは確かに、彼らの思想を肯定しなければ、正義感を燃え上がらせるようなことにもなりません。もしかしたら、盛り上がった気分を冷ます効果もあるかもしれません。ただ、別にクソコラを見て、「まさかムスリムが社会に受け入れられるとは!」とは思わないでしょう。

 「移民歓迎」(実際には難民歓迎?)の意味しているものとは、かなり異なります。


●空爆もテロリストを生む

 以下は、さっきのと同じ「個人 - Yahoo!ニュース」のもの。先ほどの記事は結構賛同があったものの、以下のものはただひたすら叩かれっぱなし。ただ、空爆というのも、実はテロリストを生む要素となっているという点は無視できないと思われます。

 あと、こちらはヨーロッパからのISIS参加理由ではなく、もともとイスラム教徒だった周辺国の参加理由に近い話でしょうね。(関連:なぜISISに魅力を感じ参加する?イスラム教徒の戦闘員参加理由)

 ごめんなさい、記事の紹介の前にもう一つ。やはり欧米のダブルスタンダードを風刺する画像を集めた2ちゃんねるのスレが、【画像】パリのテロで騒ぐ人を批判する風刺画ワロタwwwwww : あじゃじゃしたーでまとめられていました。以下のニュースは批判ばかりだったと書いたものの、このスレは人気でした。

 欧米をバカにする意図やジョークとしてなら受け入れられるものの、ジョークで描かれた理不尽な目に遭っている側の視点には立てないのかもしれません。
ISを空爆するより、Facebookプロフをフランス国旗化するより、大事なこと―パリ同時多発テロ(志葉玲) - 個人 - Yahoo!ニュース

イラクや、アフガニスタン、パレスチナ、そしてシリア・・・中近東の罪のない民間人を何人殺そうが、「自由と民主主義を愛する」国々の人々がその責任を問われ、裁かれることはない。「自由と民主主義を愛する」国々は一方で、人々を抑圧し、その権利を奪いとっている国々を支援している。そのダブルスタンダードへの絶望と憤りこそ、IS的な過激思想が広がる最大の要因だ。だから、仮にISの指導者らを殲滅したとしても、その過激思想を引き継ぐ者達が現れ、テロを繰り返すことになる。(中略)

米軍による空爆下のイラク首都バグダッド取材時に出会った、イスラム義勇兵達のことも忘れがたい。「俺達はイラクの同胞を殺そうとする米国と戦う。そのために全てを捨てて各国からイラクに来た」。これから戦地で命を落とすことになるかも知れないわりには、義勇兵達の顔は晴々としていたことが印象に残る。米国から見れば、彼らはテロリストだが、彼ら自身は命を代償にし得る彼らの「正義」があるようだ。もっとも、彼らのうち、ISに参加した者もいると思われ、それは私の気を重くさせるのだが。

●人間は正義に酔いやすい

 うろ覚えなのですが、以前、ゲームに関する話で、悪役が主人公のゲームと、正義が主人公の話で、どちらを夢中になるか?みたいな研究がありました。

 話の流れでわかるでしょうけど、これは圧倒的に正義が主人公のものなのです。正義が悪役をやっつけるわけですから、大義名分があります。悪いことをしているという悪役と違い感情移入できるので、躊躇なく相手をブチ殺せるんですね。

 ISISの兵士たちには、おそらくこういった心理もあるんだと思われます。相手が自分を敵視した行動をしてくれたり、同胞を殺してくれたりした方が、自分たちの正義がより確かなものとなり、行動が正当化されます。

 今、日本も含めた多くの国でISIS憎しになり、どんどん殺してしまえ!となっていますが、これも似た心理でしょうね。非常に夢中になりやすい状況です。

 これに加えて、イスラム教徒への差別や、人種差別・排他主義などまでも肯定されやすくなっています。で、それがまたISISの正義を強くする、ISISへの共感を増やすといった感じで、お互いに増幅しあっている格好です。


●叱ることや体罰と似たジレンマ

 実は、私も空爆や軍事制裁がある程度有効だと考えています。特に短期的には、必要性が高いでしょう。放っておけば、ISISが領土を拡大していく可能性が高いためです。しかし、長期的に見た場合、別のやり方も並行して必要になってくると思います。

 全然関係ない話に移って申し訳ないんですが、このことは叱ること・怒ることや体罰の有効性とも似ているのではないかと感じています。

 体罰や叱ること・怒ることをやめたとしても、短期的には効果が見えません。逆に力で抑えつけることは、短期的には効果があるように見えますし、実際に長期的にも洗脳のようにしてコントロールすることが可能な場合が結構あります。

 ただ、これは力で抑えつけているだけですので、自分で納得して選択したわけではありません。ですので、中には抑えこむことができずに、爆発してしまう人が出てきます。「秋葉原無差別殺傷事件(秋葉原通り魔事件)」の加害者は、そういうケースだと言われることが多いです。
秋葉原無差別殺傷事件 加藤智大 月刊 精神分析 2009年09月号

幼少から厳しく育てられた。
冬の寒い日に(話は青森である)薄着で外に立たされているのを見た近所の人がいる。
小学生の頃から珠算やスイミングスクール、学習塾に通わされた。
友人の家に遊びに行くことも、友人を家に呼ぶことも禁止。
作文や絵画は親の検閲がはいる(先生ウケする様に親が指示命令)。
見ることが許されたテレビ番組は「ドラえもん」「まんが日本昔ばなし」
男女交際禁止

また、強烈な以下のエピソードがあります。
さらに、完ぺき主義の母親は、常に完璧なものを求めてきました。...母親の作文指導には「10秒ルール」なるものもあったという。兄弟が作文を書いている横で、母が「検閲」をしているとき、「この熟語を使った意図は?」などという質問が飛んでくる。答えられずにいると、母が、「10、9、8、7...」と声に出してカウントダウンを始める。0になると、ビンタが飛んでくるというわけである。

 ISISについてもおそらく空爆や軍事支援などによって、「勝利」とされるような状況を生むことは十二分に可能でしょう。

 しかし、テロリストを育む元となる様々な要素は変わらず存在し続ける上に、軍事攻撃自体がテロリスト育成要因であるがために、テロ自体はその後も起き続けることが予想されます。ですので、長期的な対策として、前半で出たようなテロリストを作る要素を、少しでも消していかなくてはいけません。

 ただ、これが簡単か?と言うと、そうではないでしょう。時間がかかることは間違いありませんし、そもそも前に進めるかどうかも怪しいです。先ほど書いたように、イスラム教徒の疎外感を強める方向性の方が支持されやすいためです。

 とはいえ、これもまたISISの領土拡大同様、黙ってそのままにしているという選択肢を取るべきではないはずです。さっきリンクしたジョークの反応はすごく切ないものでしたが、もう少し真面目に考えてくれればと思います。


 関連
  ■イスラム国を育てたアメリカ フセイン・ビンラディンも米が援助
  ■なぜISISに魅力を感じ参加する?日本人やヨーロッパ人戦闘員の理由
  ■日本人だけでなく欧米人もイスラム国参加の理由は意外に軽い
  ■なぜISISに魅力を感じ参加する?イスラム教徒の戦闘員参加理由
  ■日本人強制収容と同様に難民は受け入れるな アメリカの市長が主張
  ■海外・世界・国際についての投稿まとめ

Appendix

広告

ブログ内 ウェブ全体
【過去の人気投稿】厳選300投稿からランダム表示









Appendix

最新投稿

広告

定番記事

世界一スポーツ選手の平均年収が高いのはサッカーでも野球でもない
チャッカマンは商標・商品名 じゃあ正式名称・一般名称は何?
ジャムおじさんの本名は?若い頃の名前は?バタコさんとの関係は?
ワタミの宅食はブラックじゃなくて超ホワイト?週5月収10万円
朝日あげの播磨屋、右翼疑惑を否定 むしろ右翼に睨まれている?
レーシック難民は嘘くさいしデマ?アメリカの調査では驚きの結果に
赤ピーマンと赤黄色オレンジのパプリカの緑黄色野菜・淡色野菜の分類
アマゾンロッカーってそんなにすごい?日本のコンビニ受け取りは?
就職率100%国際教養大(AIU)の悪い評判 企業は「使いにくい」
ミント・ハッカでゴキブリ対策のはずがシバンムシ大発生 名前の由来はかっこいい「死番虫」
移動スーパーの何がすごいのかわからない 「とくし丸」は全国で約100台
ビジネスの棲み分け・差別化の具体例 異業種対策には棲み分けがおすすめ
主な緑黄色野菜一覧 と 実は緑黄色野菜じゃない淡色野菜の種類
タコイカはタコ?イカ?イカの足の数10本・タコの足8本は本当か?
トンネルのシールドマシンは使い捨て…自らの墓穴を掘っている?
ユリゲラーのポケモンユンゲラー裁判、任天堂が勝てた意外な理由
好待遇・高待遇・厚待遇…正しいのはどれ?間違っているのはどれ?
コメダ珈琲は外資系(韓国系)ファンドが買収したって本当? MBKパートナーズとは?
大塚家具がやばい 転職社員を通報、「匠大塚はすぐ倒産」とネガキャン
不人気予想を覆したアメリカのドラえもん、人気の意外な理由は?

ランダムリンク
厳選200記事からランダムで









アーカイブ

説明

書いた人:千柿キロ(管理人)
サイト説明
ハンドルネームの由来

FC2カウンター

2010年3月から
それ以前が不明の理由