Appendix

広告

Entries

テロはイスラム教特有の問題というのは本当か?池内恵東大准教授の解説


2015/11/24:
テロはイスラム教特有の問題というのは本当か?
キリスト教や仏教、宗教以外でもテロや戦争があったのですけど…
最初からテロありきではなく、様々な要素が積み重なってたどり着いたのがテロ
イスラム教に興味なかった参加者が多いことを説明できない
2011/5/25:
アラブの春で反米は減ると主張していた池内恵准教授
テロが国内問題のはけ口説は欧米人のテロ参加を説明できず
アラブ諸国の民主化も混乱と犠牲が予想される


●テロはイスラム教特有の問題というのは本当か?

2015/11/24:イスラム教とテロとの問題は池内恵東大准教授の話が詳しいので、何度か紹介しています。ただ、今回はあれ?と思った話。
池内 恵 - 以前にも紹介したことのある研究者の発言。「テロとイスラームは無縁だ」と言われるけれども、本当のことを言う... 池内 恵 11月20日 21:51

ジハードによる殺害が行われるたびに、「イスラームとは無関係」という護教論が出てきて、過激派ではなく、過激派の思想について論じる人が非難されるので、なぜジハードを扇動する側が一定数の人を動員できているのか、という問題に取り組むことが困難になる。(中略)

イスラーム法学者は、自らのよって立つ教義体系と過去の支配的解釈を書き変える立場にはない。解釈の末端は変えてもいいけれども、根本のところは神から与えられ、預言者ムハンマドによって伝えられたテキストであり、それは人間の側では、たとえ権威的学者であっても書き換えられない。書き換えたところで支持を得られない。だから、ジハードの教義を否定するのではなく、様々な迂回の論理を考えてきた。例えば、過去のジハードは近代国際法に合致した自衛権の発動だったとか、(根拠は乏しいけど)あるときムハンマドが、「これからは内面を清める大ジハードだ」と言ったといった、少数学説を強調して近代世界に合致させようとしてきた。

しかしこのような主張は、コーランやハディースや、積み重ねられて合意を得られた正統的解釈を根拠にしていないので、過激派の議論と正面から戦うと、教義論争としては分が悪い。だから、強権支配の政府が力で抑え込むことで、過激派の活動が抑制され、近代国際法に合致した解釈をするイスラーム法学者も保護されてきた。

「他のイスラーム教徒とは無関係(責任はない)」というのは正しい。しかしイスラーム教の教義の中には、イスラーム教の観点からあってはならない国内・国際秩序を武力で制圧することが義務であるという主張が正統化される余地があるという事実は、直視しなければ対峙できない。(中略)

テロによって「差別と偏見」が助長される可能性は大いにある。それは防がなければならない。しかし、教義の一部が、一部の信者をテロに走らせているという因果関係は見つめないといけない。(中略)

もし差別と偏見がテロを生んでいるのであれば、なぜジハード主義だけがこれほど効果的にテロに信者を動員できていて、他の宗教ではできていないのだろうか。このイデオロギーに、イスラーム教徒自身が取り組むしか、根本的な解決はないだろう。

●キリスト教や仏教、宗教以外でもテロや戦争があったのですけど…

 はてなブックマークは最初の頃、上記に賛同する意見が優勢でしたが、次第に懐疑的な意見が多くなってきました。圧倒的ではないものの、逆転した感じです。

“「異教徒を殺せ!武器を取れ!」…ってのは、キリスト教でも仏教でも可能なんでは。今の世界では、キリスト教が経済的に豊かで政治的にも優位だから行われないだけで。十字軍とジハードがそう違うとは思えない。”(filinion 2015/11/22)
“あり得ない仮定だけどもし現代欧州がイスラム教圏で今の中東が基督教圏だったら「なぜ基督教はこれほどテロに信者を動員できるのか」と問われてたと思う。米国の福音派の攻撃性を見るに基督教が安全とは思えない。”(rider250 2015/11/22)
“今モスレムでも、以前はIRAやETAや極左極右がテロ代表例だった、中東が大国政争に揉まれた影響の方が遥かに大きい(直近ならブッシュ暴走)。結論に合わせて言葉を紡いだ机上論。この人の無用な建前論嫌いは実に有害だ。”(Gl17 2015/11/22)
“十字軍の発端は宗教的情熱だが、戦争自体は経済の論理で続行された。イスラムのジハードも、背後には実際的な利益が絡んでいるだろうと思っている。狂信だけでは、長期に渡っては人を集められないでしょ”(fujikax 2015/11/22)
“たまに他の宗教と比べて日本の仏教は平和だという人が居るけど、中世から戦国末期までそうとうヤバかったからなぁ。信長、秀吉、家康三人がかりでようやく無力化してくれたお陰で大人しい仏教になった訳で。”(flyingpenguin 2015/11/22)


●最初からテロありきではなく、様々な要素が積み重なってたどり着いたのがテロ

 私がなぜ違和感を覚えたのかと言うと、以前の池内恵准教授の解説を読んでいたせいです。

 ジハード主義は前々からあったものの、最初からテロがあったわけではありません。失敗しながら積み重ねて現在の形になりました。以前はイスラム教徒以外のテロが主流であり、他のテロへの学びや技術的な発展によって助けられるなど、イスラム教以外の理由も重要であり、「イスラム教だから」ということではないのではないでしょうか?

 はてなブックマークで指摘されていたものやテロリストを生むものは何か? 空爆・排外主義・人種差別などなどの件もあります。様々な要素が集まったからこそ、今の状況になったと考える方が妥当だと思われます。

 以下は、なぜISISに魅力を感じ参加する?イスラム教徒の戦闘員参加理由で書いた話で、池内恵准教授のインタビューを元にして書いたものです。いきなりテロになったわけじゃないというところの話です。
(元記事は、若者はなぜイスラム国を目指すのか…池内恵氏インタビュー : 特集 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE) 2015年02月04日 09時23分(聞き手・読売新聞東京本社調査研究本部研究員 時田英之))
 グローバル・ジハードが現実化したのは、1979年のソ連のアフガニスタン侵攻という比較的最近の話です。ただ、もともとあった考え方だそうです。

 ジハードとしては、以下の定義の「近い敵」「遠い敵」のどちらを重視すべきかという問題がありました。

「近い敵」 イスラム教徒の国の政治支配者なのに、イスラムの理念を守らずに国民を抑圧している者
「遠い敵」 イスラム世界を侵略する非イスラム勢力

 最初エジプトでは「近い敵」を倒そうとしたものの、失敗します。

 次に「近い敵」を支援する「遠い敵」であるアメリカに対して、2001年の9・11テロという形で攻撃します。しかし、アルカイダは壊滅的な打撃を受けます。つまり、これも失敗でした。

 これらの失敗によって、"組織を広げると一網打尽にされるということを学習したアルカイダは「分散型の組織」を目指"します。

 また、ISIS(IS、イスラム国)の台頭には以下のような要素があったことを、池内恵准教授自身が指摘しています。これもイスラム教特有の問題ではなく、よくある国内問題だと思われますし、テロとも異なります。(ここは私のまとめではなく、読売新聞からの引用)
 中央政府に強く反発し外来の勢力と協調する土着の勢力が存在することが条件になる。この点、シリアでは反政府勢力が互いに争って、最低限の治安や行政サービスが崩壊したことにより、イスラム国の過酷な支配でさえも安全をもたらせば、当座は受け入れる住民感情が生まれた。同様に、イラクでも、スンニ派住民の多い北部・西部地域ではもともと中央政府への反発が強く、政府の勢力の及ばないエリアができていた。

●イスラム教に興味なかった参加者が多いことを説明できない

 もう一つ気になったのは、ヨーロッパからの参加者の問題。今読み直してみると、確かにこのときの池内恵准教授は重視していない感じでしたが、宗教が先にありきではない参加者も多いんですね。

 日本人だけでなく欧米人もイスラム国参加の理由は意外に軽いなどでやったように、ヨーロッパからの参加者を見ると、宗教的な信心深さで説明することは不適切です。ISIS参加する直前になって、初めてコーランを購入するような人もいます。

 参加者の特徴が様々であり決めつけられないものの、祖国での退屈な生活から抜け出し、自らのアイデンティティを見出したいという願望が原因ではないか?という推測もありました。

 前述の通り、池内恵准教授は読売新聞のインタビューだと、この非宗教性には強調していない感じでした。しかし、アイデンティティの問題にはちゃんと触れていたのです。
 まず、ヨーロッパからの参加者の大部分はイスラム教の国々からの移民・難民の子孫だ。イギリス、フランスなど西欧諸国では、ムスリム系の移民とその子孫は人口の十数%程度にまで達しており、そのような移民の子弟は、どうしても自らのアイデンティティーの問題に悩みがちだ。イスラム教の国に自らのルーツがある場合、自らのアイデンティティーは生まれ育った西欧にあるのか、それともイスラムにあるのか。そうやって迷っているところでイスラム国の人々の主張に触れ、その主張の中に自らのアイデンティティーを見出そうとする、ということがしばしば起こる。そういった人々が自らの信仰を確認したくて、いわば、自らのアイデンティティーを確立するためにイスラム国に旅立っていく訳だ。

 私の書いたテロリストを生むものは何か? 空爆・排外主義・人種差別などでは、「疎外感」といった説明を使っています。社会における居場所のなさというのが、参加理由としてありそうな感じです。

 さらに池内恵准教授は、当時のインタビューだと原因の一つとして西欧社会の問題にまで触れていました。キリスト教国がナチスを生み出したことまで持ち出しています。
 さらにいえば、これは移民に限らないことだが、近代自由主義の中で生きる人間に固有の問題が現れているのだと思う。どういうことかというと、西欧社会では「自分が何をなすべきか」は自由意思に任されている。逆に言えば絶対に正しい答えというものはなく、自ら判断しなければならない。そのような自由は時として重荷になってしまう。ところが、何か権威あるものに従うことにすれば、自分で決めなくても良い。自ら判断する自由を捨ててナチスドイツの台頭を許した人々の心理を分析した社会心理学者、エーリヒ・フロムの言葉でいえば、彼らは「自由からの逃走」を図ろうとする。ましてやイスラム教の「神の啓示」は、なすべきことを全部教えてくれる。先進諸国からイスラム国を目指す若者が出ているのは、このような理由があるからではないだろうか。

 以前していた池内恵准教授のこれら二つの解説からすると、冒頭のような今回の池内恵准教授の主張には納得できません。


●アラブの春で反米は減ると主張していた池内恵准教授

2018/04/06:池内恵准教授は2014年になって初めて知った方だと思っていたら、2011年のアラブの春の頃にもインタビュー記事を読んでいたことに気づいたので、ここにまとめておきます。このときの話も違和感を覚えるものでした。

2011/5/25:少し前に東京大学先端科学技術研究センターの池内恵准教授のインタビュー記事ビンラディンは“タレント政治家”だった 大竹 剛 2011年5月12日を元に、アイドル政治家ビンラディンというものを書きました。

 ここで取り上げたのは記事の前半部分だけで、実は残りをそっくり省略していました。今日はそちらにも少しだけ触れておきます。

 池内恵准教授は、先のアメリカ軍の殺害について、アラブ諸国では既に彼の影響力は既に少なかった…と見ています。しかし、体制に問題が多いアラブ諸国では「怒りのはけ口」が必要とされていることは確かで、そういう意味では「反米」というのは非常に重要な意味を持つものです。

 「反米」に価値があるはこれから先も同じではないか?と私は疑問に思うのですが、池内恵准教授は今や状況が異なっているとしていました。その状況の変化とはアラブ諸国に広まった民主化運動のことで、今までできなかった「国内問題に関する批判」ができるようになったということです。
民主化運動が広がった結果、今も厳しく言論統制されているサウジなど一部の湾岸産油国を除いて、国内問題について批判できるようになりつつある。今や「反米」は唯一の怒りのはけ口ではなくなった。国民の関心は国内にあり、民主化運動の過程で目覚めた愛郷主義の高まりとともに、外に敵を作る「反米」は場違いなテーマとなっている。

 記事ではその後中東全般の話、対テロ戦争に割いていた軍事力が今後どこに向かうか?(中東の独裁政権や中国など)といった話になっていて、テロに関するものはこれでおしまいです。

 池内恵准教授は「反米」が縮小するという主張だけで、「これでテロは減る」といったことを明言していないものの、私はちょっと楽観視したような内容の気がして納得が行かず、前回のときに取り上げませんでした。


●テロが国内問題のはけ口説は欧米人のテロ参加を説明できず

 池内恵准教授ではサウジアラビアを例外としていますが、それ以外の国でも本当に「国内問題について批判できるようになりつつある」のかと言うも、識者の見解も分かれるのではないかと思います。

 また、そうであるのなら、池内恵准教授の主張を一部受け入れたとしても、先の「国内問題について批判できる」が不可能になれば、再び「反米」が大きなテーマと成り得るということです。

 その他、もともとテロに参加している人には欧米国籍の人もいたため、単純に国内問題のはけ口か?と言うところがそもそもやや疑わしいところがあります。

 さらに言えば、准教授の言う同時多発テロで反米意識がガス抜きされた後も、多くのテロがありました。これは大衆の支持がなくとも、テロが数多く起きるということを示しています。市民の最大の関心は富を独占している政権の打倒であることは間違いないと私も思いますが、市民の感情とは別のところでテロは起き続ける気がします。

 私はその年ごとのテロの件数・被害者数を把握しておらず、もしかすると確実に減少傾向にあるのかもしれませんが、少なくとも一気になくなるということは想像できません。


●アラブ諸国の民主化も混乱と犠牲が予想される

 この記事で書かれていた一番重要なのはアラブ諸国の国内事情であるというのは、おそらく事実でしょう。また、長期的には、国内の問題の解決がテロリストの供給に影響を与えるというのも理解できることです。

 ですから、最も理想的なのはアラブ諸国で民主的な政権が犠牲を払うことなくすんなり成立(こちらの犠牲も懸念していますし、准教授も混乱を予想していました)し、かつ各地のテロも起きないことです。

 私の心配していることが現実にならずに、どちらも速やかに進んでくれることを望んでいます。(2018/04/06追記:ご存知の通り、アラブの民主化はうまく行かず、テロもむしろ盛んになってしまい、二つともダメでした)



 関連
  ■テロリストを生むものは何か? 空爆・排外主義・人種差別など
  ■日本人だけでなく欧米人もイスラム国参加の理由は意外に軽い
  ■イスラム国を育てたアメリカ フセイン・ビンラディンも米が援助
  ■日本人強制収容と同様に難民は受け入れるな アメリカの市長が主張
  ■ISISを潰せで一致団結しているわけではない アラブ諸国の温度差
  ■難民のゴミ放置批判の日本人、ハロウィンで渋谷をゴミの山に
  ■海外・世界・国際についての投稿まとめ

Appendix

広告

ブログ内 ウェブ全体
【過去の人気投稿】厳選300投稿からランダム表示









Appendix

最新投稿

広告

定番記事

宝くじ高額当選者3000人のその後……10年後の彼らの生活は?
歴代首相の身長ランキング 背の高い、低い意外な総理大臣 野田佳彦・麻生太郎・鳩山由紀夫・小泉純一郎・安倍晋三など
日本で馴染みのある韓国系企業一覧
国別ノーベル賞受賞者数ランキング 日本は8位、上位はどこの国?
橋下徹大阪市長の出自 同和地区(被差別部落)と父・叔父と暴力団
意外に有名企業があるファブレス企業・メーカー 任天堂・ダイドードリンコ・やおきんなど
飛び降り自殺は意識を失うから痛みはない…は嘘 失敗した人の話
白元・鎌田真の経歴と派手な交友関係 神田うの,松本志のぶ,妻も美魔女など
楽天Edyはコンビニの公共料金の支払い(収納代行)に使える?
楽天Edyの使えるコンビニ・使えないコンビニ
主な緑黄色野菜一覧 と 実は緑黄色野菜じゃない淡色野菜の種類
のれん代とのれん代の償却のわかりやすい説明
消滅可能性都市ランキングと一覧 1800市区町村中896自治体が危機
カルシウムの多い食材ランキングベスト20 牛乳以外に取れる食品
堀越二郎の妻は死んでないし菜穂子でもない モデルは堀辰雄の婚約者矢野綾子
創価学会、会長候補の正木正明氏左遷で谷川佳樹氏重用の理由は?
インチキで効果なし、活性水素水詐欺 誇大広告であるとして排除命令が出た商品も
高カロリー食品ランキングベスト20(100グラムあたり)
EPA、DHA(オメガ3脂肪酸)の魚油サプリ 効果なしどころか危険という説
リチウムイオン電池の寿命を長持ちさせるのは、使い切って満充電?継ぎ足し充電?

ランダムリンク
厳選200記事からランダムで









アーカイブ

説明

書いた人:千柿キロ(管理人)
サイト説明
ハンドルネームの由来

FC2カウンター

2010年3月から
それ以前が不明の理由