2019/07/01:
●住民税の原則を破るふるさと納税…実は法律違反?
●ふるさと納税は良いもので誰も損していない…というのは本当か?
●1位はどこ?ふるさと納税で損している市町村ランキング
●ふるさと納税のような天下の悪法を作ったのは誰?
●住民税の原則を破るふるさと納税…実は法律違反?
2019/07/01:
ふるさと納税のメリットは本当? デメリット・問題点指摘で論破に追記しても良かったのですけど、とりあえず別で。法律で明記されているかどうかがわからず、法律違反にあたるかどうかは不明でしたが、ふるさと納税への批判の一つとして住民税の原則から外れているのではないかというものがあります。
例えば、
ふるさと納税、ゼロサムゲームは限界 官製需要に功と罪:日経ビジネス電子版(奥平 力 日経ビジネス記者 2019年3月22日)には、以下のように書かれていました。
< 都道府県や市町村が提供する教育や福祉、ゴミ処理といった生活に身近なサービスを賄うための「地域社会の会費」──。個人住民税はこのように定義づけをされている。
居住地でない自治体に個人住民税が移動するふるさと納税は、この定義を逸脱するものと言える>
また、
<税金の種類><個人住民税> | 東京都主税局でも、以下のようなことが書かれており、ふるさと納税はこれを逸脱していると考えられます。
<個人の都民税と区市町村民税はあわせて、一般に「個人住民税」と呼ばれています。都や区市町村が行う
住民に身近な行政サービスに必要な経費を、住民にその能力(担税力)に応じて広く分担してもらうものです>
●ふるさと納税は良いもので誰も損していない…というのは本当か?
「ふるさと納税は良いもので誰も損していないのだから仮に法律違反であってもいいじゃん!」と思う人は、
ふるさと納税のメリットは本当? デメリット・問題点指摘で論破の方を読んでください。
ただ、そもそも最初の話の時点で、すでに問題が見えているというのを本当はわかってほしいところ。本来、地元住民のために使われるべきお金が他の地域で使われているのですから、地元住民は損しているわけですからね。「誰も損していない」はこの時点でウソです。
貧しい地域に対し豊かな地域は支援すべきだ…と考えるかもしれません。ところが、これも前回で出てきたように、ふるさと納税でやる必要はゼロなので正当化できません。住民税以外ですでにやられているものであり、その時点でほぼ地方と都市部の差はなくなっていますし、ふるさと納税は効率が悪く税金を無駄にする制度ということで、何一つ良いことがありません。バカみたいな制度です。
●1位はどこ?ふるさと納税で損している市町村ランキング
さらに私が問題だと思うのが、ふるさと納税は個人が勝手にやるものであり、救う必要性が高い自治体をきちんと選んで優遇しているわけではないということ。不確実で効率が悪いために、「貧しい地域に豊かな地域は支援すべき」という擁護意見でも全く正当化できないことになります。
これに関連して「ふるさと納税で損している市町村ランキング」を。上位の自治体は普通に都市部となっているものの、個人任せであるために救われる自治体が損する可能性は否定できません。返礼品競争に勝った自治体にお金が集まる仕組みですので、救われる自治体に多く集まっているか?という観点では、もっと絶望的でしょう。
また、東京都世田谷区の場合、2017年度は約30億8千万円の赤字で、「16億円あれば保育園を5カ所整備でき、30億円あれば小中学校1校分を改築できる」と表現されていました。都市部ならお金を奪われて良いかどうかも疑問がありそうです。
<2017年度“損”している自治体ランキング>
1位 横浜市(神奈川県) −55.5億円
2位 名古屋市(愛知県) −31.9億円
3位 世田谷区(東京都) −30.8億円
4位 大阪市(大阪府) −24.1億円
5位 港区(東京都) −23.5億円
6位 川崎市(神奈川県) −23.5億円
7位 神戸市(兵庫県) −16.8億円
8位 さいたま市(埼玉県) −15.9億円
9位 京都市(京都府) −14.7億円
10位 福岡市(福岡県) −14.6
11位 杉並区(東京都) −13.7
12位 大田区(東京都) −13.4
13位 江東区(東京都) −13.3
14位 渋谷区(東京都) −13.0
15位 目黒区(東京都) −11.9
16位 品川区(東京都) −11.8
17位 新宿区(東京都) −11.4
18位 札幌市(北海道) −10.3
19位 文京区(東京都) −9.4
20位 中央区(東京都) −9.0
(
1位は!? ふるさと納税“損している自治体”ランキング (1/3) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット) 2017.9.20 16:00週刊朝日より)
●ふるさと納税のような天下の悪法を作ったのは誰?
最初の日経ビジネス電子版の記事は「ふるさと納税、ゼロサムゲームは限界 官製需要に功と罪」というタイトルでした。ゼロサムゲームというのは、以下のような意味で言っています。
「ふるさと納税はまず住民税の8割を全自治体に担保する。その上で、残りの2割を全自治体が1つのプールに拠出する。それを1741ある市区町村で殴り合って取り合いなさいと言っている」(神戸大学の保田隆明准教授)
ただ、ゼロサムゲームってのはウソですね。ふるさと納税は効率が悪い制度で多大な人件費をかけている他、返礼品獲得競争で仲介業者に多大な費用をかけており、かなり目減りしています。実際にはマイナスサムゲームで、わざわざ少なくした税金を取り合うという非常に効率の悪いことをやっています。日本をより貧しくするための制度じゃないでしょうか。
では、なぜこのような天下の悪法ができたのでしょうか。最初で引用したように、「ふるさと納税は、この定義を逸脱するもの」としていた日経ビジネス電子版は、「原理原則を順守する官僚なら立案しないであろう異例の制度の誕生は、ある大物政治家の存在を抜きにしては語れない」としていました。
その人物というのは、現在は官房長官である菅義偉さん。2007年当時、総務相だった菅さんはふるさと納税の制度設計を省内に指示。菅さんの強い意向で実現したとされているそうです。本当余計なことしてくれましたね。
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