日本企業には「リスクテイクが足りない」という批判があるものの、一方でやらんで良い巨大プロジェクトに挑んで勝手に大ピンチになっている企業も目立ちます。これはなぜか?という話がありました。理由は2つあったものの、思い上がりと希望的観測によってリスク見積もり甘すぎ…という指摘が一番強烈でした。
●「リスクテイクが足りない」はずの日本企業、むしろ盛大に失敗
2018/01/17:日本企業は「リスクテイクが足りない」と言われることがあります。
デジタル大辞泉によると、「リスクテイク」というのは、「危険を承知で行うこと。危険を冒すこと」です。つまり、失敗の危険性がある事業にチャレンジしないってことですね。
最初に書いた「日本企業はリスクテイクが足りない」というのは、批判的に言われているものでありますから、「日本企業よ、もっと危険を冒して勝負しろ!」と言っていることになります。日本企業は保守的すぎるので、成功確率の低い危険そうな事業にももっともっとチャレンジしろ!ということです。
ところが、最近の日本企業では、むしろめちゃくちゃリスクをかけて、失敗する企業も目立るんですよ。突き進みすぎて会社自体がやばくなった東芝・シャープや国産旅客機「MRJ」という巨大プロジェクトに失敗した三菱重工などがそうです。これはいったいどうしたことなのでしょう?
●逆だった…石橋を叩いても渡らない日本企業は嘘、リスクかけすぎ
東芝・シャープが勝ち目のない案件に挑んだ理由:日経ビジネスオンライン(小笠原 啓 2017年11月13日)のインタビューで、インタビューアーが「日本企業の経営者は、『石橋を叩いて渡らない』イメージがありますが」と言っていたものの、神戸大学の三品和広教授は、「ところが全然違うのです」と指摘していました。
むしろ日本企業は米国企業から見て、ものすごくリスクをかけているように見えるとのこと。これは、日本企業の「リスク」の捉え方が間違っているからだと、三品和広教授は分析していました。まず、思い通りに進まなかった場合の損失である「損失の期待値」は、「失敗する確率」と「投下金額」のかけ算で計算します。
日本企業は、このうちの失敗確率だけを低くしようと考えるそう。なので、確かにここだけ見ると安全なようにみえるのですが、失敗確率が低いと判断したら、一気に巨額の資金を投じて勝負に出てしまうということになります。これが、東芝やシャープの例で、一発の失敗で即会社の存亡に関わる大問題となってしまうのです。
●失敗してもいい!米国企業は小さな失敗をしながら大きな成功を探す
一方、米国企業は、投下金額を小さくすることで期待値をコントロールしようとします。ベンチャー投資が好例で、失敗する確率は高くても、少額なら経営を揺るがすような損失にはなりません。その中で成功が出てきたら、徐々に金額を増やしていくというやり方をします。
例えば、インターネットの登場で様々なビジネスが大きく変わり始めた時期に、グーグルは広告で、アマゾンは通販でそれぞれ最適な「立地」を押さえたことを三品教授は指摘。「揺籃期」なら市場規模はまだ小さいので、少額投資でも大きな存在感を示せます。その後、市場の成長に合わせて投資を増やしていけばよいというわけです。
早く失敗せよ(シリコンバレーの名言) ジョブズとニトリという成功例など、うちではよくやっているように、小さく失敗・早く失敗というのは、成功企業のキーワードなんですよ。日本企業はこういう小さな失敗にチャレンジしないので、「リスクテークが足りない」と批判されるわけです。
一方で、逆に絶対やってはいけない社運をかけた巨大プロジェクトをやってしまって、派手にコケてしまうということに。三品和広教授は、「日本企業が大きな特別損失を計上したケースを分析すると、勝ち目がない案件に自ら突っ込んでいる例が目立ちます」という言い方をしていました。なんか戦前の日本みたいですね。
●日本企業は経験を重視しすぎ…経験を過大評価してリスク過小評価
先程出てきた「損失の期待値」が、「失敗する確率」と「投下金額」のかけ算であるのなら、日本企業のやり方でも良いように思えます。しかし、現実にはうまく行っていません。これは、そもそも失敗したら終わりの勝負をするという判断そのものが間違いであるためでしょう。
また、三品教授は、そもそもリスクの見積もりが甘すぎることを指摘。これは、日本企業が経験を重視しすぎることも背景にあるとも分析しています。例えば、米国の原発建設を管理しきれず債務超過に転落した東芝は、数十年間にわたって原子力ビジネスを手掛けてきたので、米国でも原発建設をこなせると思っていたわけです。
しかし、この考え方は抜けがあります。日本と米国では原発建設のやり方が異なることを全く考えていませんでした。シャープの場合も、「液晶を長年手掛けてきたので、テレビ事業なら何とかなると考えていた」とされており、単なる希望的観測に過ぎませんでした。
納入延期を繰り返している三菱重工業のMRJの場合、米ボーイングの下請けで経験を積んでいるし、防衛省向けの戦闘機も手掛けているから、航空機に関しては全くの素人ではないという自負があっただろうという指摘です。そういえば、三菱重工は、日本と海外で仕様などが違うのを考えなかったっていう、東芝のようなミスもやっていますね。豪華客船を作るので大赤字になっています。
(関連:
三菱重工の客船損失で見えた日本のものづくり崩壊 日本人には技能的に作れない豪華客船)
根拠のない自信や思い上がりで大失敗ってのは、日本人は謙虚というイメージともかけ離れたもので、なんかいろいろと嘘ばっかりだな…と感じてしまう話でした。
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