初期に書いた
ベーシックインカムの問題点・批判 ~財源など~が珍しく読まれていて、日本の政治家が言及でもしたのかと思いました。すると、フィンランドが実施するとのこと。ついに来ましたか!(2015/12/8)
…と思ったのですが、誤報なのだそうで、"誤報!フィンランドのベーシックインカム導入 実験ならカナダなどが実施"(2017/04/27)を追加しました。
2018/04/25:
フィンランドはベーシックインカム実験、中止に
●世界初!フィンランドがベーシックインカム導入 全国民に11万円支給へ
2015/12/8:ということで誤報だったのだそうですが、こういう記事でした。誤報の指摘については後述します。
フィンランド、国民全員に800ユーロ(約11万円)のベーシックインカムを支給へ - BusinessNewsline Posted 21 hours ago, by James Jackson
フィンランドが国民全員に非課税で1カ月800ユーロ(約11万円)のベーシックインカムを支給する方向で最終調整作業に入ったことが判った。(中略)
最近行われた世論調査ではフィンランド国民全体の約69%が導入に賛成の意見表明を行っており、現状のままで世論動向が推移した場合には、フィンランドは世界で初めて、ベーシックインカム制度を導入する国家となることとなる。
●ベーシックインカムの問題点である財源は?
ベーシックインカム反対派は財源を問題にしますが、これは他の保障を廃止することでかなりの分を賄うことができます。
全国民に毎月11万円、フィンランドが世界初のベーシックインカム導入へ | BUZZAP!(バザップ!) 2015年12月8日09:37 by 深海
ベーシックインカムの実施には年間522億ユーロ(約7兆円)が掛かると試算されていますが、その代わりに全ての社会保障を停止する予定。Juha Sipila首相は「私にとってベーシックインカムは社会保障システムをシンプルなものにするということだ」と述べており、複雑化したシステムの維持にかかる費用を間接的に削減する効果もあると見込まれています。
●オランダもユトレヒトで試験制度の導入を決定
実は、ベーシックインカム実現に向けて走り出しているのは、フィンランドだけではないようです。BusinessNewslineによると、"西欧諸国の間では、オランダもベーシックインカム制度導入のための試験制度を来年から導入することを既に、決定している"とのこと。
BUZZAP!でも触れていて、こっちによれば、具体的にはユトレヒトで行われる試験みたいです。ただ、一都市での導入は極端な人口移動が起きるみたいな弊害があるんじゃないか?と、私は心配ですけどね。(EUの場合、人の移動が自由なので、一国でやっても似たような問題が出るかもしれません)
ユトレヒト - Wikipedia
ユトレヒト(オランダ語: Utrecht [ˈytrɛxt] ( 聞く) ユトレフト)は、オランダのユトレヒト州にある基礎自治体(フメーンテ)。オランダ第4の都市であり、ユトレヒト州の州都でもある。首都アムステルダムから30キロほど南に位置する。
人口 (2008年現在)
基礎自治体域 296,305人
●月11万円の支給額は安すぎる
一都市での導入は弊害…と書きましたが、もちろん国全体でやっても問題は多いと思います。過去投稿読み直さずに曖昧な記憶のままで書いちゃいますが、一番気になるのは支給額の問題です。
社会保障の廃止分の金額をそのまま全国民で割った場合は、当然ベーシックインカムの支給額は今まで社会保障で得ていた支給額より低くなります。私は特に障害者のような普通の人よりお金を得るのが難しい上に、生活するのにお金がかかりやすい人たちについて心配しています。
フィンランドの物価が不明ですが、「11万円」というのも実際、かなり安く感じます。これだと、日本で言う生活保護世帯でもキツくありません?
試しに軽く検索すると、これは年金の支給額すら下回っている感じです。おそらく働けない人にはキツイ金額でしょう。(関連:
年金で生活できないのは当然 年金は最低生活保障ではなく保険)
国民の62%が信頼するフィンランドの年金制度 - 靴家さちこ|WEBRONZA - 朝日新聞社 2012年05月15日
国民年金と所得比例年金の合計平均月額は1415ユーロ (約14万円)と、一般労働者の平均賃金の約6割に相当する。性別に分けると、男性が1610ユーロ (約16万円)、女性が1258ユーロ (約12万円)と、女性の方が低い。女性の平均賃金が男性より低く(男性の約8割)、育児などで女性の方が就職期間が短いことなどが原因とされている。
●極めて意義の高い壮大な社会実験
とはいえ、私はこういったチャレンジには好意的です。BUZZAP!は、私が書こうと思っていたそのままの表現で、"ある意味壮大な社会実験とも言える今回の取り組みは世界的に注目されることは間違いなさそう"と書いていました。非常に興味深いチャレンジであることは間違いありません。
失敗したとしても、学術的な価値や他国の参考例(日本の政治家は馬鹿なので、失敗とわかっている軽減税率や朝型勤務に前向きなのですが)として、非常に意義深い社会実験です。
唯一付き合わされる国民はたいへんだと言えるものの、前述のように賛成が明らかに多いですから、ここもあまり問題になりません。このまま国民の同意を得られた中での実施になると、最高ですね。
●誤報!フィンランドのベーシックインカム導入
2017/04/27:…などと書いていたのですけど、誤報だったんだそうな。
フィンランドでベーシックインカム導入と“誤報” 実際の進ちょく状況は? | THE PAGE(ザ・ページ)(2015.12.26 18:01 同志社大学教授・山森亮)によると、英字紙記者が、情報源のフィンランドの地方紙の記事を読んだ際に、フィンランド語の知識が十分ではなく誤解。これに他の英字紙や日本メディアも追随したんだそうです。
では、実際のフィンランドの動きは?と言うと、ベーシックインカムの「給付実験」の検討中というもの。実験の実施をめぐる様々なアイデアや情報について、フィンランドで報道がなされており、そのうちの一つを、件の英字紙記者は誤読したと思われています。
あと、私は過去にベーシックインカムの類似の制度があり、参考にすることが可能で、なおかつそれはベーシックインカム推進派にとって不都合な内容なのではないかと予想していました。
しかし、記事によると、1970年代にはアメリカとカナダで、今世紀に入って、ナミビア、ブラジル、インドで行われており、いずれも傾向としては、人々が生産活動に従事することを辞めたりはしない、という肯定的な結果が得られているとのこと。
●実験ならカナダなどが実施
また、こうしたベーシックインカムの新たな実験として、カナダ・オンタリオ州のニュースが入ってきました。
貧困層にベーシックインカム試験導入、カナダ・オンタリオ州:時事ドットコム〔AFP=時事〕(2017/04/26-14:42)という記事です。
カナダのオンタリオ州は、貧困ライン以下で生活する4000人を対象に3年間にわたって、ベーシックインカム(最低所得保障)制度の試験導入することを発表。受給者と公共財政への影響を測ります。
収入を補助する額は各年、単身者の場合で1人当たり最高1万6989カナダドル(約140万円)、夫婦で最高2万4027カナダドル(約195万円)で、障害者にはさらに6000カナダドル(約50万円)が支給されるとのことでした。
ただ、貧困ライン以下だけ支給というのは、ベーシックインカムの理念と全然違いますからね。また、実験の場合は支給が停止されることが予見できてしまいます。恒久的なものとは全然違っていて、そもそも全然ベーシックインカムと似ていないようにも見えます。
先ほどの肯定的な結果が得られているという各国の実験もそうなのですが、この「恒久的」ってところは全くクリアできていない可能性があります。ここらへんはいつか調べてみたいですね。
●フィンランドはベーシックインカム実験、中止に
2018/04/25:フィンランドはベーシックインカム導入ではなく実験でした…というのが前回の追記でしたが、この実験も中止になったとのこと。で、この説明を見ると、それってそもそも全然ベーシックインカムじゃなくね?というものでした。
今回の記事によると、フィンランド政府は、既存の失業給付がとても高額なため、失業者の就業意欲を低下させる原因になっていると主張しており、失業者の就業意欲を高める目的で、長期失業者の一部を対象にベーシックインカム制度を試験導入したという経緯があったそうな。
で、フィンランド政府はベーシックインカムの対象を一部の長期失業者のみに。これじゃあ、単なる失業保険の改悪版でしょう。全然違うく見えます。実際、ベーシックインカムの支持者たちは「フィンランドの全国民を対象にすべきだ」と主張していました。
そして、フィンランド政府の目的が全然違うものであるため、中止となったのもそちらの関係。失業者に対し「最低18時間の労働を行うか、3カ月間の訓練プログラムに参加すること」を求めており、仕事が見つけられなかった場合には、失業給付を減額すると規定した、失業者の就業意欲を高めるための新しい法案を可決したためという理由でした。
ベーシックインカムの専門家であるオリ・カンガス教授は「信頼できる結果を得るには時間とお金をかけるべき」ともしていたのですけど、そもそもまともな実験をするのは難しすぎるのもかもしれません。
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