2020/07/17:
●高校生の最高賞研究論文に盗用指摘、陸軍軍医大学の修士論文に酷似
●小学生じゃ無理!中国の小学6年生のがん研究に父代筆の不正疑惑
●偉い人がやりがちな名義貸し…疑惑は日本のノーベル賞候補にも
●1年前に不正を糾弾する論文を書いたノーベル賞受賞者の不可解対応
2020/08/31:
●「過度に関与」小学6年生の件はさすがに保護者が謝罪、一等賞取り消しに
●高校生の最高賞研究論文に盗用指摘、陸軍軍医大学の修士論文に酷似
2020/07/17:読書感想文や自由研究を親が代わりにやったら、ハイレベルすぎて表彰されてしまった…みたいなことが日本でもあります。出来が良すぎる作品は、大体親がやったのでは?と疑われてしまいますよね。そのダイナミック版みたいなものが、中国で起きていました。
「全国青少年科技創新大賽」は、毎年実施されている全国規模の高校生以下の青少年向けのコンテスト。前身となった1979年の「青少年科学作品展覧会」から約40年続いています。ところが、この表彰作品に不正疑惑が持ち上がりました。
一つは大会で最上位となる一等賞の1作品で、2018年の第33回のもの。「ジヒドロミリセチンによる肝臓の脂肪代謝および細胞外マトリックスに及ぼす作用の研究」という、いかにもハイレベルで難しそうなタイトルです。重慶市の高校2年生の名義でしたが、盗作が疑われています。
ネタ元と見られているのが、陸軍軍医大学の修士論文。重慶市科学技術協会に取材したところ、「この高校生の研究は陸軍軍医大学の修士論文とは違う角度から行っている」との回答があったといいます。とはいえ、ちょっと苦しい感じですね。
(
小学6年生の「がん研究」に不正疑惑、科学技術コンテストの組織委員会が全面調査―中国メディア 2020年07月16日 10時10分 Record Chinaより)
●小学生じゃ無理!中国の小学6年生のがん研究に父代筆の不正疑惑
もう一つの不正疑惑は、上記とは異なる2019年7月下旬にマカオ(澳門)で行われた第34回の三等賞の1作品「タンパク質コード遺伝子『C10orf67』が結腸がんに与える効能と機構の研究でした。なんと雲南省昆明市の小学6年生が発表したものでしたが、多くの専門家から「小学生にできる研究内容ではない」などの指摘がありました。
で、調査を行った結果、この小学生が「中国科学院昆明動物研究所」に在籍するある研究員の子どもであることが判明。つまり、親による代筆が疑われているということでしょう。ただ、こんなハイレベルそうな研究でも三等賞で、もっと上の作品にまだ疑惑が出ていないことでも十分すごいですけどね。
ここらへんは調査が進むと、さらに盗作・代作疑惑が出てくるのではないかと思われます。それでも、おそらく全部が不正ということはないでしょうから、やはり中国にはレベルが高い人がかなりいると言えるのではないでしょうか。飛び級レベルの子はどこの国でも一定数いる上に、中国は人口が多いですからね。
あと、中国…ということで気になるのは、中国では日本の比ではないほど、子どもたちの学力競争が激しいということ。この賞が進学などで有利になる場合、不正の動機となった可能性があります。日本でも子どもたちの学力や大学の研究で競争を支持する人がいますが、このように同時に不正も生まれやすくなるのがデメリットのひとつです。
●偉い人がやりがちな名義貸し…疑惑は日本のノーベル賞候補にも
また、小学生の件で書いた代筆・代作ですが、これは大人の研究の世界でもかなりよくあることで、ゴーストオーサーと呼ばれます。厳密には「不正」と呼ばれませんが、当然、「不適切」なものです。日本のかなり有名な研究者でもゴーストオーサーが疑われるケースがあるんですよ。
例えば、ノーベル賞候補と言われた井上明久・元東北大総長。
ノーベル賞候補と言われていた井上明久・元東北大総長に不正疑惑などで書いている、日本の研究不正疑惑での大物のうちのひとりです。この井上明久さんの場合、純粋な不正である捏造疑惑があります。
ただ、異常に論文数が多かったということ自体がおかしいんですよ。多忙なはずの総長になってから、「1週間に3論文」とむしろ増えていました。論文の異常な多さは主に多重投稿が疑われています。加えて、私は今回話したような、自分がほとんど関係していない論文に名前だけ載せるという、ゴーストオーサー問題も考えられるのではないかと疑っていました。
●1年前に不正を糾弾する論文を書いたノーベル賞受賞者の不可解対応
あと、STAP細胞問題では、ノーベル賞を実際に受賞していて日本最高峰だと言える野依良治理事長の対応がイマイチだったことも気になりました。というのも、野依良治さんは問題が起こる1年前には、研究不正の多さを嘆き、他人事になってはいけない!と主張する論文を「共著」で書いていたんですよ。
不正を嘆く論文に関しては、
STAP問題渦中の野依良治理研理事長、1年前は論文捏造不正を批判していたで書いた話なのですが、野依良治さんは不正疑惑での対応が悪く、言っていることとやっていることが違いすぎ…ということになったため、本当に自分で不正を糾弾する論文を書いたのか?と怪しく思いました。
自分がほとんど関わっていない論文に名前だけ入れる…というのは、有名な研究者には結構ありがちなことなので、ここらへんは下手に突っ込むと、いろんな有名学者さんにとってヤバイところだと思われます。
●「過度に関与」小学6年生の件はさすがに保護者が謝罪、一等賞取り消しに
2020/08/31:紹介が遅くなったのですが、小学6年生の件は保護者がすぐに不正を認めていました。2020年7月16日に、
小学6年生の「がん研究」に不正疑惑=一等賞取り消し、保護者が謝罪―中国 レコードチャイナという記事が出ています。
この児童の保護者は7月15日に声明を出し、「コンテストの組織委員会などに対する極めて大きなダメージと社会に対する良くない影響をもたらした」などと謝罪。「資料の収集に過度に関与し、多くの生物医学専門用語を使用してしまいました」などとも言っています。
また、第34回昆明市青少年科技創新大賽の組織委も同日の声明で、「一等賞を取り消し、表彰メダルと証明書を回収することを決めた」と明らかにしました。私はいつも不正そのものより事後対応が大事と書いています。不正があったのはもちろん悪いことなのですけど、事後対応が悪いケースが多い中、素早い対応は良かったですね。
【本文中でリンクした投稿】
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