アウディなどで活躍したカーデザイナーの和田智さんが、「アウディは先進的・画期的なアイデアほど使わない」「良いアイデアは寝かせておくのが良い」といった話をしていました。逆説的でおもしろいですね。
では、この理由はなぜなのでしょう? 和田智さんによると、すごく良いと思っていたモデルが、時間がたって見てみたらそうでもなかったり、良いものは、より成熟したり、さらに新たなアイデアがブレンドしたりすることで洗練さが増したりするためだそうです。
2011/1/30:
●和田智氏「アウディは先進的・画期的なアイデアほど使わない」
●ワインのように熟成を待つ…良いアイデアは寝かせておくのが良い
●ドイツのメーカーはしたたかで日本はダメ?和田智氏の答えは…
2018/02/26:
●流行のデザインは古びるのも早いからか?むしろ即断即決での成功は多い
2020/02/17:
●日本メーカーは志を継承するモノづくりをする必要がある!と和田智氏
●和田智氏「アウディは先進的・画期的なアイデアほど使わない」
2011/1/30:ビジネスだとこれはなかなかできないんじゃないかと思うのですが、フォルクスワーゲングループに属しているドイツの自動車メーカーのアウディではアイデアが先進的・画期的であればあるほど、それなりの検証を済ませると、それ以上は検討されることなく「倉庫行き」となってしまうのだそうです。
一方、日本の企業なら、そのようなものが出たら一刻も早い開発を目指して「それっ! 急いでつくれ!」ということになるとありました(2018/02/26追記:ただ、後述するように、日本企業が本当にそうなのかは疑問もあります)。早く利益を出したいですし、他に似たようなものを出されるとも限りません。
著者は前に
空気を読む日本人と「いいえ」と言えるドイツ人の違い フランス人も「いいえ」から始まるでも書いたデザイナーの方で、車のデザインだからそれが可能な話だということもあるでしょうか。とはいえ、それでもやはり早く世に送り出したいと思うのが普通でしょう。かなり変わっていると思われます。
(
2011年1月11日 急いでやる仕事にろくな仕事はない 和田 智(日経ビジネスオンライン)より)
●ワインのように熟成を待つ…良いアイデアは寝かせておくのが良い
記事ではこれを「急がないマネージメント」「寝かせるマネージメント」と言っていますが、素晴らしいものほど、急いで手を付けずに一度「しばらく寝かせる」、ワインのように熟成を待つというものです。アウディには、「急いでつくって良いものができるわけがない」という発想があるためのようです。
静かに寝かされていたアイデアは、時間の経過の中で忘れられた頃に再び倉庫から持ち出し、更なる冷静な目でデザイン検証するとのこと。そうなると当然、すごく良いと思っていたモデルが、時間がたって見てみたらそうでもなかったという場合もあり、成功例の数倍はそれが多かったのではないかという話です。
良いものは、より成熟したり、さらに新たなアイデアがブレンドしたりすることで洗練さが増すとされていました。
空気を読む日本人と「いいえ」と言えるドイツ人の違い フランス人も「いいえ」から始まるで出てきたような流行を追いかけたものではとても無理な話なんでしょうね。
●ドイツのメーカーはしたたかで日本はダメ?和田智氏の答えは…
アウディのこのやり方では日本の倍の時間をかけて開発するので、単価構成も人件費もかかることになります。ただ、その分、利益率やプレミアムレベル(高品位?)の高い商品構成になっていると言います。
例としては、1998年発表の初代「TT」や2005年発表の「Q7」が、それぞれの分野で最後発でありながら大きな効果をもたらしたと…というもの。
実際の利益がどちらが上かわかりませんし、これは失敗時のリスクがとても大きいです。一長一短かなと思いましたが、著者も万能とまでは言っておらず、次のように書いています。
<新しく、リスクの高い新商品は日本やアメリカのメーカーが率先して競い合い、そのような状況を遠くから見ているのがドイツのメーカーです。ある意味とてもしたたかであり、急がず客観的にビジネスをしようとする文化性が伺えます。もちろんこのようなドイツのビジネスが“正しい”ということではありません。要はどう生きたいのかという問題なのです>
●流行のデザインは古びるのも早いからか?むしろ即断即決での成功は多い
2018/02/26:日本の企業なら急いで作るという話があったものの、今読み直してみるとどうかな?というものですね。有機ELやロボット掃除機など、日本企業がむしろ様子見で手を出そうとしなかったという話を、その後何度か書いています。
■
「サムスンだけ勝手にやってろ」有機EL技術が日本より韓国で先行した理由 ■
ロボット掃除機は危険だから作らないと言っていたパナソニック また、
シリコンバレーの名言「早く失敗しろ」スティーブ・ジョブズが成功例などで書いているように、早くチャレンジする企業は成功企業にたいへん多いというのもあります。
これは、ベンチャー企業に限った話でもありません。大企業もスピードを重視しますし、
ブレインストーミングは満足感だけで意味はない 集合知と矛盾?でなどで出てきたグーグルのスプリントというスピード重視の仕事術は、どの企業でも適用可能だとされていました。
最初の話で、すごく良いと思っていたモデルが、時間がたって見てみたらそうでもなかったというケースのことが触れられていました。これは、
ブレインストーミングは満足感だけで意味はない 集合知と矛盾?のタイトルとなっていたブレインストーミングで出てくるようなアイデアがまさにそういうもの。一方、スプリントという考え方は、この問題を克服しています。
なので、仕事全般に言えるような話ではなく、流行のデザインは古びるのも早いといったデザイン特有の問題なのかなぁ…と読み直しすと思ってしまいました。
●日本メーカーは志を継承するモノづくりをする必要がある!と和田智氏
2020/02/17:
新しさを求めるモノづくりから、志を継承するモノづくりへ:朝日新聞社メディアビジネス局 - 広告朝日(2015年05月08日)という和田智さんの別記事を見つけたので読んでみました。
タイトルは「新しさを求めるモノづくりから、志を継承するモノづくりへ」というもの。大量生産・大量消費、経済効率最優先の発想ではいけないといった話もありました。逆に求められるのは、製品が人や社会にどう貢献するのか、環境とどう調和していくのか、といった文化的な視点を持ったデザインをというものだそうです。
さらに、企業がどういう志を持ってモノづくりをしているのか、明快なシナリオを示す必要があるとも書いていました。正直、難しい説明でよくわからないです。とりあえず、私は、ストーリーのあるものづくりが必要といった感じかな?と捉えました。モノからコトへというのでしたら、近年のトレンドです。
あと、「志を継承する」にあたるピンポイントな話としては、日本の職人技を巧みにデザインに取り入れ、成功しているイッセイミヤケの三宅一生さんのエピソード。彫刻家イサム・ノグチさんは、和紙と竹ヒゴを用いた照明器具「AKARIシリーズ」などをデザイン。彼と友人でもある三宅一生さんは彼からバトンを受け継いだデザインをしているとされていました。
【本文中でリンクした投稿】
■
空気を読む日本人と「いいえ」と言えるドイツ人の違い フランス人も「いいえ」から始まる ■
「サムスンだけ勝手にやってろ」有機EL技術が日本より韓国で先行した理由 ■
シリコンバレーの名言「早く失敗しろ」スティーブ・ジョブズが成功例 ■
ブレインストーミングは満足感だけで意味はない 集合知と矛盾? ■
ロボット掃除機は危険だから作らないと言っていたパナソニック【関連投稿】
■
豊田市はブラック企業トヨタ自動車のせいで自殺者数日本一…本当?樹海より多い説も ■
プリウスは事故率が高い危険な車…はデマか? 車両保険は高くなっていないという事実 ■
EV異業種参入でトヨタに危機?ヤマダ電機・ダイソン・船井電機、FOMMというベンチャー企業も ■
ソニーが車開発、コンセプトカー発表 窓なしでディスプレイ、遠隔操作、AI搭載など ■
中国企業に買われて復活、絶好調のボルボ 吉利汽車(ジーリー)の買収が成功 ■
商品・サービス・技術についての投稿まとめ
Appendix
広告
【過去の人気投稿】厳選300投稿からランダム表示
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
|