過去にも何度も書いていますが、私はミャンマーのアウン・サン・スー・チーさんにはあまり良い印象がなく、むしろ総選挙で敗れた軍部出身のテイン・セイン大統領を評価していました。これはイスラム教徒に対する差別や政治実績の問題です。
●ロヒンギャ問題を無視するアウン・サン・スー・チー氏
ロヒンギャはロヒンギャ族とも言われていますが、ミャンマーに住むイスラム教徒の少数民族。「族」がつかない場合があるのは民族なのかどうかの見解が定まっていないためですが、いずれにせよ「ロヒンギャ」として区別されています。
そして、このロヒンギャは国内で迫害されており、近年も大量に国外に脱出したことが日本でも報道されました。
問題なのは、このことに対する政治家の姿勢です。テイン・セイン大統領の元で大量の国外脱出が出たことでわかるように、全然うまくいってはいないものの、一時は市民権付与や労働許可など権利の拡大を検討する姿勢を示すなど、問題を認識しているのは確かです。
一方、アウン・サン・スー・チーさんは近年は特に触れていないとされています。
●ミャンマーを発展させた実績を持つテイン・セイン大統領
また、政治実績という理由があります。私はもちろん軍政は支持しませんし、軍部出身者も危うさを感じますが、テイン・セイン大統領は予想外に進歩的な政策を進めていて、あまりにも急進的すぎるのでは?と心配したほどでした。
今回の選挙後の以下の記事でも、評価の高さに触れられていました。
スー・チー氏勝利、それでも続く「茨の道」:日経ビジネスオンライン 白壁 達久 2015年11月10日
今回の選挙で敗北を喫したUSDPのテイン・セイン大統領に対する声は「軍部を抑えつつ、民主化の路線を歩んでいる」と財界からの評価は高かった。
1962年から50年間も続いた軍政を経て2011年に民政移管したとはいえ、トップのテイン・セイン大統領は軍の序列ナンバー4から転身した身であり、就任時は真の民主化の実現に海外からは懐疑的な目が向けられていた。だが、テイン・セイン大統領は経済改革を一気に進めてきた。一部、欧米の経済制裁が解除されたこともあり、まだ道半ばではあるが外資企業に門戸を開いた。外資企業を排除した過去の軍政にはない動きだった。
首都ヤンゴンを中心に海外から不動産投資が舞い込みビルの建築ラッシュが進み、物売りの少年がスマートフォンを持つ。街中には日本から輸入が解禁された中古車であふれ、大渋滞が発生するまでになった。町の景色は5年前とは比べ物にならないほど豊かになりつつある。
●アウン・サン・スー・チー氏に感じるタレント政治家・世襲議員としての問題点
一方、アウン・サン・スー・チーさんに政治実績がないことは、仕方ありません。これを言い出したら、与党からの離党者が中心にならない限り、永遠に政権交代ができないということになります。
しかし、はっきりと看過できないと感じたのが、以下の話です。
「スー・チー氏の人気は極めて高く、これはある種、宗教的なものに近かった。だが、
今回の選挙戦では政策の話はほとんどなく、従来のような外資への規制緩和が続くかどうかは不透明だ。実際、政権が変わった場合は投資を控える可能性もあるという日系企業の声を聞いている」(ヤンゴン在住の会社役員)
これを読んで、ああ、アウン・サン・スー・チーさんはタレント政治家なのだ!と思いました。
私は芸能人やスポーツ選手出身のタレント候補を蛇蝎の如く忌み嫌います。二世政治家など世襲議員も基本的にはいっしょなのですが、政治家として優れているかどうかが問われずに、人気だけで当選してしまうためです。
アウン・サン・スー・チーさんも独立の立役者であるアウン・サン将軍の長女というのが大きいです。タレント議員・世襲議員共通の問題と言った方が良いでしょうね。
政治家として資質がわからないということは、受かってみると意外に良かったという可能性もあるのですが、事前に政策に触れていないというのは絶対にダメです。こういう人を選んでしまうと国民が「政策なんてどうでもよい」と言っているに等しいことで、悪い方へ転べばいくらでも悪くなることができます。
●テイン・セイン大統領の高評価がアウン・サン・スー・チー氏への不安に
「スー・チーリスク」の懸念は、"テイン・セイン大統領に対する評価と表裏一体"だと言います。
ミャンマーの財界では、スー・チー氏の経済に対する政治手腕を疑問視する声が出ている。民主化の象徴として支持を集めてきたスー・チー氏だが、国の経済を発展させるための力量は未知数だ。民主化後、海外からの投資マネーが集まって急速な発展を続けてきたミャンマー経済が、急速にしぼむリスクもある。
ミャンマー資本の不動産デベロッパーで働く日本人取締役は、「経験者の多いUSDPと協力しながら運営していくのが望ましい」としていました。
大統領に権限なし!アウン・サン・スー・チー氏の独裁宣言(?)に波紋で取り上げたような発言にはむしろ思い上がりを感じますが、謙虚になってテイン・セイン大統領らに協力を求めて少しずつ経験を積んでいくというのは一つの手です。また、前述の通り、意外とうまい方に転ぶ可能性もあるにはあります。
しかし、政策の話をしない人に投票しては絶対にいけないという話は強調しておきます。日本の選挙も政策の話が後回しになっていたり、タレント候補が受かったりで、私は非常に問題だと思っています。このことは心に留めておいてほしいです。
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