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失敗の三菱スペースジェットMRJ、開発中止も視野に入れる理由は?


 三菱重工のMRJ(その後、スペースジェットに名称変更)が延期だと聞いて検索かけてみたら、いろんな時期の延期ニュースがゴッチャゴチャに出てきてわけがわかりませんでした。どうも今回だけでなく何度も延期しているために、こういうわかりづらいことになっているみたいです。

 <スペースジェットになっても延期の伝統は変わらず、ついに6度目に>、<失敗の三菱スペースジェットMRJ、開発中止も視野に入れる理由は?>、<三菱航空機社員「我々のノウハウは、ノウハウではなかった」>、<製品の問題以前に、組織や仕事の管理そのものがダメという指摘>、<三菱重工がやっと開発中止撤退を発表 発表の遅さは顧客軽視では?>などをまとめています。
 
冒頭に追記
2023/02/09追記:
●三菱重工がやっと開発中止撤退を発表 発表の遅さは顧客軽視では?
2023/04/11追記:
●部品数が多いジェット機で大儲け…のはずが、多い部品数が裏目に
2023/05/21追記:
●見通し甘すぎて失敗の国産ジェット、国が500億円も投入してた
2023/08/23追記:
●日本の技術は高い!と自信過剰? 提案断り日の丸にこだわる 【NEW】


●三菱重工がやっと開発中止撤退を発表 発表の遅さは顧客軽視では?

2023/02/09追記:前回、<新型コロナを言い訳にやっと凍結…と思いきや、三菱重工は否定>という話を追記したのは2020年10月。開発を中止して当然と思っていましたが、三菱重工は「開発の凍結を決定した事実はありません」としていました。そして、それからやっと2年以上経って中止を発表。意思決定が遅すぎる気がします…。

・三菱重、国産ジェット旅客機の開発中止 事業性見込めず(ロイター / 2023年2月7日 14時43分)
<三菱重工業は7日、国産開発を目指していたジェット旅客機事業から撤退する方針を発表した。開発が長引く中で一部技術が陳腐化したほか、型式取得にさらに巨額の費用がかかることから、採算が取れないと判断した>
<設計変更などトラブルが続いて納期を6回延期。(中略)会見した泉沢清次社長は「開発を再開するに足る事業性を見いだせなかった」とした上で、「一定の水準の機体を開発できたと評価している」と説明。「培った知見を生かし、引き続きわが国の航空機産業の発展と技術向上に取り組んでいきたい」と語った>
https://news.infoseek.co.jp/article/07reutersJAPAN_KBN2UH08Y/

 開発が中止になるというのはおそらくみんな予想していたはずで、中止の発表が遅くてもいいじゃないか?と思うかもしれません。ただ、三菱重工は270機も受注しており、顧客にとっては問題なんですよね。早く中止を発表した方が顧客は対応しやすかったです。三菱重工はものづくりだけでなく、顧客対応も極めて悪いと感じました。

<会社によりますと、これまでにおよそ270機を受注しているということですが、開発の中止に伴う補償などについては、今後、発注先の航空会社と協議することにしています>
(三菱重工 国産ジェット旅客機の撤退正式発表 影響は?(02月07日 19時41分 NHK)より)


●部品数が多いジェット機で大儲け…のはずが、多い部品数が裏目に

2023/04/11追記:撤退の正式発表の際に検索していて、2021/08/05の「戦闘機と旅客機では事業構造がまるで違う」三菱の"日の丸ジェット"が頓挫した本当の理由 「官民のもたれあい」で事態は混迷 | プレジデントオンラインという記事を発見。登録が必要な記事で途中まで…ですが、少し読んでみました。冒頭では以下のような虫の良すぎる未来予想図を描いていた…という話があります。

<「日の丸ジェット」は日本の産業界の夢を背負っていた。日本の産業構造は「自動車一本足」といわれる。自動車1台あたりの部品点数は2万から3万点。一方、ジェット機は100万点ともいわれる。「日の丸ジェット」商用化は、雇用や経済・産業への波及効果が大きく、日本の産業構造を刷新すると期待されていた>

 ただ、逆に言うと、<安全性が問われる航空機の商用飛行の資格を得るには100万点ともいわれる部品のすべてに耐空性を証明しないといけない>という話になります。この「型式証明」で「日の丸ジェット」はつまずきました。この「型式証明」で苦労したのはアメリカの陰謀という主張も聞いたことがあったのですが、この審査・承認は日本の国交省が担当していたそうです。

<型式証明の審査・承認は原産国の航空当局が担うが、YS-11以降、民間旅客機の開発を日本は手掛けていなかったこともあり、「管轄する国土交通省に知見のあるスタッフは片手にも満たなかった」(三菱重工)という。
 国交省でもスペースジェットの型式証明のために検査官が大幅に増員され、ボンバルディアや米ボーイングから型式認証の経験者を招いて対応に回った。その背景には、スペースジェットには同じサイズのボンバルディアやエンブラエルなどに納入される海外製の部品が多く採用されていたため、「海外から購入した部品に少し手を入れれば型式証明は取得できる」という認識があったようだ。しかしそれは甘かった。三菱重工はスペースジェットの仕様にあわせたデータをイチからとり、開発しなおさなければならなかった>

 三菱重工はボーイングなどの下請け(サプライヤー)として、航空機開発に携わっており、自信があった模様。しかし、「全機」と「部品」の開発では、担う範囲や規模がまったく違うと指摘されています。これは確か以前もあった指摘で、三菱重工は自社の実力を見誤り、根本的な部分で判断を間違えてしまった感じです。

 また、登録後の部分に詳細があるのかな?という、サブタイトルの< 「官民のもたれあい」で事態は混迷>も気になったところ。日本は中国のように国が民間に関与することが多いのですが、これはむしろ失敗を呼び込むことが多いやリ方。大体「日の丸なんとか」というのも失敗フラグであり、失敗すべくして失敗したのかもしれません。


●見通し甘すぎて失敗の国産ジェット、国が500億円も投入してた

2023/05/21追記:検索して見つけた「日の丸ジェット」の夢破れ…これまで政府が投じた資金は? 事業撤退の影響は? 三菱重工はどうなる?:東京新聞 TOKYO Web(2023年2月9日 12時00分)では、私が気にする国や自治体が失ったお金に関する話がありました。国のお金、つまり、我々のお金が失われたわけですから、本来なら皆さんもっと気にすべきでしょう。

<官民一体で進めた「国産ジェット」の夢が破れたことで、政府や自治体などが投じた多額の税金が「捨て金」となる恐れがある。
 政府は、研究開発支援などで500億円規模の負担をした。政府としての見解を問われた松野博一官房長官は7日、「これまでの取り組みを通じて、人材育成も含め、わが国の航空機開発の技術、能力の向上に寄与した」と成果を強調した。 >
<三菱航空機の地元・愛知県も開発支援として、県営名古屋空港(同県豊山町)に隣接する土地を同社の工場用に確保するなど、県費27億4000万円を負担した。直接支援以外にも、研究開発の補助といった航空機産業全体への支援は「全部足すと100億円くらい」(大村秀章知事)に達する。
 航空宇宙産業への関心を高めるために17年には同空港内に「あいち航空ミュージアム」を開館。地元挙げてのプロジェクトだっただけに大村知事は7日の記者会見で「大変残念」としつつ、「中部が航空機産業の拠点であることに変わりはない」と述べ、支援の継続を強調した。 >


●日本の技術は高い!と自信過剰? 提案断り日の丸にこだわる

2023/08/23追記:前回の記事は税金の話以外にも失敗した理由についての話がありました。これは今まで報道されてきたものと重なる内容がありますけど、逆に言うと、失敗した理由の説明としてある程度定着しているのかもしれない…ということで紹介しておきます。

<「開発規模の見積もりが正直言って甘かった」。三菱重工の泉沢清次社長は7日の会見で、SJ事業からの撤退を表明した。
 (中略)「日の丸ジェット」への期待感は高かった。航空機は部品の数が多いため、幅広い業者に恩恵が及び、低迷する日本経済の活性化策と考えられたからだ。
 (中略)2020年には事業を凍結。開発費は1兆円にまで膨れ上がっていた。 >

 東京大の鈴木真二名誉教授(航空工学)は「日本は開発が途切れていたのだから、もっと小さい飛行機から試せば良かったが、航空会社の要望もあって、一足飛びに90席クラスの旅客機に挑戦した」と指摘。以下のような話もあり、日本の技術は高いという自信過剰なところがあった気がします。

<「二つの見込み違いがあった」と話すのは、航空経営研究所研究員で桜美林大学客員教授の橋本安男氏だ。「一つは型式証明。三菱重工も、審査する国土交通省も決定的にノウハウが不足していた。もう一つは需要見込みの甘さ。需要見通しは5000機だったが、実態は半分にも満たず、1兆円の開発費の元をとれない」
 橋本氏は、三菱側の自己過信にも言及する。「当初、ボーイング社とコンサルタント契約した際に、同社B737製コックピットの使用を提案されたが、受け入れなかった。一緒に開発していれば、型式証明もうまくいっただろう。誇り高き三菱と日の丸にこだわったことが裏目に出た」>


●2015年春の時点では納入は遅れないと強調していた三菱重工業

2015/12/24:まず2015年春の初飛行に関する延期のニュースから。この時点では納入は延期しないと強気でした。ただ、今になって読むと無理を感じますし、安全上も問題のある計画だったように感じてしまいます。
三菱重工MRJ、初飛行の延期でどうなる? | 企業戦略 | 東洋経済オンライン 渡辺 清治 :東洋経済 記者 2015年04月14日

待ち焦がれた初飛行は、またしばしのお預けとなった。三菱重工業と傘下の三菱航空機は4月10日、愛知県で会見を開き、6月末までに実施するはずだったMRJ(三菱リージョナルジェット)の試験初飛行を9~10月に延期すると発表した。地上試験の結果などを踏まえ、飛行試験前に機体・装備品の一部設計変更を行うためだという。ANA(全日本空輸)への初号機納入時期は2017年4~6月で変えない。(中略)

岸副社長は、「変更を先にやったほうが飛行試験後の二度手間が減り、先々の作業が効率的に進められる。何らかの大きなトラブルで初飛行を延期するわけではなく、どういう順序でやるのがもっとも効率的で得策かを考えた結果だ」と説明。初飛行時期がずれ込むことで、初飛行後の開発日数は従来のスケジュールより短くなるが、「飛行試験は日本と米国で効率よくやっていく。初号機納入のスケジュールは守れる」と自信を示した。(中略)

直前まで三菱航空機は6月初旬までに初飛行を実現させたい考えだった。6月中旬には、航空業界の大イベントであるパリエアショーが開催される。その前に初飛行を成功させ、エアショーで開発の進捗を大々的にアピールしたかったからだ。会見では何度も「今回の日程見直しは、あくまで(開発の遅れではなく)飛行試験後の作業をより効率よく進めるための判断」と強調したが、営業面から見れば、エアショーで海外エアラインとの商談に弾みをつける絶好のチャンスを逸したのは痛い。

●初飛行に関してはこれまでに少なくとも5回も延期

 上記の記事の時点で既に「初飛行は、またしばしのお預けとなった」とありました。つまり、最初の延期ではないってことがわかります。

 検索では、10月末に「MRJ初飛行、5度目の延期」という記事も見つけましたので、少なくとも5回延期しているようです。そりゃ、わけわからなくもなりますわ…。
MRJ初飛行、5度目の延期 三菱航空機「詰め」に甘さ  :日本経済新聞 2015/10/24 0:30(上阪欣史)

 国産ジェット旅客機「MRJ」を開発中の三菱航空機(愛知県豊山町)は23日、26~30日の予定だった初飛行を11月9~13日に延期すると発表した。延期はこれが5度目。操舵(そうだ)部品を改修する。改修しなくても初飛行に問題はないが、安全性や完成度を優先する社内意見を重視したという。背水の陣で臨んだ初飛行を前に「詰め」の甘さがあらわになった。(中略)

 4月に4度目の初飛行延期を発表した際、三菱航空機は「初飛行後の改修点を減らすため、完成度の高い機体にすることを優先した」と説明。親会社の三菱重工業が開発部隊のお目付け役として4月に送り込んだ森本浩通社長も「10月に飛ばす」と明言していた。目標必達に向けて関係者の足並みがそろっていなかったとのそしりは免れない。

●初飛行は2011年の予定だった 実際に初飛行が実現したのはいつ?

 初飛行はここで予定していた11月9~13日に行われていますから、さすがにこれ以上延期はなかったと思われます。
国産旅客機・MRJが初飛行に成功 名古屋空港に着陸:朝日新聞デジタル 井上亮、鈴木毅 2015年11月11日11時40分

 国産初のジェット旅客機MRJ(ミツビシ・リージョナル・ジェット)が11日午前、初飛行を果たした。開発を担う三菱航空機が、愛知県営名古屋空港(同県豊山町)で最初の飛行試験に成功した。国産旅客機の開発は、1962年に初飛行したプロペラ機YS11以来、半世紀ぶり。

 ただ、先ほどの日経新聞では、初飛行はもともとは2011年の予定だったことが書かれていました。相当遅れたようですね。
 MRJの初飛行は最初は2011年の予定だったが、設計や製造工程の見直しなどで延期を重ねてきた。今回の延期で初飛行は2週間程度の遅れになる。装置やシステムの不具合ではないため、17年春の型式証明取得、同年4~6月を予定しているANAホールディングスへの引き渡し時期に変更はないという。

●当然納入にも影響、既に「4回目の延期」で4年間の遅れ

 上記ではやはり「引き渡し時期に変更はない」と言っていました。この約束が破られたわけですが、初飛行が2011年の予定だったことを考えると、納入の延期も初めてではないだろうと考えられます。で、実際、今回のニュースである以下の記事には、「4回目の延期」とありました。
MRJ、納入時期先送りへ 4回目の延期:朝日新聞デジタル 井上亮 2015年12月16日20時58分

 国産初のジェット旅客機MRJを開発する三菱航空機は16日、納入開始の時期が予定の2017年4~6月から遅れることを明らかにした。(中略)

 MRJの開発は08年に本格化したが、材料や設計の変更などでスケジュールをたびたび延期してきた。1号機を全日本空輸に納入する時期もすでに約4年遅れており、延期は今回で4回目となる。

●受注が増えたことを喜べない?違約金地獄で逆効果の可能性も…

 飛行機の開発の遅れ自体は、三菱重工業ではない実績のある他社でもありますので、延期自体は業界としては珍しいことではないんじゃないかな?と想像します。

 ただ、心配なのは契約のことですね。普通、「いくら延期しても良いよ」という契約はしないでしょう。違約金みたいなものがあるはずです。軽く検索かけたら、やはり4月の時点で多額の違約金に触れている話がありましたし、2012年には、受注が増えているのは良いが量産が遅れて違約金発生が増えるのでは?みたいな記事も見つけました。

 うーん、下手に受注が増えたせいで違約金だらけ…みたいなことになったら最悪ですね。何かやばそうな感じで心配です。


●ものづくり崩壊 三菱重工は船舶でも納期延期連発で巨額損失!

 別件ですが、同じ三菱重工で納期延期を繰り返しおまけに火事というニュースがあったので、「またおまえか」と思ってしまいました。(関連:三菱重工の客船損失で見えた日本のものづくり崩壊 日本人には技能的に作れない豪華客船)
納期延期で巨額損失、建造中の大型客船で火災 読売新聞 / 2016年1月12日 11時7分

 11日午後8時35分頃、長崎市 香焼 町の三菱重工業長崎造船所香焼工場で建造中の大型客船「アイーダ・プリマ」(約12万5000総トン)から出火し、7階部分の約15平方メートルを焼いた。

 出火当時、船内には作業員ら約400人がいたが、避難して無事だった。(中略)

 同社によると、この客船は、2011年に米クルーズ大手「カーニバル社」から受注したクルーズ船2隻のうちの1隻で、定員は約3300人。内装の仕上がりなどが要求水準に至らずに納期が3回延期され、人件費などがかさんで三菱側が巨額の損失を出している。

 あと、「飛行機の開発の遅れ自体は、実績のある会社でもあります」と書いていたのは、ボーイング社のトラブルの件が頭にありました。しかし、MRJはそれと比べても遅いと指摘する記事があったので、ついでに追記。
劣勢に転じるMRJと真価問われるA380:日経ビジネスオンライン 吉川 忠行 2016年1月7日

 MRJの納入延期は今回で4度目。航空機開発で遅れはつきものだが、当初計画より5年遅れとなるのは、開発遅延が指摘されたボーイング787型機の3年よりも長い。

 三菱重工は大丈夫なんでしょうか?


●アメリカに向かって飛ぶも戻るを繰り返し…やっぱり5度目の延期に

2016/10/01:その後、空調のエラーで飛んでは戻り、飛んでは戻りを繰り返してなかなかアメリカに行けなかったMRJ。また延期の方向性とのこと。でも、まあ、そりゃそうだろうなというメタメタっぷりです。
MRJ納入延期へ、19年以降も 設計見直し 2016/10/1 2:00 日本経済新聞 電子版

 三菱航空機(愛知県豊山町)が開発中の国産ジェット旅客機「MRJ」について、2018年半ばに予定していた初号機の引き渡しの延期を関係先に通知していたことが30日明らかになった。19年以降に引き渡しがずれ込む公算が大きい。納入延期は5度目。

●スペースジェットになっても延期の伝統は変わらず、ついに6度目に

2020/02/07:<三菱スペースジェット、納入6度目の延期…4964億円の特別損失>(2020年 02月06日 18時54分 読売新聞)という記事があって、あれ、そんな名前だったっけ?と思いました。知らないうちにMRJから三菱スペースジェットに名前が変わっていたようです。
https://news.so-net.ne.jp/article/detail/1908354/

 ただ、名前が変わっても納入延期の伝統は変わらず。記事タイトルでわかるように、ついに6度目の延期となりました。すごいですね。これはもう歴史に残るようなレベルじゃないでしょうか。これまで目標としていた2020年半ばから21年度以降に延期するとことになっているそうです。

 また、これもタイトルになっているように、今回の延期に伴い、19年4〜12月期決算(単体)に4964億円の特別損失を計上したとのこと。こうした損失や開発の長期化を考えると、今まで合わせると相当な損失が出ているんじゃないかと思われます。


●MRJがスペースジェットに名前変更 延期連発でイメージ悪いから?

2020/05/26:前回の追記の後、三菱重工業は新型コロナウイルス問題も直撃。たいへんなことになっているのですけど、私が気になったのは名前を変更した経緯です。検索してみると、サンケイビズが<名称から「三菱」を外してイメージを刷新し、顧客へのアピールを強める>と書いていましたが、細かい説明がありませんでした。

 この説明だと延期しまくって縁起の悪い名前を変えた…という風にも思えます。NHKも<これまでのイメージを刷新して販売を強化するため">と報じていたようです。ただ、前述の通り、実際、その後また延期しており、イメージを変えられたかどうかは不明。また、余計かっこ悪いとか、スペースだと空席だらけを思わせて縁起悪いとかいった反応も見られます。

 MRJ、スペースジェットに名称変更へ 「三菱」外す:朝日新聞デジタル(初見翔 2019年5月29日 18時48分)も読んでみたところ、ここではもう少し名称変更に関する話が詳しく、複数の理由を挙げていました。

<納入延期を繰り返したMRJのイメージを刷新し、受注拡大を目指す>
<MRJは「ミツビシ・リージョナル・ジェット」の頭文字に由来するが、リージョナルには「地域の」という意味があり、「狭いイメージを連想する」との指摘もあった。新名称は三菱を外す一方、スペース(空間)という単語を使う。小型機ながら広い室内空間が実現できることをアピールする狙いもありそうだ>


●失敗の三菱スペースジェットMRJ、開発中止も視野に入れる理由は?

 これで終わろうかな?と思ったら、開発中止の可能性が報じられていましたわ。まず、三菱重工業は、国産初のジェット旅客機「三菱スペースジェット(旧MRJ)」の開発を進める子会社の三菱航空機の人員を削減する方針を固めたというのが報じられています。

 ただ、問題なのは、これがスペースジェット自体の存続にまで関わってくる可能性ですね。さっき書いたように、三菱重工業は現在ピンチの状態です。加えて、「型式証明(TC)」をとった10号機でもまだ不備があり、2021年には納入が間に合わない可能性が出てきているとのこと。つまり、まだまだ赤字が出る可能性があるわけです。

 そのためか、Aviation Wireの取材によると、将来的な開発中止も視野に含めた大幅な見直しを進めているといいます。三菱重工業はすでにスペースジェットでガンガン損失を出している状態。これで下手に完成させたら、今度はメンテナンスで赤字を垂れ流すことになり、それよりはマシ…なんて話もありました。
(三菱重工、スペースジェット大幅見直し 人員削減や量産停止、海外拠点再考も 2020年5月23日より)


●三菱航空機社員「我々のノウハウは、ノウハウではなかった」

2020/08/01:MRJ開発遅延の真相、知見不足で8年を浪費 直面した900件以上の設計変更 | 日経クロステック(xTECH)(2019.12.26)は有料記事。なので、無料部分しか読んでいません。ただ、タイトルと無料部分だけでも結構雰囲気が伝わるものでした。

 三菱グループでは、三菱航空機の親会社である三菱重工業が米ボーイング向けに翼や胴といったジェット機の重要部品を長年造ってきています。なので、ノウハウがあると思ったのでしょう。しかし、三菱航空機のある社員は「我々のノウハウは、ノウハウではなかった」と語っています。

<実は、MRJは開発開始から8年目の2016年に大規模な設計変更の必要性に迫られていた。(中略)型式証明の取得経験を持つ海外の専門家から「このままでは型式証明を取れない」との指摘を受け、機体のシステムや部品、機能について見直した結果、900件以上の設計変更を余儀なくされたのだ。三菱航空機はこれらの設計変更に2017~19年の3年を費やしている>

 これは、国の圧力で海外の原発を買収したものの、不適切会計までやるほどの大失敗をした東芝のことを思い出しますね。東芝も原発関係の仕事はずっとしてきており、自分たちはやれるという自信がありました。しかし、日本のやり方は全く通用しなかったのです。


●製品の問題以前に、組織や仕事の管理そのものがダメという指摘

 上記の後は、「つまり、三菱航空機の設計は型式証明を取得できないものだったのだ」と記事では続きます。しかし、それだけではありませんでした。海外の専門家は三菱航空機のそれまでの仕事の進め方をことごとく否定。製品とオペレーション、組織の全てにおいて三菱航空機はダメ出しを食らったとされていました。

 これも東芝と同じで日本のやり方そのものがダメというもの。また、同じ三菱重工系としては、三菱重工の客船損失で見えた日本のものづくり崩壊 日本人には技能的に作れない豪華客船を思い出します。はてなブックマーク人気コメントでもこれに絡んだものがありました。他の系統のコメントも含めてまとめてどうぞ。

hate_flag 小型機メーカーのボンバルディア買収に必要な金額590億円、MRJ開発に費やしてまだ完成してない予算6000億円。最初からMRJなんか作らずボンバルディア買収しておいたほうがよかったな。
daishi_n そりゃ、豪華客船2隻1000億円で受注して2000億円の赤字を出した三菱重工なんだから、組織体制もプロジェクトマネジメントも欠落していて自明の理
astefalcon M&Aでショートカットすべきだった。経営判断を完全に誤ったな。
dekaino いまの三菱重工にはビーバーエアコンより大きい民生品は無理なんだってば。政府調達の一品物を作るしかない。
findup 最初に日本人だけで作る、国産でってずっと頑張ってしまったからじゃ。あれで数年やってたかと。その後どうにもならなくなって経験のある外国人エンジニア入れ始めた経緯だったように記憶してる。
ponpon_qonqon 設計変更箇所にいきなり「ピトー管」(速度観測装置)とか出てきて笑った。そりゃいくつもの航空機事故の原因となっている重要な箇所なんだけど、300年も前からあった基礎部品だぞ。そりゃ飛ばないわ


●新型コロナを言い訳にやっと凍結…と思いきや、三菱重工は否定

2020/10/23:三菱重工業が国産初のジェット旅客機スペースジェット(旧MRJ)の開発費や人員を大幅に削減し、事業を凍結する方向で最終調整しているというニュース。最初、日経新聞で知った話なので、「日経新聞は飛ばしが多いから…」と警戒しました。

 ただ、検索してみると、多数の新聞で報道。さらに、共同通信記事の三菱国産ジェット事業凍結へ 開発費巨額に、コロナで需要消滅:東京新聞 TOKYO Webでは、「複数の関係者への取材で分かった」という書き方。なので、信頼性が高いかもしれません。

 巨額の開発費を投じ、官民で約半世紀ぶりの国産旅客機を目指した上での挫折で、国の産業政策にも大きな打撃となりそうだ…とこの記事は書きます。ただ、新型コロナウイルスの流行が直撃…というのは微妙。三菱重工業としてはむしろ渡りに船で、中止する口実ができて良かった!くらいの感じかもしれません。

 なお、信頼できるかも…と書いたのですが、NHKによると、三菱重工業は、「厳しい状況を考慮した適正な規模の予算で開発を推進しております。こうした中でさまざまな可能性を検討していることは事実ですが開発の凍結を決定した事実はありません」というコメント。飽くまでまだ凍結は決定していないという説明でした。
(「三菱スペースジェット」開発費さらに削減 納入不透明な状況 2020年10月23日 9時21分 NHKより)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201023/k10012676871000.html


【本文中でリンクした投稿】
  ■三菱重工の客船損失で見えた日本のものづくり崩壊 日本人には技能的に作れない豪華客船

【関連投稿】
  ■LCCの安全性は低い?飛行機事故が目立った2014年の驚きの事故率
  ■機内食がまずいのには理由がある 原因は人間の味と匂いの感じ方のせい
  ■飛行機事故の確率の誤解 LCC・古い機体・エアバスA320の安全性
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