研究不正の話をまとめ。<日本の研究不正・論文捏造に甘い アメリカでは懲役57カ月の実刑判決も>、<臨床研究でも不正が社会問題に…日本は「不正をやりやすい国」との評判>、<実験ノート・データなどの証拠がなければ不正にした方が良い理由>などをまとめています。
2023/09/09まとめ:
●実験ノート・データなどの証拠がなければ不正にした方が良い理由 【NEW】
研究不正 - 科学者の捏造、改竄、盗用 (黒木 登志夫)

●日本の研究不正・論文捏造に甘い アメリカでは懲役57カ月の実刑判決も
2015/12/24:
不正対策論文コピペ検知システムithenticateの価格は?を書いていたときに、研究不正が蔓延していることを理解していないコメントを見かけて気になり、<不正をしているのは小保方晴子さんくらいという擁護も書かれていましたが、これは明らかに知識不足。まめにうちで取り上げているように、研究不正のニュースは世界でも日本でも珍しくありません>と書きました。
すると、海外のケースではありましたが、ちょうど
2015年もっとも騒がれた科学界の不祥事まとめ : ギズモード・ジャパン(2015.12.23 09:00)という記事がありましたので、海外の例を紹介しておきます。研究不正がよくあることだというのはわかると思われます。
ハン・ドンピョ研究員がHIVワクチン研究で実験結果を捏造していた事実を認め、政府研究費2000万ドルのうち700万ドルの返済と懲役57カ月の実刑判決を受けたそうです。うちのタイトルで「日本は甘い」とは書いたものの、アメリカでも実刑判決は稀。論文撤回追跡サイト「Retraction Watch」のAdam Marcusさんは、「この20年間、科学の不正で懲役刑に処された人は米国内に数えるぐらいしかいない。ハン氏はその不名誉なエリートの仲間入りをした」と皮肉っていました。
●論文捏造で32本撤回は前代未聞…と思いきや、世界記録から見るとひよっこ
上記はたまたま韓国人なので、「韓国人だからを不正をする。他の人種はしない」などと勘違いされそう。なので、記事であった<ベントレー大学のJames Hunton元教授。論文捏造で32本の掲載を撤回し、撤回歴代トップ10の殿堂入りを果たしました。まあ、183本の世界記録には遠く及びませんけどね…>という記述も紹介しておきます。
これは、日本人の不正の深刻さを示すにも良い例なんですよ。と言うのも、183本の世界記録を持っているのが日本人であるため。私が元にしたものと撤回本数が異なりますが、昔、
東邦大藤井善隆元准教授の全論文193本に不正・捏造の疑い、世界新記録か?をやっています。STAP細胞事件よりずっと前のものでした。
(引用者注:その後、
研究不正大国日本 撤回本数世界一など、トップ10の半分が日本人というものも書いています)
その他、海外の例としては、著名な血圧薬の心臓病治療効果を調べる研究で、血管学者のAnna Ahimastosさんが、データを捏造したことを認めた事件もあったそうです。
<論文撤回ウォッチャーのAdam Marcusさんは「世界を代表する医学誌2つから取り下げになったんだから、もっと騒がれてもいい不祥事だ」と言ってますよ。「ニューイングランド医学ジャーナル(NEJM)とJAMAに論文が掲載されるのはハーバードやプリンストンを卒業するようなもので、経歴に箔がつくんだよね。[...]今回は両方から問題の論文を取り下げたほか、少なくとも6本撤回し、ベーカーIDI心臓・糖尿病研究所の職も失った」>
●臨床研究でも不正が社会問題に…日本は「不正をやりやすい国」との評判
上記は血圧関係であり、日本人に理解してもらうにはちょうどいい話だと思いました。日本の不正に目をつぶっている人には、これを書いている時期に初公判が話題になったノバルティスの高血圧薬に関する臨床不正はどうなの?と言いたいです。以下のように大きな問題が起きていたんですよね。
<起訴内容などによると、白橋被告は、京都府立医大がディオバンの効果を調べるために行った研究でデータの解析などを担当。不正に操作した解析結果を、論文を執筆する研究者らに提供し、2011年と12年発表の論文に、ディオバンがほかの高血圧治療薬よりも「脳卒中や狭心症を防ぐ効果が高い」とする虚偽の内容を掲載させたとされる。
検察側は冒頭陳述で、白橋被告は「京都府立医大の研究で有利な結果を出さなければ、会社の販売戦略に悪影響が出て自分の評価が低下する」と考えた、と主張。データを解析する際、元のデータにはなかったディオバンに有利な症例を水増しした、と指摘した。
これに対し、白橋被告の弁護側は、研究に携わった医師ら「第三者がデータを改ざんした可能性がある」と指摘。同社の弁護側も「研究を成功させるために、医師らは症例を偽るなどした。これらの不適切な行為を無視し、被告や会社に過大な責任を負わせるのは相当ではない」と訴えた。(塩入彩、高野遼)>
(
ノバルティス論文不正事件、元社員が無罪主張 初公判:朝日新聞デジタル 塩入彩、高野遼 2015年12月17日04時06分より)
この裁判について私は悲観的です。不正があったのはほぼ間違いないですが、誰がやったかを立証するのは極めて困難なため。なので、誰がやったか関係なしに研究に問題があった時点で罰金にすべきかもしれません。アメリカでしたら確か多額の罰金を課す制度があったはずですし、これまた日本が甘いという話です。
ノバルティス問題に絡んだ報道では、臨床不正をやるなら日本という認識がある…という不名誉な証言もあったんですよね。また、日本は不正の単純な数だけでなく、不正の割合でも多そうなデータも見たことがあります。しかし、不正に甘いという環境のことを考えると発覚していないケースも多いと考えられますから、実態はもっと深刻かもしれません。
●実験ノート・データなどの証拠がなければ不正にした方が良い理由
2023/09/09追記:ここから<文科省ガイドラインだとSTAP細胞論文は文句なしで不正 証拠不足のせい>というタイトルで書いていた投稿をまとめています。
2014/5/14:以前、実験ノート・データの大切さ、証拠の大切さといった話を書いたことがあり、STAP細胞関連でも書いたことがあるはずです。ただ、STAP細胞関連の投稿は何十もあって、どこで書いたかよくわからなくなってしまいました。
とりあえず、同じようなことを書いたのを覚えているのは、
北川浩史群馬大教授らの不正論文問題 実験ノート・データの重要性のところですね。なぜ私が証拠が絶対に必要だと考えているのか?というのは、この投稿で書いた以下の部分で大体わかると思います。
<実験ノートなどの証拠がなければ論文は正しいと言えないってのも、この事例からわかります。もし実験ノートなどを処分していれば、この不正は断定できませんでした。証拠がないからシロとされてしまうと、いくらでも不正が可能だということになります。>
証拠がないとクロとシロの区別が不可能なのです。この考え方自体は理に適っていると考えており、当時は「推定無罪の原則」とは違う…として、続けて以下のように書いていました。犯罪と違って、研究論文の方はそもそも研究者側が勝手に主張しだしたもので、研究者側に利益がありますからね。犯罪証明とは逆です。
<犯罪の証明では飽くまで警察側がクロである証拠を示さなくてはいけないのですが、研究論文の場合は研究者側に立証責任があります。「証拠がないから論文は捏造」とまでは言えませんが、
証拠がないときには「論文に正当性なし」で自動的に撤回で良いと思います。>
研究不正 - 科学者の捏造、改竄、盗用 (黒木 登志夫)

【本文中でリンクした投稿】
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