東京オリンピックはゴタゴタ続き。白紙撤回となった新国立競技場は、今度は新しい案にも訴訟の可能性があるのではないか?という話になってきました。
●ザハ・ハディド建築事務所が新国立A案を「驚くほど似ている」と指摘
最初に前の案の設計者であるザハさんが類似性を指摘したときは、「イチャモンをつけている」「まだタカる気か?」といった感じでネットでは相手にしていない感じの反応が比較的多かったと思います。
新国立競技場 ザハ事務所「驚くほど似ている」 NHKニュース 12月22日 18時15分
ザハ・ハディド建築事務所は、自分たちがプロジェクトに再び参加する道が日本政府によって閉ざされたと今回の手続きを批判したうえで、「きょう決定したデザインは、座席の配置などが自分たちのデザインと驚くほど似ており、およそ2年間を費やしたデザインや、推奨したコスト削減策の多くが取り入れられている」と主張しています。そのうえで、「デザインの知的財産権は、自分たちが持っている」と指摘しています。
●B案の伊東豊雄氏は訴訟の可能性に言及
ところが、ザハさんだけでなく、日本人からも問題を指摘する声が続々と出てきました。ただ、以下は、まだ利害関係者ですので、額面通りに受け取るのは危険なものです。
「新国立A案」に垂れ込める「暗雲」 ザハ氏と「B案」建築家の不気味な「連携」 J-CASTニュース / 2015年12月23日 16時58分
ザハ氏による未来的なシルエットの旧案。建築家・隈研吾氏が手がけた「木と緑のスタジアム」がテーマのA案。一見すると、そのデザインはまったく別物にしか見えない。(中略)
具体的なポイントとして挙げられているのが、3層のスタンドだ。観客の見やすさを重視するとともに、工事が比較的容易なため工期短縮にもつながるともされ、A案の売りでもあるのだが、ザハ氏側はこれが旧案を参考にしたものだと主張する。確かに、ザハ氏の構想でもスタンドは3層となっており、A案のチームに入っている大成建設は、旧案でスタンドを担当する予定だった。
国内からもザハ氏には「援護射撃」が出ている。負けたB案をデザインした、伊東豊雄氏だ。22日の会見で、やはりA案とザハ氏案の類似を指摘し、
「ひょっとするとこれ、ザハさんに訴えられるかもしれないな、というくらいに思っております」
と厳しい見方を示す。
隈氏も、もちろん反論している。8万人という規模の観客に対応するためには、3層のスタンドは「一番合理的」なアイデアであり、重なったとしてもおかしくはないし、そのスタンドの形状も、ザハ氏案とは別物だ――と22日の会見で語り、
「両方の差は、はっきりしております」
と自信たっぷりに言い切った。
●森山高至氏も「前案を参考にしている」と推測
問題はここから。3人の設計者以外の人も類似性を指摘していました。これは当事者である3人の意見とは、種類が異なるものです。
新国立はザハ案「下敷きにしてる」森山高至氏が指摘 - 五輪一般 : 日刊スポーツ [2015年12月24日14時14分 紙面から]
23日、建築エコノミストの森山高至氏が日刊スポーツの取材に応じた。森山氏は隈案について「(ザハ案を)下敷きにし参考にしているようだ」と述べた。
両案の平面図を見た森山氏は「柱の位置やスタンド形状の放射線がほぼ一致している」。大成建設はザハ案でスタンド工区を担当、梓設計は設計チームだったため「前案を参考にしているとは思う」と述べた。
ザハ氏はスタンドや柱の配置が極めて似ていると主張。断面図を比較してもミックスゾーン、インタビューゾーン、コンコースなどの位置が似ており、森山氏も「輪郭は参考にしたのでは」と分析。【三須一紀】
●建築界では参考にするのはアリ?
ただし、森山高至さんは"「流用」の可能性については「それには当たらないのでは。骨組みを参考にすることは建築界ではあること」"としていました。
また、別記事では、「似てしまうことはある」といった見解を示していました。
「パッと見た印象では似ているかもしれませんが、『模倣』とは言い切れません。グラウンドの位置や座席の配置などについて、さまざまな観点で計算し、結果的にデザインが似通ってしまう可能性はあるでしょう」
(
新国立A案に“パクリ疑惑”? ザハ女史とB案設計者が指摘 日刊ゲンダイ / 2015年12月25日 9時26分)
●森山高至氏も訴訟の可能性に言及
では、森山高至さんは問題ないと言っているのか?というと、そういうわけでもありません。上記の後にはこう続いていました。
「しかし、ここまで問題視されている以上は、しっかりと検証する必要がある。もし、ザハ氏の案を“流用”したのなら、法的な問題が生じる可能性もあります。日本スポーツ振興センター(JSC)や、A案の設計に携わった関係者らは『仕事をサボった』と思われても仕方がありません」
上記ではしっかりと検証する必要があるという指摘の他、B案の伊東豊雄さん同様に、訴訟のおそれがあることを指摘しています。
●契約では許可なしに設計を使用できず
また、より問題がありそうだったのが、先ほどの日刊スポーツの続きです。建設業界の慣習がどうであろうと、契約の方が優先されるはずで、そちらで引っかかりそうなのです。
関係者によると旧計画における日本スポーツ振興センター(JSC)とザハ事務所の契約では「設計ないしデザインについて著作権その他の知的財産権はザハ事務所に依拠」し、許可なしに設計を使うことはできないという。
●JSCは他人事で解決する気なし
これとは別にまた問題が悪化するのでは?と思ったのが、JSCの姿勢です。
森山高至さんは「しっかりと検証する必要がある」と強調していたのに、JSCは"新計画の要綱には「第三者の著作権などを侵害するものではないことを発注者に保証する」と明記されている"から、類似性については「事業者が解決する問題だ」と他人事のようです。これはマズいですよ。
なぜかあまり責任を追求されずに来ていますが、本来、新国立競技場の問題が大きくなった一番の責任はJSCにあります。問題を軽視して対処を怠ったがために、最終的に全面的な見直しにまでなってしまいました。
組織は違いますけど、五輪エンブレムもいっしょですね。事なかれ主義的に問題を見て見ぬふりをして通そうとしたら、どんどん大ごとになって撤回に至りました。
前回の反省を活かすなら、問題の芽が小さいうちから全力で対応する、ということになるはずなのですが…。
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