国連のクマラスワミ報告書は吉田証言で否定された…は誤解

　"安倍首相は河野・村山以下の国賊！韓国慰安婦合意でネトウヨ激怒"は、慰安婦に軍関与認める 藤岡信勝教授や産経新聞も安倍首相に失望にまとめています。こちらは別の慰安婦問題の話に使いました。

　国連のクマラスワミ報告書が、吉田証言が捏造だったことで否定されたという話を読んであれ？と思いました。変だなと思って確かめてみると、やはりデマみたいですね。


●国連の反日的な活動は日本の左翼のマッチポンプだ！

　保守派ジャーナリストとされている安積明子さんは、森友学園問題や加計学園グループ問題では安倍政権を糾弾しています。なので、保守派の中ではまともな方なのだろうか？と思っていました。

　が、やっぱり非常に保守派らしい記事も書いているようです。国連を利用した「日本たたき」のウラ　日韓合意、組織犯罪処罰法改正案などにケチ　左翼勢力の「マッチポンプ構図」　夕刊フジ / 2017年6月3日 17時12分というのが、安積明子さんの作品でした。

　これは以下の問題に関する記事。1つ目に関しては、日韓の慰安婦合意、少女像撤去は本当？日本政府が捏造した国連事務総長との会談内容で書いているように、一部の発言で日本政府側の嘘情報も判明していました。

・拷問禁止委員会が、慰安婦問題の日韓合意について、韓国への見直しを勧告したこと。
・「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案について。国連特別報告者が「プライバシーや表現の自由を制約する恐れがある」などと指摘したこと。

　安積明子さんはこれらについて、理不尽なものとみなしていました。その上で、"日本の左翼勢力が、国連の委員会に働きかけて日本を批判させ、それを日本国内での政治的活動に利用する「マッチポンプの構図」がある"と断言していました。

　しかし、記事では「マッチポンプ」の証拠は何一つ提示されておらず、どっちが理不尽なのか？という話。主張の内容を含めて、非常に保守派らしいものです。


●国連のクマラスワミ報告書は吉田証言で否定された？

　ただ、上記以上にまずいなと思ったのが、安積明子さんがデマ拡散に定評のある片山さつきさんの発言をそのまま引用していたことです。(関連：片山さつき恒例の2ちゃんねるデマ拡散で謝罪もせず 事業仕分けなど)

"片山さつき自民党政調会長代理も「こうした報告書の発端は、慰安婦問題に関する１９９６年の『クマラスワミ報告書』だ。根拠となった吉田清治氏の証言が虚偽と判明した後も、特別報告者のラディカ・クマラスワミ氏は『修正の必要はない』と突っぱねて、報告書は事実上生き続けている」と指摘した"

　クマラスワミ報告書は私も問題があると思いますが、「クマラスワミ報告書の根拠が吉田証言である」というのは初耳です。朝日新聞誤報問題でもそうなのですが、保守派の人らは吉田証言が慰安婦問題の唯一の証拠であるのように主張して「慰安婦問題はこれで否定された」と誤解しています。今回のものもそういう誤解ではないかと思って、検索してみました。


●もともと秦郁彦教授の反論とともに掲載

　で、クマラスワミ報告 - Wikipediaを見てみると、クマラスワミ報告書に吉田証言が載っているのは事実ですが、文書の一つであり、しかも否定的な見解とともに載っているというものでした。

　まず、吉田証言の記載部分は以下。

"強制連行を行った一人である吉田清治は戦時中の体験を書いた中で、国家総動員法の一部である国民勤労報国会の下で、他の朝鮮人とともに1000人もの女性を「慰安婦」として連行した奴隷狩りに加わっていたことを告白している"

　しかし、クマラスワミ報告書では、報告書作成当時に千葉大学教授であった秦郁彦さんの吉田さんの著書に対する異議も掲載。しかも、こちらの方が長く言及されていたのです。

"千葉大学の歴史学者秦郁彦博士は「慰安婦」問題に関するある種の歴史研究、とりわけ韓国の済州島の「慰安婦」がいかに苦境に置かれたかを書いた吉田清治の著書に異議を唱える。秦博士によれば、1991年から92年にかけて証拠を集めるために済州島を訪れ、「慰安婦犯罪」の主たる加害者は朝鮮人の地域の首長、売春宿の所有者、さらに少女の両親たちであったという結論に達した"

　これはたいへん軽率でしたね。やっぱり安積明子さんも保守派なんだな…という話でした。


【本文中でリンクした投稿】
　　■日韓の慰安婦合意、少女像撤去は本当？日本政府が捏造した国連事務総長との会談内容
　　■片山さつき恒例の2ちゃんねるデマ拡散で謝罪もせず 事業仕分けなど

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