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出版不況の原因は図書館ではない?文庫本が売れない年に起きたこと


 図書館の役割の見直し自体は必要ではないかと思っていて、本来の役割を忘れた図書館は泥棒と同じ 電子書籍の敵は図書館だで書いています。ただ、本が売れないのが図書館のせいという主張となると、それはまた別の話だと思われます。

2015/12/30:
●本が売れない原因は図書館のせい?出版不況で新潮社らが口撃
●全面貸出禁止までは求めず…「貸し出しの1年猶予」を求める方針
●ただ、そもそも出版不況が図書館のせいという証拠はあるのか?
●図書館のおかげでむしろ本が売れている可能性すら考えられる
●海外では出版社に配慮する制度もあるので参考になりそう
●図書館はそもそもどういう役割なのか?改めて見直しが必要
2017/10/14:
●今度は図書館の文庫本禁止を文芸春秋の松井清人社長が要請
2020/07/13:
●文芸春秋社長「2014年から文庫本の売上が大幅に減少しはじめた」
●出版不況の原因は図書館ではない?文庫本が売れない年に起きたこと


●本が売れない原因は図書館のせい?出版不況で新潮社らが口撃

2015/12/30:例によって本文を読まずに書き始めてしまいました。記事はどんな内容なのでしょう?
本が売れぬのは図書館のせい? 新刊貸し出し「待った」:朝日新聞デジタル  板垣麻衣子 2015年10月29日05時16分

 「増刷できたはずのものができなくなり、出版社が非常に苦労している」。10月半ば、東京都内で開かれた全国図書館大会の「出版と図書館」分科会。図書館関係者が多くを占める会場で、新潮社の佐藤隆信社長が、売れるべき本が売れない要因の一つは図書館の貸し出しにある、と口火を切った。

 佐藤社長は、ある人気作家の過去作品を例に、全国の図書館が発売から数カ月で貸し出した延べ冊数の数万部のうち、少しでも売れていれば増刷できていた計算になると説明。

●全面貸出禁止までは求めず…「貸し出しの1年猶予」を求める方針

 新潮社もさすがに全面貸出禁止を訴えているわけではありませんでした。以下のような予定だそうです。

"新潮社を旗振り役に大手書店やエンターテインメント系作家らが、著者と版元の合意がある新刊について「貸し出しの1年猶予」を求める文書を、11月にも図書館側に送る予定"

 ただし、これは「図書館ごとの自主判断」になりそうですね。過去にあったという"作家の樋口毅宏さんが11年に出した『雑司ケ谷R.I.P.』(新潮社)の巻末に、発売から半年間、「貸し出しを猶予していただくようお願い申し上げます」と記したケース"でも、図書館次第であったようです。


●ただ、そもそも出版不況が図書館のせいという証拠はあるのか?

 新潮社の佐藤隆信社長は、"全国の図書館が発売から数カ月で貸し出した延べ冊数の数万部のうち、少しでも売れていれば増刷できていた計算になると説明"していました。

 一方、日本図書館協会の"山本宏義副理事長は「図書館の影響で出版社の売り上げがどのくらい減るかという実証的なデータがあるわけではない」と話しています。

 新潮社の説明は説得力あるように感じられるかもしれませんが、実はそうでもありません。よくある「経済効果」もそうなることが多いのですけど、マイナスの分を考慮していないのです。


●図書館のおかげでむしろ本が売れている可能性すら考えられる

 冒頭で書いた、本が売れないのが図書館のせいという説に関して、本当だろうか?と感じたというのは、過去に以下のような話をやっているためです。

  ■ファイル共有サイトの違法ダウンロードは、むしろ映画収益に貢献していた?音楽の刑罰化も逆効果?
  ■コピーの禁止・制限など、著作権を保護しない方が音楽は売れる 実験で確認

 違法ダウンロードを正当化するわけでも、推奨するわけでもないのですが、違法コピーが収益に貢献する可能性もあるんですよね。これはおそらく無料であることで、そのサービスの入り口となり、ファンを増やしているのではないかと思います。

 ビジネスにおいて、無料お試しサンプルを配布したり、有料ユーザーだけでなく無料ユーザーも集めたりというのは、一般的であり、実績のあるものです。

 なお、朝日新聞にあった「公共図書館の個人貸出冊数と書籍売上額の推移」というグラフは、「公共図書館の個人貸出冊数」が右肩上がりなのに対し、「書籍売上額」は上がってから落ちる山型になっています。全く相関性があるように見えませんでした。

 ただ、これは結局違法コピーの件と同じで、著作権者の意向を無視して良いという意味ではありません。

 違法コピーと異なり、図書館の場合は合法のようですのでややこしいですけど、たとえ自分で自分の首を絞めるとしても、著作権者側がやりたいと言えばそちらに配慮せねばなりません。


●海外では出版社に配慮する制度もあるので参考になりそう

 なお、"EU(欧州連合)では図書館で貸し出された分を国が著者に補塡(ほてん)する制度を導入する国も"あるとのこと。これはおもしろいですね。

 さっき書いたように、図書館にはむしろ出版業界を下支えしている可能性があります。その場合の図書館事業は、税金を投入して出版社に利益を与える公共事業でもあるわけなんですが、その機能を積極的に肯定して強化するという方向性です。

 他に"英米でも、貸し出しの一部有料化や図書館用の本を仕立てて高価格化するなどの方策がとられている"そうです。

 ただ、"日本では、公立図書館が入館料その他の「いかなる対価をも徴収してはならない」と規定する図書館法に抵触する"とのこと。そして、最も決定的なのが"そもそも議論が低調なままだ"という話。話題になっていないようです。



●図書館はそもそもどういう役割なのか?改めて見直しが必要

 また、最初にリンクしたように、私は売上うんぬんではなく、そもそもの図書館の役割について、もう一度よく考えてみるべきだと思います。朝日新聞でもそういう話がありました。
 根本教授は「貸し出し猶予の要請は、出版社側のエゴと批判が出そうだが、図書館にも問題はある。コンビニ的に貸し出しする図書館運営ではなく、高度な参照サービスや地域・行政資料を蓄える機能を重視し、商業出版とのすみ分けのあり方を考える時期に来ている」と話している。

 図書館では貸出冊数を重視しているところがありますが、本来の図書館の役割とはずいぶん離れたところに行ってしまっている気がします。


●今度は図書館の文庫本禁止を文芸春秋の松井清人社長が要請

2017/10/14:今度は、文芸春秋の松井清人社長が、売り上げ減少が続く文庫本について図書館での貸し出し中止を要請するとのこと。文庫本というのは、廉価な小型本のこと。最初に出る大きいのが単行本です。文庫本の貸し出し中止は全国図書館大会で訴える予定だそう。この大会は、上記で取り上げた新潮社の佐藤隆信社長がベストセラーの複数購入を出版不況の一因と主張したのと同じ大会です。

 ただ、例によって、出版不況の一因であるという根拠あるデータはありません。貸出数の4分の1を文庫が占める地域があるというデータを出していたものの、これは購入者が減った理由には全くなっておらず、研究論文なら査読でバカじゃねのーの?と突き返されるダメな内容。こんなん学部生のレポート以下ですわ。
(文庫本「図書館貸し出し中止を」 文芸春秋社長が要請へ:朝日新聞デジタル 赤田康和 2017年10月12日05時05分より)

 ところが、困ったことにこれに説得力を感じる方もいるんですね。はてなブックマークでは、大半は否定的だったものの、一部で賛同するコメントが出ていました。

vox_populi "これは実に正しい主張ではないか。ベストセラーの本や文庫本は自分で買って読むべきであり、そうすることが出版文化を支えることにもなる。基本的に図書館は複本購入をするべきでない"

 これではニセ科学やフェイクニュースに簡単に騙されてしまいます。根拠に基づいて考えるくせをつけましょう。


●文芸春秋社長「2014年から文庫本の売上が大幅に減少しはじめた」

2020/07/13:出版社は図書館向け高額本と文庫本の2種類を作れ - 中川右介|論座 - 朝日新聞社の言論サイト(2017年11月15日)は、文芸春秋の松井清人社長の要請を肯定した感じのタイトルの記事。ただ、有料部分を読んでいないので、そこらへんはよくわかりませんでした。

 また、やはり無料部分のみによる情報ということにはなるのですけど、松井清人社長は一応データ的なところを出していたみたいですね。とはいえ、以下を読んでわかるように、しっかりしたデータがないことを認めており、結局、「なんとなくそう思います」程度の主張と言えてしまうかもしれません。

<松井社長は、「『文庫』の売り上げが大幅に減少しはじめたのは2014年」とし、「確たるデータはありませんが、近年、文庫を積極的に貸し出す図書館が増えています。それが文庫市場低迷の原因などと言うつもりは毛頭ありませんが、まったく無関係ではないだろう、少なからぬ影響があるのではないかと、私は考えています」という>


●出版不況の原因は図書館ではない?文庫本が売れない年に起きたこと

 ただ、記事の無料部分を読んでいると、思わぬ出版不況の真犯人らしきものが出てきてびっくりさせられます。それ以前から出版不況だと言われており、そこらへんの時期の理由はまた別だと思うのですけど、松井社長らが問題視する2014年問題の場合は、こちらの方が説得力ある説明になっていました。

<文藝春秋の松井社長は「2014年から売れ行きが落ちた」と言っている。新潮社の佐藤社長が発行後1年間の貸し出しを控えてほしいと要望したのが2015年。
 つまり、両社長とも、2014年から2015年にかけてかなりの危機感を抱いたことが窺える。
 その2014年に何があったかというと、4月から消費税が5%から8%に上がったことだ。よく言われるが、この影響はけっこう大きく、本当に4月になって売り上げは激減したのだ。そして、その後も回復していない>

 こちらも本来ならきちんとグラフが見たいところなのですけど、かなり具体的に書かれていますので信頼性が高そうな部分。長期的な影響など、図書館の影響については、一度詳細な調査をした方が良いとは思います。ただ、2014年に起きた文庫本の激減は、消費税増税のせいと考えた方が良さそうな感じでした。


【本文中でリンクした投稿】
  ■本来の役割を忘れた図書館は泥棒と同じ 電子書籍の敵は図書館だ
  ■ファイル共有サイトの違法ダウンロードは、むしろ映画収益に貢献していた?音楽の刑罰化も逆効果?
  ■コピーの禁止・制限など、著作権を保護しない方が音楽は売れる 実験で確認

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