●日本の店舗レイアウトに反時計回りが多い理由 ただし…
2016/1/1:そんなに!?と驚く話ですが、何と"消費者がスーパーで行う買い物の7割は、来店前に計画されたものではなく、店内で決定されてい"るそうです。実際に買った商品の中では、「~を買いに行こう」と決めていないものが半分以上どころか、7割もあるわけです。これだけその場で決める割合が高いと、店舗環境の良し悪しが大きく効いてくると、想像できます。
この店舗環境で最も重要なものの一つは、レイアウトでしょう。実は"日本ではスーパーのレイアウトを反時計回りにしているところが多い"そうです。理由は、"買い物客の多くが右利きであり、右利きの人は右側志向になるため、反時計回りのほうが歩きやすくなるという考え方"があったためとされています。
ところがね、これ、研究だと全く逆、むしろ悪いレイアウトだということが判明しています。ただ、その研究を紹介する前に、記事を読む上で必要な「メンタルマップ」という用語についての解説を掲載しておきましょう。
<買い物客が頭の中で描く地図のことです。認知マップとも呼ばれます。(中略)誰でも、自分がよく利用するスーパーについては、どの製品カテゴリーが店内のどこにどれぐらい置かれているかなど、だいたいのレイアウトを地図のように記憶しているでしょう。これがメンタルマップです>
●実は根拠がなかった…日本の店舗レイアウトが間違っている理由
で、お待ちかねの日本のスーパーが逆効果だとわかった研究の話です。前述のようにもっともらしい解説がされていたものが、実は全然根拠のないものだったということはよくあります。実際には誰もちゃんと確かめていないってことあるんですよね。ちょっと説得力あるように見えても、簡単に信じてはいけませんという話です。
<グロエペル=クレインとバートマンは、買い物客の移動を時計回りに誘導するレイアウトと反時計回りに誘導するレイアウトを持つ2つの日用雑貨店を比較し、前者のレイアウトのほうがより詳細で正確なメンタルマップが形成されること、特定の方向への向きやすさやバリューフォーマネーについての買い物客の評価が高いこと、買い物客の支出がより多くなる傾向にあること、および特定の製品を効率的よく見つけられる買い物客が多いことを明らかにしています。
ですが、この結果からは時計回りのほうがよいことが示唆されています>
●あちこち探す客の方がたくさん商品を買わないという意外性
私が上記で意外だなと思ったのが、しっかりとしたメンタルマップを持っている客の方がより買物をするということ。以下の説明を見てもわかるように、メンタルマップが確かな客は無駄なく買い物をします、一方、初めての客などメンタルマップのしっかりできていない客はあちこち探すわけです。
ただ、あちこち探す客の方が実は多く買い物はしない…というイメージとは逆の結果になるんですね。いろんなところを見てくれる客の方がよりたくさん買い物しそうなものですが、実際には反対で目的のものを買ったらすぐに買い物を終えてしまいそうな客の方がたくさん買うのです。ちょっと意外じゃありません?
<いずれにしてもメンタルマップを持っている買い物客は、入店するとこのマップを想起し、マップ上のどの売り場から買い物を始め、どこの通路を通ってどの売り場へ移動し、どの売り場を最後にどの辺りのレジで支払いを済ませるかといった、だいたいのルートをただちに決めます。当然、不要な売り場はそのルートから外されます。
ただし、店内が混雑していたり、特別な陳列やイベントがあったりすると、そのルートが調整されることもあります。初めて訪れる店ではこうしたメンタルマップが存在しないので、時間をかけて店内のあちこちを移動することになりますが、何回か利用するうちに形成されてきます。そうなると、その店での買い物という行為はその買い物客にとって効率性の高いものになるのです>
●これも定説を否定…レイアウト変更はあまりしない方が良い理由
ここまで引用元をリンクしていなかったのですが、実を言うと、
なぜスーパーのレイアウト変更はやめたほうがいい?客の流れが反時計回りだと損する? Business Journal / 2015年11月14日 6時0分(文=白井美由里/慶應義塾大学商学部教授)というタイトルの記事でした。上記までの知見からは、頻繁なレイアウト変更は「悪」だということも導き出されます。
<スーパーは、商品の陳列場所を移動するという「レイアウト変更」をときどき行っています。しかし、それは買い物客にとってメンタルマップが使用できない不快な出来事になってしまう可能性が高いことに注意するべきです。スーパーでの買い物の多くは日常的な行為であり、関心が低く、ときには面倒に感じるものです。できるだけ時間と労力をかけずに終えたいと思っている買い物客はかなりいます。
普段から買い物している店舗のレイアウトが変更になったところで、新鮮さや新奇性が感じられることはほとんどありません。なぜなら、商品そのものが入れ替えられるのではなく、商品は変わらないまま売り場が移動するだけだからです。買い物客は、買いたいものをウロウロしながら探さなければならないことにイライラするだけなのです>
●7割が予定外の買い物という知見はなぜ大切だと言えるのか?
私は「目玉商法」など、チラシの効果については、多少疑問視しているところがあったんですよ。また、コンビニがよくやる「ついで買い」狙いのサービス導入についても懐疑的でした。
公共料金支払いやATM利用で、コンビニに手数料などの利益はある?でやったように、実際、コンビニでのついで買いは苦しいと言っている人もいます。意味がないように見えます。
ただ、冒頭で書いた消費者がスーパーで行う買い物の7割は、来店前に計画されたものではなく、店内で決定されているという話は、来店機会を設けること自体の大切さも感じるものでした。今回知った予定のない買い物の多さというのは、チラシの効果やついで買いの効果が高いと感じられるもので、思った以上に効果があるのかもしれません。
あと、今回の話とは全然似ていない話なのですが、デパート内での売り場の配置を工夫したという話が、
伝統を守らずに攻める異色老舗企業・柿安本店 事業多角化の秘訣で少しだけ出ていたことも、今回の話を読んでいて思い出しました。興味ある方は、そちらもどうぞ。
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