「寝たきり社長」というワードの入った記事を発見しました。いろんな形で仕事できるってのは望ましいですが、マスコミがあんまりそこばかり注目して取り上げるのも…と思ったら、社長自らがどうも積極的に売り込んでいるようです。記者のフェイスブックのメッセンジャーに、「こういう本を出しています! 安倍総理にもご一読いただきました」と、自著の『
寝たきりだけど社長やってます
』のセールスを仕掛けてきたと書かれていました。
2016/1/6:
●寝たきり社長、仙拓の佐藤仙務社長 SMA(脊髄性筋萎縮症)という病気
●障害者はたいへん?親指しか動かないが「そうでもない」と否定
●健常者からの偏見だけじゃない!障害者による障害者への偏見
●障害者も在宅勤務も認めない…働き方の多様性のない社会
●まさか働けるなんて!障害者が働けるはずないという思い込み
●有名大の法学部を首席で卒業も会社から「障害者は無理」と断られた
●社員全員障害者で上場目指す!大きな夢を持つことは良いことなのか?
2020/07/16:
●工夫さえすればどんなことも克服できる!家庭では特別扱いされず
2021/04/21:
●健常者は「障害は個性」と言うが…障害者的には違和感がある 【NEW】
●寝たきり社長、仙拓の佐藤仙務社長 SMA(脊髄性筋萎縮症)という病気
2016/1/6:「佐藤仙務」という名前を見て、「専務なのに社長」と思ってしまいましたが、「ひさむ」とお読みするそうです。"愛知県東海市で名刺とウェブサイト制作をしている会社「仙拓」の社長、佐藤仙務(ひさむ)さん(24)"の話とのこと。
説明を見てALS(筋萎縮性側索硬化症)じゃないの?と読んでいたら、ALSと似ているものの別の病気みたいですね。SMA(脊髄性筋萎縮症)という病気だそうです。知らない病気でした。
上場目指す“寝たきり社長”24歳、「体が動かなければ、頭を働かす」 THE PAGE / 2015年11月8日 10時6分
「寝たきり社長」とはどういうことかと、その場で佐藤さんのことをネットで調べてみると、生後間もなくSMAと診断され、ずっと寝たきりの生活をしているらしいことが分かった。SMAというのは、脊髄性筋萎縮症のことで、筋肉を動かす神経に問題があり、体を動かせず、筋肉が萎縮してしまう病気だ。似たような病気にALS(筋萎縮性側索硬化症)がある。「乳児期から小児期に発症するSMAの罹患率は10万人あたり1から2人」(難病情報センター)だといい、佐藤さんはこの一人だったというわけだ。
佐藤さんの本は、いわゆる“闘病記”ではなかった。障がいを乗り越えて、会社を設立していく1人の青年の成長譚(たん)でもあり、会社を経営していくなかで働くことの意味や障がい者と世の中との関わりを問う内容でもあった。
●障害者はたいへん?親指しか動かないが「そうでもない」と否定
佐藤社長は、"体の自由がほとんど利かない"そうです。話すことはできるが、わずかに動くのは右手と左手の親指だけ。そこで、佐藤さんの体に合わせて、父親が入力デバイスを作ってくれたそうです。
右の親指でトラックボールを操作し、左の親指で左クリック。文字の入力は、ディスプレイ上のスクリーンキーボードを使い、パソコンを操作するというやり方です。しかし、"「この状態で文章を書くのはさぞ大変だったでしょう?」と聞くと、「そうでもないですよ」"と答えます。こういう心構えが良いですね。
"ソフトウエアキーボードで文字を打"つスピードは、"ブラインドタッチのように速いわけではないが、慣れない高齢者がキーボードを打つスピードより速い"という感じ。テクノロジーの発達が以前は働くことができなかった人に、可能性をもたらした形です。
佐藤さんの仕事を支えているのは、このパソコンだ。業務用のメールを打つのをはじめ、領収書や請求書の処理までここでやってしまうし、ネット経由の“飛び込み営業”までこなしてしまう。こうしたITが、重度障がい者の社会進出を支えていることを目の当たりにすると、本当に良い時代になったなと心から感じる。佐藤さんも「パソコンの向こう側にいる人たちには、僕が障がい者だとは分かりませんよ」と笑う。
●健常者からの偏見だけじゃない!障害者による障害者への偏見
上記のように自分に負い目を感じていないのが良いと感じるのは、障害者以外の人だけでなく、障害者自身にも偏見が強いと私が感じているためです。追い込みすぎて負い目を感じているわけで、その障害者自身が悪いとも言えないんですが、以下のような逸話もありました。
佐藤さんが、養護学校の卒業を間近にひかえた2009年夏、就職先にと考えていた授産施設の実習にでかけた。作業の終わり際に60歳代の車いすに乗った男性に出会う。
男性はこう言った。「ここから1人で帰るんだろうな」。全身が動かないのに一人で帰れるはずがなく、送り迎えは母親がしてくれる。なぜ1人で通えないかを説明するが、男性がたたみかけてきた。「親が甘やかしやがって……。1人で通わせろよ」「お前みたいな軟弱障がい者、ろくな人生送れない」。
親をバカにされたようで、怒りが収まらない。親に迷惑をかけている自分にも腹が立ってきた。佐藤さんが、ここで直面したのは「障がい者が健常者に近づこうとする現実」だった。「健常者に近づこうと自分を追い込まなくてもいいじゃないか」と感じた。
●障害者も在宅勤務も認めない…働き方の多様性のない社会
上記のような状態でしたので、授産施設への就職はやめました。そして、"2011年5月、その施設で同じ障害を持つ松元拓也さん(26)を誘って共同で「仙拓」を設立"することになります。最初から起業しようしていたわけではなく、「重度障がい者の働く場所がなかった」からなのです。
私は「障害者による障害者への偏見」という書き方をしましたが、やはりこれは健常者側の問題も大きいです。障害者の特性に合わせず、健常者と同じことをやらせようとしているわけですからね。
これは大きく言うと、働き方の多様性とも関係してくる話です。以前、
在宅勤務反対派が言うデメリット さぼり放題!本物の仕事は会社でしかできない!で、在宅勤務に激しい嫌悪を示す人の話をやりました。全員を在宅勤務にしろと言っているわけではないのに、なぜか全否定されてしまいます。
●まさか働けるなんて!障害者が働けるはずないという思い込み
「仙拓」では、"従業員2人を雇うようになった"そうです。"いずれも筋ジストロフィー症の重度障がい者だが、ITを駆使しながら在宅で勤務する"とのこと。こちらの逸話でも偏見というか、思い込みが見えます。やはり障害者自身の問題というよりは、現在の仕事環境の問題でしょうね。
1人は、大阪に住む大学院卒の37歳の社員。最初、「働かないか?」と声をかけたら、彼に怪しまれたのだという。そもそも難病を抱えていると、働くという選択肢は生活のなかにない。通院以外に外出しないのが日常なので、就職という「うまい話」が飛び込んでくると「騙されているのではないか?」と感じてしまったのだという。(中略)
「彼はサイトのアクセス解析をしてくれているのですが、本当に給料がもらえるとは思っていなかったようです。でも、口座を見たら実際にお金が入っていた。そのお金で、家族にお寿司の出前をとってあげたらしいですよ。今では『働けるとは思ってなかった、死ぬまで働きたい』と言ってくれて、僕も嬉しくなってしまいました」
●有名大の法学部を首席で卒業も会社から「障害者は無理」と断られた
一方、以下は健常者側による「障害者が働けるはずない」という思い込み。私はこういうのを見ると、もったいないと思います。女性に対する偏見もそうですけど、逆に良い人材を簡単に得られるのですから、本当はむしろチャンスだと思います。
もう一人の埼玉に住む23歳の社員については、こう話す。「有名大の法学部を首席で卒業したんです。でも、就職活動では『筋ジス』だということだけで『無理』と言われてしまいます。でも、頭がよくて、成長がすごいんです。ウェブ制作技術のすべてを吸収していく。上司である副社長の松元も『やべぇ』と言って警戒するくらい。こんなに嬉しいことはないですよ」。
●社員全員障害者で上場目指す!大きな夢を持つことは良いことなのか?
なお、佐藤社長は営業部長のような存在だそうです。冒頭の売り込みなんかは広報と言った方が良いものですが、雰囲気が伝わりますね。
ただし、「障がい者が会社をやっているということで有名になって、それだけで仕事が回るほど世の中は甘くはありません」とのことでした。
また、ちょっと不安に思ったのは、「いまでは上場したいんですよ」というのと、社員全員が障がい者の会社で行きたいという話。会社の体力がないうちに人材獲得を急ぐと、取り返しがつかないことになりかねません。夢は持っていても良いんですが、焦らない方が良いと思います。
●工夫さえすればどんなことも克服できる!家庭では特別扱いされず
2020/07/16:その後の仙拓の話を検索。障害者の雇用や上場を目的化してしまうと、肝心の仕事が後回しにされてしまうために心配でしたが、健在のようです。検索では、例えば、
テレワークの可能性「証明できた」 寝たきり社長の自負 [新型コロナウイルス]:朝日新聞デジタル(2020年4月23日 18時00分)という記事がヒットしました。
このタイトルは、当初書いていたうちの「障害者も在宅勤務も認めない…働き方の多様性のない社会」に関連しそうなものですね。中身もそういうもので、仙拓は新型コロナウイルス問題で注目される前からテレワークが基本の会社だという話をしています。
無料で読める部分が少なかったので、もう一つ、
動くのは目と口と親指1センチ 「寝たきり社長」の挑戦:朝日新聞デジタルという記事も読みました。すると、親も障害者だからと特別扱いしなかったとのこと。前回書いたように卑屈さがないというのは、育ち方の影響もありそうですね。
<家庭では、障害があるからと特別扱いされることなく、兄2人と同じように育てられた。父の政好(まさよし)さん(62)は、「工夫さえすればどんなことも克服できる」と、兄たちがゲームに興じた時期には、指の力が弱い佐藤さんもプレーできるよう、ゲーム機のボタンを改造してくれた>
●健常者は「障害は個性」と言うが…障害者的には違和感がある
2021/04/21:またビジネスの話じゃないのですけど、
「障害は個性」、それ本当? 当事者が感じる違和感とは:朝日新聞デジタル(佐藤仙務 2020年9月10日 9時00分)というのを読んでみました。多くの障がい者は子どものころから健常者の大人たちに「障害は個性である」と教えられるとのこと。きれいごとで当事者には信じられそうにない言葉に思えますが、意外なことに、それをずっと信じてきた障がい者は多く、佐藤仙務さん自身もそうだったといいます。
ただし、成長するにつれてやはり疑問にも感じてきました。障害は個性であるという言葉は、なぜ健常者が使いたがり、障害者はあまり使わないといいます。この理由と関係してくると考えられるのが、「そもそも個性とは何なのか」という根本的な部分です。ここらへん深く考えていますね。以下のような話がありました。
<障害は個性というと、一見ポジティブに聞こえるかもしれないが、例えば、私に好きな女性がいたとして、「君は顔も性格も個性的だね」と言ったとしよう。どうだろうか。私はほめているつもりでも、女性はバカにされていると思うだろう。一方、「君は顔も性格も魅力的だね」と言えば、悪い気はしないだろう>
だったら、<「障害は魅力と言えばいいのでは?」と思う人がいるかもしれないが、障害が魅力というのはちょっと無理がある気がしてならない>と当事者としては思うとのこと。そして、こうした点が、健常者だけ「障害は個性」を使いたがる理由に関係してきます。<障害は個性という言葉は良くも悪くも完成度が高い>言葉なのです。
周りの多くの障がい者たちは「障害は個性である」と言われ、困り顔。一方、「仙拓」の障がい者のスタッフは、個性ではなく「障害は障害」と断言しています。ただし、ネガティブなものではなく「そういうものでしょ」といったニュアンス。<障害は個性だという言葉で自分を美化しなくても、彼らは障がい者以前に、自分自身の役割と価値を信じ、懸命に生きている>とまとめられていました。
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