ある産経新聞の記事に非難が集まっていました。ただ、内容的には保守な産経新聞らしくなくリベラルな印象があるもので、衝動で万引繰り返す「クレプトマニア」という病気があることを伝えた記事みたいですね。
●万引きしてしまう病気伝えた産経新聞記事に非難轟々
私は先に反応を見て、そういう病気があるんだと知りました。こちらでも反応紹介を先に。
"病気だから許されるのであればキチガイのフリして人殺せば無罪になるってことだろ"
"病気認定は結構だが、それを理由に無罪とか主張しないでね。早くこの辺の法改正しないかな"
"それじゃなんだ?
病気だから訴えることできないってか?
何でもかんでも病気にするのはいかがなもの?"
"病気であれば、療養刑務所を造って強制的に収容しないとね"
"「私は病気だから万引きしても仕方ないんだ」って
勘違いするのでは?
窃盗は窃盗なんだから
治療は刑務所で反省とともに行うべきだと思います"
"「病気なんです」ものはいいよう
でも犯罪は犯罪、これで積みが軽く成るような事はあってはいけない"
"なんでもかんでも病気扱いすれば支援してもらえんのかあほくさ"
Ceron - 衝動で万引繰り返す病気「クレプトマニア」 患者の多くは女性 奈良で治療支援団体発足 (産経新聞) - Yahoo!ニュース コメント見ていたら、"こんなん鬱みたいに自己申告制じゃねぇかwww "というものがありました。「クレプトマニア」は今知ったところなのでよくわかりませんが、うつ病に関しては医学的な裏付けがあります。また、日本では誤解や偏見が広まっている可能性もあります。
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「新型うつ」はうつ病ではない偽物?教育や家庭の問題で増加という説も●通常の窃盗癖とは異なるクレプトマニアとは?
では、本文…と思いましたが、クレプトマニアに関する説明から。
窃盗症 - Wikipedia
窃盗症(せっとうしょう)とは、クレプトマニア (kleptomania) の訳語であり、経済的利得を得るなど一見して他人に理解できる理由ではなく、窃盗自体の衝動により、反復的に実行してしまう症状で、精神障害の一種である[1]。病的窃盗ともいう。
これは、その衝動により窃盗行為の実行時に緊張感を味わい、成功時に開放感・満足感を得る。窃盗の対象物や窃盗の結果に対しては関心がなく、一般にはほとんど価値がないものである場合も多い。盗品は、廃棄・未使用のまま隠匿・他人への譲渡のほか、まれに現場へ返却される場合もある。いわゆる「利益のための窃盗」ではなく「窃盗のための窃盗」といわれており、衝動制御障害に含まれる同様の症例として「放火のための放火」を繰り返す放火症がある。
省略しちゃいましたが、記事の反応では「窃盗自体が病気みたいなもんだろう」という趣旨のコメントがかなりありました。Wikipediaでは、その違いに関して以下のように書いています。
一般的用語として窃盗癖・盗癖ともいうが、一般に「盗癖がある」窃盗常習犯は、意思欠如型の精神病質は見いだされるものの、その動機は経済的なものであることがほとんどであり、必ずしも窃盗症と領域を一致させない。
Wikipediaでは、"その原因はうつ病や性的虐待・性的葛藤との関連づけが試みられており、摂食障害や月経等との関係が注目されている"とあったものの、[要出典]となっています。
Wikipedia自体も、"最近は統計的実証的研究から、性的偏見に基づく一種の伝説であるとの批判もなされている"として、否定的な意見を併記していました。
産経新聞の以下の説明にもそのような話はなく、眉唾だと考えておいた方が良さそうです。
衝動で万引繰り返す病気「クレプトマニア」 患者の多くは女性 奈良で治療支援団体発足 産経新聞1月10日(日)11時38分(山崎成葉)
患者には女性が多いといい、摂食障害(過食症、拒食症)など、他の病気と併発する傾向が高い。同院でも、摂食障害での入院患者の約半数に万引した経験があったが、盗品の価格はほとんど数千円以内だったという。
経済的な理由や、所持する目的さえないのに盗みを繰り返す特徴がある窃盗症は、精神的ショックや生活上の変化などが引き金となり発症するケースが多いという。
●窃盗癖が病気であるなら、刑罰では犯罪を防止できない
さて、やっと肝心な記事の本文に入りますが、書かれていたのは主に治療についてでした。
「盗みたくないのに、スイッチが入って盗んでしまう」−。経済的な理由などでなく、衝動を抑えきれずに万引を繰り返す病気「窃盗症(クレプトマニア)」。再犯率も高いが、県内には専門的な治療を行う施設などはなかった。そうした中、昨年12月、弁護士らが県内唯一の支援団体「KAなら」を発足させた。“病気”という側面を認識した上での再犯防止に向けた取り組みを進めている。
平成27年版犯罪白書によると、窃盗罪の再犯率は覚せい剤取締法違反に次いで高い。22年の出所者(9855人)の5年以内の再犯率(26年)は46・1%(4542人)と、半数近くにも上り、捜査関係者が「癖(へき)」とも表現するほど。だが、「窃盗症」の治療など行う支援施設は全国的にも少なく、先進的な治療を行っている「赤城高原ホスピタル」(群馬県渋川市)では20年以降、1370人が受診している。
窃盗罪には、当然ながら刑罰があります。"10年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられる"としていました。
ただ、"松井弁護士は「病気なので、刑事的処罰だけでは解決されないのではないか」と指摘"していました。罰で病気が治ったら苦労しませんから、これは正論でしょう。窃盗癖が病気であるなら、刑罰による抑止効果は薄いです。
刑罰には複数の目的があり、その一つが犯罪を抑制することです。病気による窃盗を減らすために治療しようという活動に文句を付けてしまうということは、そもそもの目的を忘れてしまっているようです。
彼らもまさか窃盗が多いままで良いと思っているわけではないでしょうから、頭に血が上ってわけがわからなくなっているのかもしれません。
●病気だから減刑…ではなく、病気だから治療をという趣旨か?
たぶん感情的になったであろうという原因だろうなという話が、記事の最後の部分にありました。
近年は執行猶予中に万引で逮捕され、地裁で実刑が言い渡された事件の控訴審で、執行猶予付き判決になった事例もあるという。松井弁護士は「病気という性質を考慮しての司法判断が、徐々に見受けられるようになってきた」と話す。
短期間での治癒は難しいのが依存症の治療で、患者は長期間の治療を継続することが必須となる。だが、赤城高原ホスピタルでは、患者の約7割が3カ月以内に治療を止めてしまうといい、竹村道夫院長は「唯一確実に治療を受けられるのは、刑事裁判の進行中」と指摘。改正刑法で薬物使用者を対象に導入が決まった「刑の一部の執行猶予制度」を挙げ、「窃盗症患者にも同様の制度があれば」と話した。
ただ、「刑の一部の執行猶予制度」の説明を見ると、単なる減刑というものではなさそうです。薬物使用者の場合、保護観察が行われますので、そこは全然嬉しい話ではないでしょう。
刑の一部執行猶予制度(けいのいちぶしっこうゆうよせいど)とは - コトバンク
日本大百科全書(ニッポニカ)の解説
「薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律」には、麻薬などの薬物の自己使用等の罪を犯した者が、3年以下の懲役または禁錮の言渡しを受けた場合について定められている。猶予の方法・期間は、改正刑法に定められるものと同様であるが、猶予期間中は、必ず保護観察が行われる。
改正前の制度では、懲役刑または禁錮刑の処分を行う場合、刑期全部について、実刑か執行猶予かの選択肢しかなく、短期の実刑を言い渡される場合には、再犯防止・改善更生の教育や指導をするために必要とされる十分な仮釈放期間を取ることも困難である。しかし、刑の一部執行猶予制度の導入により、一定期間施設内処遇(刑務所内での執行)を実施したのち、相応の期間を執行猶予として、一般社会でも犯罪を犯すことなく生活するよう社会内処遇(保護観察など)を実施できるようになる。
クレプトマニアでは治療を止めてしまう患者が多いという記事の流れからすると、おそらく保護観察のような期間を設けて、ある程度強制的に治療を続けさせようという趣旨だと思われます。
産経新聞の書き方が説明不足で非常に悪いとも言えるのであれですが、頭に血が上っていた方々はだいぶ誤解されているかもしれません。
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