イスラム教において飲酒は、クルアーンに飲酒を禁じる記述があるなど、一般に禁止(ハラーム)とされている。
前述のとおり、イスラム教において酒が禁じられているにはあくまで現世においてであり、天国ではむしろ飲酒が讃えられていることから、イスラム神秘主義では酒は神の偉大さを讃える比喩として重要である。神秘主義詩などでは酒への称賛が詠まれているが、それらは文字通りの酒への賛美ではなく、真の意味は神への称賛だとされる。
イスラムの建前としては飲酒は大罪であるが、実際にはこの禁令は当初からあまり機能していなかった。歴史的に見てもイスラム教徒の飲酒は非常に盛んであり、宗教指導者からしばしば飲酒を咎められながらもほとんどの人間が酒を楽しんでいたし、イスラム教の最高権威であるカリフもこっそりと飲酒を楽しんでいたとされる。
(中略)ウマル・ハイヤームの「ルバイヤート」などの詩歌では酒屋や酒場もしばしば登場しており、飲酒は宗教上は禁止であっても行政上は必ずしも禁止されていなかったことが伺われる。
アフガニスタン・イスラーム共和国
アフガニスタンでも公式に飲酒が禁止されているが、歴史的にゾロアスター教や仏教が隆盛であったことから、飲酒は盛んであったと思われる。
パキスタン・イスラーム共和国
パキスタンではバングラデシュと同様、イスラム教徒の飲酒が禁止されている。 なお、外国人向けの酒類が少量製造されているが、トルコなどと比較すると出荷量は極端に少ない。
マレーシア
マレーシアではイスラム教徒の飲酒は禁止されており、発覚した場合は鞭打ち刑などの執行例がある。 しかし、多民族国家であるマレーシアでは、非イスラム教徒の場合は飲酒に限らず、豚肉食なども正式に認められている。
イラン・イスラーム共和国
イラン・イスラーム共和国では公式には飲酒は禁止されている。しかし、イラン革命以前は禁止されておらず、また現在でも実際は多くの国民がひそかに飲酒を楽しんでいる。歴史的に見てもイラン(ペルシア)では飲酒が盛んであり、酒をうたった多くの神秘主義詩があるほか、世俗的立場から飲酒の享楽をうたった詩人(ウマル・ハイヤームなど)もいる。
イラク
イラクでも公式に飲酒が禁止されている。しかし、アッバース朝の最盛期にはバグダードの宮中でも酒宴が行われていたとされる。
イエメン
飲酒は全面禁止である。
クウェート
飲酒は全面禁止である。
インドネシア
国民の9割がムスリムであるインドネシアであるが、酒の販売は法律で認められている。多くの国民には飲酒の習慣がないが、ムスリム以外の少数民族の中には、独自の酒の文化もある。ビンタンなど、酒造企業もある。また、ムスリムの中でも戒律をさほど重視しない者もおり、経済成長や、日本や欧米の食文化が流入していることも相まって、ムスリムでも飲酒を楽しむ者が増えつつある[2]。
原理主義的傾向の強いサウジアラビアでは、飲酒だけでなくアルコールの使用を全て禁止する傾向があり、病院の消毒用アルコールすら使用禁止されることがある。病院によっては医学知識の乏しい医師や看護士も多く、アルコールを使わずに水で濡らした脱脂綿でこするだけで済ませるといった処置が行われることも多いので、病院で診察を受ける場合には注意が必要なこともある。 2009年にはシャイフがアルコールを使用したバイオ燃料の使用は罪であると表明した[3]。
現在ではイスラム原理主義の勢力の及ばないトルコや欧州(アルバニアやボスニア)、インド、中央アジアなどでムスリムの公然とした飲酒文化が存続している。特に中央アジアの遊牧民にとっては馬乳酒は生活に欠かせないお酒となっている。とはいえ公式行事での飲酒は避けることが多く、日本を訪問したイスラム圏の元首や王族などが皇居で催される宮中晩餐会や午餐会で乾杯を行う際は、通常用いられるシャンパンに替えて同色のりんごジュースやジンジャーエールなどで代用することもしばしばあるという。アルコールを許容するかどうかについては個人差がかなりある[1]。
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