2016/1/13:
●岡山大が不正を指摘した森山芳則・榎本秀一の2教授を解雇
●不正を指摘されたから解雇した、岡山大学が堂々と宣言
●内部告発を理由に解雇するのは法律違反 社会保険労務士も指摘
●懲戒解雇ではなく普通解雇であることも実はポイント
●内部告発を憎み、研究不正を守ることで事実上推奨する国・日本
2019/09/23:
●不正告発したことを非難…裁判所が内部告発潰しに加担する日本
●岡山大が不正を指摘した森山芳則・榎本秀一の2教授を解雇
2016/1/13:以前の
岡山大の森山芳則教授と榎本秀一教授、不正指摘の報復で解雇か?で書いたように、解雇の方向性であることはわかっていました。そして、ついに正式発表。ただ、相変わらず報じている全国紙は毎日新聞だけみたいです。これは本来もっとデカイ問題ですよ…。
<岡山大は12日、大学教授の適性を欠くなどとして前薬学部長の森山芳則教授(62)と前副学部長の榎本秀一教授(52)の2人を解雇したと発表した。2人はこれを不服とし、大学を相手に処分無効や慰謝料2000万円などを求める訴訟を同日、岡山地裁に起こした。【平川義之】>
(
<岡山大>2教授を解雇…論文「不正」を告発 毎日新聞 1月12日(火)21時39分配信 より)
2教授は不正を指摘していました。ですので、今回の解雇はその報復の可能性があり、森山元教授は告発が解雇の大きな理由だと訴え、「大学側は、解雇することで不正追及を終わらせたいのではないか」と主張しています。
●不正を指摘されたから解雇した、岡山大学が堂々と宣言
実際、岡山大学は解雇の説明でこの不正指摘を理由に挙げていました。まさか堂々と言い出すとは思わなかったので、これには驚きました。日本は終わっています。
<解雇は昨年12月28日付。大学側の説明では、2人は大学に無断で学内で記者会見を開き、
学長や理事が不正行為をしているかのような印象を外部に与えたり、出席を求めた会合を欠席したりするなど職務命令に違反したとしている>
全国紙ではなく地方紙系だと毎日新聞以外にもあり、山陽新聞とNHK岡山が報じています。これらを読んでも不正指摘を解雇理由としていることがわかります。なお、解雇理由の一つである刑事告訴はその事実がなく、そもそも事実誤認だと反論されていました。
岡山大が薬学部教授2人を解雇 「教員としての適性欠く」: 山陽新聞デジタル|さんデジ
大学によると、元教授2人は、学内の論文不正を告発した自身らの役職解任を学長らが画策したことが職権乱用に当たるとして、2014年に岡山地検へ告訴状を提出し、記者会見。さらに調査中にもかかわらず論文不正があったかのように外部に情報提供した。2人に共通するこれらの行為を含めて9項目ずつを挙げ、大学の社会的評価を傷つけたとしている。
学内で会見した阿部宏史理事は「真実と認められない情報を流しており、信頼関係の回復は困難」と説明。
岡大元教授 解雇無効求め提訴 - NHK岡山県のニュース 01月12日 21時04分
岡山大学は論文に不正はなかったとした上で2人が大学の人事を公務員の職権乱用として告訴状を出したり記者会見を行ったほか、大学が論文の調査中に論文不正があったと記者に情報提供を行うなど大学の名誉や信用を傷つけ大学教授に必要な適性を欠いているとしています。
●内部告発を理由に解雇するのは法律違反 社会保険労務士も指摘
内部告発のすべてが本当だとは限りません。調査してみないと本当かどうかはわからず、指摘が間違いの場合もあります。しかし、告発を理由に解雇ができてしまうと、事実上内部告発が成立しなくなってしまいます。
労働基準監督署にチクった労働者を解雇できるか | 名古屋で就業規則作成するなら社会保険労務士川嶋事務所 2016年1月12日
今回の岡山大学のやり方がかなりヤバいというのは、人事・労務の仕事をされている方ならすぐにわかると思います。
というのも、企業や学校などの団体の不正行為に対する内部告発者というのは公益通報者保護法で守られているからです。(中略)
で、今回の岡山事件の不正というのは、研究に関する不正なので、この公益通報者保護法が当てはまるわけです。(中略)
労働者は労働基準法に違反している事業場を監督署等に申告できると書いている上、会社はそれを理由に労働者を解雇したり、それ以外の不利益な取り扱いをしてはいけないと書いてあります。
よって、労働基準監督署に通報(申告)した自社の社員を解雇できるかという問いに対する答えはNO。
●懲戒解雇ではなく普通解雇であることも実はポイント
私はよく知らなかったのですが、懲戒解雇ではなく普通解雇であることもポイントだそうです。そういえば、以前はパワハラが問題だと言っていたのに、いつの間にかその話がなくなっていましたね。やはり言いがかりだったのかもしれません。
研究不正を内部告発した教授らに大学が解雇処分の判断 - warblerの日記 2015-12-08 片瀬久美子
岡山大学は、研究不正を内部告発した森山教授らに対し、懲戒処分を前提として2015年5月26日から職員就業規則第68条の2規定に基づき懲戒処分が決するまで自宅待機を命じていました。しかし、この懲戒処分の理由となる嫌疑は不明であり、現在も自宅待機が続いています。(中略)
そうした中、岡山大学教育研究評議会の人事審査により、「懲戒解雇」ではなく国立大学法人岡山職員人事規定第10条に基づく「通常解雇」の手続きによって、2015年10月26日に職員就業規則第23条第1項第6号を根拠に解雇するとの審査結果が出され、森山教授らに通知されました。(中略)
森山教授らは、岡山地裁に解雇停止仮処分の申し立てをしました(2015年12月7日)。
現在継続中の自宅待機は「懲戒処分」を前提にしないと命令できないものであり、途中から「通常解雇」に切り替えたならば無効になります。
岡山大学の解雇処分の手続きには、こうした不可解な経緯があります。
パワハラなら懲戒解雇だという話は、
炎上岡山大学~研究不正疑義申し立てた教授が解雇される(榎木英介) - 個人 - Yahoo!ニュース (2016年1月13日 8時1分配信)で出ていました。
<同大薬学部の教授2名が、パワハラをしたとして停職処分になり、その後「岡山大学教授としてふさわしくない」との理由で解雇された(前回の記事でパワハラをしたとして解雇されたと記載したが、誤りであり訂正する)。パワハラによる解雇なら、懲戒解雇になるはずなのに、普通解雇という不可解な理由で解雇されたという>
●内部告発を憎み、研究不正を守ることで事実上推奨する国・日本
「日本は終わっています」と前半で早々と書いてしまいましたが、これが許されるとなると企業倫理的にも最悪なだけでなく、研究不正的にも最悪です。
片瀬久美子さんは、まだ正式に解雇される前の時点で、<このまま森山教授らが解雇されたらそれが見せしめとなり、将来的に報復を恐れて不正を告発しようとする人を委縮させることになってしまうでしょう>と書いていました。また、榎木英介さんも以下のように指摘しています。
根拠に基づき疑義を申し立てること自体は、なんら問題のある行為ではない。疑義を申し立てられたほうが、潔白を証明できればそれでいい。
しかし、その行為をもって「教授にふさわしくない」などと言われ解雇されるならば、論文に対する健全な批判すらはばかられてしまい、科学の発展は阻害されてしまう。
これまた全然話題にならなかったとんでもない話として、以前、
J-ADNIデータ改竄で厚労省田村憲久大臣、内部告発のもみ消しをはかる(他、数回書いています)というのがあります。
国が自ら研究不正を指摘した内部告発者の情報を不正を指摘された側にバラしてしまったため、報復が行われました。これだけでもあり得ないのに、告発として扱わないと宣言して内部告発も無視してしまいました。岡山大学の件や厚労省の件が許されるのであれば、これはもう研究不正の推奨に等しいです。
●不正告発したことを非難…裁判所が内部告発潰しに加担する日本
2019/09/23:その後の話が、
論文コピペで博士号…不正告発した教授を「大学が排除」のその後(伊藤 博敏) | 現代ビジネス(2019/8/22)にありました。岡山地方裁判所によって敗訴判決が言い渡され、広島高等裁判所に控訴したという状況のようです。
敗訴の時点で日本の危機ですが、岡山地裁判決はかなりひどかった模様。裁判所は、「論文不正はなかった」という大学側の主張を全面的に採用。さらに、処分理由になっていなかったはずの、パワハラ調査委員会の結果を受け入れ、処分理由にしてしまったそうです。大学の決定より悪化しました。
加えて、ジャーナリストに告発したことを「被告(岡山大学)の最高学府としての権威や研究への信用性を大きく揺るがせるもの」として非難。こうした告発がダメだ言われるとなると、あらゆる不正を外部に告発できなってしまいます。どんだけひどい国なのこの国は?という内容でした。
【本文中でリンクした投稿】
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J-ADNIデータ改竄で厚労省田村憲久大臣、内部告発のもみ消しをはかる ■
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研究不正疑惑についての投稿まとめ
Appendix
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