ノーベル賞文学賞絡みの話をまとめ。<日本のノーベル文学賞候補は女性ばかり 多和田葉子氏など>、<ノーベル賞文学賞を受賞すると荒れそうなのは柳美里氏>、<日本生まれのカズオ・イシグロのノーベル文学賞は日本のもの?>、<またしても女性!川上未映子氏もイギリスの文学賞で注目される>などをまとめています。
2022/02/24追記:
●日本生まれのカズオ・イシグロのノーベル文学賞は日本のもの?
2022/10/05追記:
●またしても女性!川上未映子氏もイギリスの文学賞で注目される
2022/10/12追記:
●川上未映子氏に盗作指摘で、一般人が誹謗中傷に加え殺害予告まで 【NEW】
星に仄めかされて 多和田 葉子

●日本のノーベル文学賞候補は女性ばかり 多和田葉子氏など
2021/10/06:ノーベル文学賞の有力というと、村上春樹さんばかり言われていた時代が長かったのですが、
ほかにも多和田葉子さんなど注目される日本の作家も|ノーベル賞2021 NHK特設サイト(2021.9.28更新)では、他に3人の名前を挙げていました。おもしろいことに、女性ばかりです。
テレビの方のNHKで見た話なので、うろ覚えなのですが、そちらでは多様性の話が登場。数年前に行われた改革で文学賞の選考者が多様になり、欧米かつ男性ばかりだった受賞者の多様性ももたらされるかどうか注目されているとのこと。すでに女性の受賞者は増えており、地域の多様性ももたらされれば、日本の受賞もあり得るのではないか?といった感じでした。
・多和田葉子
大学を卒業後、40年近くにわたってドイツで暮らしている。日本語とドイツ語の2つの言語で小説の執筆を行っていて、作品は10を超える言語に翻訳されている。作品は国際的にも高く評価され、5年前にはドイツで最も権威のある文学賞の1つ「クライスト賞」を受賞。3年前にはアメリカで最も有名な文学賞「全米図書賞」の翻訳文学部門に選ばれている。イギリス政府公認の「ブックメーカー」が毎年行っているノーベル文学賞の受賞者を予想する賭けに、おととし(2019年)初めて名前が挙がったことで注目されている。
・柳美里
2020年「全米図書賞」の翻訳文学部門に選ばれている。
・小川洋子
2020年のイギリスの文学賞で最終候補に残っている。
●ノーベル賞文学賞を受賞すると荒れそうなのは柳美里氏
NHKでは、多和田葉子さんの話が多かった一方、他の人の話が少なかったので補足。順番的にはまず柳美里さんですが、柳美里さんの場合、「日本の作家」ではあるものの、「日本人の作家」ではありません。在日韓国人の方なのです。「多様性」というノーベル文学賞のトレンドとしてはぴったりですが、柳美里さんがノーベル賞文学賞を受賞した場合、ネットは荒れそうな感じですね。
<柳 美里(ゆう みり、유미리、1968年6月22日 - )は、在日韓国人の劇作家、小説家である。国籍は韓国>
<1993年、最少年で岸田國士戯曲賞を受賞後、1994年に小説家デビュー。1997年芥川賞受賞>
<2019年、9月13日号『週刊ポスト』の記事(引用者注:韓国なんて要らない」という特集)について、Twitterで「日本で暮らす韓国・朝鮮籍の子どもたち、日本国籍を有しているが朝鮮半島にルーツを持つ人たちが、この新聞広告を目にして何を感じるか、想像してみなかったのだろうか? 想像出来ても、少数だから売れ行きには響かないと考えたのか? 売れれば、いいのか、何をしても。」などと発言。 (一部で、内田樹、深沢潮らの発言と混同され、「小学館と仕事しないと言う」などの記事も見られるが、そのような発言は無く、事実に反する。)>
(
Wikipediaより)
●小川洋子氏の作風は、日本の伝統である「私小説」らしい?
以上のように柳美里さんのバックボーンは特殊なところがありましたが、多和田葉子さんも海外居住歴が長く特殊さはありました。3人の中では小川洋子さんだけが日本生まれ日本育ちの日本人…という感じです。ただ、小川洋子さんの作風としては、日本の伝統である「私小説」とはかなり違っている…といった説明でした。
<作風は、日本の伝統である「私小説」からは遠く、内田百閒や川端康成の幻想小説に近い。初期から現在にいたるまで題材は変化しているが、物語展開で読者にカタルシスを与えるのではなく、現実の隙間にあるどこでもない場所、それ故に普遍的に存在するような異世界を描く。初期の装飾的な文体が次第に鳴りを潜め、幻視感を恐怖だけに頼らず、平易な文体で表すように変化して、円熟味を増している>
<1991年1月16日、妊娠した姉に対する妹の静かな悪意を描いた『妊娠カレンダー』が第104回(1990年下半期)芥川賞を受賞する。同作品はラジオドラマ化され、4日後の1月20日にNHK-FMで放送された>
<作品集『妊娠カレンダー』(文藝春秋、1991年)に収録されている「夕暮れの給食室と雨のプール」の英訳版が、『ザ・ニューヨーカー』2004年9月6日号に掲載された[26]。また「妊娠カレンダー」の英訳版も同誌2005年12月26日に掲載された。これより前に同誌に日本の小説が掲載されたのは、村上春樹(1990年以降、多数)、大江健三郎(1993年)のみ>
(
Wikipediaより)
●初受賞?菊池寛賞で小川洋子氏「初めての経験で感慨深い」
2021/12/29追記:最後の小川洋子さんの関連で追記。優れた文化活動をたたえる菊池寛賞(日本文学振興会主催)の贈呈式について書いた、
小川洋子さんらに菊池寛賞贈呈 「初めての経験で感慨深い」:山陽新聞デジタル|さんデジ(2021年12月03日 19時43分 更新)という記事が出ていたんですよ。
<独自の作品世界を構築し、海外でも高く評価されたとして受賞した作家の小川洋子さん(59)は「仕事全てをひっくるめて賞を頂くのは初めての経験なので、大変感慨深い。賞を励みに、さらに精進してまいりたい」と喜びを語った>
私はこれを読んで「えっ、ノーベル文学賞候補と言われているのに、全く賞をもらってなかったの?」と不思議に思いました。ただ、前回部分で書いたように、芥川賞を受賞済み。今回のコメントは、単独の作品の賞ではなく全体としての賞は初めてって意味だったみたいですね。
Wikipediaで確認してみても、以下のように多数の賞を受賞していることがわかります。
受賞歴
1988年『揚羽蝶が壊れる時』海燕新人文学賞
1991年『妊娠カレンダー』芥川賞
2004年『博士の愛した数式』読売文学賞、本屋大賞
2004年『ブラフマンの埋葬』泉鏡花文学賞
2006年『ミーナの行進』谷崎潤一郎賞
2008年 The Diving Pool(英語版)(「ダイヴィング・プール」「妊娠カレンダー」「ドミトリイ」の3中編を集めた英訳アンソロジー)シャーリー・ジャクソン賞(英語版)
2012年『ことり』芸術選奨文部科学大臣賞
2013年 早稲田大学坪内逍遙大賞
2020年『小箱』野間文芸賞
2021年 菊池寛賞
2021年 紫綬褒章
●日本生まれのカズオ・イシグロのノーベル文学賞は日本のもの?
2022/02/24追記:候補ではなくすでに2017年にノーベル文学賞を受賞した人ですし、日本人ではなく日系イギリス人なのですが、追記する適切な場所がなくて、カズオ・イシグロさんについての話をここに。1954年に長崎市で生まれ、1960年まで長崎に住んでいましたが、父の仕事の関係で渡英した方です。
Wikipediaによると、両親とも日本人で、本人も成人するまで日本国籍。一方で、幼年期に渡英しており、日本語はほとんど話すことができないとされていたそうです。ところが、実際には日本語を話せた模様。また、日本の影響は多少あるようです。
<2015年1月20日に英国紙の『ガーディアン』では英語が話されていない家で育ったことや母親とは今でも日本語で会話すると述べている。さらに英語が母語の質問者に対して、「I'm pretty rocky, especially around vernacular and such. 」など「言語学的には同じくらいの堅固な(英語の)基盤を持っていません[36]」と返答している。
最初の2作は日本を舞台に書かれたものであるが、自身の作品には日本の小説との類似性はほとんどないと語っている。
1990年のインタビューでは「もし偽名で作品を書いて、表紙に別人の写真を載せれば『日本の作家を思わせる』などという読者は誰もいないだろう」と述べている。谷崎潤一郎など多少の影響を与えた日本人作家はいるものの、むしろ小津安二郎や成瀬巳喜男などの1950年代の日本映画により強く影響されているとイシグロは語っている。日本を題材とする作品には、上記の日本映画に加えて、幼いころ過ごした長崎の情景から作り上げた独特の日本像が反映されていると報道されている。
1989年に国際交流基金の短期滞在プログラムで再来日し、大江健三郎と対談した際、最初の2作で描いた日本は想像の産物であったと語り、「私はこの他国、強い絆を感じていた非常に重要な他国の、強いイメージを頭の中に抱えながら育った。英国で私はいつも、この想像上の日本というものを頭の中で思い描いていた」と述べた>
2017年10月のノーベル文学賞の受賞後にインタビューでは、「日本語を話す日本人の両親のもとで育ったので、両親の目を通して世界を見つめていました。私の一部は日本人なのです」とコメント。また、長崎県および長崎市から名誉県民並びに名誉市民の称号をもらった際には、「長崎は私の体の一部で、名誉称号は自然なこと。特別で心温まるものだ」とその喜びを語っていました。
受賞時のノーベル財団は公式のプレスリリースでは「英文学作家」と紹介。日本のノーベル賞数については、日本に有利なようにかなり範囲を広く数えられることが多いですが、それでもカズオ・イシグロさんについてはさすがに日本のノーベル賞数に入れていないことがほとんどだと思われます。
●またしても女性!川上未映子氏もイギリスの文学賞で注目される
2022/10/05追記:最近は毎年ノーベル賞特集をやっているNHK。2022年も<多和田葉子さんなど注目される日本の作家も>(2022年9月27日更新)というページを作っていました。ただ、顔ぶれは毎年そう変わらないのが普通。ノーベル賞候補がちょろちょろ変わってしまうのは、おかなしな話ですからね…。
とはいえ、2022年は紹介していなかった人の名前を発見。<おととし(2020年)と去年(2021年)にイギリスの文学賞で小川洋子さんと川上未映子さんの作品がそれぞれ最終候補に残ったりするなど、海外で高い評価を受ける日本人作家は多くいるんです>との記述で出てきた、川上未映子さんはうちでは未紹介。またしても女性です。
ウィキペディアによると、川上 未映子さんは、日本の小説家、詩人、元歌手という説明。1976年生まれで、2002年、ビクターエンタテインメントより川上三枝子名義で歌手デビューするなど、当初は歌手としての活動がメイン。以下にあるように、後に文学方面に軸足が移っていったようです。
<2006年11月、エッセイ『そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります』をヒヨコ舎より出版。自身のブログ「純粋悲性批判」(2003年8月29日夜明け前から2006年8月29日誕生日の夜まで)をまとめたもの。若島正が2006年のベストに挙げて高く評価。
2007年7月、処女作である『わたくし率 イン 歯ー、または世界』が講談社より刊行される。
2008年1月16日、『乳と卵』で第138回芥川龍之介賞受賞>
●川上未映子氏に盗作指摘で、一般人が誹謗中傷に加え殺害予告まで
2022/10/12追記:前回追記した川上未映子さんですが、ウィキペディアによると、盗作を指摘する声が挙がっていたそうです。この盗作の指摘が正しいかどうかは不明。そうした中でこれに絡んで、ネットで最近よく問題になる誹謗中傷や殺害予告も発生。川上未映子さん側が地裁で勝訴し、判決では盗作についても否定されています。
<法政大学教授で文芸評論家の田中和生は2010年11月の自身のブログにおいて、『わたくし率 イン 歯ー、または世界』が津原泰水の『黄昏抜歯』のアイデアを盗用しているという津原からの指摘に対して川上が十分に対応していないという理由で、以後の自らの文芸時評の対象から川上を外すと宣言している>(
ウィキペディアより)
<芥川賞作家の川上未映子さん(44)をネット上の投稿などで脅迫や中傷したとして、東京地裁(金沢秀樹裁判長)は10日、東京都の女性に慰謝料など約320万円を支払うよう命じた。
判決は、「レ(死)んでしまえと思っている。やるっきゃない、さ(刺)すしか」などとした女性の投稿について、「生命や身体に対する加害行為の意思を表示する」と指摘。この影響で川上さんが「対談イベントへの出演を取りやめた」とした。川上さんが盗作したように読める投稿については、盗作したと認める証拠はなく、盗作を信じる相当な事情もないと判断。「社会的評価を低下させた」とした>
盗作の可能性を指摘すること自体は妥当性がある場合があり、必ずしも全部ダメということではないのですが、誹謗中傷…さらには殺害予告となると正当性はゼロ。なぜここまで過激化したのか?と不思議です。検索すると、川上未映子さんのことをフェミニストだとしているページがあり、この関係かもしれません。
近年、右派を中心にフェミニストを激しく叩くのがトレンド。フェミニストは叩いて良い…という風潮がありますし、フェミニストを叩くことでお仲間から賛同を得られ自己承認欲求を満たしやすくなっています。この件で本当にそれが関係したのかかはわかりませんが、どちらにせよ、誹謗中傷や殺害予告はダメですね。
乳と卵 (文春文庫) 川上 未映子 (著)

【関連投稿】
■
村上春樹にノーベル文学賞が無理な理由 ノーベル賞が嫌う通俗小説だから ■
ボブ・ディランのノーベル文学賞受賞、朝日新聞は予言していた? ■
ノーベル文学賞で騒ぐハルキストキモい 村上春樹ファンから批判出る理由 ■
村上春樹がマンネリなのは才能がないからではない 人気があるからこそ起きるマンネリ批判 ■
ノーベル文学賞の最終候補選考は僅か5人 80歳以上の高齢者も参加? ■
文化・芸術・宗教・海外との比較についての投稿まとめ
Appendix
広告
【過去の人気投稿】厳選300投稿からランダム表示
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
|