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安倍首相とトランプ大統領に学ぶ交渉力 無理な要求の提示は効果的?


 安倍首相とトランプ大統領の首脳会談を見ていて、これはふっかけ交渉の例かもと思ったので、過去の投稿を全体に見直して再投稿。

 最初に2011/2/18に書いた「交渉はふっかけ」。そして、その後に「米国と交渉するために、嫌がることをする北朝鮮」(2010/11/30)。最後に今回の書き下ろし分である「安倍首相とトランプ大統領に学ぶ交渉力 無理な要求の提示は効果的?」を入れます。


●交渉力に英語力は不要

 攻撃的な交渉が上手は誤解 実は凄腕交渉人は正直者だった!で書いたように、きちんと研究された証拠のある交渉スタイルとしては、高圧的な態度で望んだり、無理な要求を提示したりというものではなさそうでした。

 ところが、そういったスタイルの交渉が良いとオススメしている人は、現実にはたくさんいます。例えば、向こうで紹介した日経ビジネスオンラインの記事と同じ日に、同じサイトで以下のような記事がありました。

欧米ビジネスの攻めのテクニックを身につける 核心は「ふっかけ」 林 則行 2011年1月28日

 これは何度か書いている「英語は道具:銅メダル英語を目指せ」という英語に関する連載記事ですが、英語の問題よりも、価格交渉には「ふっかけ」が重要だよという話です。

 英語力に関して、著者は交渉術の授業を受けるとき、「ぼくは留学生で人一倍英語が苦手です。交渉になると、相手の英語を聞き取り、自分の主張をしないていけません。ぼくにできるでしょうか」 と先生に相談したそうです。

 しかし、先生は何も心配する必要がないといった感じで、以下のように説明しました。

「相手は君と交渉しなくてはいけないんだ。自分の言っていることが分かってもらえなかったり、君の主張が分からなかったりしたら、交渉にならない。向こうは勝つために君の論理を徹底的に聞いてくるぜ」
「英語なんて心配ないさ。それより勝てる理屈を展開することだ。その方がずっと大事だよ」

 そして、実際英語力は関係なく、著者はクラスでトップレベルの成績となりました。著者は決して譲らなかったので、交渉中に何度も「お前には腹が立つ」と言われたものの、「お前の英語は分からないよ」とは言われませんでした。英語力はあんまり関係ないのです。


●MBAの授業で判明「最初の要求は高ければ高いほど良い」

 上記自体は特におかしいところがないと感じます。問題の「ふっかけ」に関する話が出てくるのは、この後でした。

 著者はMBAで学生を二手に分けて、5年もののカローラを売買するという授業を受けたことがあるそうです。

 その売買交渉を教授が黒板にその価格を書いてとき、学生たちは騒然とし始めました。黒板に表れた最も高い価格が100万円だったのに対し、最も安いのは1万円という極端な差が出ました。

 この理由は「最初の提示価格が高かった方が最終価格が高くなる」というシンプルなものです。交渉の要点は「中を2つで割る」ことで、「俺も泣く、お前も泣け。だからここで折り合おう」という考え方であり、最初の価格が高いほどその中値が高くなるのは自明とのこと。

 教授は授業の最後に「交渉はふっかけだよ」で締めくくりましたが、学生たちの間にはどよめきが起こりました。MBAでは高度な理屈を駆使した手法が紹介されると思っていたところ、交渉の本質は「こんな簡単な原理」であり、衝撃的だったのだと言います。


●アラビアの10万円の絨毯を「100円で売ってくれ」

 個人的な体験は証拠とはならないものの、著者は自分の体験談も紹介していました。

 アラビアで絨毯を買おうとしたときに、相手は10万円という価格を最初に提示しました。著者が「それは高い」と言うと、「いくらならいいんだ」と言うので、「100円だ」と言ったそうです。

 当然、相手は目を丸くして驚きましたが、「そんな無茶なことを言うならもう帰ってくれ」とは言いませんでした。市場には絨毯屋が数十軒も並んでいるので、他の店に客を取られてしまうだけと判断したようです。

 それから、「少し安くしておく。8万円ではどうだ」「300円なら買う」といった調子で交渉していき、「俺も貧乏。お前も貧乏。これで勘弁してくれ」となり、2万円で折り合ったそうです。

 ただ、著者は予め最も安く買った欧米人が当初価格の5割台で、かつ厳しい交渉をしていないのが分かったため、8割引きくらいはいけると判断していた、考えられる限りのみすぼらしい格好をして行ったという工夫もあるようです。

 記事では、交渉の極意を身に付けた人は、最初の提示でふっかけ、それを正当化するまことしやかな理屈と押しの強さでせまってくるとありました。

 そうすると、こちらも同じ手を取らざるを得ず、そのうち相手側も態度が軟化してくるそうです。しかし、それでも簡単に妥協してはいけませんとしていました。


●アメリカと交渉するために、わざと嫌がることをする北朝鮮

 この話とちょっと似ていると思っていっしょにまとめたのが、北朝鮮の話。別に北朝鮮を褒めるわけじゃありませんが、当時はなるほどなぁとやけに感心した記事でした。

a href="http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20101126/217283/" target="_blank">2010年11月29日 なぜ北朝鮮は危機を煽り続けるのか? 菅原出 日経ビジネスオンライン

 当時、北朝鮮が韓国西方沖の延坪島に砲撃を行い、朝鮮半島の緊張が高まっていました。記事では、なぜこのように北朝鮮が危機感を煽るような行動に出るのか、という説明の例を一つ紹介していました。

 「南北軍事境界線周辺でこのような事件が起きるのは、朝鮮戦争の停戦協定が機能していないからだ。朝鮮半島における緊張をとるために米朝平和協定の締結が必要だ」というロジックで、米国を交渉に引き込もうとしているという解釈があるんだそうです。

 しかし、不思議なのは、米国と交渉をしたいのになぜ米国が望むように態度を改めず、嫌がることをわざわざするのかということです。

 実は北朝鮮に限らず、米国と敵対している国は、米国が嫌がることをして「交渉力を高めようとしている」と記事では、書いていました。


●相手の嫌がることをすることで、外交カードが増えていく

 これは、北朝鮮が「経済制裁」、「敵視」など米国に対して止めて欲しいと思っていることに対応するように、米国が北朝鮮に対して止めて欲しいと思うこと=外交カードを次から次に作っているんだそうです。

 そして、もし米国と北朝鮮の二国間交渉が実現すれば、たとえば北朝鮮が「ミサイル輸出」をやめるのであれば、米国は「金融制裁」をやめるという具合で、「うちがこれを止めるのであれば、おたくはそれをやめろ」という相互主義に基づいた取引になります。すると、「外交カード」の多い方が勝つ、この場合は北朝鮮の圧勝となるわけです。

 だから、アメリカは二国間交渉を嫌がり、六カ国で持つカードをすべて合わせて行使すれば、北朝鮮を交渉で負かすことが出来ると考えているので、六カ国協議でなければいけないと言っているわけです。


●安倍首相とトランプ大統領に学ぶ交渉力

 以上を踏まえて、アメリカと日本の首脳会談の話へ。

 2017年2月11日行われた日米首脳会談について、わが国では概ね好意的な受け止め方がされており、なかには「100点満点だった」と高く評価する外務省OBもいたそうです。
(異常な相思相愛の安倍総理とトランプ…完全秘密のゴルフ会談の裏側、難問題は一切無視 Business Journal / 2017年2月15日 6時0分より)

 トランプさんはこれまで、「駐留米軍の経費負担が少ない」や「トヨタ自動車がアメリカで売れているのに、アメリカ車が日本で売れないのは不公平だ」といった日本批判を繰り返していた。

 そのため、日本政府はトランプ大統領からどのような無理難題が突き付けられるか気をもんでいたが、そうした懸念は表向き杞憂で終わりました。

 また、日米安保条約の意義を再確認し、「尖閣諸島も条約の範囲だ」とトランプ大統領から言質を取りました。おそらくここらへんを評価していたのでしょう。

 しかし、この首脳会談では、突っ込んだ話は一切なく、いわば現状維持といったものに収まりました。これでは100点満点にはとても言えません。

 なのになぜ多くの人が大成功だと勘違いしたか?と言うと、おそらく首脳会談前にハードルを上げられていたからでしょう。実際に良いことがあったわけでないのに、高すぎる要求が突如なくなったために、うまくいったと誤解したのです。「1万円よこせ」と言っていた親分が「やっぱいい」となっただけで、1万円得したと誤解したようなものです。

 アメポチ産経新聞、在日米軍の駐留経費負担を褒められて大喜び 安倍首相、日本ではなくアメリカの雇用70万人創出に公的年金を利用で書いたように、産経新聞も新たな駐留経費負担がないだけで、大成功だと騒いでいました。

 向こうで書いたように、実際には今の日本の負担は重すぎるくらいなんでどね…。韓国などは日本のように大金をアメリカに貢いでいません。


●無理な要求の提示は本当に効果的?

 よって、安倍首相が交渉下手なのは間違いなさそうなのですが、トランプ大統領が交渉上手と言えるかどうかは、ちょっと微妙だと思います。現状維持であるのでしたら、結局、トランプ大統領も吠えただけで特に得るものはなかったということになります。

 先ほどの北朝鮮にしても、結局、その後も危機を煽っているだけで、良い状態にはなっているように見えません。有利な条件を全く引き出すことができず、袋小路に入っている感じです。

 ただ、アメリカの件で良いところを探すとすれば、先ほどリンクしたアメポチ産経新聞、在日米軍の駐留経費負担を褒められて大喜び 安倍首相、日本ではなくアメリカの雇用70万人創出に公的年金を利用の後半の話。

 ドナルド・トランプ大統領の脅しに耐えかねた安倍首相は、我々の年金をアメリカの雇用創出に使うと宣言していました。これは恫喝外交での成果と言えるかもしれません。

 したがって、場合によっては有効な場合もあるとは、言えてしまいそうです。
 

【本文中でリンクした投稿】
  ■攻撃的な交渉が上手は誤解 実は凄腕交渉人は正直者だった!
  ■アメポチ産経新聞、在日米軍の駐留経費負担を褒められて大喜び 安倍首相、日本ではなくアメリカの雇用70万人創出に公的年金を利用

【その他関連投稿】
  ■怒る人の心理と逆ギレする人の対処法 怒鳴るタイプへの対応はともかく怒鳴らせる
  ■交渉のコツ10のポイント 心理学を応用したテクニックで頼み上手に
  ■飲み会の誘いの断り方&Facebook、mixiなどのSNS申請の断り方
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