徴兵・徴用・予備自衛官などの話をまとめ。<日本で徴兵制復活は左翼の妄想?あり得ないと言える理由とは?>、<三浦瑠麗氏「民主国家が平和を守っていくために徴兵論議が必要」>、<日本で徴兵制復活はあり得ないが徴用ならある…と言えそう>などをまとめています。
【クイズ】日本では既に第一次世界大戦中に制定された軍需工業動員法が存在していたものの、強制力は非常に弱いものでした。そのため、政府は国家総動員法や国民徴用令(国家総動員法第4条に規定された勅令に相当)を公布して国民の職業・年齢・性別を問わずに徴用が可能となる体制作りを行いました。
このうちの国家総動員法が制定された年として、正しいものはどれでしょう?
(1)日中戦争が始まった翌年である1938年
(2)太平洋戦争が始まった翌年である1942年
(3)太平洋戦争が始まってからかなり経った1944年
冒頭に追記
2022/10/16追記:
●予備役で徴兵された招集兵らが派遣に反対して銃撃?11人が死亡 【NEW】
●予備役で徴兵された招集兵らが派遣に反対して銃撃?11人が死亡
2022/10/16追記:
日本大百科全書(ニッポニカ)によると、「予備役」とは、軍隊の構成員のうち、平時は現役勤務に服さず有事等に際して現役招集される要員。旧日本軍でもあった制度で、今の自衛隊で言うと予備自衛官がこれに該当するという解説も見かけました。
別記事によると、ロシアの場合、通常1年間の兵役義務があり、予備役は2500万人もいるそうです。今回は徴兵の話ではないのですが、ロシアで予備役を徴兵する「部分的動員」が行われたことに反発が起きている…という話をこちらに追記。産経新聞が<ロシア演習場で銃撃、兵士ら11人死亡 招集に抵抗か>(2022年10月16日 7時29分)というニュースを報じていました。
<ロシア国防省は15日、西部ベルゴロド州の演習場で同日、「旧ソ連諸国の一国の市民2人」がウクライナへの派遣に向けて射撃訓練中だった部隊を銃撃する「テロ」が起き、兵士ら11人が死亡、15人が負傷したと発表した。タス通信が伝えた。(中略)
同省によると、銃撃された部隊はウクライナでの軍事作戦への志願兵で構成。2人はその場で射殺されたという。2人が演習場内にいた理由や銃を所持していた経緯は説明していない>
上記の情報だけ読むと、予備役徴兵とは関係なさげ。しかし、<予備役を徴兵する「部分的動員」で招集された兵士がウクライナへの派遣に抵抗した可能性がある>とされており、予備役徴兵と関係があった可能性があるそうです。今のところは真偽不明…といった感じですけどね。
<露独立系メディア「ソタ」は同日、標的に向けて射撃訓練をしていた兵士が突然、銃を志願兵部隊に向けたとする目撃情報があると報じた。実際は銃撃したのは3人で、1人は射殺を免れて逃走したとする情報や、22人が死亡したとする情報もあるとした。
ソタによると、この演習場には西部ブリャンスク州からの招集兵や志願兵が集められていた。2週間ほど前から約100人の招集兵が集団でウクライナへの派遣を拒否し、部隊幹部が説得を続けていたという。
銃撃した人物が招集兵だったかは現時点で不明>
●日本で徴兵制復活は左翼の妄想?あり得ないと言える理由とは?
2021/11/23追記:もともと書いていた話では、変わった方向性での「日本で徴兵制復活はあり得ない」を書いています。一方、もっと単純な「日本で徴兵制復活はあり得ない」という主張は、右派や軍事マニアが言うことが多い印象で、徴兵制復活を危惧する「左翼」をバカにする文脈で言われることが多い気がしていました。
ところが、むしろ右派サイドにいる三浦瑠麗さんが、日本は徴兵制復活させるべきという主張をしていることを知ってここに追記することに(本当はだいぶ前に知った話でしたが遅くなりました)。右派がモロに徴兵制復活を望んでいるんじゃん!という話でズッコケてしまいましたわ…。
<Amazon Prime のCMに、国際政治学者の三浦瑠麗氏とタレントの松本人志氏を起用したところ、かねて「平和のための徴兵制」を掲げる三浦氏に対する批判から、Amazon Primeに加入している人達の間で、抗議のための解約運動が展開される事態が生じ、世間の耳目を集めました>
(とりあえず、以下は、
Amazonプライム問題で注目 三浦瑠麗さんの「平和のための徴兵制」に異議あり - 米山隆一|論座 - 朝日新聞社の言論サイト(米山隆一 2020年08月26日)より)
●三浦瑠麗氏「民主国家が平和を守っていくために徴兵論議が必要」
三浦瑠麗さんは対談で「民主国家が平和を守っていくためには、国民が戦争を『我が事』として捉え、避ける仕組みがどうしても必要です。あえて徴兵制を論じることによって、私たちがその議論をはじめる契機になればと思っています」と言っていたとのこと。この言い方だと本気で徴兵制を望んでいるのかよくわかりませんね。
これを紹介した米山隆一さんも<果たしてどこまで本気で「徴兵制」と言うものを考えているのか分らない部分もある>としていました。しかし、三浦瑠麗さんの著書『21世紀の戦争と平和』(新潮社)では、「十五歳以上から七十五歳未満までの住民に災害対応を想定した義務的訓練を年に一度実施」などとやけに具体的で、やはり本気なのかもしれません。
なお、米山隆一さんはそもそもこれは「平和の為の災害対応労働者徴集制」であって徴兵制じゃないと指摘。また、「災害と言えば自衛隊」は、実際の災害対応の現場を全く知らない素人論で、自衛隊以外の活動が大きいことも指摘しています。そういえば、東日本大震災でも自衛隊が称賛された一方で、他の人たちの活躍についてはあまり注目されておらず、かわいそうなところがありました。
●そういう手もあるのか!民間船員を予備自衛官化、安倍政権が計画
2016/1/30:私自身も徴兵制なんてあり得ねーよ!と思っていた口だったのですが、
<船員予備自衛官化>「事実上の徴用」海員組合が反発 毎日新聞 1月29日(金)21時2分配信 【川上晃弘、町田徳丈】というニュースに目を疑いました。徴兵じゃなくても予備自衛官化という選択肢もあるんですね…。
<防衛省は、日本の南西地域での有事を想定し九州・沖縄の防衛を強化する「南西シフト」を進める。だが、武器や隊員を危険地域に運ぶ船も操船者も足りない。同省は今年度中にも民間フェリー2隻を選定し、平時はフェリーだが有事の際には防衛省が使う仕組みを作る。今年10月にも民間船の有事運航が可能となる。一方、操船者が足りないため、民間船員21人を海上自衛隊の予備自衛官とする費用を来年度政府予算案に盛り込み、有事で操船させる方針>
これに対して、労組の全日本海員組合が、東京都内で記者会見し、「事実上の徴用で断じて許されない」とする声明を発表し、反発しています。この「徴用」というのも使える選択肢なのでしょう。森田保己組合長は「我々船員の声はまったく無視されている。反対に向けた動きを活発化させたい」と述べた他、以下のように言っていたそうです。
<申し入れでは防衛省幹部から「予備自衛官になるよう船員に強制することはない」と言われたという。だが、森田組合長は「戦地に行くために船員になった者はいない。会社や国から見えない圧力がかかるのは容易に予想される」と強調した。
会見に同席した組合幹部も「船はチームプレーで1人欠けても運航できない。他の船員が予備自衛官になったのに、自らの意思で断れるのか。防衛省は、できるだけ多くの船員が予備自衛官になるようフェリー会社に求めている」と危惧を表明した>
●事実上の徴用を画策…これでも徴兵制なんてあり得ないって言える?
この記事への反応は徴兵制復活に関するものが多かったです。ただ、徴用と徴兵とは全然違う話…という可能性も感じたので、
はてなブックマークを確認。すると、やはり徴兵制に関する話があった他、労組の危惧に関しても賛同されており、反論のようなものは人気コメントでは皆無でした。
“「徴兵制などありえない」の一部軍オタの皆さんは見ているか?確かに必要な時必要なだけ「志願」するよう強いることができれば徴兵制は不要だ。神風も志願制だったからな。”(usi4444 2016/01/30)
“これは過去のトラウマがあるからなぁ。敗戦を機に改心しましたなんて言われても信用できんわな、実際朝鮮やベトナムでも民間の船員が戦地に送られたわけだし”(hunyoki 2016/01/30)
“朝鮮戦争の時の事実上の民間船・船員の徴用もまだお隠しになられてる日本政府の言うことなど信用なりませぬよ。コレ戦後の話ですぜ”(dekaino 2016/01/30)
“実際太平洋戦争の時の色々をほっぽらかしてるからな。この反応もしょうがない。”(YukeSkywalker 2016/01/30)
“なぁに、この国では給料さえ払えば 喜んで自分の意志で従事したことになる便利な仕組みがある。”(hiromo2 2016/01/30)
“足りなければ民間からってのが通ればあとはなし崩しだろな。”(oka_mailer 2016/01/30)
“「志願応募」という「事実上の命令」。非常時に乗員が足りないことが問題なら、自衛官として志願してきた者を自衛隊で訓練し、経験は国内なり海外なりの民間企業で積ませればいい。”(questiontime 2016/01/30)
他に“特攻隊だって名目上は強制ではなかった。”(uunfo 2016/01/30)というのも。ただ、これは、特攻隊は本当にみんな望んで行ったのだ…と思い込んでいる人が結構いますので、目を覚まさせるには効果がない指摘かもしれません。右派の人を納得させるのは、基本的に難しいです。
●日本で徴兵制復活はあり得ないが徴用ならある…と言えそう
以上のように徴兵制を連想する人はいるようですが、一応、徴兵と徴用は別のものではあるということは、確認しておきます。例えば、
徴用 - Wikipediaでは、<徴用(ちょうよう)とは、戦争中などに、政府が国民や占領地住民を強制的に動員して、
兵役を含まない一般業務につかせること>となっています。
ただし、毎日新聞では、太平洋戦争では民間の船や船員の大部分が軍に徴用され、6万人以上の船員が亡くなった…という過去の事実に関する記述もありました。徴用と徴兵とは異なると言っても、最悪死亡するなど、一般人が徴用されることによって被害を受ける危険性が非常に高いというのは否定できないようですね。
あと、今回の場合、「予備自衛官」なのですから「事実上の徴用」ですらなく、「事実上の徴兵」とまで言ってしまっても、悪くなさそうな気がしてきました。でも、そこらへんの扱いに関する詳しい違いはよくわかりません。とりあえず、
予備自衛官 - Wikipediaでは、以下のように説明されています。
<予備自衛官(よびじえいかん、英: Reserve Self-Defense Official)とは、自衛隊が予備要員として任用している非常勤の自衛官のこと及びその官名。特に予備自衛官の官職または官職にある者をいう。非常勤公務員として、有事・訓練等の際に召集され、自衛隊における各任務に就けられる。一般の軍隊における予備役、大日本帝国海軍における予備員制度等に相当する>
<予備自衛官とは常に維持する常備自衛官の人数を抑え、必要な時だけ効果的に増員するための制度またはその任にある自衛隊員の官職及びその職にある者のことをいう。身分は
非常勤の防衛省職員(非常勤の特別職国家公務員)・自衛隊員であり、防衛省職員の定員外とされている>
●徴用を強化する国家総動員法や国民徴用令を公布した背景とは?
最後にクイズの回答。
【クイズ】日本では既に第一次世界大戦中に制定された軍需工業動員法が存在していたが、強制力は非常に弱いものでした。そのため、政府は国家総動員法や国民徴用令(国家総動員法第4条に規定された勅令に相当)を公布して国民の職業・年齢・性別を問わずに徴用が可能となる体制作りを行いました。
このうちの国家総動員法が制定された年として、正しいものはどれでしょう?
(1)日中戦争が始まった翌年である1938年
(2)太平洋戦争が始まった翌年である1942年
(3)太平洋戦争が始まってからかなり経った1944年
【答え】(1)日中戦争が始まった年の翌年である1938年
なぜ日中戦争が始まってすぐ…というタイミングだったのか?と言うと、日中戦争の時点で既に余裕がなくなり、経済の戦時体制化を進めたといった説明でした。逆に言うと、日中戦争の時点ですでにやばかったのに、太平洋戦争まで始めちゃったということですね。アメリカやイギリスは日本と違って、無理のない程度にしかお金をかけていなかったと聞いたことがあります。
●日本で徴兵制復活はあり得ないと言える明確な理由とは?
2019/01/09:徴兵制はあり得ないという主張についても触れておこうということで追記。
【戦争を知ろう】日本の兵役制度【徴兵制】 - Man On a Mission(2017-11-05)に載っていた意見が、私も目にしたことがあるものでした。「徴兵制が復活することはありえない。現代の軍隊は高度化・複雑化してるから徴兵は合理的じゃない」ということです。
こちらのブログさんによると、世界的潮流において、徴兵制から志願制への移行が進んでおり、その背景の一つに軍事システムや装備の高度化・複雑化があるのは事実。ただし、逆に一部では徴兵制の復権が見られているというのも事実だそうです。したがって、この方向性での「徴兵制が復活することはありえない」という主張は、むしろかなり弱いですね。
・ロシアによるウクライナの軍事介入では、長期にわたって低強度の紛争が続くなど、想定された「現代戦」とは異なり兵士の頭数が必要な状況が現出した。
・ロシアやイスラエル、ノルウェー、韓国などでは今も徴兵制度がある。
・いったん徴兵制を廃止したウクライナやスウェーデンでは、ロシアの脅威から徴兵制が復活/復活予定となっている。
・アメリカでは志願制をとっているものの、経済的格差を利用した徴募が行なわれており、「経済的徴兵制」との指摘も。
●韓国徴用工問題で話題の「徴用」、日本人も被害者だった…
ああ、忘れていた。「徴用」で言うと、今は韓国の徴用工問題が話題ですので、こちらについても触れておきましょう。
韓国徴用工問題 橋下徹氏「日本の最高裁も個人の請求権消滅せずと判決」で書いたように、意外なことに保守派の橋下徹さんは、韓国に一理あるとしていました。また、橋下徹さんは、日本政府が日本人の徴用に対して、補償を行っていないことも批判しています。
「なんで日本政府が(引用者注:韓国の徴用工への補償が)終わった終わったと言っているかと言うと、日本自身が戦争で被害を被った国民に賠償していないから。世界の先進国では国民への補償制度があるのに、日本はない」
(
橋下氏、徴用工問題の解決に向け持論「こういうことを言うと売国奴だと言われる…」 | AbemaTIMES(2018.12.17 10:00)より)
国家予算280年分使った太平洋戦争 預金封鎖・財産税で戦後も23年分の税金で書いたように、日本政府は戦後に補償どころかさらに追加で国民から莫大なお金を奪っていっています。日本人はこういうのになぜか全然怒らないですよね…。
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