2022/02/03まとめ
●エジプトの民主的大統領ムルシ(ムスリム同胞団)はなぜ解任された?
●ムスリム同胞団は本当に過激派なのか?日本のアラブ本によると…
2011/2/24:以下の部分ではない別の言及部分でおかしなところがあり、ちょっと割り引いて見なくちゃいけないところもあると思うのですが、フィフィさんの「ムスリム同胞団」についての話は驚くものでした。
(2019/11/12追記:と書いていたのですけど、その後フィフィさんで見る話題ではほぼ全部おかしな主張なので、ちょっとじゃなくてだいぶ割引が必要かもしれません)
<ムスリム同胞団の事が度々メディアで紹介される際に、この同胞団を過激派とイコールに誤解して解説する人がいますが、ちゃんと勉強した上で話をしていただきたい>
<日本語でもアラブの政治の本を読めば書いてあるが、ムスリム同胞団は孤児院や病院などを設立し古くから民衆をサポートしてきた団体、組織であって、過激派とは全く異なる>
(
エジプトの夜明け〜新たな一頁へ | フィフィ オフィシャルブログ「All about FIFI」by Ameba 2011-02-03 00:50:03より)
ムスリム同胞団を過激派であると断言している記事については、正直言うと、記憶にありません。ただ、何となく「ムスリム同胞団はよろしくない」という印象は、充分すぎるほど植えつけられていました。印象操作だったのかもしれません。
なお、ムスリム同胞団については、
エジプトの夜明け~国民の想い All about FIFI 2011-02-05にも記述があり、”ちなみに最近のアラブ各国での世論調査でもムスリム同胞団に対する支持は80%を超えています。本当に危険な集団であればこれだけの支持が得られるでしょうか?”となっています。ただ、世論調査自体がちょっと胡散臭いものがあるので、これは何とも言えません。
●アメリカがムスリム同胞団やイスラムを過激派扱いしているため?
また、最初のページの方では、現在のマスコミでムスリム同胞団を過激派扱いするようになったのは、アメリカの影響があるのではないかともされていました。
<むしろムスリム同胞団をアルカイダなどのように扱って世界にその誤解を広めたのはアメリカ。その方がアメリカに取って都合がよかったから。イスラムはテロだ、アルカイダなどとゆう単純かつ幼稚な思想をメディアを駆使して無知な人間に植え付けたことで、アラブの立場を窮地に追いやり、中東での立ち振る舞いを世界に納得させてきたんだから>
ここはちょっと陰謀論的なところがあります。ただ、他の反米的なものについても、アメリカに都合の悪い情報を日本ではあまり流さないということがあったので、「ありそうだな」という話です。
日本メディアがアメリカメディアに積極的に従っているというのではなくても、日本メディアの取材不足もあって、欧米メディアの情報をそのまま流すという問題もあるでしょう。日本では一方で、ジャーナリストが海外の危険な地域でで独自取材する必要はない」という、ますます情報不足に陥りそうな批判もあるんですけどね。(この部分2019/11/12追記)
●かつては本当に過激な主張!今のイスラム教内や欧米での評価は?
その他もう一つくらいムスリム同胞団のことを読んでおこうということで、とりあえず、
Wikipediaを見てみました。
これによると、同胞団の理論家であったサイイド・クトゥブさんは、以下のようなクトゥブ主義と呼ばれる過激な主張をしたそうで、一時期は本当に過激だったようです。フィフィさんのところではなかった話ですね。
<イスラム社会の西洋化と世俗化を進めるナーセルのような指導者が統治し腐敗と圧制が蔓延する現世は、イスラム教成立以前のジャーヒリーヤ(無明時代)と同じであり、武力(暴力)を用いてでもジハードにより真のイスラム国家の建設を目指すべきだ>
しかし、Wikipediaの記述においても「今は違う」といった感じ。1970年に第3代大統領にサーダートさんが就任し、同胞団と政権との関係が改善すると、同胞団はその過激な思想の排除に努めて大衆運動によるイスラム国家の実現を目指すようになったとのこと。そのため、過激な思想の排除に努めてきた同胞団はイスラム主義組織の中では比較的「穏健派」とされているそうです。Wikipediaでもこのような評価でした。
一方で、欧米などではイスラム原理主義によるイラン革命(シーア派)やイスラム過激派によるテロリズムなどの例から、イスラム主義を掲げるムスリム同胞団(ただし、スンナ派)への警戒も存在しているといいます。とはいえ、ムスリム同胞団自身は1970年代以降は過激主義を排しているため、欧米の現在のテロ指定組織にも指定されていないとされていました。
現在のムスリム同胞団が過激派じゃないということ自体は、確かに信用して良さそうです。
●イスラムテロの主犯、実はアメリカ?テロがないと困ることに…
フィフィさんはかなりアメリカを嫌っているところがあるようで、先の投稿では、アメリカこそがテロを引き起こしているのではないかということも書いていました。
<そもそもテロリストがいなくなって一番困ってしまうのはアメリカなのではないでしょうか?テロ撲滅の名目で戦争や攻撃を正当化出来たし、国内の武器産業も潤った。エネルギー有り余るアラブの若者たちを不自由な中に閉じ込めて彼等の主張も虐げ、テロリストを産むような構図をあえて作り上げ、テロの連鎖を引き起こしてきたのはアメリカ自信ではないでしょうか?むしろ中東が丸く収まってしまうことのほうが問題なのでは?>
ここらへんは陰謀論的な話で、これまた怪しいNEWSポストセブンかどこかも、アメリカがそろそろ景気対策に戦争をおっ始めるんじゃないかと書いていましたが、あまり真面目に受け取っても仕方ありません。ただ、アメリカでは軍事産業が重要であり、各国で戦争特需なども存在するのも事実でしょうけどね。
●新政権樹立に関与…アメリカはエジプトに介入しすぎではないか?
上記では危なっかしさが見えていますが、同意できる部分もありました。アメリカが介入しすぎるのはおかしな話ではないかというものです。
<エジプトにイスラム政権が誕生することへの懸念とか、ムバラク退陣後の新政権の樹立についてだとか、そもそもなんでアメリカが口を出すんでしょう。(中略)コメントするまでならまだしも、なぜ今後のエジプトの新政権樹立にアメリカが関わろうとするの?関わるどころか今まで通り主導していこうとしてますからね>
<エジプト国民が何に対して怒っているのかぐらいわかってるはずでしょ、変革を求めてるんですよ。(中略)エジプトが変わっちゃうと不都合ですか?表向きには国民を応援しているように見せていますが、もしそれが真意なら今までのようにエジプトの政治に口をはさむべきでは無いはずです。エジプト国民はエジプト人のためのエジプトをつくりたいのですから>
陰謀論的な意味ではありませんけど、私もアメリカが他国に介入しすぎることが多いのは問題だと思っています。
●エジプトの民主的大統領ムルシ(ムスリム同胞団)はなぜ解任された?
2013/7/28:エジプト政変に関してはタイミング逃してお蔵入りしていた記事があったのですが、今回多数の死傷者が出てしまうたいへんな弾圧が起きてしまいました。その攻撃の件と以前の政変の記事を併せて、ここでは引用しようと思います。
<ムルシ前大統領支持派のデモが続くエジプトの首都カイロ郊外ナスルシティーで、26日深夜から27日朝にかけ、警察の治安部隊がデモ隊を攻撃し、国営中東通信によると75人が死亡、1千人が負傷した。暫定政府側が武力でムルシ派の排除に踏み切ったのは初めてで、今月3日のクーデター後で最大の惨事となった。(中略)
衛星放送アルジャジーラは野戦病院の医師の話として、120人が死亡、4500人が負傷したとしており、死者は100人を超える可能性もある>
(<朝日新聞デジタル:エジプトのデモ75人死亡・千人負傷 治安部隊が攻撃 - 国際>(2013年7月28日0時22分)より)
http://www.asahi.com/international/update/0727/TKY201307270102.html 軍の絡んだクーデターでうまくいった国もあるのですが、うまくいくかどうかは結局軍の態度次第なんですよね。エジプトはこれを見ると失敗だったと言っていい状況です。今回の軍の行動は絶対に支持できるものではありません。一方、前大統領解任に至った経緯にはやむを得ない事情があった可能性があります。これが私が書きたいと思っていた内容です。
ここらへんの話があったのは、<民政失敗、軍介入招く ムスリム同胞団「政権参加せぬ」>(朝日新聞デジタル 2013年7月5日)という記事。<2年前の「アラブの春」を経て、熱狂に包まれて誕生したエジプトのムルシ政権。だが、わずか1年で軍によって倒された。民主的に選ばれた初めての文民大統領は、なぜ解任されたのか>を解説した記事でした。
http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201307040657.html?ref=nmail●ムスリム同胞団系の放送局スタッフを拘束、他の放送局も検閲し操作
このなぜ?という話はひとまずおいておき、クーデターの流れについて。エジプト軍最高評議会のシーシ議長(国防相)が2013年7月3日夜、「軍は人々の声を聞き入れた」としてムルシ大統領の解任を発表。ムルシ大統領の出身母体のイスラム政治組織・ムスリム同胞団系の放送局などのスタッフを拘束しています。
これにより、放送が停止し、突然、画面が真っ黒になりました。ただ、ムスリム同胞団系以外の放送局でも、ムルシ大統領の支持者が大規模な集会を開いていたカイロ郊外ナスルシティーからの中継が途絶えるという異常事態に。当局から放送禁止の命令が出たためだといいます。要するに検閲でしょうね。
もともとエジプトは軍出身の歴代大統領による強権支配が続いた国。政府側がそもそも黒いところがあるんでしょう。このため、国民の間に強固なネットワークを持つ同胞団は警察当局に危険視されてきました。2011年2月にムバラク政権が倒れるまでは非合法の存在だったといいます。
<クーデターに反発する同胞団メンバーらは4日もデモを続けたが、周囲には軍や警察が配置され、活動を監視しているとされる。政府系アハラム紙によると、警察当局は同胞団幹部やメンバーら約300人を逮捕する方針。同胞団幹部は「武器は持たない」として平和的闘争を呼びかけているが、地下活動を先鋭化させた場合、エジプトの治安はさらに悪化する可能性がある>
上記には、直接的には「なぜ解任された?」という話は出てきていません。ただ、<軍出身の歴代大統領による強権支配が続いたエジプトで、国民の間に強固なネットワークを持つ同胞団は警察当局に危険視された>は、ある程度推測できそうな部分。もともと軍がムスリム同胞団には好意的ではなかったため今回解任に至ったとも捉えられる書き方です。
その他の理由としては、経済の低迷でしょう。記事では、<国民の支持を受ける形でクーデターが起きた背景には、エジプト経済の行き詰まりがある>としていました。ただし、経済が行き詰まった国でいちいち軍がクーデターを起こしていては堪ったものじゃありません。これは全く理由として正当化できるものではないでしょう。
●ムバラク独裁政権打倒を支持した国民、1年経って今度は政権打倒を支持
ただ、正当性うんぬんは別として、理由として言うのなら「国民がムルシ政権打倒を支持したから」とは言えそう。ムバラク独裁政権打倒を国民が支持したのと同じように、今度は独裁的に見えたムルシ政権打倒を国民を支持した…という説明がしっくり来るようでした。
<カイロのタハリール広場で「イスクト、イスクト(倒せ、倒せ)」の声があがると、エジプトは革命の時を迎える。2011年2月は「ムバラク独裁」だったが、今回はムルシ大統領が属するイスラム組織「ムスリム同胞団」に向けられた。民主的に選ばれた政権はなぜ、1年間でついえてしまったのか。
(引用者注:ムルシ大統領は、)頼りになる同胞団メンバーを政府の幹部や知事などの要職に登用。経済政策にあたる若手幹部は完璧な英語を話し、国際感覚もある。欧米の外交関係者の評判も悪くない。しかし、野党や一般国民の目には同胞団員の優遇だと映る。
イスラム勢力に詳しいアハラム戦略研究所のラシュワン所長はムルシ政権について「急ぎすぎている」と指摘した。成果を早く出そうとして、野党や世俗派と協力関係をつくらないで自分たちだけで進めた。
昨年8月に当時の軍最高評議会議長を大統領令で解任した。「エルドアン(トルコ首相)が10年かけたことを、1カ月でやった」と言われた。イスラム色の強い憲法案を強引に起草したことにも、世俗派が反発した。
ムルシ氏は正統性を盾に4年間の任期で成果を出せる、と考えたのだろう。しかし、タハリール広場の民意は、同胞団政権を自分たちとは断絶した政府と見て「倒せ」と叫んだ。
ムルシ政権は、エルドアン政権になれなかった。6月にトルコで世俗派の批判が噴き出した。しかし、軍は全く動かなかった。ムルシ政権は民意の分裂を引き起こし、軍につけ込まれた。それが最大の失政といえるだろう>
ただ、クーデターはよほどじゃないと正当化しちゃいけないということは改めて強調。民意の分裂を引き起こすというの先進国でもよくある話であり、失政には失政です。しかし、だからと言って毎度軍がクーデターを起こしていたらたいへんなことになります。日本でもクーデターを肯定する権利を持ち出している政治家がおり、他人ごとではありません。
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