2016/2/11:
●売れる本屋は本ではなく「体験」を売る
●値段を安くせずにむしろ高くすれば簡単に売れるように?
●ヒット商品の秘訣:モノではなく体験を売る
●体験のポイント…特に五感を使うことが大切
●トースターのせいでなぜか扇風機が激売れ
2019/07/19:
●体験重視は「モノ消費」よりも「コト消費」とも言える?
●世界観に惚れ込み購入…売れる高級ブランドは価値観を売っている!
2020/08/05:
●実を言うと、高級化路線でバカ売れしたケースもある?高級茶の場合…
2020/09/08:
●雑誌の世界でもいい雑誌には「思想」があって、「思想」を売っている
●ターゲットの狭い内輪ネタは深くウケるが客が少ないというジレンマ
●売れる本屋は本ではなく「体験」を売る
2016/2/11:モノではなく違うものを売るというのは、過去にも書きました。書店の話ですので非製造業、小売店の場合ですね。
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書店倒産続く中、ベストセラーが売れない恵文社一乗寺店が好調な理由 ■
本屋が潰れるなら本屋をやめればいい 総商さとうウィー東城店の答え 製造業的なところでも何か書いた気がするものの、検索しても見つかりません。今回のケースはこっちの製造業がモノではないものを売るというものです。
●値段を安くせずにむしろ高くすれば簡単に売れるように?
記事はバルミューダという家電メーカーの話。私はここが好きで
ロックバンドVo寺尾玄が起こした注目ベンチャー・バルミューダなど、何度も書いています。
「モノではなく体験を売る」というのは、すぐに導き出した結論ではなく、一度失敗しているそうです。いつも書いていますけど、失敗ってのも大事なんですよね。バルミューダは、扇風機をヒットさせています。失敗したというのは、扇風機の次の空気清浄機の話でした。
寺尾(引用者注:バルミューダの寺尾玄社長)「扇風機は、あれはまぐれヒット。その後、なんでヒットしたのか要因を分析してきました。まずは、高い扇風機を作ったから売れたのかなって一瞬思っちゃった」
(
「消費者はモノなんて買わない」:日経ビジネスオンライン 中 尚子 2015年11月5日より)
高いから売れるっておかしいと思うかもしれませんが、私の母はそういうタイプ。絶対に安いものはダメだと思い込んでいます。価格をむしろ上げて成功というパターンは結構あるのですけど、バルミューダの空気清浄機の場合は売れませんでした。
寺尾「でも、それなら、高い空気清浄機を出したら売れるはずなんですよ。実際やってみたらそんなに売れなかった。ということは、高いというのがポイントじゃない」
●ヒット商品の秘訣:モノではなく体験を売る
一方、最新のヒット作であるトースターは、計算づくで作ったもの。寺尾社長によると、トースターは、「体験を売る」という考えに基づいて発売した初めての商品だそうです。見ておいしそう、「サクッ」とかじって、聞いておいしそうといった「体験」です。
「体験」ということを重視した結果、トースターではまず、試食イベントを開催。さらに、もう一つの「体験」として、以下のようなことを意識してやりました。
寺尾:もう一つは、体験を“想像”していただくんです。これは服を買うときにみんながやっていることです。
人間には想像力があるので、そこに訴えかけます。例えば今、うちのウエブのページを見てもらうと、トースターでできる食べ物の写真が豊富に載ってます。すごくおいしそうな食べ物の写真をずーっと見てるとね、唾液出てきます。唾液が出るってことは、体が反応しています。結局、想像することで疑似体験しているんですよね。
●体験のポイント…特に五感を使うことが大切
「モノではなく体験を売る」自体は正直他にも言っている方がいらっしゃるのですが、おもしろいと思ったのが五感が大事だと、よりこの「体験」を深く理解していたことです。
寺尾:うちの空気清浄機はすごく良く働き、効果は大きいですよ。でも、つけたときに、扇風機って一瞬で涼しい、気持ちいいって感じるじゃないですか。空気清浄機はそれがないんですよ。要は、扇風機は気持ちよさとして認識できる、空気清浄機はできないというのが大きい違いだったんですよね。
扇風機の場合は、五感のうち、3つをフォローしているんですね。視覚、聴覚、そして風を感じる触覚です。五感から入ってくるものがまとまったときに体験になります。となると、その五感に訴える良さを作り出すと、いい体験になるんじゃないかなという結論に至りました。
トースターの場合は、味わい(味覚)があって、香り(嗅覚)があって、見て(視覚)おいしそう、「サクッ」とかじって、食感(触覚)と音(聴覚)でおいしそう…と、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚の五感全てを使っているということなのです。
●トースターのせいでなぜか扇風機が激売れ
もう一つおもしろかったのが、"今回、トースターを出したことで、扇風機がやたら売れちゃった"という話。
寺尾:今回、トースターを出したことで、扇風機がやたら売れちゃったんです、この夏。これまで、扇風機の一番のウリは気持ちよさなんですって言ってきても、何となくのれんに腕押しなところがあったんです。でも、「トースターのポイントはおいしさなんです」というのを打ち出して、それを消費者に理解してもらった。その人たちが当社のホームページで扇風機を見ると、ああ、気持ちいいんだろうな、と言い始めてくれた。そういう効果もあるんだなというのが今回、驚きでした。
結局、ブランドとして見てもらう、というのがすごく大事ですよね。体験を買う時に、どういう人々がどういう気持ちで作っているのかが、消費者にとってすごく重要になります。その印象というのが、ブランドです。じゃあ扇風機やトースターを作ったらブランドができるかというとそうじゃなくて、それを続けることが大切だと思うんですよ。
これも体験があってこそという話。だって、大手家電メーカーだと感動して「他まで買おう」って気にはならないですものね。一貫してこだわって作り続けることがブランド力を高めたのだと思われます。
●体験重視は「モノ消費」よりも「コト消費」とも言える?
2019/07/19:もうすでに古くなったような言い方ですが、この話に関連する「コト消費」という概念の話を説明していなかったと思って追記。対応する消費スタイルには、「モノ消費」というものがあり、これが従来型のものとされています。
これらの説明でわかりやすそうだったのが、
知恵蔵の解説。「モノ消費」は、消費者がお金を使う際に、所有に重きを置いて物品を買うこと、まずシンプルに説明していました。
一方、新しいとされる「コト消費」は、所有では得られない体験や思い出、人間関係に価値を見いだして、芸術の鑑賞や旅行、習い事といったレジャーやサービスにお金を使うこと。近年では、消費者が「モノ消費」よりも「コト消費」を重視する傾向が出てきたといわれています。
●世界観に惚れ込み購入…売れる高級ブランドは価値観を売っている!
もう一つ追記というか、最初はこれだけ追記するつもりだったのですけど、最近見直した別投稿の
売れる高級ブランドと売れない高級ブランドの違い 二極化の理由は?も、これらに関連する話じゃないかと思ってこちらでも紹介することに。
そちらの投稿では、高級ブランドでも二極化しており、売れているところと苦戦しているところがあるという話。そして、売れている高級ブランドは、そのブランドの作り方に共通点があるという話でした。
不景気でもあまり売上を下げていないブランドは、ライバルどころか消費者のことすら考えず、あくまでデザイナーなどの世界観を中心に構築。そのブランドでしか味わえないオンリーワンの世界観を築いていくブランドだとされていました。
こうしたブランドを買う消費者は、その世界観に惚れ込んで購入します。なので、ライバルの動向に左右されづらく、ほかが売れていないときでも苦戦しづらいといった説明。このケースでは「体験を売る」と言うとしっくり来ないのですが、「価値観を売る」といった感じで、最初の本屋の例と似たものを感じました。
●実を言うと、高級化路線でバカ売れしたケースもある?高級茶の場合…
2020/08/05:単に高くすれば売れるわけじゃない…と書いていたのですが、そう言えば、うちでは、
売れなかったお茶、高級化路線でバカ売れ ジャテックスの『遥香』という話もやっていいたんですよ。こちらはどういう話だったのか?と、読み直してみました。
ここで出ていた説明によると、お茶は普通に飲むと多くの栄養素は茶ガラ側に残ってしまうんだとのこと。そこで、ジャテックスでは、キャップを工夫するなどして、新鮮に栄養豊富なお茶を飲めるようにしたものを販売するようにしました。こうすることで売れるようになる気がするかもしれませんが、実際にはいまいち売れなかったんですね。
売れそうな気がするのに売れなかったため、今度は、お茶そのものをより高級なものにする、デザインも高品質な感じにする…といった感じで、はっきりとした高級化路線へ転換してみました。そして、これで成功したといわけ。読み直してみてもこのケースでは、価格を上げたことが普通にそのままキーポイントになっている感じでしたね。
●雑誌の世界でもいい雑誌には「思想」があって、「思想」を売っている
2020/09/08:いくつかの雑誌について比較した
「クウネル」「つるとはな」「暮しの手帖」を読み比べ 今、私たちが考える「雑誌の本懐」とは? | ハフポスト LIFE(2016年02月23日 6時13分 JST)という記事。ここでは、「体験を売る」という話ではないのですが、「思想を売る」といった感じの話が出てきていました。
例えば、昔は雑誌に出ていた洋服や雑貨が欲しくて、お店に電話して買いに行くことがあったが、今はネットのせいでそういったなくなったという話があり、その中でリニューアルする前の雑誌「旧クウネル」がモノを買わせる広告重視でなかったことに関して、<「思想」を買っていたんだなって気付きました>というセリフが出ています。
また、<やっぱり今でも、いい雑誌には「思想」があるんじゃないでしょうか。マーケティングが先行して、思想が失われたらつらい><大事なのは、その「思想」にどれだけ多くの読者が共感を得てくれるか、雑誌を買い支えてくれるかってところなのか>といった話も出ていました。
●ターゲットの狭い内輪ネタは深くウケるが客が少ないというジレンマ
ただし、これは思想を出せば儲かるという話ではないんですよ。この記事のきっかけは、旧クウネルがリニューアルして突然別雑誌になってしまったことでした。旧クウネルはその思想に共感する熱烈な読者がいたものの、商売が成り立つほど多くないためリニューアルし、ありきたりでありつつも万人受けする思想を高いレベルで表現する雑誌にして部数を伸ばしたそうです。
また、おもしろいと思ったのが、<思想の話をすると、雑誌、中でも女性誌って、自分の好きな「感じ」からちょっとズレると買いたくなくなる、という難しさがあると思います>と言っていたこと。ターゲットがキッチリ定められているからこそ、それが自分から外れた時に、サイズが微妙に合わない服を着たような違和感があると言っていました。
私は笑いに関して、万人受けするネタよりも内輪ウケで少人数にしかウケないネタの方が深くウケると考えています。それと同じような感じですね。深くウケる一方で、それで広く食っていけるか?と言うと、そもそもが狭い範囲でのウケですので難しくなるでしょう。こうしたジレンマは常にありそうです。
【本文中でリンクした投稿】
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売れる高級ブランドと売れない高級ブランドの違い 二極化の理由は? ■
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