税金関係の話をまとめ。<農家は税金を払っていない?実は一番税金を払っていないのは…>、<地方税滞納を見逃し…政治家の税金を優遇する自治体の実例がある>、<「うちの顔を立てて」政治家の秘書が国税庁職員を呼び出し圧力>、<国民に増税求める副財務大臣、実は税金滞納の常習犯だった!>などをまとめています。
2023/11/14追記:
●国民に増税求める副財務大臣、実は税金滞納の常習犯だった!
2023/11/24追記:
●すぐ差し押さえはせず、その前に何度も通知…なぜ納税を無視? 【NEW】
●税金の不公平示すクロヨン・トーゴーサン・トーゴーサンピンとは?
2016/2/14:麻生太郎財務相が25日の衆院財務金融委員会で「農家は税金を一回も払ったこともない人もいるだろう。地元で3人ぐらいから聞いた」と発言したそうです。これは、"税務当局から見て、サラリーマンより自営業者や農家の方が所得を把握しにくいことを表す言葉「トーゴーサン(10・5・3)」を例示した"ものだといいます。
(
「農家は税金を払ったことない」 麻生大臣がまた問題発言 | 日刊ゲンダイDIGITAL(2016年2月26日)より)
上記の話は2016/03/02に追記したものですが、もともとこの投稿は初詣のときに臨時でやっている駐車場でも納税しないとダメですよという内容の日経新聞の記事を読んでいたら、「トーゴーサンピン」なる言葉が出てきたので調べた…というものでした。
「トーゴーサン」なら「東郷さん」みたいですが、Wikipediaを見ると、「トーゴーサンピン」というのもあるようです。これは
クロヨン - Wikipedia(最終更新 2013年6月1日 (土) 05:08)のところに載っていました。「クロヨン」ならちょくちょく聞く言葉です。
<クロヨン(9・6・4)とは税務署による課税所得の捕捉率に関する業種間格差に対する不公平感を表す語である。トーゴーサン(10・5・3)、トーゴーサンピン(10・5・3・1)と呼称することもある。1960年代後半から使われ始めた>
●サラリーマンは9割、自営業者は6割、農家は4割とされる捕捉率
勤労者が手にする所得の内、課税の対象となるのは必要経費を除いた残額です。本来課税対象とされるべき所得の内、税務署がどの程度の割合を把握しているかを示す数値を捕捉率と呼びます。困ったことにこの捕捉率は業種によって異なり、給与所得者は約9割、自営業者は約6割、農業、林業、水産業従事者は約4割であると言われるとのこと。このうちの6と4から「クロヨン」と呼ぶわけですね。
自営業とサラリーマンの不公平さはよく言われています。以下のような話もありました。
給与所得者の所得は原則として源泉徴収されているため遺漏が発生する可能性は極めて低い。これに対し、必要経費を自ら算出して自己申告する者、例えば自営業者の場合、家屋の一部分を店舗や事務所として用いる、事業用の車を自家用車としても用いるなど収支における公私の境界線が曖昧にならざるを得ない。このグレーゾーンについては事業者の自主計算により、事業用と私的利用の使用割合を面積や使用時間割合などの根拠を基に合理的に按分計算して申告する以外に手立てがないことから、税務署が逐一100%検証することは物理的に不可能に近い。
この事に着目し、家屋の内装工事にかかった費用を事務所の維持費として、あるいは私的な食事を交際費として計上するといったケースがみられる。その結果、自営業者や農業所得者の所得捕捉率は給与所得者のそれに比して一般に低くなっていると言われる。
●クロヨン・トーゴーサンの示す捕捉率をわかりやすくまとめると?
「クロヨン」をわかりやすく書き直すと、以下のようになります。
<クロヨン>
9割…給与所得者
6割…自営業者
4割…農林水産業者
「トーゴーサン」も同じ組み合わせですが、捕捉率が異なります。これは"捕捉率の業種間格差は「9対6対4」に留まらないとの考え方から"生まれた言葉だそうです。
<トーゴーサン>
10割…給与所得者
5割…自営業者
3割…農林水産業者
●農家は税金を払っていない?実は一番税金を払っていないのは…
では、「トーゴーサンピン」の「ピン」は何か?と言うと、実は政治家なんですよ。政治家が出てくるとは予想外でした。
<トーゴーサンピン>
10割…給与所得者
5割…自営業者
3割…農林水産業者
1割…政治家
Wikipediaでは、"政治家の場合、政治資金は課税対象とならないため業務と無関係な支出金を政治資金として計上するケースが考えられる"としていました。
で、これを知ると、冒頭の麻生太郎さんの発言が気になってきます。農家を槍玉に挙げているんですけど、一番税金を払っていないのは麻生大臣みたいな政治家だとされていますよ…という話です。たぶん麻生太郎さんは「トーゴーサンピン」をご存じなかったのでしょうね。
●捕捉率の問題の解決策は、消費税増税?捕捉率是正という大義名分
もちろん国税庁は捕捉率に関するこれらの数値を公には認めていないといいます。ただ、数字がきっちり捕捉率を示しているかどうかはともかく、捕捉率が異なるという問題があることは認識していそうな感じ。というのも、以下のように、不公平を是正する対策を複数実施しているためです。
・納税者自身の意識の高揚と誠実・正確な申告
・税務署の調査能力の向上
・脱税行為に対する罰則規定の強化
・納税者番号制度
ところが、こうした対策は実際にはしっかりできていない模様。[要出典]となっているところですけど、<税務署の人員や設備の増強は膨大な経費を要するため実際には難しく、意識改革や罰則強化についてもどれほどの成果が挙がるかは不透明との指摘がある>とされていました。
捕捉率が上がれば当然ながら税金も増えるでしょう。費用対効果が見込めれば、人員を増やしていいと思いますけどね。公務員の人数が問題になりますが、私は人数の多さではなく、分野の偏りが問題だと思っています。単純に減らせ!増やせ!というのは支持していません。
一方、対策に関しては、大型間接税(かつての売上税・現在の消費税)の導入理由の一つとして「クロヨン・トーゴーサンピンの是正」が挙げられていたことがあったとのこと。すなわち、捕捉率が低い直接税中心の租税体系から捕捉率が高い間接税中心の租税体系に改編することが不公平税制是正の一手段となるという考え方だそうです。
間接税というのは、この説明の中でも出てきた消費税が代表格なんですよね。ただ、税金の捕捉率向上を理由に逆進性の高い税金を増やして、低所得者層に負担を移すというのは筋が通らないでしょうね。やるのであれば、このデメリットを低減する対策がセットで必要だと考えられます。
●地方税滞納を見逃し…政治家の税金を優遇する自治体の実例がある
最初の下書きのときは上記だけでしたが、議員の税徴収を「お目こぼし」にしているという記事を見つけましたので、これに加えます。税金制度が政治家優遇になっているというのではなく、自治体の担当者が意図的に政治家を優遇しているという言語道断な話があったんですよ…。
議員の税徴収を「お目こぼし」する自治体の呆れ果てた内情|相川俊英の地方自治“腰砕け”通信記|ダイヤモンド・オンライン( 相川俊英 [ジャーナリスト] 2015年3月3日 )
<担当者によるうっかりミスは起こり得るが、担当者が意図的に手を加えるようなことはない。もし特定の住民に手心が加えられていたら、それは犯罪行為と言える。到底、許されることではない。そうした行為が長年、見過ごされていたら、日本社会は根底から崩れ去ってしまうだろう。真面目に納税する人などいなくなってしまうからだ。
だが、その決してあってはならないことが自治体の徴収現場で起きている。特定の住民に対する「税徴収のおめこぼし」である。住民税や固定資産税などの地方税を滞納している地方議員を特別扱いし、差し押さえなどの処分をせずに見逃しているケースが発覚している>
●香川県土庄町の町議会議長の固定資産税見逃し…町長にまで出世
"表面化してもなぜかメディアがきちんと報じない"ということも書いており、陰謀論みたいな怪しい話かと警戒した記事ですが、ちゃんと具体的な話があります。たとえば、香川県土庄町(とのしょうちょう)のケース。町議会議長が固定資産税など約1754万円(延滞金を含む)を滞納し、さらには時効により約1790万円もの不能欠損処理(債務免除)を受けていたという事例だそうです。
この香川県土庄町の例では、なんと町は議員報酬などへの差し押さえをしなかったとされていました。さらにひどいのが、土庄町の場合は、税の支払いをチャラにしてもらった形である議長が町長に当選してしまっています。税金でズルしてもらった人が、税を徴収する側のトップに就任してしまったという笑えないオチがついていました。
土庄町の件は補足のために検索。同じ作者の
小豆島を揺るがす「税金滞納騒動」の底知れぬ闇 新町長の疑惑とデータ持ち出し事件は符号するか? | 相川俊英の地方自治“腰砕け”通信記 | ダイヤモンド・オンライン(2014.2.18 0:00)が詳しいです。ただ、会員登録が必要な記事なので、ほとんど読めませんね。なぜかちょっと前に見たときは読めて、それを紹介する木だったのですけど…。
仕方ないので別のことを調べることに。
香川県土庄町長の選挙一覧 | 選挙ドットコムを見れば、問題があったのときの町長、優遇を受けた後に町長となった新町長ともにお名前がわかります。大体こういうことするのは…と検索してみると、当時の町長はやはり自民党系。
(PDF)選挙管理委員会の告示で、自民党香川県自治振興支部代表であったことが確認できます。
新市長の方もここが地元選挙区である自民党の平井卓也議員から応援メッセージをもらってたので右派系かも。平井卓也議員自身、恫喝や利益供与などが多数指摘されていた利益誘導型の典型的な議員。利益誘導の総本山・安倍元首相に近い議員でもあり、安倍政権や自民党自体が身内に利益誘導する政治をやり続けている…という感じです。(補足部分は2021/11/27追記)
●熊本県菊池市が市税を滞納市議に特別な対応をしていたことも判明
<議員の税徴収を「お目こぼし」する自治体の呆れ果てた内情>という記事ではもう一つ、記事の時点で現在進行形だった熊本県菊池市のケースも載っていました。菊池市では、数年前から4人の市議に地方税を滞納しているとの疑惑が持ち上がっていたとのこと。そこで市議会は2012年3月に100条委員会を設置しました。ここまではまともな対応のように見えます。
ところが、"100条委員会のメンバー8人の市議のうち4人が、滞納疑惑を持たれていた当の人物"だったんですね。設置された100条委員会は滞納を問題視するのではなく、「誰が議員の税滞納の情報を漏洩したか」という犯人探しだけを重視しました。"担当職員ら30人への聞き取り調査を実施し"、犯人探しをしたそうです。
幸いなことに、100条委員会でじゃ、結局、犯人は特定できませんでした。しかし、"納税情報へのアクセス数が多い"という、いわば"真面目に仕事をしていた職員"2人をスケープゴートで懲戒処分。この時点で信じれない話になっています。 当然納得がいかないのは、懲戒処分にされた2人。"市公平委員会に「懲戒処分は不当」と訴え"て、徴税事務処理の内情を明かしたため、たいへんなことがわかってきます。
「議員の滞納について上司(課長)に督促や差し押さえなどの処分をやるべきだ、やらなければいけないと何度も進言したが、聞き入れてもらえなかった」
「別の上司は自分に任せてくれ、自分の顔を立ててくれというだけで何もしなかった」
別の職員も「(当時の)総務部長から『議員の滞納は良くないことだと思いますか』と聞かれ、一瞬耳を疑った」といった話もしています。また、福村三男市長(当時)は「市議会議員の滞納はなかった。過去まで遡って調べる必要はない」と議会で答弁するなど、"市側が偽りの答弁を重ねていたことが明らかに"なりました。
本当腐ってますね。記事において、作者の相川俊英さんは最後、<真面目に納税している住民に余分な負担を押し付けて、首長や議員がのうのうと税のお目こぼしを受けるようなことがまかり通っていたら、日本は民主国家、法治国家の看板を下ろさざるを得ない>で締めています。日本で起きている話とは思えないひどい話でした。
●「うちの顔を立てて」政治家の秘書が国税庁職員を呼び出し圧力
2021/11/13追記:当初書いていた政治家の税金優遇とは違うのですが、政治家と税金に関する問題で、
公明議員秘書、国税に再三要望 知人会社の税務調査巡り「顔立てて」:朝日新聞デジタル(2021年11月13日)という記事が出ていましたので、こちらに追記します。問題行動を起こしたのは、公明党選対委員長の高木陽介衆院議員=比例東京=の公設秘書。連立が長いせいか、公明党もすっかり自民党化してきた感じですね。
この秘書は、2020年12月から2021年2月にかけて、知人が顧問を務める「若返りサプリメント」を販売する会社の税務調査をめぐり、会社側の要望を電話で10回以上、国税庁に伝えていたとのこと。国税庁職員を議員会館に呼んで会社側の不満を伝えるなどしていました。秘書は朝日新聞の取材に、会社側の要望を繰り返し国税庁に伝えたことは認めているそうです。
<関係者によると、同社は、仕入れ時に支払った消費税が売上時に受け取った消費税を上回った場合に差額が還付される制度を使い、還付を申請していた。だが昨年8月に税務調査が始まり、申し立てていた消費税約1億円の還付手続きがストップ。同社の顧問は還付されないことなどへの不満を知人の秘書に相談した。
秘書は昨年12月下旬以降、調査中を理由に止まっていた消費税の還付を求める同社の要望を、国税庁に電話で繰り返し伝え、社長らと面会するよう求めた。国税側は同月24日に東京上野税務署(台東区)で社長らと面会。だが社長らが対応に不満を持ったため、秘書は同庁に「うちの顔を立てて下さい」と伝えた。その後、同28日には東京国税局(中央区)で再度の面会が行われた>
<秘書は会社側からこの説明内容への不満を聞き、翌28日、国税庁の課長補佐2人を議員会館に呼び、還付が行われていないといった同社の不満を直接伝えた。同社側に不正の根拠を明確に示すことを求めたうえで、「気をつけてもらいたい」と述べたという>
なお、税務調査の結果、東京国税局は2021年4月、同社がサプリ原料の仕入れ額を過大に計上し、2019年10月までの1年間で約11億円の所得隠しをし、消費税の還付額も過大に申し立てたと認定。重加算税を含む法人税と消費税計約7億円を追徴課税(更正処分)しています。圧力に屈さなかったのは立派ですが、これが自民党系だったらどうなっていたかわからないとも思いました。
●国民に増税求める副財務大臣、実は税金滞納の常習犯だった!
2023/11/14追記:副財務大臣がなんと「度重なる税金滞納」を報じられて辞任。最近、政権は防衛増税を唱えてもいましたので、「国民には増税を求めながら自分は税金滞納」ということでもありますね。増税はそもそも財務省の管轄ですし、その意味でも一番責任があるところです。
<過去の税金滞納と差し押さえなどが問題となっていた自民党衆院議員の神田憲次財務副大臣(60)=愛知5区=が13日、辞任した。>
<神田氏をめぐっては、8日に文春オンラインが神田氏の個人会社が地方税の滞納を繰り返し、同社が所有するビルが過去4回、差し押さえを受けていたと報じた。神田氏は9日の参院財政金融委員会で、自身が代表取締役の会社が保有する土地と建物が、固定資産税の滞納により過去に4度、差し押さえを受けていたことを認め、野党側が辞職を求めていた。>
上記は、
「税滞納、地元知っていた」 派閥の意向重視、政権の身体検査に甘さ [岸田政権]:朝日新聞デジタル(西村圭史2023年11月14日 5時00分)という記事から。有料記事で詳細は不明ですが、タイトルだけで大体わかります。地元の評判くらいを事前に調べていなかったのか?という話ですね。
●すぐ差し押さえはせず、その前に何度も通知…なぜ納税を無視?
2023/11/24追記:前回書いた<国民に増税求める副財務大臣、実は税金滞納の常習犯だった!>の件。お金がなくてやむを得ず滞納した…というのでしたら、責めるのはかわいそうかもしれません。そう思って、この問題を最初に報じた文春オンラインの方も読んでみることにしました。
<岸田政権の経済政策を担当し、税理士資格も持つ神田憲次財務副大臣(60)の個人会社が地方税の滞納を繰り返し、同社が所有するビルが過去4回、差押を受けていたことが、「週刊文春」の取材でわかった。>
(
〈滞納を繰り返し、自社ビルは差押4回〉“増税の司令塔”神田憲次財務副大臣は税金滞納の常習犯だった 神田氏は「間違いございません。深く反省しています」 | 文春オンライン 2023/11/08より)
元国税局徴収部次長の中島洋二税理士は、「法人所有資産が対象の差押なので、事業所税や法人市民税、固定資産税などの滞納だと考えられます」と指摘。「何度も通知し、それでも納付がない時に滞納金目録をつけて差押をします。4回の差押はさすがに常習性があると言わざるを得ません」としていました。
また、私が同情できるケースとして想定した「お金がなくてやむなく」ではなかった模様。取材にし対して書面で「あえて弁明させて頂ければ、事務の不手際で差押があった時に初めてその事案を知り私自身が早急に納税の対応を致しました」と説明したそうです。
本人が知らなかったんだから無罪!という擁護もあるでしょうが、一般論で言うと、組織のトップに責任があります。何度通知されても対応せず、トップである代表取締役にも知らせていなかったというのは、事実だとしても「組織がめちゃくちゃ」ということですから、神田憲次議員の能力に疑問符がつくでしょう。
記事では「増税政策の司令塔の一人として、予算編成や財政健全化などを主導」「税のプロフェッショナル」などと記載。それがこうした税金の問題に対応しない会社を経営しているのですから、普通に不合格ですね。ちなみに清和会(安倍派)所属だそうです。
【関連投稿】
■
何と市(厚木市)が1.3億円もの税金を滞納 追徴課税が1200万円というえらいことに ■
普通の日本人の年収を知る 平均年収は高すぎ、大事なのは中央値? ■
年齢別・男女別の平均給料はいくら? 年齢階級別賃金で目安を見る ■
公務員の給料調整 大阪市立東高校は教頭が105人、校長が18人! ■
民間の給与・平均年収の推移 人事院勧告のデータでは減少なし増加し続けだったけど? ■
人生・生活についての投稿まとめ
Appendix
広告
【過去の人気投稿】厳選300投稿からランダム表示
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
|