"鴻海の買収でシャープが復活しなくても産業革新機構案より良い理由"(2016/2/14)という話を書いていました。が、
鴻海買収のシャープもう復活?日本企業は中国・台湾に負けて当然 15年連続の赤字の三洋電機は数年で黒字にでやっているように、シャープは早くも復活気配です。
これに関連して、シャープの株主が大喜びで、株主総会は和やかなムードだったという記事がありました。こちらを冒頭に書いて、タイトルも変更しています。(2017/07/29)
●シャープ復活で鴻海から来た戴正呉社長を株主大絶賛「産業革新機構なら株は売ろうと思った」
2017/07/29:当初書いていた後半を読んでわかるように、私はもともと鴻海(ホンハイ)の買収が成功すると予想していたわけではありません。また、これが本物の復活かどうかもわからないものの、2017年3月期は連結経常損益が3期ぶりに黒字転換、最終損益も下期(16年10月~17年3月期)だけに限れば205億円の黒字というV字回復を遂げています。
また、シャープ株も上昇する一方。2016年6月20日に126円だった株価は、1年間で420円(6月20日終値)にまで回復したそうです。
シャープ株主「ゴーンさんのように長くいて」:日経ビジネスオンライン(庄司 容子 2017年6月21日)によると、こういった背景もあって、経営陣への批判や罵声が飛び交った昨年とは別の会社のような、和やかな雰囲気の株主総会が行われました。
総会で質問をした株主らも上機嫌で、例えば、1番目に質問した株主は、「昨年8月に戴社長(引用者注:戴正呉社長)になって喜んでいる。これで国際的に通用するシャープになった」とベタ褒めでした。
戴正呉社長は、東証1部に復帰したら社長をやめるとしています。しかし、このときのやり取りで、発表した計画の3年間は責任を持ちたいとして、会長という選択肢があることを示唆。すると、株主は「戴社長、ますますシャープのためにがんばってください」とエールを送って質問終了。会場からも拍手が起きました。
会長として残る可能性に関しては、4番目の質問者も「1年間お疲れさまでした。会長になっても日産自動車のゴーン会長のように1日でも長くいてほしい」と大歓迎しています。
記者が話を聞いた男性株主(67)も「(シャープのスポンサーが)産業革新機構になるなら株は売ろうと思ったが、鴻海なら経営改革できると思ったので売らなかった。これからも応援したい」と話しており、好印象。
また、総会終了後、戴社長は株主席に足を運び、「頑張ります」と言いながら一人ひとり握手して回ったといいますから、これもイメージを良くしたでしょうね。
前述の通り、一応私は本当の復活かどうかはまだわからないと見ているのですが、株主の評価はこれ以上ないというほどの絶賛になっていました。
●企業が外国企業の手に渡らないようにしてきた日本政府
2016/2/14:で、もともと書いていたのは、最後の株主が「株は売ろうと思った」と言っていた産業革新機構案について批判的に書いていた投稿。
ウォール・ストリート・ジャーナルが、日本の過去の政策や今の政府の政策について以下のように書いていました。
【社説】鴻海のシャープ買収が試す日本の改革 - WSJ 2016 年 2 月 8 日 10:39 JST
これまで日本政府は、その規制上の権限を使って株主利益を圧倒し、企業が外国企業の手に渡らないようにしてきた。
安倍晋三首相は新たな企業統治(コーポレートガバナンス)指針を打ち出し、経営陣の株主への説明責任を強化した。同時に安倍政権は、INCJ(引用者注:産業革新機構)に対して投資のための公的資金を増額した。
●産業革新機構案はシャープの長所を潰すもの
この安倍政権によって強化された産業革新機構(INCJ)の策を、ウォール・ストリート・ジャーナルは評価していません。
シャープに対するINCJの計画は、液晶パネルの生産をジャパンディスプレイ(INCJ主導でソニー、東芝、日立製作所の液晶パネル部門を統合した会社)に吸収させるというものだ。INCJは日本の経済産業省の下にある。経産省は斜陽産業の雇用保護のため企業統合を推進してきた歴史がある。それは、「管理された衰退」のための処方せんであり、シャープの技術的な利点を無にしてしまうだろう。
●鴻海の買収でシャープが復活しなくても産業革新機構案より良い理由
"鴻海は、シャープが再び世界のトップに返り咲けると信じており、進んで55億ドルを同社に賭(か)けようとしてい"ると、記事では書いていました。"シャープ株は4日、市場全般の下落とは対照的に17%高"となっています。市場は明らかに鴻海による買収を歓迎しています。
ウォール・ストリート・ジャーナルは、鴻海の買収案を賭けとしていました。賭けであるならば、必ず成功するとは限りません。失敗する可能性もあります。でも、それで良いのです。
まず、一番大きな理由は、そもそも政府が失敗企業の救済に多額の税金をかけることが間違っているためです。また、日本政府の統合策が失敗してきたというのも、強い理由になります。税金を無駄遣いしてさらに失敗って、踏んだり蹴ったりです。
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倒産危機の東芝の救済策でシャープ・ソニーとの合併という話が登場 シャープはジャパンディスプレイ(JDI)との液晶統合の方が有力 ■
経済学者もやりまくりな比較優位の誤解と産業育成政策が失敗しやすい理由 鴻海にしても失敗する可能性がありますし、高すぎる買い物であった可能性が十分にあります。ただ、国内外に関係なく民間企業が自分で決めたことであり、それは彼らの自己責任です。
●国は責任を取らず、国民のお金を無責任に使う
政府系の場合が民間企業と違うのは、これが他人のお金での投資ってことです。他人のお金の場合、責任感を持った意思決定ができず、見通しが甘くなりがちです。失敗しても誰も責任を取りませんからね。痛くも痒くもありません。
ちょうどシャープといっしょに倒産しそうになっている東芝は、高い買収をしてこれが業績悪化に追い打ちかけていました。本来ならこれも自己責任…なのですが、困ったことにこちらも政府が税金使って救おうとしており、そうはなっていません。東芝の例がさらに悪いのは倒産危機の原因となった買収が原発事業であり、純粋な民間の意思決定ではなく、国の後押しがあったということです。
東芝自身は今回、政府の救済があるのも、原発事業という国策をやっているからだと考えているようで、全然民間企業の考え方と異なっています。ここらへんは、だからこそ失敗しやすかったとも言えるかもしれません。
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不適切会計の一因は国にも?国策企業・東芝と佐々木則夫元副会長の問題発言 ■
東芝「うちとシャープは違う」 東芝が倒産しないと自信満々な理由 個人的には鴻海もシャープを買いかぶりすぎな気がしているんですが、前述の通り、自己責任ですので失敗もご自由にという話で済みます。
●技術流出を防ぐ・雇用を守るという嘘
あと、技術流出する・雇用が失われるといった大義名分が大嘘であることも大問題です。鴻海がどのように再建を進めるつもりかは知りませんが、この前やったように、産業革新機構案ではリストラが進み、情報を持った技術者が出て行くことは確実なためです。
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ホンハイがシャープ買収で技術流出の危機?実はリストラが一番危険だった! とりあえず、日本人は海外企業の買収を懸念するより、税金の無駄遣いに敏感になるべきでしょうね。鈍感すぎると思います。
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