「国立大学法人化」という話が出てきますので、それについてのクイズ。
【クイズ】国立大学法人化が行われた年として正しいものは?
(1)2004年度
(2)2005年度
(3)2006年度
●国立大学の予算・教員削減で日本の研究論文数減少
世界大学ランキング急落の日本の大学 被引用インパクトでも悪化を確認でも書いたように、日本の研究論文数の停滞についての分析は、豊田長康・鈴鹿医療科学大学学長(元三重大学学長)が詳しいです。
豊田長康学長によると、人員や予算の削減が最も効いているとしていました。めちゃくちゃ長い話でなおかつ難しかったので今まで引用してこなかったんですが、以下の投稿がそういった分析の一つです。
国立大の論文産生国際競争力喪失の原因・・・最終結論(国大協報告書草案36) - ある医療系大学長のつぼやき 2015年03月30日
旧帝大を除けば常勤教員数増加率と論文数増加率の回帰直線の傾きは約「1」であるので、常勤教員を10%増やせば、論文数が10%増えることが期待されるということになる。
次いで、基盤的収入が0.7、運営費交付金が0.6と比較的高い数値になっており、基盤的研究資金の重要性が示唆される。
(引用者注:基盤的収入とは、運営費交付金(附属病院運営費交付金を除く)と授業料収益を加えた金額。運営費交付金は、国立大学の収入不足を補うために国が出している補助金であり、削減が続いている)
外部資金の中では「科研採択件数」が最も高く0.283であり、「科研配分額(直接経費)」は0.14となっている。論文数とより強く関係をするのは「件数」であり、多額の少数配分よりも、少額の多数配分の方が、論文数押し上げ効果が高いことを示唆している。(中略)
受託研究等収益(国及び地方公共団体)および補助金等収益などの、政策的な重点配分型の競争的資金は、論文数押し上げ効果は低い。
わが国の学術論文数は海外諸国にどんどんと追い抜かれ、研究面での国際競争力が低下し続けているが、今回の国立大学における論文数増加率の要因分析から、その最も大きな要因は大学への基盤的資金の削減であることが確認された。そして、それに加えて、競争的資金へのシフト・重点化政策が、その思惑とは裏腹に論文生産性を低下させ、論文産生面での国際競争力をいっそう弱めていることが示唆される。
●重要論文も全分野で顕著に低下
一方、今回読んだのは、
Blog vs. Media 時評 | 危機の現状に対策が噛み合わぬ科学技術基本計画(2016.02.05 Friday 団藤保晴…ネット・ジャーナリスト)という投稿。
こちらによると、"1月下旬に閣議決定された新年度からの第5期科学技術基本計画"では、論文数・重要論文数の減少が顕著だという認識は国にもあるようです。
科学技術・学術政策研究所による《研究論文に着目した 日本の大学ベンチマーキング2015》の参考資料にあったグラフ「日本の論文数、Top10%補正論文数、Top1%補正論文数の世界ランクの変動」では、あらゆる分野で日本の重要な論文の数が減っていることがわかります。全滅状態です。
●国立大学法人化と運営経費削減が決め手
私は自由競争大好き人間です。国立大学法人化は特にどうこうはしなかったものの、やはり反対ではなかったのですが、これについては私が間違っていたと認めざるを得ません。現実のデータがすべてですからね。グダグダ言ってもしゃーないです。
2001~2003年と(引用者注:順位が低下した)2011~2013年の間に何があったのか、2004年の国立大学法人化とそれに続く運営経費毎年1%削減による「国立大学いじめ」を指摘せざるを得ません。この報告はグラフに続けて以下のように指摘します。 (中略)
2001~2003年から2011~2013年の間、世界的には研究論文は増え続けているのに日本の論文数は3%減りました。国立大が4%も減らし、私立大は12%増加、特法・独法の研究機関が8%増やしても国立大の減少の大きさには太刀打ちできませんでした。
ということで、答えは法人化の年度は2004年度でした。
【クイズ】国立大学法人化が行われた年として正しいものは?
(1)2004年度
(2)2005年度
(3)2006年度
【答え】(1)2004年度
国立大学の法人化とは - コトバンク
朝日新聞掲載「キーワード」の解説
国立大学の法人化
大学の自立性を高め、教育や研究を活発化する狙いで04年度、文部科学省の内部組織だった国立大学を個別に法人化して独立させた。
●根性論・精神論の対策で、政府の失政は見て見ぬふり
ところが、「政府の失政」を認めたくないがために、政府の対策は小手先のものになっており、「駄目ぶりに呆れています」とのことでした。精神論を振りかざしている感じにも見える対策です。
その対応策というのは、大学の「組織改革の遅れ」や「制度的要因」が論文数低下の原因なので、「改善を速やかに進めていく」というもの。さらに"科研費などの効率的な配分で対処できるとの議論"があったようです。
しかし、最初の豊田学長の分析によれば、"多額の少数配分よりも、少額の多数配分の方が、論文数押し上げ効果が高い"ために、「効率的な配分」はむしろ逆効果だと言えそうです。アホですね。
また、最も大切とされた教員の削減やは国立大学への交付金には触れられていなかったようです。人員に関するところで言えば、"他人事にように"若手のポストがないことを憂うだけだったとのこと。
本当はとっても大事なはずの交付金については、"国立大学への交付金毎年1%削減がルール化されて"いるので、削減方向が確定的です。したがって、今後日本の研究の衰退がさらに進んでいくことも確実というわけです。
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