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大学に市場主義的な競争原理を働かせるのは間違い、英国でも批判


【クイズ】2015年の英クアクアレリ・シモンズの世界大学ランキングについての説明で正しいものはどれでしょう?

(1)アメリカの大学が上位10校のうち8校を占めている。
(2)イギリスの大学は上位10校のうち4校と健闘している。
(3)上位10校の大学のうちヨーロッパの大学について見ると、イギリスよりそれ以外の国の大学が多い。


●大学に市場主義的な競争原理を働かせるのは間違い、英国でも批判

 「大学経営は市場主義にそぐわない」という英フィナンシャル・タイムズの記事タイトルを見て、てっきり日本政府や文科省への批判かと思いました。日本ではその方向性ですでに進んでいるためです。

 ただ、中身を読んでみると、日本ではなく地元イギリス政府への批判でした。
[FT]大学経営は市場主義にそぐわない  :日本経済新聞 2016/2/22 6:30 By Martin Wolf(2016年2月19日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

英ビジネス・イノベーション・技能省が昨年末に公表した政策提案書「Fulfilling our Potential(潜在能力を開花させる)」には、大胆な新計画が盛り込まれている。その中心にある考え方は、「このセクターに質の高い業者を新規参入させ、これまでよりも激しい競争を促す」ことにある。この計画が実行されれば、民間企業を含む新規参入者はたやすく「大学」になることができ、学位も授与できる。参入もできれば退出もできる。政府は学生ローンを組める人数の制限も撤廃した。

●フィナンシャル・タイムズは利益相反や学生ローンを問題視

 また、批判内容は日本でされているものと違う感じですね。問題視していたのは、利益相反や学生ローンでした。
 高等教育のように複雑な活動に対する外部の規制は、利益相反を相殺するのに苦労するのが常だ。高等教育の場合、政府は大学に学費を払い、それを学生へのローンとする。返済の条件は所得に応じて決める。所得が少なければ少ないほど、その学生の返済額も少なくなる仕組みだ。

 この結果、学生の観点から見れば、留年のリスクには(適切にも)上限が設けられることになる。ただその一方で、悪徳業者にとって商機も生まれる。学生が留年してもしなくても、政府は学費を負担する。学生が留年すれば、その損失は納税者が負担する。入学者に最低限の学力を求める厳しい基準が存在しない、あるいはローンを組める学生の数に上限がない場合は特に、悪徳業者には学生数を最大化するインセンティブ(誘因)が強く働く。その結果がどうなろうとお構いなしだ。

●日本では奨学金問題に近い懸念か?

 日本で言うと、奨学金問題に近いでしょうか。下位校の学生は奨学金を借りてはいけない 返済できない可能性が高いなどでやったように、日本では低レベルの大学で卒業後に奨学金を返せない卒業生が多くなり、社会問題化しています。
 こうした学生にローンを返済させるのは難しい。だから彼らは悪徳業者にとって格好の餌食になる。また、ジョー・ジョンソン高等教育担当大臣が指摘しているように「大卒者の所得ギャップは縮小しており、大卒者のかなりの数が学位の不要な仕事に就いている」ことも覚えておいた方がいい。これは間違いなく、周縁部で、学生と大学の課程の双方の質が既に低下しているという事実を反映しているはずだ。納税者の費用負担で営利の高等教育提供を無制限に広げることが、なぜこの状況を是正するのだろうか。それはあり得ないように思える。

●大学レベルの低下をもたらす市場主義の導入

 読む前に私が想定していた批判は、大学のレベル低下でした。教育予算の削減が最も大きい理由ですが、国立大学の予算・教員削減で日本の研究論文数減少 重要論文も全分野で顕著に低下でやったように、国立大学法人化でむしろ日本の大学のレベルは大きく低下しました。

 とはいえ、フィナンシャル・タイムズも大学レベルの低下を心配していないわけではありません。上記引用部でも、悪徳業者の進出が高等とはいえない「高等教育」を生むことを懸念しているのがまずわかります。

 また、実を言うと、現在のイギリスの大学はうまく行っているのだから変えるべきではないと、フィナンシャル・タイムズは一番最初に書いていました。
 高い評価を得ている大学の世界ランキングで、上位10校のうち4校は英国の大学だ。上位20校なら5校、上位50校なら10校がそうだ。これは英クアクアレリ・シモンズ(QS)の世界大学ランキングによる数字だが、ほかのランキングでも同様だ。米国は、規模と豊かさで英国を圧倒するにもかかわらず、上位10校のうち5校、上位50校のうち18校を占めるにとどまる。欧州大陸の大学は上位10校に入っておらず、上位50校においても4校しかない。高等教育の分野では、英国は超大国なのだ。

 だとすれば英国政府は改革に慎重に取り組むと思えるが、それは正しくない(引用者注:「本来慎重に取り組むべきなのに、大きく改革しようとしている」という意味)。

 クイズはここからでした。世界大学ランキングで見ると、イギリスはむしろ最も成功している国なのです。

【クイズ】2015年の英クアクアレリ・シモンズの世界大学ランキングについての説明で正しいものはどれでしょう?

(1)アメリカの大学が上位10校のうち8校を占めている。
(2)イギリスの大学は上位10校のうち4校と健闘している。
(3)上位10校の大学のうちヨーロッパの大学について見ると、イギリスよりそれ以外の国の大学が多い。

【答え】(2)イギリスの大学は上位10校のうち4校と健闘している。
(上記に年度は書いていなかったので、QS世界大学ランキング 東大より京大が上,シンガポールはさらに上で紹介した2015年のランキングを用いました。ヨーロッパ大陸からも1校だけベスト10入りしていましたので、フィナンシャル・タイムズは違う調査を使っているようですが、大きくは変わりません)

 他で書いているように、世界大学ランキングというのは気にしすぎるべきではないのですが、日本の大学の場合はすでに下がりまくっていますので、イギリスとはかなり事情が違います。

 また、世界大学ランキングを完全に無視したとしても、国立大学の予算・教員削減で日本の研究論文数減少 重要論文も全分野で顕著に低下の件がありますから、日本の大学のレベル低下は否定するのは無理です。

 イギリスとしては、日本の二の舞を演じることがないように注意すべきでしょうね。


【本文中でリンクした投稿】
  ■下位校の学生は奨学金を借りてはいけない 返済できない可能性が高い
  ■QS世界大学ランキング 東大より京大が上,シンガポールはさらに上

【その他関連投稿】
  ■文系縮小は非常識 教育予算が少なすぎる日本、海外はさらに増額
  ■世界大学ランキング急落の日本の大学 被引用インパクトでも悪化を確認
  ■国立大文系廃止、日本学術会議が批判 ユネスコ系国際団体・国際社会科学評議会(ISSC)も懸念
  ■学校・教育・子どもについての投稿まとめ

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