同じ論文でも著者の名前が女性だと男性より低評価になってしまう…という不思議な話。繰り返し実験しても同じ結果になってしまうので、マジでそういう傾向があるというのは間違いなさそうでした。(2016/2/26)
2017/11/11追記:
男性と女性のバイアス(偏見)、6歳の時点で早くも登場
「勉強ができるかどうか」という質問だとバイアスが生じない不思議
●同じ論文でも著者の名前が女性だと男性より低評価に
2016/2/26:50年以上前に社会心理学者のF・ゴールドバーグさんが行った心理調査は、評価を行うときにバイアス(偏見)があることをあぶり出した調査です。被験者の学生たちに、全く同じ内容の論文で作者の名前のみ違う二つの論文を評価してもらう、という実験でした。
論文筆者の名前の欄は一つが「男性の名前」が書いてあるもので、もう一つが「女性の名前」が書かれたものでした。すると、論文の内容が同じなのにも関わらず、「女性名」の書かれている論文の評価が全体的に低くなってしまいました。偏見が現れたのです。
ただし、注意してもらいたいのが、女性への差別・偏見では女性でも起きるということ。例えば、「痴漢される女性に責任がある」といった主張を、女性が言うことがあります。
上記の実験においても、女性による女性への偏見が見られました。被験者には、男子学生だけじゃなく、女子学生もいたため、「評価する側の性別」に関係なく、女性名の論文を読んだ人は、論文を低く評価する傾向が高いことが明らかになったのです。
(
「女は男より下」正当に評価されたい願望の深層心理:日経ウーマンオンライン【河合薫の「女性のリアル人生相談」】(2016年2月26日)より)
●「評価バイアス」は今でも変わらず存在する
"これは「評価バイアス」、別名「ゴールドバーグ・パラダイム」と呼ばれてい"るそうです。
また、これは「50年前の話だから」ということではないようです。"数年前、これと全く同じ実験を米ノースウェスタン大学教授のA・H・イーグリー博士がやった"ところ、"全く同じ結果になってしまった"そうです。
"しかも、男性が多い職場だけじゃなく、女性の多い職場でもそうなったし、若い人でも、高齢の人でもそうなったし、経営者でも、管理職でも、ヒラでも同じだった"と言います。
心理学の実験に限らず、再現性が低い研究というのは多いものですが、これだけいろいろやって同じ結果なのですから、かなり確からしいと言えそうですね。
●本末転倒になりがちな女性活用
このような評価バイアスは性別だけでなく、人種・学歴・年齢などでもあるとされていましたので、注意が必要です。
一方で、私は女性幹部などを数値目標で登用するというのには、反対しています。これはこれで正当な評価ではないためです。単純に女性全般を高評価にしようとなると、本末転倒ですからね。(もちろん女性に対しては、前述のような評価バイアスが働いているので、これを除去する必要はあります)
企業における「女性活用」というのは女性活用そのものが目的ではなく、企業の業績を上げることが目的です。優秀な女性を活用しない現状は企業にとって損失になっているのは確かですが、優秀ではない女性を重用するのもまた企業にとってプラスとは言えません。
ここらへんを勘違いしている、もしくは、忘れている人が多い気がしますので、改めてよく考えてほしいです。
●男性と女性のバイアス(偏見)、6歳の時点で早くも登場
2017/11/11:2017年初めの1月26日に、この話に関連しそうな論文が、米科学誌サイエンスに掲載されていました。主執筆者は、米イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の辺琳(Lin Bian)という研究者です。
(
女児が「女性は頭が良い」と思う傾向、6歳までに弱まる 米研究 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News 2017年1月27日 10:08より)
この論文は、5歳から7歳の間の就学前後の子ども400人に一連の課題を与えた研究に基づくもの。例えば、ある課題では、子どもたちに「とても頭が良い」人についての短い物語を、その人物が男性か女性かのヒントは与えずに聞かせました。すると、5歳児では、男児も女児も「とても頭が良い」人は自らと同性だとする傾向があったそうです。
どうも自分たちの性別の方が優れていると、物心がついた子どもたちはみんな思うみたいです。逆に言うと、女性が「男性の方が優れている」と考えるのは、先天的なものではないということです。
そして、この性別に関するバイアスは、早くも6歳の時点で現れるというので驚きです。6歳と7歳では、「女児は男児に比べ、自分たちの性を頭の良さに関連付ける傾向が著しく低かった」とのことでした。
●「勉強ができるかどうか」という質問だとバイアスが生じない不思議
私が最初に読んだ記事では紹介するのが遅れてもう消えてしまいました。その記事では上記の話だけだった気がするのですが、実は他にもいろいろな課題をやっていたようです。
研究では、頭の良い子向けのゲームと努力をする子向けゲームの間ではどちらを選ぶかの質問も行っていました。結果、6歳と7歳の女児は男児よりも頭の良い子向けゲームに興味を示さない傾向がみられました。先程と同じ年齢で、同じバイアスが生じたわけです。
こうしたこともあるのか、女性の職業選択や、物理や哲学など、一般的に頭の良さと関連付けられている分野を避ける結果となっている可能性があると、論文では指摘していました。
さらに、研究では、男2人女2人のうち学校で好成績を収めるのはどちらと思うかも質問してします。この場合、女児は好成績を収めるのは女児と答え、年齢の差で回答に違いはありませんでした。なんとこれだと差が出ていなかったのです!
論文では、女児は学業成績と頭の良さを別個のものとして認識していると説明していたようですが、不思議な気がしますね。
あと、この実験だけ見ると、男性が「女性より男性が優れている」と考えるのは、子供の考えのまま大人になっているんだと言えそうです。ただ、男性のこの傾向もより顕著になるなど、後天的な影響がある可能性は考えられますので、そこらへんはどうなのも知りたいですね。
また、そもそも「女性より男性が優れている」に科学的根拠はないので、男女とも大人になるまでのどこかで学んでおいてほしい、と私は思います。
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