【クイズ】バブル崩壊のあった1990年代の殺人事件被害者数について正しいものはどれでしょう?
(1)これまで一貫して低下傾向だった殺人事件被害者数が、バブル崩壊後に増加傾向に転じ、増加が90年代後半まで続いた。
(2)殺人事件被害者数は増えたり減ったりで、一貫した傾向は見られない。
(3)バブル崩壊があった時期だが、殺人事件被害者数は一貫して減少を続けていた。
●犯罪者数や犯罪件数で治安の悪化が説明できない理由
以前も書いたように、犯罪者数や犯罪件数で治安の悪化を見るのはたいへんまずいです。「犯罪」の定義そのものや警察の方針や能力によって、いくらでも変わる数字のためです。「凶悪犯罪」「重大犯罪」なども同様ですね。
わかりやすいのは、年末の交通違反取締り強化でしょうか。警察の取り締まりの方針次第で、違反件数が大きく変わってしまうということが、これで理解できるでしょう。
また、「犯罪」の定義は警察の意向だけでなく、市民の感覚の影響やそれによる法改正も大きいです。昔は犯罪だと思われていなかったが、時代が変わって犯罪だとされるようになるということがあります。
このように以前は犯罪ではなかったものが犯罪とされるようになるのですから、単純な犯罪の件数を見るのは間違いです。
●殺人事件の被害者数を目安にした方が良い理由
じゃあどうすりゃいいの?と言うところでは、こういった場合に目安とすべきは、殺人事件の被害者数だと思っていました。
理由としては、まず殺人事件は過去も現在も最も重大だとされる犯罪であること。また、人が亡くなっているケースなので、隠蔽が比較的難しく露見している可能性が高いこと、警察によって都合よく操作されづらいことなどです。殺人は定義が変わっていないものだろうと思っていたのです。
ただ、
図録▽他殺による死亡者数の推移を読んでみると、この数値もかなり問題がありそうで、「殺人事件の被害者が総て死亡に至るわけではない」という不思議なことになっています。殺人未遂事件の被害者も含めているのかもしれません。
また、「人口動態統計の他殺数と警察統計の殺人事件被害(死亡)者数」が一致していないこと、さらに「傷害致死の犠牲者」を考慮しても説明できないことが指摘されていました。
●日本の殺人事件被害者数の推移 ピークは1955年(昭和30年)
ということで、殺人事件の被害者数も結構問題がありそうなのですが、他よりはマシだろうということで仕方なくこれを使います。
データはさっきの
図録▽他殺による死亡者数の推移ではなく、これと「人口動態調査」を用いて表にしてくれていた
殺人事件被害者数|年次統計(2014-1-9)から。
一気に見ずに小分けにしますが、ピークは1955年(昭和30年)なんです。なので、治安が悪化しているって言うけど、昔の方がずっと治安が悪かったんじゃないの?と反論する人もいます。
なお、団塊の世代は1947年~1949年であり、彼らが6歳から8歳のときに殺人事件被害者数が最大だったとも言えます。
また、日本の高度成長期は1954年からだと言われていますが、この時期にはむしろ増えていたということもわかります。
年 殺人事件被害者数 最大値を100とした比率
1947 (昭22) 1,314人 62
1948 (昭23) 1,641人 77.4
1949 (昭24) 1,718人 81.1
1950 (昭25) 1,916人 90.4
1951 (昭26) 1,781人 84
1952 (昭27) 1,764人 83.2
1953 (昭28) 1,756人 82.9
1954 (昭29) 1,958人 92.4
1955 (昭30) 2,119人 100
●ピークの後は急激に減少
この後は大体減少傾向でありあまりおもしろくないですね。ただ、ピークから見て30%減ったというちょうど良い年があるので、とりあえずそこまで。
この時期は殺人事件被害者数が急激に減っていた時期でもあります。
先ほど書いたように日本の高度成長期は1954年からであり、遅れて殺人事件の減少に寄与したという見方は一応可能です。
年 殺人事件被害者数 最大値を100とした比率
1956 (昭31) 1,841人 86.9
1957 (昭32) 1,807人 85.3
1958 (昭33) 1,968人 92.9
1959 (昭34) 1,869人 88.2
1960 (昭35) 1,749人 82.5
1961 (昭36) 1,595人 75.3
1962 (昭37) 1,484人 70
●1960年代、1970年代はあまり減らず
1962年以降は緩やかな減り方というか、あまり変わっていない時期が続きます。ちなみに東京オリンピックは1964年でした。この頃はあまり減っていません。
また、1973年までが高度成長期なのですけど、特にこの時期で変化が見られるわけではありません。
年 殺人事件被害者数 最大値を100とした比率
1963 (昭38) 1,482人 69.9
1964 (昭39) 1,480人 69.8
1965 (昭40) 1,406人 66.4
1966 (昭41) 1,409人 66.5
1967 (昭42) 1,395人 65.8
1968 (昭43) 1,461人 68.9
1969 (昭44) 1,412人 66.6
1970 (昭45) 1,362人 64.3
1971 (昭46) 1,380人 65.1
1972 (昭47) 1,372人 64.7
1973 (昭48) 1,396人 65.9
1974 (昭49) 1,390人 65.6
1975 (昭50) 1,429人 67.4
1976 (昭51) 1,412人 66.6
●1980年直前で急激に減少
ただ、1978年、1979年となぜか一気に減りました。むしろ高度成長期が終わった後の減少です。
年 殺人事件被害者数 最大値を100とした比率
1977 (昭52) 1,370人 64.7
1978 (昭53) 1,304人 61.5
1979 (昭54) 1,192人 56.3
1980年もかなり減ったものの、その後は一進一退。とはいえ、既にピークの半分近いところまで減っています。
年 殺人事件被害者数 最大値を100とした比率
1980 (昭55) 1,113人 52.5
1981 (昭56) 1,153人 54.4
1982 (昭57) 1,093人 51.6
1983 (昭58) 1,151人 54.3
1984 (昭59) 1,134人 53.5
●ピークの半分を下回り1000件未満に
1985年についにピークの半分を下回ります。また、1987年には1000人を初めて切りました。さらに1989年には40%も切っています。
減り方を見ていると、おもしろいですね。少しずつ減るというのではなく、ガクン、ガクンとたまに下がる年が見られます。これは予想外の動きでした。
1985 (昭60) 1,017人 48
1986 (昭61) 1,029人 48.6
1987 (昭62) 918人 43.3
1988 (昭63) 916人 43.2
1989 (平1) 767人 36.2
●バブル崩壊のあたりはほとんど減っていない
この後は全然減らない時期が続きます。
上記までを見てわかるようにあまり経済状況とは一致していない気がするものの、バブル崩壊が1991年ですので、景気が悪くてなかなか減らなかったという言い方はできるかもしれません。
1990 (平2) 744人 35.1
1991 (平3) 685人 32.3
1992 (平4) 748人 35.3
1993 (平5) 805人 38
1994 (平6) 789人 37.2
1995 (平7) 727人 34.3
1996 (平8) 680人 32.1
1997 (平9) 718人 33.9
1998 (平10) 808人 38.1
1999 (平11) 788人 37.2
2000 (平12) 768人 36.2
2001 (平13) 732人 34.5
2002 (平14) 730人 34.5
2003 (平15) 705人 33.3
【クイズ】バブル崩壊のあった1990年代の殺人事件被害者数について正しいものはどれでしょう?
(1)これまで一貫して低下傾向だった殺人事件被害者数が、バブル崩壊後に増加傾向に転じ、増加が90年代後半まで続いた。
(2)殺人事件被害者数は増えたり減ったりで、一貫した傾向は見られない。
(3)バブル崩壊があった時期だが、殺人事件被害者数は一貫して減少を続けていた。
【答え】(2)殺人事件被害者数は増えたり減ったりで、一貫した傾向は見られない。
●現在は20%未満まで低下
しかし、この後また順調に減りだしています。
景気の話で言うと、リーマンショックの2008年は一応ちょっと増えていると言えますかね? ただ、日本のGDPの推移で言うと底は翌年の2009年ですから、やはり不景気とはあまり関係ないと考えた方が良さそうです。
2004 (平16) 655人 30.9
2005 (平17) 600人 28.3
2006 (平18) 580人 27.4
2007 (平19) 516人 24.4
2008 (平20) 546人 25.8
2009 (平21) 479人 22.6
2010 (平22) 437人 20.6
2011 (平23) 415人 19.6
2012 (平24) 383人 18.1
このデータで最新である2012年はピークの20%以下という少なさ。過去最低です。治安悪化という漠然としたイメージとは全く違うことがわかります。
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