<人が悪夢を多く見る理由 夢を見やすいレム睡眠時に扁桃体が活性化するため>、<レム睡眠のときだけ夢を見てノンレム睡眠では見ない…はデマ?>、<人間が夢を見る理由・夢の意味とは?現在の研究によると…>など、夢に関する話をまとめています。
●人が悪夢を多く見る理由 夢を見やすいレム睡眠時に扁桃体が活性化するため
2016/3/15:
金縛りは医学用語だと睡眠麻痺という睡眠障害 原因と対策は?をやっていて、もう少し調べたいと思った話が二つありました。その一つが、人が悪夢を多く見る理由はこれで説明可能なのでは?という話です。このきっかけとなる話が出ていたのは、
「金縛り]の謎を解く 夢魔・幽体離脱・宇宙人による誘拐 (PHPサイエンス・ワールド新書)
という本のレビュー記事でした。
記事タイトルの「わざとかかることもできる?」については、"超常現象でも心理現象でもなく、科学的にきちんと説明できるものなのだから、金縛りになりやすい状況を作り出すことはできる"だけだったため、「タイトルに偽りあり」な感じだったものの、以下の部分はおもしろかったです。
<一度金縛りにあった人なら、短時間で終了することも、危害を与えられるものではないこともわかっているが、それでも金縛りにあうと毎回強い恐怖を感じるはず。でも、こんな風に何度経験しても恐怖感を体験するのにも理由があったのだ。金縛りと同じく、夢を見るレム睡眠中には、主に、
不安や恐怖、怒りといった負の感情と関係していると考えられている扁桃体が活性化する。金縛りに対する恐怖感は、これによって「自動的に起こされた付随症状」で、
夢に悪夢が多いのもこのせいだと考えられているのだ>
わざとかかることもできる? 科学的に解明された金縛りの秘密とは ダ・ヴィンチニュース / 2014年2月20日 11時50分 ダ・ヴィンチニュースでは「夢を見るレム睡眠中」となっていたものの、正確には「夢を見やすいレム睡眠中」です。これについては、後半にまとめた<レム睡眠のときだけ夢を見るは嘘?ノンレム睡眠でも夢を見ている<>をどうぞ。とりあえず、悪夢を多く見る理由 については、別記事でも同様の説明が見られましたので、こちらも紹介しておきます。
「何かに追いかけられたり、襲われそうになったりして夢の中で怖い思いをするのは、決して珍しいことではありません。実は、夢の内容は基本的に悪夢が多いのです。夢を見ているときは、情動に関わる脳の扁桃体という部位が興奮しています。この扁桃体は、喜びなどのポジティブな刺激でも興奮しますが、やはり圧倒的に多いのは不安や恐怖などのネガティブな刺激による興奮。その強烈な情動体験によって生まれる夢が、まさに悪夢なのです」
(日本睡眠学会理事で江戸川大学社会学部人間心理学科教授の福田一彦さん。"
人はどうして、訳の分からない夢を見るの?:おとなのカラダゼミナール:日経Gooday(グッデイ) 2015/9/28 佐田節子=ライター"より)
●恐怖との関係が深い扁桃体 むしろレム睡眠中に活動は低下している?
念の為に
扁桃体 - Wikipedia(最終更新 2016年1月23日 (土) 08:37)で扁桃体を読みました。これで全然違うことが書いていた場合、諸説あるということで信頼性に疑問が出てくるものの、書籍とWikipediaの記述が大体一致していますので、負の感情と関係が深いというのは間違いなさそうです。
<ヒトを含む高等脊椎動物において、扁桃体は情動的な出来事に関連付けられる記憶の形成と貯蔵における主要な役割を担う。恐怖条件づけの際、感覚情報は扁桃体の基底外側複合体、特に外側核へと送られ、そこで刺激の記憶と関連付けられる>
以上のように扁桃体と恐怖が関係することも問題なさそうです。じゃあ、悪夢が多いのは扁桃体が活性化するから説で決まりじゃないか?と思うのですが、検索しているとこれを完全にひっくり返す
レム睡眠が心を癒す、脳スキャンで検証 | ナショナルジオグラフィック日本版サイト(2011.11.28)という記事も出てきてしまって戸惑いました。
これは、夢を見ることで、心に痛みを覚えるような記憶のつらさが軽くなるのかもしれないという、最近発表された研究に関する記事です。夢が一種の「夜間セラピー」のような役割を果たすといいます。この研究では、以下のような実験をしたのですが、ここで睡眠中に扁桃体の活動が低下するという話が出ているのです。
<片方のグループでは、午前中に写真を見て、昼間は眠らずに、夜にもう一度見てもらった。もう片方のグループも同じ写真を見るが、最初に見てから一晩眠り、翌朝になってからもう一度見てもらった。
その結果、間に睡眠をとっている被験者のほうが、2度目に写真を見たときの感情の反応がかなり軽いと報告した。
レム睡眠中にMRIで脳をスキャンしたところ、扁桃体という感情を司る部分の活動が低下していることがわかった。扁桃体の活動低下により、合理的な判断をする前頭前皮質が写真の影響を和らげることができたと考えられる>
ミズーリ州シデーリアのボスウェル地域保健センターで睡眠医療責任者を務めるデイビッド・クールマン(David Kuhlmann)さんは、夢を見ることですべての感情的ストレスが癒されるわけではないと指摘し、「この結論はやや踏み込みすぎではないか」としていました。
ただ、とりあえず、今回注目している扁桃体の活動としては、むしろ低下という結果。この計測結果自体はあまり間違いが起きないのではないかと思います。ということで、「レム睡眠時に扁桃体が活性化するため」というのは、悪夢を見る理由の説明としてはあまり適切ではなさそうだという残念な結果になってしまいました。
●悪夢で苦しそうな顔をするというのは本当か?カメラで観察すると…
ところで、最初の金縛りに関する記事については、もう少し調べたいと思った話が二つあったと書きました。もう一つは、金縛りにあった多くの人が胸やお腹に重さを感じることが多く、なかには、何か重いものが乗っているのを見たという人もいることについて、書かれていた話でした。
<しかし、実際に赤外線のモニターカメラで観察していても、金縛りにあっている人はずっと眼を閉じたまま。
眉間にしわを寄せて苦しそうな顔をするわけでもない。実はこれ、レム睡眠中に睡眠麻痺が起きて呼吸が止まってしまっていることに対してなんとかつじつま合わせをしようとした結果、自分自身で胸やお腹に重いものが乗っているという「幻覚」や実際に乗っているのを見るという「幻覚」を生み出してしまうからなのだそう>
これを見て私は「金縛りではうなされない」って意味かと思ったのですが、「眠ったまま苦しそうな声を立てる」ということなので声を出すくらいなら可能そうです。また、悪夢全般で苦しそうな顔をしないという意味でもないですね。最初見たときは、よくある悪夢を見る描写が嘘っぱちだったのかと思ったのですが、そうと言い切れる情報じゃありません。
なので、こちらの話もこれ以上全然広がらず。<人が悪夢を多く見る理由 夢を見やすいレム睡眠時に扁桃体が活性化するため>説が正しいかどうか怪しい感じになっただけでなく、思いついた2つの話もどちらもスッキリしない…という困ったことになってしまいました。
●悪夢を見やすいは嘘?動物は悪い夢だけでなく、良い夢も頻繁に見る
2017/07/14:AIに関する話で、なおかつわかりやすい話ではないのですが、動物は良い夢・悪い夢両方を見やすいという話があったので、ここに追記。
グーグルDeepMind、AIの学習を高速化させる新手法を発表--動物の見る夢から着想 - ZDNet Japan(Liam Tung (ZDNet.com) 翻訳校正: 編集部 2016年11月21日 10時47分)という記事です。
Google DeepMindの研究者らが公開した論文によると、今回発表されたものは動物が夢を見ることで学習速度を向上させている点から着想を得た方法で、3D迷路ゲームなどの学習速度が、以前のアルゴリズムに比べて10倍に高速化されました。UNREALと呼ばれるこの方法は、囲碁を学習したときなどで使われた深層強化学習に加えて新しいタスクを組み込んでいます。
その1つが、動物の夢から着想を得たもの。論文では、「動物が肯定的な、あるいは否定的な報酬に関わる出来事の夢を頻繁に見るように、われわれが作り出したエージェントも報酬に関わる出来事を含むシーケンスを優先的に再現するようになっている」という難しい書き方をしていたようです。
イメージが掴みづらいのですが、報酬が得られた記録をより頻繁に学習することで、報酬がまれにしか得られないシナリオにおいても、報奨を得られる兆しを予測するように訓練された…といった感じで理解。こうやって書くと、わざわざ論文に書くまでもないなんてことのない方法に見えちゃいますので、この理解で良いかわからないのですが…。
で、前述の通り私が興味を示したのは、"動物が肯定的な、あるいは否定的な報酬に関わる出来事の夢を頻繁に見る"という部分。動物というのは、悪い夢だけでなく、良い夢もよく見るってことみたいでした。ここらへんの話をまた見つけたら、記録しておきたいです。
●俗説?レム睡眠のときだけ夢を見て、ノンレム睡眠では夢を見ない説
2015/7/20:「夢を見るしくみ」って、絶対誰かわかりやすく書いているだろうと軽く考えて検索。しかし、意外に良いものが見つからず苦労しました。信頼性の関係でニュースサイト的なところがほしかったので最初読んでいなかったところですが、
夢の仕組み | 夢のメカニズム~確実に夢を見る方法は?|カラーセラピー 色診断なんかは「夢を見るしくみ」のスタンダードな説明だと思いますので代表例として紹介しておきます。
夢の仕組み | 夢のメカニズム~確実に夢を見る方法は?|カラーセラピー 色診断
私たちの睡眠中の状態は、「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」の2種類に分類されます。
(中略)私たちは、(引用者注:精神が活発に活動している)レム睡眠のときに夢を見ているのです。
一方、ノンレム睡眠は、そうした眼球の動きがない睡眠です。ノンレム睡眠のときは肉体も精神も深い休息の中にあり(引用者注:一般的な説明は異なるので後述)、夢を見ることはありません。
レム睡眠とノンレム睡眠は、約90分周期で繰り返されることが確認されています。一日に8時間眠るとすると、私たちはだれしも毎日5回くらいは夢を見ている計算になります。
しかしそうした夢の殆どは、記憶中枢のなかに保存されることなく、忘れられてしまいます。ただ、起きる直前にレム睡眠の状態にあったときだけ、その夢を覚えている事ができるのです。(中略)
夢を見ないという人も、実際には一晩に何度も夢を見ています。ただ、起きる直前にノンレム睡眠の状態にあったか、起きると同時に夢を忘れてしまったかのどちらかなのです。
●怪しい!ノンレム睡眠のときは肉体も精神も深い休息状態って本当?
他の問題は後で書きますが、上記では「ノンレム睡眠のときは肉体も精神も深い休息の中にあり」も気になりました。初めて読む説明であり、勘違いじゃないかと思います。例えば、
レム睡眠 - Wikipedia(最終更新 2015年4月15日 (水) 07:11)では、以下のように説明されています。
【レム睡眠】
・まぶたの下で眼球を動かしている急速眼球運動(レム)を伴う睡眠。
・
身体が眠っているのに、脳が活動している状態。(身体的には骨格筋が弛緩状態にあり、急速眼球運動のほかは身体はほとんど動かないが、脳波はシータ波が優勢で覚醒時と同様の振幅を示す)
【ノンレム睡眠】
・急速眼球運動(レム)を伴わない睡眠。
・
筋肉の活動は休止せず、脳は休息状態になる。
・ノンレム睡眠は段階1から段階4までの4段階に分けられ、段階4が睡眠の最も深いレベルである。
・体温は少し低くなり、呼吸や脈拍は非常に穏かになってきて血圧も下がる。いわゆるぐっすり寝ている状態で、多少の物音がしたり、軽くゆさぶられても目が覚めることはない。もしノンレム睡眠の最中に強制的に起こされると、人体はすぐさま活動を開始することができない。大脳が休止状態から活動を開始するまではしばらくの時間が必要で、それまでの間はいわゆる「寝ぼけた」ような行動をしてしまうことになる。一般的にノンレム睡眠は脳の眠りと言われる。
【レム睡眠とノンレム睡眠の現れ方】
・入眠時にはまずノンレム睡眠が現れる。
・通常は入眠後、約1時間以内に段階4にまで達し、その後徐々に浅くなってレム睡眠になる。
・以後、ノンレム睡眠とレム睡眠が交互に現れ、レム睡眠はほぼ90分おきに20 - 30分続く。
・一晩の睡眠では4 - 5回のレム睡眠が現れる。
●レム睡眠のときだけ夢を見てノンレム睡眠では見ない…はデマ?
最初のものはノンレム睡眠の説明が変でしたが、夢のしくみの解説そのものは極めてスタンダードなものだと思います。ところが、今回検索していて驚いたのが、"夢は「レム睡眠」のときに見るのウソ "という記事が目に入ったことです。この記事そのものは後で引用しますけど、とりあえず、
夢 - Wikipedia(最終更新 2015年5月19日 (火) 17:27)でも同様の記述があることを確認しました。「夢のメカニズム」という項目に、以下のような説明があります。
<メカニズムについては不明確な部分が多く、研究対象となっている。 例えば、夢は浅い眠りに陥るレム睡眠中に見るとされ、一般的にはノンレム睡眠時は発現されないと考えられていた。しかし、ノンレム睡眠時にも夢を見ると考える研究者も多く、そうした研究も続けられている>
●人間が夢を見る理由・夢の意味とは?現在の研究によると…
"夢は「レム睡眠」のときに見るのウソ "はもう少し後で。もともと私が知りたかったのは夢のしくみ的なところですので、もう少しWikipediaによる夢の説明も読んでみます。
上記の部分でもわかるように、とりあえず、「夢を見る理由については現在のところ不明」とされていました。とりあえず、「神経生理学における夢の理解」という項目には、以下のような説明があります。
<現代の神経生理学的研究では、「夢というのは、主としてレム睡眠の時に出現するとされ、睡眠中は感覚遮断に近い状態でありながら、大脳皮質や(記憶に関係のある)辺縁系の活動水準が覚醒時にほぼ近い水準にあるために、外的あるいは内的な刺激と関連する興奮によって脳の記憶貯蔵庫から過去の記憶映像が再生されつつ、記憶映像に合致する夢のストーリーをつくってゆく」と考えられている、と言う>
●休息のための睡眠で夢を見てエネルギーを消費する不思議
さて、おまちかねの「レム睡眠」の記事です。科学系の話に強いナショナルジオグラフィックのものでした。>
夢は「レム睡眠」のときに見るのウソ :日本経済新聞(2015/3/10 6:30 三島和夫)というものです。
全く考えたことはなかったのですけど、三島和夫さんは先に夢を見ることの矛盾を指摘しています。「できるだけ何もしない」のが睡眠の大事な目的の1つであるにも関わらず、実際には夢を見ることで私たちの脳はかなりエネルギーを消費してしまっているといいます。
また、先程「人間が夢を見る理由」と書きましたが、実は、人間以外でもかなりの動物が夢を見ています。レム睡眠は爬虫(はちゅう)類や両生類などの下等動物にもみられる発生学的に古い睡眠だと考えられているとのこと。このレム睡眠では筋肉が弛緩(しかん)し、無動状態となり、エネルギー消費量は低下。これが生き残り戦略としての睡眠の始まりだと考えられています。こちらに矛盾はありません。
一方、ノンレム睡眠はより高等な生物にみられ、特に霊長類など大脳皮質が発達した動物では主要な睡眠となります。ただ、前述の通り、「夢を見る」とされていた睡眠は、高等な生物特有のノンレム睡眠ではなくレム睡眠の方でした。これもまた不思議に思うだろうと、三島和夫さんは指摘していました。
●レム睡眠のときだけ夢を見てノンレム睡眠では見ない…はデマ?
ところが、"実はノンレム睡眠中にも我々はかなり夢を見る"のだそうです。載っていたデータは以下でした。
レム睡眠中に外からの刺激で覚醒させると被験者が夢を見ていたと回答する確率:約80%
ノンレム睡眠中に外からの刺激で覚醒させると被験者が夢を見ていたと回答する確率:20~60%
ノンレム睡眠中は夢を見ないのではなく、なかなか思い出せないというのが正解のようです。そして、ノンレム睡眠の夢が思い出せない理由は、「つまらないから」という意外なものでした。
鮮明で込み入ったストーリー性がある夢、いわゆる我々が夢と聞いてイメージする夢らしい夢というのは、レム睡眠時に多いのです。
一方、う少し曖昧なものも多い。ぼんやりとした考え、イメージ、音、声などの感覚体験を中心としたごく断片的な夢や、。景色が見えたり、人と話したりするなど、何となくストーリーがあるものの全体として短めで脈絡がないといった、淡く短い夢はノンレム睡眠時に多いとされていました。
●レム睡眠の夢が複雑な理由はノンレム睡眠との違いでわかりそう
これは先程のレム睡眠とノンレム睡眠の説明を見ると、理由が推察できそうです。もう一度ポイントを見てみましょう。
【レム睡眠】 身体が眠っているのに、脳が活動している状態。
【ノンレム睡眠】 筋肉の活動は休止せず、脳は休息状態になる。
レム睡眠時には大脳皮質が活発となり、脳波も覚醒時に近い波形になるために、鮮明な夢を見るようです。また、レム睡眠が下等動物でもみられる理由は、レム睡眠の最大の目的は「体を休める」ことであり、外敵が近づいた時に反応しやすいように脳活動は比較的高めに維持されているから、と説明されていました。
じゃあ、ノンレム睡眠をやってしまう高等生物って、外敵にやられるんじゃないの?と不思議な気分になりますが、その説明はなし。脳を休めるノンレム睡眠をしても大丈夫なほど、他の手段で安全性を高めているのかな?と想像しましたけど、どうなんでしょうね。新たな謎が出てきてしまいました。
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