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田崎真珠(TASAKI)復活は品質のこだわりではなくファンド出資のおかげ


 真珠ができる貝はいろいろありますが、現在では「本真珠」という言い方でも複数の貝の真珠を含めて言うときもあるそうです。

【クイズ】では、本来「本真珠」といった場合は、どの貝の天然真珠のことを指していたのでしょう?

(1)アコヤガイ
(2)アワビ
(3)クロチョウガイ

2021/03/14追記:
●伝統的に捨てられていた青い真珠、今やブランド化で注目の存在に





●田崎真珠(TASAKI)復活は品質のこだわりではなくファンド出資のおかげ

2016/3/20:TASAKI(旧田崎真珠)復活の話がおもしろいと思いました。おもしろいと思った部分は、やたらと嫌われるファンドが成功に導いていることと、日本にありがちな品質信仰がむしろ業績を悪化させていたことの2点です。品質が良ければとか技術があればとかは、家電メーカーなどのものづくり企業にありがちな誤解。彼らは「いいものを作っていれば売れる」みたいなこと言いますね。実際には全然売れないんですけど。

<TASAKIは、1954年創業の日本を代表する宝飾品メーカー。田崎真珠という旧社名からも分かるように、真珠にこだわり、生産から販売までを一気通貫で手掛けてきた。2012年10月期まで3期連続で営業赤字に陥っていたが、その後V字回復。2014年10月期には14億円の営業黒字を計上した>
(復活TASAKI、さらば「ダサい真珠」:日経ビジネスオンライン 武田 安恵 、 中 尚子 2016年1月6日より)

 一応、フォローしておくと、TASAKIの真珠の品質が悪いという意味ではありません。今でも良いのです。<真珠は「巻き」と「照り」を大事にせよ──。TASAKIで真珠の選別に携わる職人たちは、入社時からそう教え込まれてきた。少しのキズやえくぼがあっても、真珠層の厚み、そして輝きの強さを大事にしてきた。それは今なお伝わる、60年間守られてきた伝統だ>とされていました。

 しかし、TASAKIが苦しかった時期にも品質が悪かったわけではないというのが大事なところ。むしろ"知名度や品質の高さに対する評価は非常に高かった"とあるように、むしろ高評価でした。つまり、品質が良いのに全く売れなかったってことなんですよ。品質が良ければ売れるは大間違いだということがわかります。


●田崎真珠の過剰な品質へのこだわり…中国の技術向上で裏目に

 当時の品質へのこだわりは、以下のようなものでした。これでうまく行っていた時期が長かったのです。

<TASAKIが運営する養殖場は現在、冒頭で紹介した九十九島とミャンマーの2カ所だが、ピーク時は、その数が9つもあった。真珠の養殖は難しく、高い値がつく最高級の真珠は生産量全体の1~2割程度にすぎない。養殖場をたくさん抱えることで、高品質の真珠を確保する。これが同社の戦略だった。 「在庫は力なり」。田崎真珠を創業した田崎俊作氏はこう言い続け、養殖場の拡大にいそしんだ>

 ところが、"2000年代に入り、真珠の卸売業界を取り囲む環境は大きく変わ"ります。こういうことになると、「いいものがわかっていない」と今度は消費者を叩き出すというのが、ネットでもよく見られます。ただ、それは現実を見ていないだけであり、消費者批判で問題が解決するわけではありません。

<中国が淡水パールの生産技術を向上させたことで、あこや真珠の10分の1以下の値段で見た目がさほど変わらないものが出現。その影響で、あこや真珠は需要が縮小しただけでなく、価格も下落した。「力」だったはずの在庫は、一気に業績を圧迫し始めた>


●ファンドが見抜いたTASAKIの問題点

 変わらない企業より変われる企業の方が優れているというのが私の持論ですが、TASAKIはなかなか変われませんでした。失敗は成功のもとなんですけど、成功は失敗のもとでもあるんですよね。飯田隆也・専務執行役は、「正しいと信じて積み上げてきたビジネスモデルだっただけに、時代に合わなくなっても自分たちだけでは何から手をつければいいか分からなかった」としていました。
 
 しかし、いよいよ追い込まれたTASAKIは独立系ファンド・MBKパートナーズの出資を受け入れることになります。先ほどの「知名度や品質の高さに対する評価は非常に高かった」というのは、ここが出資前にやっていた大規模な消費者リサーチでわかっています。そして、不満はたった一点「デザインがいまいち」というところも突き止めていました。

 「過剰な生産体制を見直し、デザインを変えられれば、田崎真珠は生まれ変わる。埋めなければならないパーツは、実は少なかった」(MBKの池田大輔マネージングディレクター)のですが、これはファンドに指摘されるまでわからなかったようです。記事では、"企業再生の現場ではしがらみも多く、既存の経営陣だけでは当たり前のことを当たり前にやるのが難しい"と指摘していました。

 ただし、"ブランドのイメージはすぐに変わるものではない"ために、"最初の1~2年は数字が上がらず"、5年でやっとプラス。さすがにそこまで簡単ではなかったようです。あと、真珠だけではないラグジュアリーブランドに生まれ変わったという話があり、ニトリが家具だけではないトータルコーディネートという路線へ切り替えた話などとも重なりました。(2つ目のリンクはランドセル屋からスクール用品ショップへの転身例)

  ■大塚家具とニトリ・イケアの比較 価格よりトータルコーディネートがポイント
  ■5月からランドセル販売、最も売れるのは8月 少子化でも市場拡大の謎


●デザインも伝統を捨てたから良かった

 なお、デザインの良さというのも、適切な人材あってこそであり、こちらもそう簡単ではなかったかもしれません。

 冠婚葬祭用を脱却し、「様々な洋服に合わせて楽しめる、デザイン性の高いジュエリーにすれば、もっと真珠が身近なものになる」(ブランド力を強化できる手腕を持つ唯一の日本人として招かれた田島寿一社長)という方向性でした。

 そして、宝飾デザイナーではなく服飾デザイナーであるタクーン・パニクガルさんを起用し、"「丸ければ丸いほど美しい」と言われていた真珠の既成概念をくつがえす"デザインが次々と出てきたことが大きいようです。
 丸い真珠を削って逆さまにしたダイヤモンドをくっつけたり、鋭いトゲを刺し込んで真珠の丸さを際立たせるデザイン。 真珠を真っ二つに割り、断面を見せることもいとわなかった。

 このデザインのところでも、"生産部門にいた職人の中には「丸い真珠が美しいのに、削るなんて、とてもできない」と怒り出す者もいた"とありました。

 継続は力なりといいますが、人は変わらないことより変わることの方は難しいという話も何度か書いたと思います。上記の逸話も人は変わることが難しいという象徴的な話ですね。

 
●「本真珠」というのは本来は鮑玉を指す

 間にうまく挟めなかったので、最後にクイズの回答。

【クイズ】では、本来「本真珠」といった場合は、どの貝の天然真珠のことを指していたのでしょう?

(1)アコヤガイ
(2)アワビ
(3)クロチョウガイ

【答え】(2)アワビ
真珠 - Wikipedia

 本真珠

本来は鮑玉(あわびだま、アワビの内部に形成される天然真珠)のことを指すが、現在はアコヤガイ(Pinctada fucata martensii)の真珠や淡水真珠までをも含めている。その際には貝パールなどのイミテーションではないという意味。

 こういった昔ながらの「本物」にこだわるというのももちろん良いのですけど、そういった需要が大きいとは限らないというのが今回の話でしたね。工夫が必要です。


↓北村真珠養殖ではありませんが、青い真珠を検索したもの


●伝統的に捨てられていた青い真珠、今やブランド化で注目の存在に

2021/03/14:TASAKI(田崎真珠)の話ではないのですが、「青い真珠」かつては廃棄、今やブランド 「今年は青みが強い」(2021/3/13 20:10 神戸新聞NEXT)という記事がありました。真珠関係で、なおかつ伝統を壊したという話だったのでこちらに追記します。こちらの話も学ば日があって、おもしろい話です。

 神戸は、かつて真珠加工の中心として世界に知られる地だったそうです。知りませんでしたわ。養殖は地元ではなく長崎県対馬市でやっているそうですが、「北村真珠養殖」はその神戸の会社で、今でも養殖から加工、販売までを一貫して手掛けている会社だとのこと。創業はは1901(明治34)年という伝統的な会社です。

 ただ、私が他の投稿でも強調しているように長く続く会社はむしろ変化しているということも多いんですよね。伝統を守るだけじゃダメなことがあるのです。「北村真珠養殖」の場合は前述のタイトルでわかるように、「青い真珠」で伝統に逆らいました。例年、採取した真珠の約1%が青みを帯びており、これまでは廃棄の対象になっていたといいます。

 この廃棄していた青い真珠を2006年にブランド名を付けて商品化。17年に香港で開かれた世界的な宝飾品展示会に出品すると、地元メディアに取り上げられ、清らかな白色とは違う魅力が注目されるようになったといいます。近澤祐介社長(43)によると、今年は青みが強く、光沢も上々」とのことで、ネックレスやピアスなどの製品に仕上げて6月ごろから販売されるそうです。


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