2021/06/19:
●捏造を修正した?以前より減った最新の中国のGDPを日本と比較してみる 【NEW】
【クイズ】2014年の中国のドル換算の名目GDPは、日本の名目GDPの何倍くらいだったでしょうか?
(1)およそ1.2倍
(2)およそ1.5倍
(3)およそ2.3倍
●中国が日本のGDPを抜いたのは2010年で、報道があったのは2011年
2016/3/21:中国が日本のGDPを抜いたのはいつだっけ?と検索すると、2010年でした。この2010年のデータの算出年は翌年の2011年ですから、2011年に逆転の報道が出ていました。最初実質GDPで比較するつもりでいましたが、名目GDPでの比較だったんですね。
中国、日本抜き2位確定 10年名目GDP :日本経済新聞(2011/2/14 10:59)などの記事が出ています。
<2010年の日本の名目国内総生産(GDP)の実額は、年間を通じて初めて中国の名目GDPを下回った。1968年以来、日本は米国に次ぐ世界第2位の経済規模を保ってきたが、10年年間では中国に次ぐ第3位になったことが確定した。
内閣府の試算では、日本の10年の名目GDPはドル換算で5兆4742億ドル(円ベースでは479兆2231億円)。これに対して中国の名目GDPは5兆8786億ドルで、日本が中国を4044億ドル下回った>
●2010年の逆転までの中国と日本のGDPの推移 実は2009年ですでに逆転?
中国のGDPって話をすると「嘘だ」という声が出るので先に断っておきますが、今回の値はIMF(国際通貨基金)の値です。これで文句ないだろうと検索したら、「IMFは接待漬けで買収されている」みたいなものも発見。面倒くさいですね。とりあえず、2014年の世界銀行、国際連合、CIAワールド・ファクトブックのランキングを見ると、IMFと順位はいっしょですし、前後の国との差もそう大きくは変わりません。IMFで見ていきます。
最初の記事で出ていた世界2位になった年の10年くらい前から見た推移は以下です。というか、これだと2009年の時点で日本を抜いていましたね。やはり元データで異なるせいでしょうね。これくらいの誤差は出ます。
年 日本の名目GDP 中国の名目GDP
2000 4,730.99 1,205.26
2001 4,161.03 1,332.25
2002 3,980.90 1,461.92
2003 4,304.60 1,649.92
2004 4,656.41 1,941.75
2005 4,572.41 2,268.62
2006 4,356.85 2,729.75
2007 4,356.35 3,523.28
2008 4,849.19 4,558.90
2009 5,035.14 5,059.72
2010 5,498.72 6,039.55
単位: 10億USドル
日本のGDPの推移 - 世界経済のネタ帳中国のGDPの推移 - 世界経済のネタ帳 ドル換算だと為替レートのせいでかなりブレるわけですが、単純に前年比を見ると以下の通り。中国がものすごい勢いで伸びていることがわかります。
年 日本 中国
2001 -12.0% 10.5%
2002 -4.3% 9.7%
2003 8.1% 12.9%
2004 8.2% 17.7%
2005 -1.8% 16.8%
2006 -4.7% 20.3%
2007 0.0% 29.1%
2008 11.3% 29.4%
2009 3.8% 11.0%
2010 9.2% 19.4%
●マスコミだんまり…ここ3年間はめちゃくちゃ下がっていた日本の名目GDP
この順位変動があった頃は中国との比較に触れた記事が多かったのですが、その後はめっきり話が出なくなりました。そこで、それ以降はどうなっているの?と見ようとしたら、そもそも日本は下がりまくっていました。これは円安の関係ではあるんですけど、ものすごい下がり方ですね。こりゃ誰も比較したがらないはずですわ…。
年 日本の名目GDP 前年比
2010 5,498.72 9.2%
2011 5,908.99 7.5%
2012 5,957.25 0.8%
2013 4,919.59 -17.4%
2014 4,602.37 -6.4%
2015 4,116.24 -10.6%
単位: 10億USドル
2015年はIMFによる2015年10月時点の推計
●残酷…中国の逆転以来報じられない日本と中国の名目GDPの比較と推移
見たくもない!という感じですけど、予定通り中国と比較してみましょう。
年 日本の名目GDP 中国の名目GDP
2010 5,498.72 6,039.55
2011 5,908.99 7,492.53
2012 5,957.25 8,461.51
2013 4,919.59 9,490.85
2014 4,602.37 10,356.51
2015 4,116.24 11,384.76
単位: 10億USドル
2015年はIMFによる2015年10月時点の推計
年 日本 中国
2010 9.2% 19.4%
2011 7.5% 24.1%
2012 0.8% 12.9%
2013 -17.4% 12.2%
2014 -6.4% 9.1%
2015 -10.6% 9.9%
あれ?予想以上の差です。2倍どころじゃありません! 以下、倍率を出してみました。
年 中国÷日本
2010 1.10
2011 1.27
2012 1.42
2013 1.93
2014 2.25
2015 2.77
【クイズ】2014年の中国のドル換算の名目GDPは、日本の名目GDPの何倍くらいだったでしょうか?
(1)およそ1.2倍
(2)およそ1.5倍
(3)およそ2.3倍
【答え】(3)およそ2.3倍
暫定値ですが2015年はもう3倍近い差になっています。正直ここまで差があると思いませんでしたので、驚きました。GDPだけで見ると、全然相手になっていませんね。日本のマスコミはあまり日本に都合の悪い情報を出していないだろうということは予想していたものの、正直ここまで差が大きいとは思いませんでした。
私はGDPはあまり気にしすぎない方が良いという考え方ですし、見るのなら円で出した実質GDPの方が良いと思います。ただ、さすがにこの数字はショックでした…。なお、実質GDPの方が良いと書きましたが、
日本の株価は高すぎる バフェット指標で見ると日本株は過大評価だったで書いたように、ここ3年くらいの実質GDPはむしろ良くないため、こちらも暗い話になっています。
●経済産業省の統計に長年の改ざん発覚 ほぼ全品目改ざんで、10倍の差も
2017/01/07追記:関係ない話なのですが、追記するにふさわしい記事がなくてここに。中国のGDPは捏造だ!って言う人が多いので、その連想からここにねじ込みました。
経産省、繊維統計を改ざん 請負業者が告発 :日本経済新聞(2016/12/26 23:14)という記事が出ています。
経済産業省は26日、繊維製品の在庫量などを調べる「繊維流通統計調査」で長年、実態と異なる数値を記載していたと発表した。40超の品目ほぼ全てで改ざんがみられ、10年以上前の数値がそのまま記載され続け、実際の数値と最大で10倍程度の差が生じた例もある。11月に経産省から業務を請け負う業者の告発があり、不正が発覚した。
同統計は1953年から実施しているが、同省は不正発覚を受け年内で廃止する。政府は統計の精度を高める取り組みを進めているが、同省の対応はあまりにずさん。経産省によると、繊維業の所管部署が調査の回答企業数を水増しし、2016年9月分は有効回答数258社に対し、調査票を配った733社の95%以上が回答したことにしていた。
各項目の数値も調査票が十分回収できていた当時の数値を“横置き”してそのまま使い続けていた。不正開始時期は不明だが、経産省が発足した01年当時の数値のままだった項目もある。
中国のGDPが改ざんされていたとしても、さすがに日本と逆転するってことはないでしょう。捏造を主張する方もそこらへんの数字ははっきり言いません。ただ、この日本の例を見ると、信じられないレベルでの捏造もあるみたいですね。GDPでは、日銀が「本当は日本のGDPはもっと上がっているんだ!」と、別の数値を出していたましたが、やっぱり簡単に信用しない方が良さそうです。
●経産省の統計は「捏造」で「深刻」、国交省でもGDP関連の統計が問題に
2017/02/10追記:経産省の改ざん、
統計委、経産省の改ざん問題を検証 委員長「非常に深刻」 :日本経済新聞(2017/1/27 20:35)という続報記事が出ていました。これによると、2017年1月27日、政府統計の「司令塔役」である総務省の統計委員会が、経済産業省の繊維流通統計の改ざん問題について、検証したそうです。
その上で、西村清彦統計委員長は、「捏造(ねつぞう)であり非常に深刻。統計改革の動きがあるなかで、信頼性に影響する問題」と指摘しました。統計委員長が「深刻」するような事態になっています。
また、同日開かれた統計委員会の部会では、国土交通省が昨年12月、建築着工統計を13年に遡って4カ月分修正した件も検証しています。これは国内総生産(GDP)の推計にも使われる統計で、額が大きければGDPの修正につながりかねないとのこと。
●夕刊フジが騒ぐ「中国のGDP47兆円水増し」が大したことない理由
2017/02/10追記:それから、「中国のGDPが改ざんされていたとしても、さすがに日本と逆転するってことはないでしょう。捏造を主張する方もそこらへんの数字ははっきり言いません」と書いたことに関連して、もう一つ追記。
大ウソ!中国、GDP47兆円水増し 国家統計局の信頼性にまた疑問符 夕刊フジ / 2017年2月10日 17時12分が、まさに私の言ったような、中国のGDPは捏造だ!という記事でした。
夕刊フジは鬼の首を取ったように騒いでいるものの、読んでみると、地方の値が間違っていて、その合計が国の数字より大きいという話。つまり、中国全体のGDPが間違っていたという内容ですらありませんでした。中国国家統計局が発表した全国GDP統計の総額は、地方の合計と比較するとむしろ少ないよという話です。
地方政府が個別に公表したGDPの合算 > 中国国家統計局が発表した全国GDP統計の総額
国家統計局の発表では、香港やマカオを除く全土の16年GDPが名目で74兆4127億元。これより、「2兆7559億元(約47兆円)も超過していた」というのが、夕刊フジは強調していたもの。確かにひどい話だは思うのですが、前述の通り、日本との比較で使われる中国全体の数字はそのまま。変化あるわけではありません。
また、仮にこの比率と同じレベルで仮に中国全体の捏造をしたとしても、それは3.7%程度。全然日本と逆転するような大きさではないのです。なので、中国の数字は怪しいけども倍半分となるような大きな捏造ではないために、日本の数倍のGDPであることは事実…くらいの理解で良いと思われます。
●捏造を修正した?以前より減った最新の中国のGDPを日本と比較してみる
2021/06/19:以前も使ったはIMF(国際通貨基金)のデータから、前回見た年より後のデータも見てみますね。まずは前回のおさらい。以下は古いデータです。逆転した2010年から5年で一気に3倍近い、2.77倍まで名目GDPの差が開いていました。ただし、当時最新の2015年のデータは、2015年はIMFによる2015年10月時点の推計でしたので、ここも今は修正されているはずです。
年 日本の名目GDP 中国の名目GDP 中国÷日本
2010 5,498.72 6,039.55 1.1
2011 5,908.99 7,492.53 1.27
2012 5,957.25 8,461.51 1.42
2013 4,919.59 9,490.85 1.93
2014 4,602.37 10,356.51 2.25
2015 4,116.24 11,384.76 2.77
単位: 10億USドル
日本のGDPの推移 - 世界経済のネタ帳中国のGDPの推移 - 世界経済のネタ帳 で、新しいものを見てみたのですが、2015年以前のデータもみんな数字が変わっていますね。わりとちょくちょく修正されているんでしょうか。どうせやるなら…ということで、2010年以降新しいデータで全部載せてしまいましょう。すると、以前のデータより差が縮まっていていることがわかりました。中国の捏造を修正した?と思う人が出てきそうな形。ただ、当然日本との大小は逆転しするほどではありません。
年 日本の名目GDP 中国の名目GDP 中国÷日本
2010 5,759.07 6,033.81 1.05
2011 6,233.15 7,492.26 1.20
2012 6,272.36 8,539.47 1.36
2013 5,212.33 9,625.04 1.85
2014 4,897.00 10,524.21 2.15
2015 4,444.93 11,113.53 2.50
2016 5,003.68 11,227.08 2.24
2017 4,930.84 12,265.32 2.49
2018 5,036.89 13,841.90 2.75
2019 5,148.78 14,340.60 2.79
2020 5,048.69 14,722.84 2.92
2021 5,378.14 16,642.32 3.09
じわじわと差が広がっていますが、直近のデータでは日本のほぼ3倍程度なのでわかりやすくなっています。今後修正があったとしても、やはり極端には変わらないでしょう。前回書いた「中国の数字は怪しいけども倍半分となるような大きな捏造ではないために、日本の数倍のGDPであることは事実…くらいの理解」というのがやはり妥当なんでしょうね。
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