社会貢献やCSRの話をまとめ。<企業はCSRなんかやめよう 寄付や社会貢献でイメージアップは間違い>、<良さそうに見えるCSR…中途半端で持続性がないというデメリット>、<日本企業の7割は社会貢献していない 寄付やCSRより大事なものとは何か?>をまとめています。
●企業はCSRなんかやめよう 寄付や社会貢献でイメージアップは間違い
2016/3/30:私は企業は本業で社会貢献すべきであり、本業に結びつかない社会貢献活動はあまり良いと思っていません。
CSRの呪縛から脱却し、「社会と共有できる価値」の創出を:日経ビジネスオンライン(中野目 純一,広野 彩子 2011年5月19日)は、そんな考え方の記事かな?と昔取っておいた記事です。
インタビューアーは「競争戦略」で有名なマイケル・ポーター米ハーバード大学教授に「最近、CSRはやめて、CSV(引用者注:Creating Shared Value)をすべきと主張されているそうですが、その真意は」と聞いています。マイケル・ポーター教授の答えは以下でした。
「寄付やフィランソロピー(社会貢献)を通して自社のイメージを向上させるという従来のCSR活動は、事業との相関関係がほとんどなく、正しいアプローチではないと指摘しました。
実際、従来のCSR活動は必ずしも効果的なものだと言えなかった。社会に大きな影響を及ぼすには至らなかったからです。それも無理はありません。企業は、自社のイメージ向上だけに関心があり、社会にインパクトを与えて実際に社会を変えようとは真剣に考えていなかったのですから}
マイケル・ポーター教授は、CSRというのは、企業の社会的な問題への関与の第2段階に過ぎないとしています。CSRはまだレベルの低い活動だという考え方なんですね。一方、最も低い第1の段階は、マイケル・ポーター教授が「圧力政治」と呼んでいる形でした。以下のような例です。
まず、動物の権利保護や遺伝子の組み換え、公害といった問題に活動家が抗議して、デモを行って企業を困惑させたり、訴訟を起こしたりということが発生。そこで、企業は活動家のグループと良好な関係を築くため、寄付を行うことになります。これは圧力で寄付を呼んだという形なので、「圧力政治」と言っているみたいですね。
CSRは第2段階ですから、当然、この「圧力政治」よりは進んでいます。社会的な問題が企業の責任としてとらえられるようになったというのは、前進だと評価できるのでしょう。CSR活動ということで、慈善事業としての寄付やボランティアに取り組んでみせる、といったことを企業はしています。
しかし、慈善事業としての寄付やボランティアに取り組むことは、「企業の事業活動とはリンクしていない」と、ポーター教授は指摘しています。私もこの点が良くないと思っているんですよ。そして、より良い第3の段階というのは、「価値を共有する段階」という言い方をしていました。
「企業の事業活動とはリンクしていない」が問題でしたので、その逆に「企業の事業戦略と社会を結び付ける」というのがポイントであるとわかります。社会問題を企業の事業活動とは切り離して別の課題として見るのではなく、事業戦略と一体のものとして扱うのです。
●良さそうに見えるCSR…中途半端で持続性がないというデメリット
まどろっこしい言い方で全然わかりやすくないですが、一応、私の「本業で貢献しろ」という主張と同じなんででしょうかね。「なぜ企業は事業戦略と社会を結び付けることが必要なのでしょうか」という質問への回答部分では、私が毎度書いている持続性の問題に言及していた他、従来型のCSRは中途半端といった指摘も見えました。
・マイケル・ポーター米ハーバード大学教授
「いくつかの理由から重要です。まず、世界のありとあらゆる問題を解決し、すべての人を幸福にできる会社はありません。企業があらゆる社会運動をサポートしようとしても効果的ではないし、それで感謝されることもない。
次に、社会に及ぼす影響について考えると、企業は単にイメージや宣伝だけではなく、CSR活動で結果を出すことに集中する必要があります。CSR活動を宣伝と考えている限り、様々な取り組みに手を出して結果を出せないままで終わってしまう。何をすれば本当に変化を生み出すことができるのか。そのことを考えなければなりません。
変化を生み出すことができるのは、企業が事業活動に密接した社会問題の解決に取り組む時だと私は信じています。なぜなら、社会と共有できる価値を創造するのに必要なスキルや技術、人脈は企業の事業活動の中に蓄積されているからです。
社会と企業との間で価値が共有されるようになるのは、社会だけでなく企業も利益を得るからです。長い目で見れば、より持続可能な競争上のポジションを企業は作り上げることができます}
ただ、あれ?と思ったのは、以下のような話もしていたことです。これはむしろ従来型な感じがします。「地域の団体の支援や社員のボランティアは積極的に」という話です。
・マイケル・ポーター米ハーバード大学教授
「企業は地域の団体を支援し続けるべきですし、従業員がボランティアをしたり社会運動に参加したりすることを許容すべきです。このように良き市民であることは企業にとって必要なのですから。また、企業がもたらすネガティブな影響を軽減することは、企業にとって所与の条件であると言えます」
とはいえ、この後、「ですが、それだけでは十分ではありません」と続いていたので、やはりこれも第2段階という理解で良い可能性があります。
●日本企業の7割は社会貢献していない 寄付やCSRより大事なものとは何か?
2017/04/24:
本業をおろそかにした社会貢献は本末転倒 | 王道経営 | ダイヤモンド・オンライン(新 将命 2017年3月17日)という記事では、「日本企業の7割は社会貢献していない」とされていました。ただ、この投稿に追記したことでわかるように、寄付していないとかCSRしていないって話ではありません。「ビタ一文税金を納めていない会社がおよそ70%ある」という、かなりひねった解釈での「社会貢献」の解釈でした。
作者である新 将命さんは、私と同じく「社会貢献は本業を通じて行う、これが企業の社会貢献の基本」という考え方。もちろん"寄付や慈善事業、ボランティア活動など本業以外の手段で社会に貢献することも、それはそれで立派な社会貢献である"としていて、こちらを全否定しているわけではありません。
しかし、私がいつも書いているように会社に持続性がないと、寄付などもできなくなります。「本業をおろそかにして会社を危うい状況に追い込むことは、本末転倒であり、しょせん長続きできない」という話でした。こうした持続性のなさは、ときに大きな問題を生み出すことがあります。
それは、会社の寄付などによって存続していた慈善活動などの活動そのものが終わってしまう!という問題です。
補助金・寄付に頼る危険性 途切れると速やかに破綻 文楽、エコカー・エコポイント、公共事業で書いたように、寄付に依存した活動をしている側も、考え方を改めておかないと、世間が不況に陥った途端に即活動終了…ということになりかねません。
【本文中でリンクした投稿】
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