宇宙関係の話をまとめ。<政治家の方針のせいで日本の宇宙技術は中国・インド以下に>、<失敗の原因とされたNECのコメントがパワハラ受けてる後輩みたい>、<東大教授「日本の宇宙実験や研究は、レベルが低いものがある」>などをまとめています。
2023/08/04まとめ:
●東大教授「日本の宇宙実験や研究は、レベルが低いものがある」 【NEW】
【クイズ】ここ10年ほどの日本の科学技術系の研究論文についての正しい記述はどれでしょう?
(1)日本の研究論文の総数は増えているが、重要論文数による順位は下がっている。
(2)日本の研究論文の総数は減っているが、重要論文数による順位は下がっていない。
(3)日本の研究論文の総数も重要論文数による順位も下がっている。
●政治家の方針のせいで日本の宇宙技術は中国・インド以下に
2016/4/6:日本の天体観測衛星「ひとみ」が宇宙で分解し、ド派手に失敗した際に、中国・インドが既に日本を超える成果を出しており、日本ももっとお金をかけなくちゃいけないという主張がありました。日本の場合、政治家のせいで、無駄なところにお金を使っていることも指摘されています。
衛星「ひとみ」の重大トラブル、いま打つべき手:日経ビジネスオンライン(松浦 晋也 2016年4月6日(水))という記事は、もっと予算を増やせ!という主張なので複雑な気分になりますが、日本の宇宙技術は既に中国やインドにも劣るという話でした。
<2008年の宇宙基本法成立以来、日本は安全保障を中心とした実利用に傾斜し、技術開発と宇宙科学への投資を抑制してきた。その結果、現在日本の宇宙開発は、世界から技術で後れを取りつつあり、かつ宇宙科学は長期計画を立てにくい状況におかれている。中国やインドは技術開発と宇宙科学に多大な投資を続けており、すでに日本を凌駕する成果も出してきている。それは、中国やインドが「日本以上に、人類社会の繁栄への寄与をしはじめた」ということに他ならない。
政府がこの態度を続けるならば、これまで世界最先端の一翼を担ってきた日本のX線天文学が衰退することになる。それは長期的に見ると日本の衰退に他ならない>
上記の部分ですでに、「中国やインドは技術開発と(中略)すでに日本を凌駕する成果も出してきている」とありました。その後も、「宇宙科学分野は中国とインドを中心に新興勢力が急速に力をつけている」と書いている部分があり、具体的に以下のような中国とインドの事例をあげていました。
<中国は2013年の「嫦娥3号」で月軟着陸と無人探査ローバーの月面走行を成功させた。一方日本は2000年代初頭から月着陸機「セレーネ2」構想を持っているものの、いまだ月軟着陸も月面走行ローバーも実現させていない。インドは2013年11月に火星探査機「MOM(通称マンガルヤーン)」を打ち上げ、2014年9月に火星周回軌道投入を成功させて、現在も観測を続けている>
●衛星ひとみトラブルで危機 政治家はカネがないと言いつつ無駄遣いも
もっと予算を!という主張だと書いたように、"衛星「ひとみ」の重大トラブル、いま打つべき手"というのは、予算のこと。<ひとみが、どこまで復旧できるかは今後の推移を見守るしかない。が、その間にも地上でできることはある。大きなダメージを被ったX線天文学へのてこ入れ――具体的には代替衛星への予算処置だ>とされています。
私はこういった単純に「予算を増やせ!」といった主張には、基本的に賛成しません。安易に認めればすべての「予算を増やせ!」に賛同する必要があり、他より優先すべき根拠が必要でしょう。ただ、説得力があると思ったのは、「今の日本にそのような余裕はない」と言いつつ、政治家の都合による無駄なお金の使い方ならしているじゃないか!という指摘でした。
<2003年11月29日、IGSの光学衛星とレーダー衛星を各1機搭載したH-IIAロケット6号機が打ち上げに失敗した。IGSの衛星は、H-IIAで2機同時に打ち上げる前提で開発された。が、事故後は基本的に1機ずつ打ち上げるようになった。「万一にも失敗して2機の衛星を同時に失ってはならない」という政治の意志に配慮した結果だ。(中略)
(引用者注:1機打ち上げにしたことで無駄になった)300億円は、実質的なシステムの安全にはほとんど意味がなく、政策担当者の「安心」のみを確保するものだった。H-IIA6号機の事故原因は完全に解明され、きちんと対策が施されたからだ。その対策が正しかったことは、その後H-IIAが24機連続で打ち上げに成功したことで実証されている。
日本の政治は、政策担当者の単なる安心のために300億円の追加投資を宇宙に投ずることができる。また、日本にはそれだけの財政的余裕もある。今はその意志を、宇宙科学に向けるべきであろう>
●すべての分野で衰退している日本の科学技術
予算が少ないこと、実利を取るという大義名分を挙げていることは、文部科学省の文系廃止路線の話も思い出しました。(関連:
文系縮小は非常識 教育予算が少なすぎる日本、海外はさらに増額)
また、
国立大学の予算・教員削減で日本の研究論文数減少 重要論文も全分野で顕著に低下でやったように、全体の論文数、重要論文数の順位どちらも日本は低下していることがわかっています。
【クイズ】ここ10年ほどの日本の科学技術系の研究論文についての正しい記述はどれでしょう?
(1)日本の研究論文の総数は増えているが、重要論文数による順位は下がっている。
(2)日本の研究論文の総数は減っているが、重要論文数による順位は下がっていない。
(3)日本の研究論文の総数も重要論文数による順位も下がっている。
【答え】(3)日本の研究論文の総数も重要論文数による順位も下がっている。
日本の宇宙技術は既に中国やインドにも劣るとだけ聞くと本当かな?と思ったものの、こうした他の分野での傾向を考えると、十分にあり得る話だと思えてきます。
●衛星ひとみ失敗はNECのせい?5億円をJAXAに支払うことに
2017/09/09追記:2016年2月に鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられた衛星「ひとみ」は、本格運用前の3月26日に機体が異常回転し、バラバラに分解したと見られています。原因について、JAXA側は、NECの担当者が姿勢制御用エンジンの噴射データを誤って入力したためとする報告書をまとめました。
ただし、
NECが5億円支払いへ 観測衛星「ひとみ」失敗はプログラムミスだった(2017年09月05日 20時21分 JST 安藤健二 ハフポスト日本版ニュースエディター)によると、NECがこれをただちに全面的に受け入れたわけではないようです。互いに責任の大きさを巡って折り合えず、東京簡裁に2017年2月、民事調停を申し立てていたといいます。
ところが、その後、NECの態度が一転。NECは、「JAXAの期待に応えられなかったことへの反省と、道義的責任を感じたため、調停案を受け入れました」とコメントします。こうして2017年9月5日、東京地裁でNECがJAXAに5億円を支払うという民事調停が成立しました。
●失敗の原因とされたNECのコメントがパワハラ受けてる後輩みたい
技術的なところがわからないものの、この報道だけ見ていると、何かブラックなものを感じてしまいますね。「期待に応えられなかったことへの反省と、道義的責任を感じたため、受け入れました」というのは、まるで理不尽な先輩に責任を取らされる後輩のようなコメントです。
そういう感想はないかな?と
はてなブックマークを見ると、以下のように、やはりそんな感じのコメントが出ていました。当初の投稿内容とは別の意味で、日本の宇宙事業のヤバさを感じてしまう話です。
aike プログラムミスというか、異常発生時の復旧作業中で本来予定された手順とは異なることを短時間で発案・実施する必要があり十分なレビューができない状態でもJAXA側がリスクをとってGOを出したわけで同情の余地はある。
kuniku 「噴射データを誤って入力」から、異常値を受け入れる設計PGミス(下限、上限などの考慮漏れ) or NEC側の机上の計算ミスで設定ミスった ことじゃね? JAXAの押し付けじゃないかと推測
poko78 五億か…すごいプレッシャーだな、担当者
●東大教授「日本の宇宙実験や研究は、レベルが低いものがある」
2023/08/04まとめ:別のところで書いた話を転載。<「13泊14日で38万円のバイト」と話題だったが…JAXAの「宇宙兄弟ごっこ」が研究成果"ゼロ"に終わったワケ>(22/12/12(月) 8:16配信 プレジデントオンライン 知野 恵子)という記事で関係する話が出ていました。
<この研究は、2016年から17年まで5回にわたって行われた「長期閉鎖環境におけるストレス蓄積評価に関する研究」。宇宙の閉鎖環境を模擬した施設の中で、健康な成人8人に13泊14日過ごしてもらい、血液、尿、心拍、唾液などの生理データや、研究者による面談や精神心理状態分析を基に、ストレスを調べる、というものだ>
<研究は、開始前から世間の関心を呼んだ。
閉鎖環境下での宇宙飛行士の選抜試験の様子は、人気マンガ『宇宙兄弟』(小山宙哉、講談社)にも登場するので親しみやすさもあるが、特に注目を集めたのは、研究に参加する被験者への謝礼だった。
JAXAが外部企業を通じて行った被験者募集では、「協力費」、つまり謝礼は総額38万円。ここに多くの人が反応した。
「2週間ひきこもるだけで38万円もらえる」「宇宙兄弟ごっこをして38万円とは、おいしいバイト」などの投稿がさかんにSNSに投稿された。
約1万1000人が応募し、その中から42人が選ばれ、5回の実験の被験者になった>
https://news.yahoo.co.jp/articles/921da5d3faaadba0b8e4b584dfe0e8b1bb2808c6?page=1
佐々木宏・JAXA理事は古川聡飛行士を変に擁護していた方でしたが、研究については「研究不正以前に、研究計画が稚拙で、科学合理性がなかった」と話していたとのこと。非科学的なものだったんですね。これにより、どちらにせよ「研究成果も公表できない」という成果ゼロになります。
ここで問題なのは、日本中の研究者が資金不足に苦しむ中、こうした研究に「JAXA予算から9500万円、文科省の科学研究費補助金(科研費)から9600万円、計1億9000万円が使われた」ということ。言及がなければ私も書こうと思っていたのですが、過去にも多額の資金を集めた企業共同研究でニセ科学実験があったんですよ。
<JAXAの研究不正が組織内で判明した頃、内閣府の大型研究でも問題が発覚した。「失敗を恐れない」「年度ごとの予算にとらわれず、大型資金を出す」「ハイリスク・ハイインパクト」など、国の研究費の常識を覆すという触れ込みの研究事業「革新的研究開発推進プログラム(ImPACT=インパクト)」(引用者注:安倍首相(当時)の肝いり政策でした)でのことだ。
公募した16人のプロジェクトマネージャーに予算と権限を与え、さまざまな研究者や組織を集めて、研究テーマに取り組んでもらう。そのために550億円の基金を新設した。問題になったのは、その中のひとつ、大手IT関連企業と大手製菓会社との実験だ。
この研究チームは、2017年1月に記者を集めてセミナーを開き、「高カカオチョコレートを4週間食べると、脳の動きが活発化し、脳が若返る可能性がある」と発表した。製菓会社は新聞に大きな広告を出すなど、大々的に宣伝し、発表には内閣府の担当者も同席した>
しかし、すぐに学術界やマスコミから批判が殺到。実験の基本中の基本である、「チョコレートを食べた人」と「食べなかった人」を比較していないという、信じられないお粗末さだったためです。記事作者の知野 恵子さんは、これらで不正が起きたのは偶然ではなく構造的な問題があるのではないか?としていました。大型化そのものにリスクがあるという指摘です。
<2000年代に入ってから、政府は国の政策に沿った研究に多額の予算を注いでいる。イノベーション」を起こすために、組織の枠を超えた多人数での研究体制や、産業界との連携を推進している。しかし規模が大きくなればなるほど研究チームなどの構造が複雑化し、全体像をつかみにくくなる。責任者の目も届きにくくなる。JAXAのケースでは、不正を働いた研究者は2人だというが、1回あたりの実験に60人~80人の研究者が関わっていたという>
研究者が多いと監視の目が行き届かなくなるので、一理あります。ただ、2つの研究はそれ以前の時点、スタート地点からしておかしかったかもしれません。知野 恵子さんは、政府がもう一つ推進する「産業界との協力」も非科学的な判断や企業の宣伝優先を招くおそれがあるとしており、こちらも問題でしょう。
なお、作者は以前、東大教授から「日本の宇宙実験や研究の中には、レベルが低いものがある」と聞かされたそう。そもそもレベルが低いようです。これは宇宙実験の場合、レベルが低くても「宇宙では初めて」などとアピールできるためだとのこと。結局、これも政府の予算配分のあたりが問題だと考えられるでしょうね。
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