寄付や慈善事業やボランティアに関する話をまとめ。<ヒトラーは給料を受け取らず寄付、慈善事業にも熱心ないい人?>、<チャリティー活動にも熱心な模範的市民だと思ったら殺人鬼だった!>などをまとめています。
●ヒトラーは給料を受け取らず寄付、慈善事業にも熱心ないい人?
2021/03/15: 「ヒトラーの秘密の図書館」を読んだ人が、Yahooニュースのコメント欄で、ヒトラーは<首相としての給与、ほぼ全額慈善に寄附してたらしい>と書いていて興味を持ちました。確認のために検索してみて、最初見つかったのは以下の慈善事業
冬季援助活動 - Wikipediaに関する話。ヒトラー以前からあったものだといいますが、ヒトラーはこれを強く推奨して利用していたようです。
<冬季援助活動(WHW)のスローガンは「誰も飢えたり凍えるべきではない」であった。
この活動はハインリヒ・ブリューニング政権下の1931年に開始されたが、1933年に政権を獲得したアドルフ・ヒトラー政権下でも継続し、ヒトラーは後にWHWを「唯一の信頼」と呼んだ。活動は1933年から1945年まで、10月から3月までの期間に実施され、厳しい季節の間に不幸なドイツ人に食物、衣服、石炭などを提供する事を目的とした>
この冬季援助活動はヒトラーやナチスのプロパガンダであったとの評価もあり、ヒトラーはこれを宣伝に利用した可能性があります。また、ナチス・ドイツの中央集権の一環として、乞食に直接与えるよりも寄付する事をポスターが人々に促したともありました。慈善の目的からすると目の前で飢えている人への直接の寄付をやめさせる必然性はないため、ヒトラーの目的は慈善じゃなかったと考えられそうです。
●「給与を受け取っていない」とアピール!ただし一時期だけでしかも…
ということで、冬季援助活動は一見良さそうに見えて良くないという話でした。実を言うと、コメント欄の人が言っていた「給料の寄付」もいい話じゃありません。<全然美談などでなく、著書「我が闘争」の押し売り利益と郵便切手の肖像使用料の方がけた外れに大きかったので、給与なんぞのはした金はどうでもよかっただけ>と書かれていたんですよ。
結局、この給料の寄付に関係しそうな話は見つからなかったんですが、もう少し検索していると、
アドルフ・ヒトラー - Wikipediaに「給与を受け取っていない」とアピールする話はありました。そして、その内容を見ると、コメント欄の人が言っていたよりずっと性質が悪いものですね。むしろ銭ゲバ・守銭奴のような感じでした。
<1933年2月、『フェルキッシャー・ベオバハター』は、ヒトラーが首相の給与を受け取っていないという記事を掲載し[304][305]、財産より清貧さを求める人物としてアピールした。しかし、1934年の国家元首就任の際には彼の首相としての給与を扱う事務処理が行われており、ヒトラーは国家元首と首相としての給与を受け取るようになった[304][305]。また、1933年の1年間には『我が闘争』の莫大な印税が発生し、ミュンヘン税務署は所得額の半分を控除して60万ライヒスマルクの納税を求めた。しかしヒトラーとナチ党は納税しようとしなかった[306]。
1934年12月、ミュンヘン税務署は総統は非課税となるという措置を行った[303]。1935年には中央の税務当局とも合意が行われ、3月12日にヒトラーの名前は納税者リストから削除された>
●現実にはむしろカネ、カネ、カネ 給料の数千倍以上の資産があった
コメント欄の人が言っていた「郵便切手の肖像使用料」も詳しく内容を説明するとひどいものだとわかるでしょう。帝国郵政が印刷する自らの肖像切手の肖像使用料は、前任者であるヒンデンブルクはこうした使用料を受け取っていなかったのに、ヒトラーは額面の1%に当たる金額を受け取っていたんだそう。カネの亡者的です。
また、もう一つコメントで言及のあった『我が闘争』に関しては、<自治体が新婚家庭に贈るために購入するなど、半ば強制的に販売された『我が闘争』の印税は、ヒトラー死亡時の時点の総額で800万ライヒスマルクに及ぶと見られている>とのこと。先の「郵便切手の肖像使用料」はさらに多く、多い年には5000万ライヒスマルクだったそうです。
首相兼国家元首としての給与は年額4万5000ライヒスマルク程度な一方、郵便切手の肖像使用料と押し売り書籍の印税でその数百から数千倍のお金を別に得ていた…という詐欺みたいな話。逆に言えば、これだけ莫大な収入があったにも関わらず、給料の受け取り辞退を辞めて納税すらしなくなった…と言えるかもしれません。
さらにこれで終わりでもなく、ヒトラーが握っていたお金が他にもあったと言うので呆れますわ。会計検査院や国会の審査無しで使用することができた大統領が裁量で利用できる基金や以下のような財産が存在していたのです。こうした財産や基金からヒトラーは軍の将軍たちや党内外の有力者に「贈り物」を行い、彼らの忠誠を保とうとしていたと解説されていました。
<財界から拠出された金で設立されたドイツ産業のためのアドルフ・ヒトラー基金(ドイツ語版)も、ヒトラー自身の裁量で自由に使用できる性質の基金であり、事実上ヒトラーの個人財産であった。その総額は700万ライヒスマルクに及ぶ[308]。さらにヒトラー山荘や総統官邸での暮らしは党や政府によって支弁されていた>
●寄付や慈善事業は素晴らしいことだ!と褒めすぎない方が良い
ところで、最初のYahooニュースのコメントは、<「リコール政局」仕掛けた側も困る…選挙に強い「モンスター」河村市長は出馬するのか否か 市長選まで1か月余り>(3/11(木) 17:31配信 FNNプライムオンライン)という記事でのコメントでした。名古屋市の河村市長が自らの給与を下げていることから連想したコメントだったんですよね。さらにトランプ大統領のことも連想されています。
https://news.yahoo.co.jp/articles/b20a16c36df0944b51b93b225f28cd3dc1f58dc4
<トランプ前大統領の給与1ドル残りは返納宣伝といい、こういう子供だましの手に引っかかる方の「民度」は問われるべきだろう。
トランプの方は、トランプオーガニゼーションを公用に使用して国費で払わせてるだけで給与よりはるかにデカそうだし、何より宣伝効果が凄い。で信者を釣って宿泊料とか高額の割り増し料金をふんだくってるんだから、悪質度はヒトラー並みかそれ以上>
結局、ヒトラーの寄付の話は今回確認取れなかったのですが、寄付も問題だと思うんですよ。ブラック企業関連でむしろ問題を起こしまくっているワタミの渡邉美樹さんは慈善事業に熱心で、そうした点も評価されたのか、自民党から立候補して政治家になってしまい、ブラック企業問題の委員会で出席した過労死遺族を傷つける発言をしていました。
私は寄付には複数の問題があるという考えで、寄付や慈善事業を無批判に「いいことだ」とするのも問題の一つです。今回のような問題は、無批判に「いいことだ」と考えるからこそ生じるものであるため。寄付などは飽くまでの個人の趣味の一つであり、特別良いことではないと考えた方がむしろ良いのではないかと思います。
●チャリティー活動にも熱心な模範的市民だと思ったら殺人鬼だった!
2021/04/30:ちょっと極端すぎる例なのですけど、慈善事業をやるいい人だと思っていたら殺人鬼だった!という人の話を追記。ピエロについての過去投稿を読み直していて、殺人ピエロことジョン・ゲイシーさんの話が出てきて、こちらのヒトラーの投稿を思い出したんですよね。
ジョン・ゲイシー - Wikipediaでは、以下のように説明しています。
<ジョン・ウェイン・ゲイシー・ジュニア(John Wayne Gacy Jr.、1942年3月17日 - 1994年5月10日)は、アメリカ合衆国のシリアルキラー、死刑囚。平時は子供たちを楽しませるため、パーティなどでピエロに扮することが多かったことからキラー・クラウン(killer clown、殺人道化、殺人ピエロ)の異名を持つ。
少年時代はボーイスカウトに入っていたことがあり、資産家の名士でチャリティー活動にも熱心な模範的市民だと思われていたが、アルバイト料の支払いなどの名目で呼び寄せた少年に性的暴行を加えたうえで殺害し、その遺体を自宅地下および近くの川に遺棄していた。自身の同性愛を隠すために殺害したとされている。1972年から1978年のあいだ、少年を含む33名を殺害したことが明らかになっている。彼の犯行はアメリカ社会を震撼させた>
<休みには道化師「ポゴ」に扮し、福祉施設を訪れるなどして子供たちの人気者となった。(中略)ゲイシー本人によると、彼の意識障害はある種の健忘を伴って現れるようになり、道化師ポゴを始めたのはポゴに変身しているときは安らぎを得ることができたから、という>
●「科学の慈善家」を自称した富豪、児童買春で有罪で容疑多数
2022/04/22追記:慈善活動をする人がいい人なのか?については、
トランプ友人ジェフリー・エプスタイン、謎の自殺 口封じで他殺?で出てきたジェフリー・エプスタインさんも良い例でしょう。このジェフリー・エプスタインさんは、トランプ大統領ら政財界の大物との親交で知られる方でした。しかし、多数の少女を性的に搾取した児童買春容疑で起訴されており、悪事を働いていた可能性が高いのです。
また、この事件の前にも問題を起こしていた人。2000年前半、フロリダ州パームビーチの邸宅で少女らに金を払い、性的なマッサージをさせたとして起訴され、禁錮1年1月という判決が言い渡されており、こちらは確定です。児童買春1件の罪を認めて性犯罪者として登録する見返りに減刑されており、当時も余罪がありそうでした。
一方、このページに関係するのは、「慈善家」であったとされること。彼はMITのメディアラボなど、科学関係へかなり広範に寄付していたんですよ。判明済みの過去20年間に自らの三つの財団などを通じて政財界や大学などに提供した資金の総額だけで、3,000万ドル(約31億8,000万円)とされています。
エプスタインさんは、「科学の慈善家」を自称。また、その寄付先や「人脈」を繰り返し喧伝したとのことで、大いに慈善活動を活用します。寄付を行ったとする大学や研究機関には、当事者が否定しているものなどもあり、その実態が不明なケースも含まれているそうで、かなり宣伝色が強いタイプの慈善活動家だったようです。
●世直しを主張する「身代金脅迫荒稼ぎハッカー集団」が寄付
2022/06/01追記:
ハッカー集団、大企業から奪った金を慈善団体に寄付 真意は謎 - BBCニュース(2020年10月22日)という記事を見て、このページの話を思い出しました。企業のITシステムに不具合を生じさせ、復旧と引き換えに身代金(ランサム)を要求するランサムウェアで稼いでいると自称し、なおかつ「世界をより良い場所にしたい」と主張している「ダークサイド」というハッカー集団の話です。
<ハッカー集団は、「企業が払った金のいくらかは慈善団体に行くのが適切だと思っている」と記した。
「私たちの仕事がどれだけあくどいと思われようが、誰かの生活を変える手助けをしたということを、私たちは喜ばしく思っている。私たちは今日、最初の寄付をした」>
この行為の評価は人によって変わりそう…。ただ、現在ではあまり褒めちぎる人はいないのかな?とも予想。私もこの情報だけでは好意的に評価する要素を見いだせません。一方、昔はこうした行為がかなり人気だった印象があります。いわゆる「義賊」、西洋で言うロビンフッド的なもので、日本でいうと、鼠小僧です。記事でもロビンフッドの話が出ていました。
<サイバーセキュリティー会社エムシソフトの脅威アナリスト、ブレット・キャロウ氏は、「これらの寄付で犯罪者たちが何をしようとしているのか、まったくわからない。罪悪感を和らげるためだろうか? それとも、良心のない恐喝者ではなくロビン・フッドのような存在に見られたいという、身勝手な理由によるものかもしれない」と話した。
「動機が何であれ、非常に珍しい行動であるのは間違いない。ランサムウェアを使う集団が利益の一部を慈善団体に寄付したのは、私が知る限りこれが初めてだ」>
ただし、「ダークサイド」の主張によると、寄付した金額はごく一部。企業から何百万ドルもの金銭をゆすり取ったと主張する一方で、ビットコイン寄付をした際の領収書を公表したのは2団体に各1万ドル。1%未満レベルの少なさで拍子抜けです。「最初の寄付をした」という言い方なので今後全額するつもりなのかもしれませんが、その場合も前述の通り、評価はできないですけどね。
なお、これは、仮想通貨の特性ゆえの問題点を示したものでもあるでしょう。今回の寄付は「非営利組織のために仮想通貨の寄付の受け入れを実現する唯一のサービス」とされる、アメリカのギヴィング・ブロックというサービスを利用しており、身元の特定が困難であることが予想されます。マネーローンダリング(資金洗浄)に利用されることも懸念されていました。
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