単純な観光客数という意味ではなく、バブル崩壊後の低迷期間後の増減という視点ですが、別府温泉と熱海温泉は対照的な経過を辿ったようです。
●別府温泉と熱海温泉はどこで差がついたのか?
別府温泉が衰退を乗り越えた3つのワケ:日経ビジネスオンライン 水津 陽子 2015年10月6日(火)
かつて入湯客数で箱根と熾烈なトップ争いをした熱海はバブル崩壊後、箱根に大きく水を開けられました。以降、20年近い低迷の時期を過ごしてきましたが、2011年には星野リゾートなど魅力的な施設の開業もあり、ようやく長いトンネルを抜けつつあります。
そんな中、バブル崩壊後間もなく観光客数を回復し、復活を遂げたのが別府です。観光交流人口の減少に歯止めがかからず、長い低迷に喘いだ熱海と違い、別府の落ち込みはバブル崩壊の年で底を打ちました。2010年より国の共通基準による調査方法に変わったため、単純な比較はできませんが、観光客数はピーク時に近い数値まで回復しているように見えます。(中略)
別府はどのようにして復活を果たすことができたのでしょうか。
●理由1:一貫した「国際観光」への取り組み
別府という時点で想像していましたが、以前書いた
外国人留学生が半分、立命館アジア太平洋大学はなぜ選ばれるのか?の立命館アジア太平洋大学の関係が一つありました。
とは言っても、"一貫した「国際観光」への取り組み"ということで、立命館アジア太平洋大学(APU)は飽くまでその一貫という形のようです。知りませんでしたが、他の大学でも留学生が多いそうです。
2001年の別府市の外国人登録数2100人のうち、APU(904人)、別府大学(420人)、別府女子短大(37人)と留学生が64%を占めるようになり、この年1-9月期の外国人宿泊客数は9万5000人となりました。(中略)
留学生はインターネットを使い別府の観光情報を発信したり、クルーズ船寄港時等に観光客の案内や通訳を務めるなどして訪日観光客誘致にも貢献しています。
●別府では誰もが国際性を意識
別府大学では"中台韓や英米仏などの35大学と提携、毎年学術交流研究会を開催"しているとありました。立命館アジア太平洋大学だけじゃない!という感じです。
また、大学以外でも以下のようなものがある他、ボランティアの存在も大きく、まちぐるみで国際性を重視している感じです。
1950年には「別府国際観光温泉文化都市建設法」の指定を受けました。バブル崩壊直後の1994年アジアの12か国、37地域の首長らが参加した「アジア九州地域交流サミット」は2002年まで8回に渡って開催。
●理由2:「別府の湯けむり景観」に関する取り組み
「別府再生のもう一つの柱」というのはバブル崩壊直後ではなく、もっと新しいのですが、"2001年にNHKが行った「21世紀に残したい日本の風景」で第2位に「別府の湯けむり」が選ばれたことに始まる「別府の湯けむり景観」に関する取り組み"とのこと。
地方版総合戦略においても求められる「地域性」とは他にない地域の独自性に着目することにありますが、この湯けむり景観こそが自分たちのオリジンだと確信し、まちづくりの柱にしてきました。(中略)
2006年に市営温泉「鉄輪むし湯温泉」の施設をリニューアル、2010年には新たに「地獄蒸し工房鉄輪」を整備、いたるところから湯けむりが立ち昇る鉄輪温泉の魅力を高めていきました。鉄輪は別府の8つの地獄を巡る「地獄めぐり」の路線バスの乗換の中継地にもなっており、お昼時や休日などは地獄蒸料理を楽しむ人たちで順番待ちの列ができるほどの人気となっています。
●ほとんどの自治体の個性は個性がない
私は理由の一つ目の時点では紹介するかどうか決めていなかったものの、この二つ目を読んだ時点で下書きを始めました。"これは一見簡単そうに思えますが、多くの自治体ができなかったことです"としていたように、非常にすごいことです。感心しました。
先の引用部にあったように、「他にない地域の独自性」というのはたいへん大切なのですが、ほとんどの自治体ができていません。やっているつもりになっているだけで、その特色は他の地域にもあるものであり、「このまちじゃないとできない」というものはほとんどないのです。
プレミアム商品券で地域活性化は不可能 典型的な愚策である理由で指摘されていたように、どこでもできる振興策であるために、地域の振興には結局繋がらないというのが現実です。
●理由3:地域住民や民間団体等を主体とする活動
私が最も気に入ったのは上記でしたが、作者の水津陽子さんは、「もっとも注目すべき」は3つめの柱だとしていました。"観光産業経営研究会によって行われた「別府八湯勝手に独立宣言」に端を発した地域住民や民間団体等を主体とするまちづくりの台頭"だそうです。
これは理由1で私が書いた「まちぐるみ」といったものみたいですね。"活動の多くは行政から資金面での支援を受けてい"ない市民が主体であることに注目しているのだと思われます。
そういえば、同じ九州の阿蘇の事例で、初期に
寂れた商店街、復活へのヒントというのを書いているのを思い出しました。これはそもそも観光客に来てほしいうんぬんの前に、地元の人にとって商店街は愛される場所なのか?と再考したという話です。
単なる地元意識で「良いまちだ」というのではなく、地元の人にとって本当に愛せるまちでなければ、よその人からも愛されるはずがありません。まずは、地域の人に愛されるまちにならないと始まらないと思います。
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