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鳥貴族は焼鳥屋だけど、焼き鳥よりもお酒を頼んだ方が良い理由


 鳥貴族の大倉忠司社長のインタビュー記事がおもしろかったです。タイトルにした焼き鳥よりもお酒を頼んだ方が良い理由というのは、単純に原価率を見るとお酒の方がお得だというだけの話。無理せず好きなものを頼んでください。(2016/4/21)

2018/03/02追記:
社長の1000店構想へのこだわりは問題
規模拡大で食材不足に陥りスケールメリット出ず
規模拡大で人手不足も加速してしまうことに


【クイズ】鳥貴族の説明で正しいものはどれでしょう?

(1)外食は500店を超えると自社競合があるとされるため、これ以上の店舗数の拡大は考えていない。
(2)客の満足度を上げるために、通常の居酒屋チェーンよりメニュー数を増やしている。
(3)料理や内装に付加価値をつけるなどして、客単価を上げることは考えていない。


●鳥貴族は焼鳥屋だけど、焼き鳥よりもお酒を頼んだ方が良い理由

2016/4/21:インタビューアーが、鳥貴族の大倉忠司社長に「全てのメニューが280円均一、高級ウイスキーの「響」までその値段で飲めるのは驚きです。赤字にならないんですか」と聞いていました。

 社長は「粗利率が低く、そればかり売れてしまうと商売として成り立たないという商品はあります」とこれを認めています。「売れてしまうと商売として成り立たないという商品」というのは、鳥貴族でいえばアルコール。

 例えば、「金麦」は大ジョッキ、「プレミアムモルツ」は中ジョッキ。こればっかりだと正直儲からないんだそうな。「全ての商品をミックスし、トータルで原価率を適正化して経営している」という考え方です。
(全メニュー280円で鳥貴族はなぜ赤字にならないか 鳥貴族 大倉忠司社長に聞く|inside Enterprise|ダイヤモンド・オンライン  週刊ダイヤモンド編集部 2016年1月20日 より)

 この安さについては、食べログでも好評な反応がありました。
『プレミアムモルツ』by みきぱぱ2 : 鳥貴族 近鉄八尾駅前店 - 近鉄八尾/焼鳥 [食べログ]

なんといってもプレミアムモルツが280円というのがうれしい限り。(中略)

うん、満足、お腹いっぱい。
明るく、元気なスタッフさんの対応にも満足。
ごちそうさまでした。

●居酒屋はアルコールで稼ぐが鳥貴族は鳥で稼ぐ

 ネット通販の送料無料で「運送業者から搾取している」と盛んに叩いている人がいますが、これだけでは搾取しているとは限らず、別の証拠が必要となります。一部の商品で赤字を出しても、他の商品でカバーするという考え方ができるためです。鳥貴族もそのような考え方に近いですね。
──では逆に、粗利率が高い商品もあるわけですね。

 ジャンボサイズで目玉商品になっている貴族焼は違いますが、それ以外の焼き鳥ですね。つまり、普通の居酒屋はアルコールがもうけの源泉になっていますが、鳥貴族は逆なんです。若い人はアルコールの価格に敏感ですから。

 粗利率で見ると、お酒を飲むために行く居酒屋でお酒が高くて、焼き鳥を食べに行く焼き鳥屋で焼き鳥が高いという不思議なことになっています。


●280円均一でもお得感は均一じゃない方が良い

 粗利率を同じくらいに揃えるというのは無駄な努力ですし、下手な企業です。商品の価格設定は原価などの積み上げではなく、価格を決めてからという逆方向にしろというアドバイスすらあります。

 鳥貴族の場合は均一にしているのでそりゃそうだろうというわけですが、よく考えられていますね。
 そういう意味では、目玉商品をどう開発するかが、均一価格業態の鍵だと思います。どれも280円並みの商品ばかりでは魅力がないんですよ。100円ショップと同じです。お客さまは「どれがお得か」と探しながら楽しむのです。その裏で、店はもうかる商品を入れているのです。

●客単価2000円はもともと想定内

 先ほど引用した食べログのレビューの方は2000円まで行かず、予算1000円台という記載でした。10品頼んでいましたので2人で飲んでいたのかもしれません。だとすると、税別2800円、税込みで3024円、1人あたり1512円となります。

 大倉忠司社長によると、客単価はもう少し高い2000円を想定していたそうです。私はこういうお店行かないので相場観がわからないのですが、これでも十分安いらしいです。
──それにしても、おなかいっぱい食べて飲んでも1人2000円くらい。安いですよね。

 もともと、客単価2000円の想定で始めました。客単価が低いほど市場は大きいと考えたからです。全国チェーンが可能なビジネスモデルとして、客単価は可能な限りボトムに近づけたかった。立ち飲み以外の居酒屋としてはボトムの価格設定だと思います。

 客単価を上げるほど、料理や内装に付加価値をつけなければならず、流行に乗らなくては飽きられてしまいます。そうではなく、ベーシックな部分を磨く。それが価格であり、価格以上の価値です。

 飽きられないというのは重要ですね。焼き牛丼「東京チカラめし」激安居酒屋「金の蔵jr.」がダメな理由では、リピーターを確保できなかったとされていました。

 他の選択肢が絡むところはこの後ですが、クイズの正解はここで登場。


【クイズ】鳥貴族の説明で正しいものはどれでしょう?

(1)外食は500店を超えると自社競合があるとされるため、これ以上の店舗数の拡大は考えていない。
(2)客の満足度を上げるために、通常の居酒屋チェーンよりメニュー数を増やしている。
(3)料理や内装に付加価値をつけるなどして、客単価を上げることは考えていない。

【答え】(3)料理や内装に付加価値をつけるなどして、客単価を上げることは考えていない。


●メニュー数の絞り込みはおもしろいが成長には限界?

 "食材は国産を使用するなどこだわっています"ということで、「価格以上の価値」の提供への努力が見えます。また、"通常の居酒屋チェーンでは80~120あるメニュー数も65に絞り込んでいます"というのもおもしろいですね。こういう削ぎ落として集中する戦略は好きです。

 ただ、先ほどあった「飽き」という話で言うと、これはマイナスじゃないかと思います。同じようなメニューではどうしても飽きられてしまい、来店回数を増やすのは難しいでしょう。コンビニをライバルにしたいとも言っていましたが、コンビニは絞り込んでいるとはいえ商品点数が居酒屋と比べ物にならないほど多いです。しかも、商品の入れ替えが非常に激しいことで知られています。

 「今ではメジャーとなっている金麦の大ジョッキや貴族焼は、30年前の創業時にはありませんでした」と、「飽きられないよう日々進化させ」ており、問題意識と進化の方向性は正しいです。とはいえ、このままのやり方だと来店回数の向上には限界があると思われます。

 インタビューアーは社長の「1000店構想」に関して、外食は500店を超えると自社競合があるとされ、すでに400店を超えているとも指摘していました。今のやり方による成長の限界が、もう近いところまで来ているかもしれません。


●社長の1000店構想へのこだわりは問題

2018/03/02追記:おもしろかったインタビューですけど、気になったのは1000店へのこだわり。新しいインタビューにおいても、大倉忠司社長は3大都市圏で1000店舗に増やすことにこだわっていました。これは良くないと思われます。

 大倉社長は「店舗増によるスケールメリット(規模の利益)を生かせる余地はある」としていました。鳥貴族は、関東、東海、関西地区に集中出店を続け、2017年10月末で587店を展開。過去2年は年間70店を超えるハイペースの出店でした。売上高は約300億円と、わずか5年で3倍に拡大しています。

 では、スケールメリットが出たかというと、そうではありません。売上高に対する販売管理費の比率は16年7月期まで3年間は62%台で推移。17年7月期は63.0%へと前の期比で0.9ポイント上昇しました。むしろ悪化しています。
(急成長の歪みに苦しむ鳥貴族の「重荷」:日経ビジネスオンライン 宇賀神 宰司 2018年1月25日より)


●規模拡大で食材不足に陥りスケールメリット出ず

 規模拡大でスケールメリットを得ようという戦略は一般的であるものの、鳥貴族が失敗している理由はいくつかあります。一つは大倉社長の発案で14年から始まった「国産国消」と呼ぶプロジェクトが足を引っ張ったということ。一部使っていた輸入食材を国産に替えていき、16年10月に「国産食材100%」にしました。

 安心・安全を求める消費者の意識は強まり、国産食品に対するニーズは高まっており、これ自体は効果があったとされています。安心・安全を求める声に対応したことで、家族連れなど新たな顧客層を取り込んだとの分析です。

 しかし、天候不順により国産野菜の価格が高騰したことなどから、食材の原価は想定以上に。17年7月期の営業減益の一因となりました。特に国産で鳥貴族に合う食材というのが、なかなか見つからないというのが大きいです。しかも、規模拡大を続けているのですから、食材が足りなくなって当然でしょう。

・鳥貴族の焼き鳥に合う太さのネギが既存の国内産になかったので、埼玉県の農家と契約して特別仕様で生産してもらった。
・フライドポテトでは北海道産のジャガイモに切り替えたが、昨夏に相次いだ台風で不作となり、メニューから外す事態に。
・店舗数を増やして仕入れ値の低減を目指したが、逆にせせり(首周りの肉)やナンコツなど希少部位の調達では大量の店舗に行き渡らせることが難しく。


●規模拡大で人手不足も加速してしまうことに

 上記の食材不足は規模拡大と天候不順との合せ技でした。もう一つ規模拡大によって人手不足にも陥りましたが、人手不足というのはもとから外食業界共通の問題ですので、合せ技で苦しくなっています。

 17年7月期の決算では、「人手不足に対する懸念から各店舗で外国人を積極的に採用してきたが、職場に定着せず店長など社員への負担が高まった面がある」との分析がありました。

 私がこの前行ったお店では、外国人店員が多かったのが記憶に残っています。鳥貴族のアルバイトに占める外国人の割合は約37%。そのなかでも多いのはベトナム人だとのこと。私の見た人たちもベトナム系に見えました。

 外国人のアルバイトが増えたこともあり、1年で退職する人の割合を示す離職率は7割という高水準に。以前は3割程度だったのと比較すると、様々な面でコスト上昇要因が増えました。採用の経費のほか、新人が多ければ、現場は教育に追われることになるという問題が起きていたのです。

 そもそも業態として1000店達成は難しいんですし、1000店に固執しない方が良いと思うんですけどね…。


【本文中でリンクした投稿】
  ■焼き牛丼「東京チカラめし」激安居酒屋「金の蔵jr.」がダメな理由

【その他関連投稿】
  ■ぼったくりバー・居酒屋に対処法はあるのか?弁護士のアドバイス
  ■ビールを飲んで健康に…と思ったら、全然効果がなかった理由
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