地震予知をしている「専門家」は国外含めて多くいるのですが、科学的根拠があるものはまだありません。NHKが注意喚起していました。その後、国の中央防災会議の作業部会でも「地震予知はできない」という報告書を取りまとめています。予知のような科学的根拠のないものを基本とするのをやめて、前震などが起きた際の避難などを重視するというより現実的なやり方に改めるようです。
冒頭に追記
2022/03/17追記:
●予知は無理だが大きな地震で大きな余震が来るのはわかっている 【NEW】
●予知は無理だが大きな地震で大きな余震が来るのはわかっている
2022/03/17追記:やっと寝付けた…と思った2022年3月16日の夜中、地震で目が覚めました。さらに強い揺れが感じそうだと思ったら案の定しっかり揺れてかなり長い揺れに。揺れが長いときは震源地が遠いのですが、その割にしっかしりた揺れなので震源地は相当大きいと思い、普段つけないテレビをすぐつけました。
テレビを見てみると、やはり震度6強(翌日確認すると福島や宮城など数カ所)という非常に強い揺れを観測しています。地震予知は極めて難しく現状まだできないと言って良い状況なのですが、大きな地震では大きな余震が来ることがある(すぐ来る場合の他、10年以上経ってから場合も)ということは知られており、今のところ最も地震予知に近いものかもしれません。
今回地震があった地域も2011年の東日本大震災の余震が警戒されている地域で、実際、何度も大きな地震が来ています。ただし、今回は
古村孝志・東大地震研教授「東日本とメカニズム異なる」 震度6強 毎日新聞 2022/3/17 00:55(最終更新 3/17 04:52)という記事が出ており、東日本大震災の余震ではないかもしれません。ただ、どちらにせよ余震が来る可能性はあるので警戒が必要です。
古村孝志・東京大地震研究所教授(地震学)の話
「陸のプレートの下に沈み込む太平洋プレート内部で起きた地震と考えられる。東日本大震災は二つのプレート境界で起きたが今回はそれよりやや深く、異なるメカニムズによる地震とみられる。規模も東日本大震災と比べ二回りほど小さい。ここは、M7~7・5の地震が約40年に1回の頻度で繰り返す地震活動が活発な地域とされている。東日本大震災の余震も活発なので、地震が非常に多い状況が続いている。今後も同程度の地震か、さらに大きな地震が起きる可能性は否定できず、注意が必要だ」
●デマに要注意!「地震予知は科学ではない」とNHKが注意喚起
2016/4/25:こうやって不安を煽ることで注目を浴びたり、利益を得たりというのはかなり悪質であり、法的な対処はできないのだろうか?といつも思うのですが、今回は海外情報という話です。こうなると、対処はさらに難しいでしょうね。
<北九州市で2016年4月22日までに、マグニチュード8クラスの大地震が起こる――そんな噂が一時、ネットを駆け巡った。台湾の「地震予測研究所」を名乗るブログに端を発したこの情報は、ツイッターを中心にかなりの広がりを見せ、NHKの公式ツイッターが注意を呼びかけるまでに至った>
(台湾の「研究所」、M8地震の予測は外れる 噂広がり、NHKも注意呼びかける事態に 2016年 04月24日 17時51分 提供元:J-CASTニュースより)
http://news.so-net.ne.jp/article/detail/1236418/
もちろん2016年4月24日現在、これに該当する地震は起こっていないということで、予想は外れています。しかし、かなりこの情報が広まってしまったためにNHKも注意喚起。以下は、災害に関する情報などを発信しているNHKの公式ツイッター「NHK防災・生活」が20日に発したツイートだそうです。直接そう書いているわけではありませんが、遠回しに「地震予知は科学ではない」と指摘するものでした。
<「『22日にすごい地震が起きる』『北九州にM8の地震が来る』のは本当ですか?」といった質問が増えています。現代の科学では時間や場所を具体的に特定する地震予知は確立されていません。日本はどの地域でも地震への備えが必要ですが、あやふやな情報にはくれぐれもご注意下さい>
●台湾の地震予測研究所の予測は「下手な鉄砲も数打ちゃ当たる」
もともとこの情報が広まったのは、2016年4月9日に「3日以内に南日本または台湾でM6.3の地震が起きる」と投稿し、これが熊本地震の発生を(2日遅れだが)言い当てたとされたためとのこと。ただ、これ自体正確に当たっておらず、屁理屈で正解にするというこういう地震予測詐欺でよくある手法です。
さらに、"そもそもこのブログでは元々、月に60~80回「予報」を乱発、対象地域もかなり広い"ために、たまに当たるようになっています。これもまた地震予測をやっているところは常套手段であり、詐欺だと考えた良いですね。彼らの基本は、「下手な鉄砲も数打ちゃ当たる」なのです。
この台湾の予報は産経新聞の夕刊フジも取り上げたと、記事には書かれていました。
早川正士名誉教授の地震解析ラボの地震予知 過去の的中を見るで書いているように、この夕刊フジは普段から台湾の研究所の手法とよく似た地震予知ネタで稼いでいます。なので、てっきり今回も肯定的に紹介しているんだと思ったら、否定的な文脈で驚きました。自社でやってきたことを棚に上げて台湾を批判しているんですね。これはこれでクズです。
<専門家はどう見るのか。20日まで大分県に入っていた京都大学防災研究所の西村卓也准教授(地震学)は「不安をあおるような怪情報だ。現在の科学で『絶対ない』とも否定できるわけではないが、逆に『来る』などと確証を持って言うこともできない」と、夕刊フジの取材に答えた。
さらに、「
九州の人々が不安がっている時に、こういう情報を流すのはやめてほしい。いずれ、日時、場所、規模を正確に予想できたらいいとは思っているが、現在の科学ではまだできない。これが『できる』というのは、詐欺まがいだ」と語っている>
(
台湾の研究所が予測した北九州で22日にM8の真偽は? 識者は… (1/2ページ) - 政治・社会 - ZAKZAK 2016.04.21より)
●熊本地震でも一稼ぎしていた夕刊フジ、棚に上げて台湾批判
前述の通り、夕刊フジは同じような手法でカネを稼いでいるんですからね。「お前が言うな」という話です。実際、熊本地震の直後にも夕刊フジは地震予知の記事を書いていました。台湾の研究所とやっていることは変わらず、ゲスの極みです。
次に危険な3地域はここだ 地震学者・早川氏、予兆捉えていた 夕刊フジ / 2016年4月16日 17時12分
3・11以来となる最大震度7を記録した熊本県の巨大地震。夕刊フジで数々の地震を予知してきた電気通信大名誉教授で、日本地震予知学会会長の早川正士氏は、今回もその予兆をとらえることに成功。現在、九州地方のほか、全国3地域で新たな揺れが起きる恐れがあると警鐘を鳴らした。
早川氏は12日にインターネット上の地震予測情報サービス「地震解析ラボ」で「4月8日から19日の間に、伊予灘から日向灘にかけて内陸でM5・0前後、海底で5・5前後、最大震度4程度」と予測していた。
実際に14日に熊本県で発生した地震と比べると震源は西にそれたが、今回も発生する時期を言い当てたといえる。
「ただ、震源は地下50キロ程度を想定して震度を予測していたので、ここまで揺れるとは考えていなかった」(早川氏)
(中略)現在、早川氏が九州地方のほかに予測を出しているのは、次のとおり。
(1)17日までに北海道東部から千島列島以北にかけて、内陸でM5・5前後、海底でM6・0以上、最大震度4程度(2)24日までに茨城沖から房総沖にかけて内陸でM5・0前後、海底でM5・5前後、最大震度4程度(3)24日までに伊豆小笠原・沖縄・南方にかけて、海底でM5・5前後、最大震度3程度。
夕刊フジの台湾批判記事で引用されていた「現在の科学ではまだできない。これが『できる』というのは、詐欺まがいだ」という言葉は、夕刊フジにこそ向けられるべき言葉でしょう。
●国も「確度の高い地震予知はできない」と認める やっと方針転換へ
2017/08/25:
「地震予知はできない」“予知前提”を見直しへ(2017/08/25 17:13 テレ朝)によると、中央防災会議の作業部会が「現時点では科学的に確度の高い地震予測はできない」という報告書を取りまとめました。
この中央防災会議の説明がなかったので調べてみると、災害対策基本法に基づいて設置された重要政策に関する会議。内閣総理大臣を長とし、内閣府に事務局を置く会議だそうです。(
中央防災会議 - Wikipediaより)
先のテレ朝によれば、東海地震については、事前の観測や情報解析で予知できることを前提に、1978年に大規模地震対策特別措置法という法律が作られ、地震の兆候をつかめば、総理大臣の命令で新幹線を止めたり、学校を休校にしたりすることが可能としていたようです。
しかし、そもそもの地震予知ができるという前提が大間違い。今回やっと現状の防災対策を改める必要があるとして、作業部会が方針転換を促したようです。遅すぎですね。国はいつもそうですが、科学を軽視しすぎています。
別記事の
「予測困難」有識者、異常現象で避難促す 毎日新聞2017年8月25日 13時01分によると、一方で、巨大地震につながる地殻変動や前震などの異常現象を観測した場合に住民避難を促す仕組みの検討を国に求めたとのこと。
これも予知的な発想で精度に問題があるんじゃないかと心配なものであり、改善しきれていないおそれがありますが、とりあえず、より現実的な方向性へ転換されました。
●中国は地震予知に成功したことがある?海城地震で事前避難
2017/10/21:
2017/9/1付 日本経済新聞 春秋は、中央防災会議の有識者会議が南海トラフ地震に関し「確度の高い予測は困難」との報告書案をまとめたことについて、学界の敗北宣言という声も上がっていると辛辣な言葉を載せていました。
ただ、この言葉は「口さがない向きから」出たものという説明。どちらかと言うと、地震予知に期待している感じで、"永遠に予知はできない、と見切ってしまっては、これまた科学的とはいえないのではないか"とも書いていました。
予知できないことを証明することは難しいのですが、科学は仮説を提唱する側に証明責任があります。そして、現時点で十分な証拠がないものに、注力するのも問題。確かに絶対にできないとは言えないものの、少なくとも大きな予算をつける必要はないとは言えるでしょう。研究者らが独自に研究を続ける程度で良いと思います。
といった感じで、この話そのものは別におもしろくなかったのですが、ここで挙げていた地震予知の成功例というのは知らなかったので、おっ!と思いました。ただし、残念ながら日本ではありません。中国の例です。日経新聞の春秋では、以下のように書いていました。
"歴史を振り返れば大地震の予知に成功した例がなかったわけではない。有名なのは1975年に中国・遼寧省で起きた海城地震だろう。当局が当日の朝に警報を出して住民に避難をうながし、被害を抑えたとされる。もっとも、翌年に同じ中国の河北省で起きた唐山地震は予知できず、死者20万人を超える大惨事となった"
ところが、
海城地震 - Wikipediaを見ると、実際に地震予知できていたかは疑問があるとのこと。
"政府の「地震予知」によって後述の通り100万人規模ともいわれる避難が行われたことで人的被害は大きく軽減されたと伝えられており、中国で出版された『一九七五年海城地震』(地震出版社)では、予知されなかった場合、死傷者が15万人、被害額が50億元増えていただろうと述べられている。ただし、この軽減効果が全て政府の「地震予知」によるものかどうかには、疑問も呈されている。例えば、前日から当日にかけて前震活動が急増した後に一転して静穏化しており、地震を恐れて住民が自主的に避難する動きが一部でも見られた"
この地震の場合、前兆が多くわかりやすかったようですが、かなり誇張されているところもありそうで、中国においても世界と同様に地震予知は未だ困難とされているとのことでした。
●東大が研究、揺れ始めの特徴を見れば大地震かどうかわかる?
2019/09/11:緊急地震速報の大地震予知のニュースがありました。大きな地震に固有の揺れ始め方があり、小さな地震における最初の揺れが異なった場合、それを検出することで大きな地震を予測することが可能になるといったアイデアです。
ただし、今回の記事はこれが有望という内容ではありません。
小地震と大地震、揺れ始めでは区別できない 東大の研究(2019年9月5日)(財経新聞)というタイトルのニュースでした。Natureで発表されている論文だそうです。
東京大学の井出哲教授は、まずマグニチュード4.5以上、深さ70キロメートル未満の地震を記録から抽出。この2,500件との地震の周囲で発生したマグニチュード2以上4未満の小地震を抽出しました。小地震は約10万件で、大地震とのペア数だと34万となったそうです。
これらの膨大な数の大地震と小地震のペアを比較したところ、揺れ方の始まりが極めてよく似たペアが多数発見されたとのこと。つまり、大地震でも小地震でも揺れ始めがそっくりなものがあるんですね。なので、観測点における地震波の始まりから地震の規模を推定することは残念ながら見込みのない戦略であると結論づけたそうです。
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