2022/08/11まとめ:
●多国籍企業の租税回避のしくみ タックスヘイブンと無形資産(特許権・著作権など)が肝
【クイズ】福武總一郎ベネッセホールディングス最高顧問の出身地はどこでしょう?
(1)岡山県
(2)香川県
(3)広島県
●パナマ文書で注目のタックスヘイブン ユニクロ柳井正,ドンキ・安田隆夫,ベネッセ福武総一郎らが税逃れで利用
2016/5/10:
日本 超富裕層 税逃れ/ユニクロ・柳井氏、ドンキ・安田氏、ベネッセ・福武氏…/巨額資産を低税率国に移転 本紙調べ(2016年5月9日)という記事。てっきりパナマ文書の関係の話かと思ったら違います。パナマ文書でタックスヘイブンへの関心が集まっているので、他の税逃れについても注目を!といった感じの記事なのだと思われます。
<資産額約2兆円と日本トップのユニクロの柳井正ファーストリテイリング会長兼社長は、2011年10月に同氏が保有する同社の株式531万株をオランダの資産管理会社(柳井氏が全株保有)に譲渡しました。同国は要件を満たせば配当金が非課税になります。15年の配当(1株350円)で計算すると、531万株の配当金は年18億円以上。日本で株を保有する場合と比べ所得税と住民税を年約7億円「税逃れ」していることになります>
柳井正さんの他に安田隆夫ドン・キホーテホールディングス最高顧問も同様の仕組みを活用。さらに"岡田和生ユニバーサルエンターテインメント(パチンコ機器製造)会長は、自社株5445万株を香港の資産管理会社に保有させてい"るとのことでした。また、過去にうちでも書いた福武總一郎さんのお名前も登場しています。
<福武総一郎ベネッセホールディングス最高顧問と妻のれい子氏は08年11月、保有する自社の株式1361万株を、総一郎氏が代表を努めるニュージーランド(NZ)の資産管理会社に譲渡。さらに09年12月、総一郎氏は自らの住所も岡山市からNZに移しました>
【クイズ】福武總一郎ベネッセホールディングス最高顧問の出身地はどこでしょう?
(1)岡山県
(2)香川県
(3)広島県
【答え】(1)岡山県
●ベネッセ福武総一郎氏は相続税対策で日本脱出
ベネッセの福武總一郎さんをうちで過去に書いたというのは、
長者番付常連ベネッセ福武總一郎は、本当に良く生きているのか?というもの。この話は相続対策がメインでしたので、こういったことに積極的な方だというのは想像できました。赤旗では詳しく説明していないものの、居住地をニュージーランドに移したのも、将来の相続を想定しているとされています。總一郎さんの養子である福武英明・ベネッセ社外取締役への相続です。
日本の相続税・贈与税の最高税率は55%なのに対してニュージーランドは何と無税! この恩恵を被るには、相続人と被相続人の双方が、海外に住所を移して5年以上、経過しなければならないということで移住。2009年の移住ですので、もう亡くなっても大丈夫な感じですかね。
福武総一郎夫妻の資産額は1383億円だとしていました。これだけあると半分くらい…とは思うものの、ご本人の立場からすれば一銭足りとも無駄にしたくないのかもしれません。また、これは日本側から見ると数百億円クラスの税金を失ったことになるとも言えます。
そうなると、日本から逃げる人を減らすために、税金をもっと下げるべきでは?といった話にもなりかねないのですが、これはこれでやや短絡的な発想でしょう。税率を多少下げたところで、「無税」の魅力には到底敵いませんので、脱出が止まるかどうかは不透明です。
実際、タックスヘイブンなんかは、「無税」のような極端に税率を下げるやり方で成功しています。これを日本を真似すれば自滅するだけです。ここらへんは、同じページにまとめた下部の<多国籍企業の租税回避のしくみ タックスヘイブンと無形資産(特許権・著作権など)が肝>を参考にしてください。(2022/08/11追記)
また、現時点での税逃れの金額がどれほどの大きさなのかわかりません。なので、今の税逃れの金額より減税分の打撃の方がずっと大きくなり自滅する可能性があります。ここらへんの具体的な数字の算出は難しいでしょうから、判断もかなり難しいでしょう。まずは国がきちんと計算してみないといけません。
●多国籍企業の租税回避のしくみ タックスヘイブンと無形資産(特許権・著作権など)が肝
2022/08/11追記:パナマ文書よりだいぶ前に書いていた<多国籍企業の租税回避のしくみ タックスヘイブンと無形資産(特許権・著作権など)が肝>をまとめ。租税回避関連の話はさっぱり読まれないのでまとめたいのですが、読まれている話がないためどこにまとめるかで悩み、とりあえず、ここに決めました。
2013/9/27:<アマゾン、グーグル、アップルにも波及 多国籍企業の租税回避にどう対処すべきか>(2013年6月14日 森信茂樹 [中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員] ダイヤモンド・オンライン)を読みました。
アップル課税逃れ 米にもアイルランドにも会社(住所)がない状態と絡む話です。
<私は、コロンビア大学ロースクールで租税法を学んだが、ニューヨークの高名な弁護士が教鞭をとる国際租税法の授業は、その大半が、いかに税負担を軽減するかというスキームの説明であったことに驚いた経験がある。
一方で、一流大学を出た弁護士が、租税回避スキーム作りに精力を傾けることについては、これほど人材を無駄にするものはないと、大いに嘆くまっとうな教授もおられた>
http://diamond.jp/articles/-/37408 私も頭脳の無駄遣いだと思います。画期的な製品やサービスは人類の発展に貢献しますが、画期的な租税回避術はそうではありません。それどころか、ズルをして収益を増やしているので、本来淘汰される事業まで生きながらえてしまう…といった人類にとってマイナスになる行為の可能性すら感じます。
同様に、ズルをしていない有望な企業を潰すことになる可能性もあり、人類にとっては害悪です。また、本来ならその国で払われるべき税金が払われていないために、その国の発展に寄与しないという問題もあります。どうも良いことに頭を使っているようには見えません。
租税回避にはさまざまなスキームがあり、それを類型化することは難しいとのこと。ただし、傾向が見えないわけではなく、共通するのは、低税率国・タックスヘイブンの存在と無形資産が絡んでいることという点だといいます。より具体的には、以下のようなしくみが説明されていました。
<企業価値の根源である、特許権・著作権・商標権・ノウハウなどの無形資産を、低税率国・タックスヘイブンに作った子会社(これを一般的にIntellectual Property Company、IP Co.という)に、税金のかからない形で移転することにより、その無体財産権を活用して得られる将来の収益(使用料、ロイヤルティー)をそこに集めることにより、節税を図るのである>
例えば、グーグルは、無形資産の使用料の支払いを通じて、英現地法人から、アイルランド(法人税率は12.5%)やバミューダ(法人税なし)の兄弟法人に利益を移転しています。アマゾンやアップルもわざと高く設定した使用料を払うことによって利益を移転しているそうです。
わざと高く設定した使用料を払っているため、英国のアマゾン、グーグル、アップルは大きな利益を出せません。これは英国における課税所得が減ってしまうことも意味していますので、英国にとっては損です。では、なぜ使用料を使えば利益が移転できるのか?企業は稼げるのか?と不思議に思うかもしれません。
これは、アマゾン、グーグル、アップルは税金の高い英国ではなく、税金の安いアイルランドやそもそも法人税がないバミューダで税金を支払うようにしているため、結果的にはほとんど税金を支払わずに儲けられる…というしくみ。この例は英国の話でしたが、当然、日本でも同じでしょう、
実際、Amazonなどの多国籍企業は日本にほとんど税金を収めていないと言います。日本では利益が残らないようにしているんでしょうね。これを読んで「日本も負けないように税金を下げるべき!」と思うかもしれませんが、「法人税なし」の国が相手では到底敵いません。むしろ自滅してしまうでしょう。
作者の森信茂樹さんが挙げるこうした租税回避地に対する対策は2つです。1つ目は「OECDレベルでの国際協力の強化」でした。
<すでにOECDレベルでの協力は急ピッチで進められている。タックスヘイブン国のリストづくりが進み、各国ともリストに入ることを嫌って、先進諸国と情報交換協定を結び始めている。(中略)
情報交換により、不正にタックスヘイブンに資金を留保する納税者を探し出すことが可能になるので、大きな効果があるが、それだけでは十分ではない。(中略)
OECDには、1998年以来、有害な税の競争プロジェクトが立ち上げられ、外国企業に税を優遇する国を名指しして圧力をかけることにしている>
ただ、これは実際やられているものの、効果があるのやら?といった感じみたいですね。じゃあ、もう一つはと言うと、これは「租税回避をモラルの問題として考えるのではなく、白黒の判断が可能なようにルールの明確化に取り込む必要がある」というものでした。
<ルールが不透明なままでは、企業側も税制当局も納税者側も、不信感だけが増していく。
米国では、租税回避があまりにもアグレッシブな場合には、私法上は有効な取引であっても税務上否認されることがある。租税回避以外に事業目的がはっきりしない取引について税務上否認できる規定があり、その要件が法律で決められているのである>
アップル課税逃れ 米にもアイルランドにも会社(住所)がない状態の件ではずいぶん議員さんが強気だなと思いましたが、こういう背景があるのかもしれません。ちなみに日本にそういうものはないとも説明されていましたので、実質、やりたい放題なんでしょうね……。
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