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男は仕事・女は家庭の根拠である狩り・採集と育児の役割…は嘘?


 「男は狩り・女は採集」「男は仕事・女は家庭」に関する話をまとめ。<男は仕事・女は家庭の根拠である狩り・採集と育児の役割…は嘘?>、<大昔の人は現代人より合理的?女性リーダーが少なくなかった可能性も>、<ハンターだったことを示唆する狩猟道具入りの埋葬 女性の割合は?>などをまとめています。

2023/01/24追記:
●ハンターだったことを示唆する狩猟道具入りの埋葬 女性の割合は? 【NEW】


●男は仕事・女は家庭の根拠である狩り・採集と育児の役割…は嘘?

2021/11/22:「男は狩り・女は採集…実は嘘」という証拠が見つかったという話。昔は女性ハンターもいたんだそうです。最初、タイトルもこれをそのまんま…にするつもりでしたが、もうひとひねりしたいと思いました。で、「男は狩り・女は採集」で検索してみると、「男は仕事・女は家庭」と絡ませている話があったので、うちでもそうしたタイトルにしています。

 「男は仕事・女は家庭」の原型として正当化にも使われる「男は狩り・女は採集」が実は嘘だったとわかる証拠が見つかった…というのは、こうした研究に詳しいナショナルジオグラフィックの記事で読みました。9000年前に女性ハンター、「男は狩り、女は採集」覆す発見 |(2020.11.09)という記事です。

 結局、女性の狩人の数が少なければ、「男は狩り・女は採集」説は依然として唱え続ける人がいると思うのですが、とりあえず記事を読んでみましょう。これは、2018年の、米カリフォルニア大学デービス校の考古学者ランダル・ハースさんらの研究チームが、ペルーのアンデス山脈で発掘して見つけた成果だそうです。

<墓の中には成人のものと思われる骨とともに、多種多様で見事な狩猟用の石器があった。大きな獲物を倒し、その皮をはぐ作業までの道具がそろっていた。
 「彼はきっと優れたハンターで、集団の中でとても重要な人物だったにちがいない」。当時、ハース氏とチームのメンバーたちはそう考えていた。
 だが、その後の分析によって意外な事実が明らかになった。石器のそばで見つかった人骨は、女性のものだったのだ>


●「男は狩り・女は採集と育児」となったのは最近の話で昔は違った

 私自身は別に「男は狩り・女は採集」という説をを否定したいたけではありませんし、正当化したいわけでもありません。どっちもで良いのですが、前述の通り、女性の狩人が稀な存在であるのならこの説は依然として有効。ところが、学術誌「Science Advances」に発表された論文によれば、当時の南北米大陸では、女性のハンターは例外的な存在ではなかったそうです。

<論文の著者らはこの発見を受けて、米大陸全域で発掘された同時代の墓の調査結果も見直した。その結果、大型動物ハンターの30~50%が女性だった可能性が明らかになった。
 (中略)先史時代には男性が狩りをし、女性は採集と育児をしていた、というのが広く知られている考え方だ。だが一部の学者は、こうした「伝統的な」性別による役割分担は、19世紀以降の世界の狩猟採集民を調査してきた人類学者の記録に由来するもので、古代の人々にも当てはまるとは限らないと主張してきた>

 男女の役割分担説は近年の狩猟採集民由来だったんですね。つまり、性による役割分担は最近の人類の特徴のようです。今回の研究には関わっていない米マイアミ大学の考古学者パメラ・ゲラーさんは、証拠が以前からあったにも関わらず見過ごされてきたことを指摘。現代人の差別的な偏見のせいで気づかなかっただけなのかもしれません。

 米マイアミ大学の考古学者パメラ・ゲラーさんは、「それ(引用者注:男女の役割分担)が常識になっているので、女性の骨格に狩猟の痕跡があったり、狩猟道具と一緒に埋葬されていたりする理由を説明できないのです」 とも言っていました。やはり以前から女性が狩りをしていたと考えられる証拠はあったということでしょうね。


●大昔の人は現代人より合理的?女性リーダーが少なくなかった可能性も

 発掘にあたったランダル・ハースさんも思い込みがあり、前述の通り、最初は墓の主を男性だと思い込み。また、性別が判明する前の時点では、おそらくは社会的に高い地位にあり、集団のリーダーだったかもしれないと推定されるような発掘内容だったことまではわかっていました。こうなると、大昔は女性リーダーが少なくなかった可能性も検討しなくてはいけないかもしれませんね。他に以下のような話もありました。

<狩猟の安全性と効率を高めるためには、性別に関わらず、できるだけ多くの健康で丈夫な大人が必要とされただろう。子どもが離乳した後の母親なら、大がかりな狩猟を手伝うこともできると、(引用者注:調査チームには参加していない)米ニューヨーク州立大学ビンガムトン校の考古学者キャスリーン・スターリング氏は話す。(中略)また、赤ん坊がいても、コミュニティーで育児を手伝う人がいれば狩猟は可能だったかもしれない>

 なお、いつも書いているように、人間は個人差が大きい生き物であり、男女差よりも個人差の方がずっと大きいです。能力の差、向き・不向きを考えると、男女関係なくそれぞれに最適な仕事をこなすというのは、最もパフォーマンスが良くなる合理的なやり方。今の人より大昔の人の方が合理的な考え方をしていたというのは、かなり意外な話です。


●ハンターだったことを示唆する狩猟道具入りの埋葬 女性の割合は?

2023/01/24追記:前回の記事の続きによると、発掘にあたったランダル・ハースさんのチームは、過去に発掘された南北米大陸のデータについても見直してみました。まず、性別が明らかな被葬者429例のうち、27例が狩猟道具とともに埋められていたことがわかります。狩猟道具が入るケースはかなり稀なようです。

 問題はこの狩猟道具が入る特殊ケースの男女比。なんとそのうち11例が女性、16例が男性…ということで、女性に狩猟道具が入るケースは41%と全く珍しくなく、普通にありました。ここから埋葬状況や性別の特定が不確定で曖昧なケースを除いた場合も調べましたが、同じように男女ともに狩猟道具と一緒に埋葬されていたそうです。

 一方、アリゾナ州立大学のヒルさんは、9000年前に埋葬されたこの女性がハンターだったという見解に、納得していません。狩猟道具などの副葬品は、象徴的あるいは宗教的な意味で埋められたとも考えられると指摘しています。ただ、こうした指摘は男性のときには行われないとされており、これ自体が差別なのかもしれません。

<スターリング氏は、そうした疑問そのものに異議を唱える。「こうした副葬品が男性の遺骨とともに見つかったときには、こんな疑問が浮かぶことはありません」と氏は言う。「そんな疑問を抱くのは、男女の役割に関する通説にそぐわない場合だけです」
 ゲラー氏も、「女性が狩猟道具とともに葬られている理由をひねり出そうとして、頭の体操をしている人はたくさんいます」と同意する>


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