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8割方反対される研究こそ価値がある…本田技術研究所の暗黙知


 もともと書いていたのは、フォトショップなどのソフトウェアを販売しているアドビの話。このアドビでは、ビジネスモデルの変革の話もおもしろかったものの、賛成者より反対する抵抗勢力・アンチの方が重要といった話が印象的でした。この反対勢力関連で、メガチップス進藤晶弘会長の話本田技術研究所の話に繋げていっています。

2016/5/19:
●アドビシステムズが成功したビジネスモデルの変革
●好調なうちに変革することが大切とシャンタヌ・ナラヤンCEO
●賛成者より反対する抵抗勢力・アンチの方が重要?
2018/10/27:
●メガチップス進藤晶弘会長の抵抗勢力との向き合い方
2019/01/13:
●8割反対される研究こそ価値がある…本田技術研究所の暗黙知


【クイズ】クリエイティブソフトウエア世界最大手の米アドビシステムズのシャンタヌ・ナラヤンCEOの出身国は?

(1)イスラエル
(2)インド
(3)エストニア


●アドビシステムズが成功したビジネスモデルの変革

2016/5/19:合併買収などは良い?悪い?上場企業について比較してみると…など、変わらない企業より変わる企業がすごいという話をたびたび書いています。「Photoshop(フォトショップ)」「Illustrator(イラストレーター)」でお馴染みのアドビ(Adobe)もこの変化する企業でした。

 「過去の成功」を捨てられない全ての企業へ:日経ビジネスオンライン(染原 睦美 2016年4月8日)によると、クリエイティブソフトウエア世界最大手の米アドビシステムズが好調。2015年度も48億ドルの過去最高の売り上げを達成。さらに、2016年第1四半期の業績は、13億8000万ドルで過去最高になっています。


 現在アドビを率いるシャンタヌ・ナラヤンCEO(最高経営責任者)は2007年に就任以来、ウェブサイト分析サービスを提供する大手米オムニチュアの買収、パッケージ版ソフトの完全撤退など、次々と新機軸を打ち立ててきました。

 中でもアドビが2013年に発表したパッケージソフトの販売中止は業界を驚かせるものでした。10万円以上するパッケージ版ソフトを売りきりで提供していたビジネスモデルを、月額980円からの課金制のクラウド版「Adobe Creative Cloud(アドビクリエイティブクラウド)」に完全に切り替えると発表したためです。

 出版業界やソフトウエア業界が紙やパッケージ版はそのままに、電子版やクラウドでの月額モデルを提供するのは珍しいことではありません。とはいえ、アドビは、併存期間をほとんど設けずに、一気にパッケージ版の出荷停止に踏み切るという、急激な転換を行ったことが驚きだったようです。


●好調なうちに変革することが大切とシャンタヌ・ナラヤンCEO

 アドビシステムズのシャンタヌ・ナラヤンCEOは、この急激な変化について「すべてのCEOには、ビジョンや決心があるはずです。決めたなら、それに疑いをもってはいけない。そして何より重要なのは、戦略があっても実行が伴わなければ意味がないということ。変化しようと考えたなら、1日も早く変わるべきです」としていました。

 「当時、ベンチャー界隈では、『アドビは12-18カ月で製品サイクルを回している(古い会社だ)』という声が聞こえて始めていました」とも言っており、その危機感から、やるなら早く、むしろ業績が好調のうちにやるしかない"となったとしています。

 インタビュー記事であり、あまり強調していませんが、好調なうちにやるというのは大切。私は出版業界や新聞業界で過去にそういう話を書いていますが、アドバンテージがあるうちにビジネスモデルを転換しておかないといけません。

 既に魅力を失くしてしまってから新しいビジネスモデルに移ろうとしても、そのときには既にいろいろな意味での資産がなく、魅力がないということになります。優位に立てるものが多いうちに新しい分野を目指した方が、新モデルへの移行者を多くできるでしょう。ただ、こういうのは既存事業との共食いを起こすことも多く、なかなか本腰を入れた動きをすることは難しいのでしょう。

 また、変化する企業という話では、「マーケティング分野への進出」というチャレンジもありました。インタビューの時期は、2009年のウェブ解析ツール大手米オムニチュア買収後、9社の買収を経て、先行する米IBMや米セールス・フォース・ドットコムなどを追おうとしている時期だったようです。


●賛成者より反対する抵抗勢力・アンチの方が重要?

 おもしろいと思ったのは、「抵抗勢力との向き合い方」です。私自身は批判を受け入れねばと思いつつも、ブログ運営では批判コメントに精神的に参ってしまいましたので、この姿勢には感心します。
 当然、抵抗勢力もいたはずだ。特に、パッケージ版とクラウド版を併用する期間については、もっと長く設けても良いのではないかという意見も多かった。シャンタヌ氏はこうした抵抗勢力を無視して押し切るようなことはせず、むしろ賛成者以上に耳を傾けたという。

 「抵抗勢力というのはどんな会社にもいつの時代にも出てくるものです。ただ、私は反対する声には積極的に耳を傾けました。なぜなら、反対する人たちは、耳を傾けることで、自分が会社の意思決定に加わっているという実感が持て、のちのち協力者になってくれるからです。それだけではなく、彼らの声を聞けば、多様性のある意見を取り入れたよい製品ができる。反対する人たちとは、何度も何度もコミュニケーションすべきなのです」

 批判する人たちは批判することそのものが快楽になっている面もありますので、彼らの声を聞こうという姿勢を取るというのは良い対応法です。ただ、これねー、精神的にはめちゃくちゃきついんですよ。本当偉いと思います。

 クイズはシャンタヌ・ナラヤンCEOの出身国についてでした。名前の響き的にインドだろうなと検索かけたらそうでした。インドは本当優秀な人多いですね。


【クイズ】クリエイティブソフトウエア世界最大手の米アドビシステムズのシャンタヌ・ナラヤンCEOの出身国は?

(1)イスラエル
(2)インド
(3)エストニア

【答え】(2)インド


●メガチップス進藤晶弘会長の抵抗勢力との向き合い方

2018/10/27:日本の半導体メーカーであるメガチップス進藤 晶弘会長の抵抗勢力に関する話もあったので、こちらに追記。敵は外ではなく内にいるとして、タイプ別に以下のような人たちとの戦いになるという話がありました。ただ、解決策は力技というか、精神論的な感じで、覚悟、覚悟といったものでした。

(1)総論賛成・各論反対の人たち
(2)既得権益を失う人や痛みを嫌がり抵抗する人たち
(3)自己の利益のために仕事をしている人たち
(「敵は内にあり」抵抗勢力とどう闘うか|日経BizGate 2015/7/6より)

 ここだけ読むとイマイチなのですけど、その前の話が抵抗勢力との戦い方としておもしろかったんですよ。意図的に社員から問題点が指摘されるように仕組み、トップが進んで責任を認めて改める姿勢を示し、社員の協力を求めて問題解決の当事者に巻き込んで解決するというもの。以下が具体例でした。

(1)研修会で最初に「今のメガチップスの良い点も悪い点も、すべて私の責任だ」と言明。その上で、「当事者の私が自分の問題点を洗い出すのは難しいので、全員で徹底的にえぐり出してほしい」と約10人ずつの3チームに分けて洗い出しをしてもらう。
(2)すると、想定していた問題が指摘された。「言っていることと反対のことをやっている」として、フラットな組織・年功序列でなく能力主義で行くと言いながら、階層が6層もでき、能力主義とは関係ない手当がいっぱいあるという指摘。
(3)続けて「皆さんから指摘されたことは正しい。私は反省して改めるから、議論して今日中に改善方法を提案してほしい」と改善方法に関する議論をしてもらう。
(4)すると、「3層に改めよ」「各種手当を廃止せよ」という予想以上に厳しい内容に。
(5)「3層にすれば多数の人が降格になるが、それで良いのか?」などと既得権益について聞いても、「自分たちにとって職位は価値観ではない。それで当たり前だ」などとの答えが来て、改革が決定。

 進藤 晶弘会長は、「私が自分の間違いを棚に上げて、自分から先に改善を指示すると、社員は上から強引に押し付けられたものという被害者意識が働いて抵抗し、議論は紛糾して別の結論になっていたかもしれません」とのこと。抵抗勢力候補を改革の当事者にしてしまうというのは、良い対応策だと思われます。


●8割方反対される研究こそ価値がある…本田技術研究所の暗黙知

2019/01/13:データ的な根拠はないのですけど、今までの話より興味を持ってもらえそうなホンダの話があったので追記。創業者である本田宗一郎さんと藤沢武夫さんは、技術やデザインの独創性こそがHondaの競争力の源泉であり、企業を持続させるコアだと考え、研究所を独立させたそうです。その本田技術研究所の松本宜之社長が、以下のような話をしていました。

「新たな研究開発テーマを決める際に、私たちの暗黙知として、『8割方反対されて、初めて価値が出る』『全員が賛成するテーマは、もう過去のテーマだ』というものがあります」
(8割反対されてこそ、価値あるものが生み出せる:日経ビジネスオンライン 2018年5月9日より)

 実現までの道のりが遠い“イノベーション“よりも、成果が出やすい“オペレーション”をやってしまいがちなため…と理由が説明されていました。これより前では、「新たなイノベーションを生み出していくという研究開発の領域では、あえて無駄を許容しなくてはいけない」ともおっしゃっています。

 この話で思い出したのが、ノーベル賞関連で繰り返し書いている、画期的な研究は往々にして非主流の研究から生まれる…という話です。しかし、現在の政府は、みんなが有望だと思う分野に研究資金を重点配分するという、ホンダとは正反対のやり方を進めており、将来の日本の研究が衰退することが予想されています。

 ただ、これまでの抵抗勢力と戦うという話とはだいぶ違う話でしたね。下手をすると、「みんな反対するが、俺の意見を通せ」というワンマンな主張に利用されてしまいそうです。しかし、今回の話のポイントは「反対される意見が正しい」ではなく、多様性でしょう。

 最初と同じアドビでは、社員に失敗を推奨するAdobe 成功率が高いことがむしろ悪い理由という話もやっています。早くチャレンジさせて失敗させつつ、その中から大きく成功するものを見つけ出していました。1点賭けせず手広くやることで、大当たりを見つけ出す確率が高まるのだと考えられます。


【本文中でリンクした投稿】
  ■社員に失敗を推奨するAdobe 成功率が高いことがむしろ悪い理由
  ■合併買収などは良い?悪い?上場企業について比較してみると…

【その他関連投稿】
  ■中間管理職・マネージャーいらない論 グーグルは必要・不要どちらと結論づけたのか?
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  ■客や取引先は選んで差別せよ でんかのヤマグチと徳島インディゴソックスの場合
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