遺伝子組換え(GM)に関する話をまとめ。<GM危険論文は捏造でした?不正疑惑が出て自己剽窃認定、論文撤回>、<捏造研究を反論禁止の条件でマスコミに大々的に発表させた科学者>、<寄付金がっぽり!反金儲け主義を装う人たちが一番金儲け主義>などをまとめています。
2022/07/19追記:
●捏造研究を反論禁止の条件でマスコミに大々的に発表させた科学者 【NEW】
●寄付金がっぽり!反金儲け主義を装う人たちが一番金儲け主義 【NEW】
●GM危険論文は捏造でした?不正疑惑が出て自己剽窃認定、論文撤回
2016/5/19:
遺伝子組換え作物の危険性を指摘する論文に不正疑惑 | Vol. 13 No. 4 | Nature ダイジェスト | Nature Publishing Group Nature (2016-01-21) | doi: 10.1038/nature.2016.19183 (翻訳:三枝小夜子)によると、遺伝子組換え作物を食べて育った動物に有害な影響が出ているとするナポリ大学(イタリア)のある研究室の論文が、データ加工の疑いにより学内調査を受けています。
ネイチャーの日本語記事では以下のような記載。ここでは記載ないですが、
2016-01-19 - 食品安全情報blogでは、電気泳動ゲルの不正だとのこと。電気泳動ゲルの画像の不正は、バイオ系では最もメジャーな不正の一つでしょう。STAP細胞論文で出ていた不正疑惑の一つもこれでした。
<Cattaneoは、3本の論文全てに問題がありそうな点を発見した。電気泳動ゲルの画像のいくつかの区画が消されているように見えた上、別々の論文に使われている画像のいくつかが、キャプションによれば異なる実験のものであるはずなのに、全く同じに見えたのだ。
そこで彼女は、生物医学サービス会社バイオ・デジタル・バレー(BioDigitalValley;イタリア・アオスタ)のCEOであるEnrico Bucciに論文の科学捜査を依頼した。分析の結果、論文の画像には確かに加工されたものや再利用されたものがあることが判明した>
まだ不正と確定したとは一応言えないものの、既に撤回になっています。限りなく黒な感じですが、雑誌側は「自己剽窃」だとしつつ、悪意のないミスだとしているみたいですね。画像の使い回しを悪意なしってのはひどい話ですので、この雑誌もひょっとしたらかなり怪しいところなのかもしれません。
<(引用者注:神経科学者である)Cattaneoが明らかにした事実を論文掲載誌に送付してから、調査中の3本の論文のうち1本が撤回された。その論文2はFood and Nutrition Sciencesに発表されたもので、取り下げ理由は「自己剽窃」であった。同誌は、研究結果は今でも有効であり、問題とされた行為は「悪意のない間違い」にすぎないとしている>
また、記事には追記があり、処分が出ています。処分が甘い気がするものの、論文発表を禁止する処分になっているので、不正があったことは確定と見て良いでしょうね。
<その後、調査委員会からの報告を受け、ナポリ大学は2月10日にInfascelliを含む11名の科学者を戒告処分とし、そのうち2名の責任著者については、今後2年間は学部長の承認なく論文を発表することを禁じた>
●遺伝子組み換え作物(GM作物)は危険という論文広まる 引用多い重要論文
雑誌側は「研究結果は今でも有効」としていますし、一つの論文が撤回されただけで、すべての遺伝子組み換え作物を危険視する論文が否定されたわけではありません。しかし、この論文が重要なのは、界隈では有名でよく引用されていた論文だったということみたいです。
遺伝子組換え反対派のウェブサイトで広く引用されている。また、その実験の結果は、安全性が認められた遺伝子組換え作物の国内での栽培を許可するべきかに関して2015年7月にイタリア元老院が開催した公聴会の参考文献にもなった。
調査のきっかけは、ミラノ大学(イタリア)の神経科学者でもある元老院議員のElena Cattaneoが、この研究に疑問を抱いたことだった。「遺伝子組換え作物をめぐる論争にこれらの論文が政治的に利用されているという点でも、本件は非常に重要なのです」と彼女は言う。
さらにこの論文以外にも疑惑が生じているとのこと。かなり怪しいところのようですね。
ジョージア大学(米国アセンズ)の植物遺伝学者Wayne Parrottは、3本の論文の画像加工についてCattaneoとは独立に調査し問題を指摘していた他、遺伝子組換え飼料がウサギの代謝に影響を及ぼすというInfascelli研究室の別の論文についても疑問を投げかけていた(後者の論文はBucciの分析結果でも言及されている)。
遺伝子組み換え反対派の人たちは、遺伝子組み換えを進める悪徳巨大企業が不正をしていると盛んに言っていますが、反対派の論文が正しいかどうかも十分に疑ってみた方が良いでしょう。
●捏造研究を反論禁止の条件でマスコミに大々的に発表させた科学者
2022/07/19追記:他で書いた話をこちらにも転載。捏造研究を反論禁止の条件でマスコミに大々的に発表させた科学者がいたという話を読んで驚き。この科学者は、遺伝子組換え(GM)の研究者ではなく、遺伝子組換え反対派の研究者なんですよね。「正義」を装う遺伝子組換えを問題視する人の方がむしろ悪徳…というわかりやすい例です。
なお、「反論禁止の条件で」というのは、私が短くまとめた言い方であり、正確にはマスコミの論文の内容について他の科学者の意見を聞くことを禁止した…というものでした。これは科学にとって重要な正確性のチェック(査読)を禁止する行為。学術誌なら研究不正に近い行為です。
この話を書いていた<反GM団体に偽りの理論的根拠を提供する科学者>(22/7/18(月) 14:03配信 Wedge 唐木英明)でも、最近の査読不正の話とセットでの紹介。うちでは、
日本初の査読不正?友田明美・福井大教授の論文に千葉大教授協力で書いています。査読を不正しちゃうと、不正論文が大量に出るため、絶対に許されません。
<実験方法の間違いは時には社会に取り返しがつかない悪影響を与えることもある。その代表が「セラリーニ事件」だ。
セラリーニはフランス・カーン大学教授で、反遺伝子組換え(GM)団体クライジェン(CRIIGEN)の創設者でもある。彼を有名にしたのが、GMトウモロコシと除草剤ラウンドアップがラットにがんを引き起こすという2012年の論文で、そこには大きながんができたラットのショッキングな写真が掲載されている。
セラリーニは公表の記者会見に先立ってメディアに論文を渡したのだが、それは機密保持契約と引き換えであり、論文の内容について他の科学者の意見を聞くことを禁止していた。また論文発表と同時にこの研究を基にした映画と出版物を公開した。この巧みな広報活動の結果、多くのメディアはがんができたラットの写真とともに論文の内容を大きく報道し、世界に衝撃を与えた>
https://news.yahoo.co.jp/articles/f9382571e243b57e6d297d3282154a90a6bba1bf
この研究の何が不正に近い行為だったのか?と言うと、セラリーニが加齢とともにがんができる系統のラットを使ったことです。がんができる系統のラットを使ったため、GM(遺伝子組換え)トウモロコシを食べたラットががんになるのは当たり前。これでは、GM(遺伝子組換え)が問題であることを証明できません。
実際、研究では、通常の飼料を与えたラットもがんになっており、がんができる確率は統計学的には変わりませんでした。かなりずさんな研究でしたが、だからこそ他の科学者に見せることを禁止したのでしょう。アホなマスコミは、彼の「遺伝子組換えの方ががんになりやすい」という主張を信じてしまいました。
●寄付金がっぽり!反金儲け主義を装う人たちが一番金儲け主義
また、記事では、GM(遺伝子組換え)に反対することで、多額の資金と協力者を得ることができることがわかる話もあったんですよ。反金儲け主義を装いながら、実は自分たちが一番金儲け主義…ということが他のニセ科学でもよくあり、注意が必要。逆に金儲け主義と叩かれる人たちは、広報が下手だと今回指摘されています。
<出版社は調査の結果、「不正はないけれど、内容が不十分」として1年後の13年に論文を取り消し処分にした。(中略)そして14年に別の出版社がこの論文を再出版した。
(中略、GM反対や農薬反対を叫ぶような)人たちがセラリーニ論文を査読し、そんな出版社がこれを公表し、批判されると「不正はない」と強弁し、別の出版社が再出版するというシナリオに協力したのだろう。「目的のために手段を選ばない」人たちはどこにでもいる。
論文が批判され、取り下げになることはセラリーニにはむしろ歓迎だろう。「悪徳企業」モンサントや「御用学者」に攻撃されている「殉教者」を装うことができ、反GM団体は抗議運動を続けられるからだ。
セラリーニ問題は論文と出版物と映画と抗議運動の相乗効果を最大化するために、綿密な作戦計画のもとに実行されたものであり、それが功を奏した。日本の、そして世界の反GM団体がセラリーニの講演会を開催し、彼は反GM運動の理論的な支柱になって、社会に誤解と混乱を広げている。
12年の論文は320万ユーロ(4億3000万円)の研究費が必要と言われるが、彼が主催する反GM団体クライジェンが寄付金を集めて活動を支えたという。逆に寄付金を集めるためにGMは危険という根拠を示すことが大事なのだ。
これに対してGM推進側は司令塔も資金も戦略もなかったことが大きな反省点だ>
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