単に若者がLINEの使用頻度を下げているって話だけなのですけど、なぜか「LINEからも逃げ出し始めた」という嫌な書き方をしている記事がありました。「~の若者離れ」ってのも非難するような調子があるのですけど、さらにネガティブな使い方に見えます。
なお、この若者がLINEを使わなくなった理由は、大人が使うようになったからといった説明がされていました。これは過去の他のSNSでも見られてきた現象です。世代交代というか、賞味期限切れみたいなのが、SNSではあるんですね。(2018/02/10)
2018/02/10:
●若者はLINEからも逃げ出し始めた…LINE離れでマスコミが若者バッシング
●ツイッターとインスタグラムに移行?LINE離れで若者が向かう先
●とある女子高校生いわく「文章でのやり取りが面倒くさい」「ウザい」
●SNSに賞味期限があるのは事実 フェイスブックも昔捨てられた
●大人が増えると若者は離れるもの…LINEも既にそうなった?
2020/04/12:
●「若者のLINE離れ」は真っ赤な嘘だった?むしろ利用率は上昇
●若者はLINEからも逃げ出し始めた…LINE離れでマスコミが若者バッシング
2018/02/10:普通のタイトルで良いのに、「また若者が逃げたよ」というネガティブなニュアンスのタイトルである
なぜ? LINEからも逃げ出し始めた若者たち : 深読みチャンネル : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)(ITジャーナリスト 高橋暁子 2018年01月18日 07時00分)という記事がありました。
ただ、記事の中身は普通の分析記事で、若者を批判しているわけじゃないんですよ。記事とタイトルが合っていないのです。
なぜこういうことが起きるのか?と言うと、新聞などの記事は記者・作者がタイトルをつけず、編集者がつけているためです。(おそらく若くはない)読売新聞の編集者が、ジャーナリストが書いたこの記事に、若者バッシングをするようなタイトルをつけたのだと思われます。
●ツイッターとインスタグラムに移行?LINE離れで若者が向かう先
ということで、ジャーナリストの方は悪くないのですけど、本文は別な意味で問題があります。若者がLINE利用を減らしているという根拠がイマイチなのです。とりあえず、作者が挙げていたのは、調査会社・マクロミルの17年7月と16年1月のインターネット調査(15歳以上のユーザーが対象)の比較などでした。
17年7月
LINEユーザーのうち、40代が22.5%、50代以上が23.8%。一方、15~19歳は10.3%、20代が20.7%。中年以上の層が半分近くを占める一方、20代以下は3割強にとどまる。
16年1月
40代が17.4%、50代以上が18.4%だったのに対し、15~19歳が11.6%、20代が24.8%だった。
作者は一方で、若者は親しい友だちとはツイッターや、画像共有型のSNS「インスタグラム(インスタ)」で連絡を取ることが多くなったとしていました。調査会社のニールセンデジタル(東京)の17年の調査でも、18歳以上の「女子学生」(高校生も含む)のうち、49%がツイッターとインスタを併用していると回答したとしています。
ただ、これ、LINEとツイッター・インスタグラムで、全然調査形式が違うんですよ。LINE離れが起きている可能性はあると思うものの、これらのデータでは証拠となりません。同じ基準で比べる必要があります。
●とある女子高校生いわく「文章でのやり取りが面倒くさい」「ウザい」
作者はある女子高生の話を載せていたものの、こちらは個別事例であり、もっと証拠として使えません。とりあえず、彼女は以下のように言っていたそうです。
「LINEグループが増えすぎて、日中、メッセージのプッシュ通知が届き続けるので、最近は通知機能をオフにしている」
「文章でのやり取りが面倒くさい」
「(友だちになることを条件に、LINEのスタンプが無料でダウンロードできる)企業アカウントが増え過ぎて、広告の通知が頻繁にくるのもウザい」
ただ、結局、彼女も「LINEでしかやり取りしなかったり、LINEしか連絡先を知らなかったりする人は今も多い」「LINEも1日1回は見る」と言っているんですね。なので、調査の形式によっては、ツイッターやインスタグラムと同じく「利用している」になってしまうことがあります。比較するなら同じ基準で調べましょうね…というのは、こういうのが理由です。
あと、今も小学生、中学生の「スマホデビュー組」は、まずLINEを始めるとも、作者は書いていました。こうなると、かなり狭い範囲の若い人だけがLINEを使わなくなっている…といった主張となります。
●SNSに賞味期限があるのは事実 フェイスブックも昔捨てられた
ということで、全体に怪しい記事なのですけど、若者のLINEの使用頻度が落ちている可能性はあると思います。というのも、こうしたSNSには賞味期限切れがあることが知られているためです。(古い話で言うと、日本ではmixiが流行っていた世代があります。また、海外ではマイスペースが強いときがありました)
日本の話ではないものの、
利用者の6割以上が嫌だと思うフェイスブックをやめられない理由では、英米の若者で加速度的にフェイスブック離れが進んでいるという話が出てきました。2013年の記事です。
理由としては、「友達が増えすぎて、自分の情報が親に漏れるのが心配」の他、「オジサン・オバサン(つまり大人)ばっかり増えてクールじゃなくなった」などが挙げられていました。そして、メインのやり取りをツイッターやインスタグラム、タンブラーに移る若者が続出しているとされていたのです。
●大人が増えると若者は離れるもの…LINEも既にそうなった?
今回の記事でも、似たような話がありました。まず、日本でもフェイスブックは「おじさん・おばさん」世代がメインで、多くの人とつながって、最低限の連絡が取れる「名刺」的な役割だとしています。そして、LINEも今はそんな感じだと作者は見て、以下のように書いていました。
"若者たちは、新しく「大人があまりいない場所」にいつも心を惹かれるものだ。このため、若者たちにとって、SNSの「流行り廃り」はとても早い"
若者が本当にLINEをあまり使わなくなったのかはきちんとしたデータで見たいものの、あり得る話ではないかと思いました。
●「若者のLINE離れ」は真っ赤な嘘だった?むしろ利用率は上昇
2020/04/12:うちでも根拠が怪しい記事と書いていたのですが、上記の記事のちょっと後に
「若者のLINE離れ」は起きていなかった…むしろ利用率上昇 Business Journal / 2018年5月31日 19時0分(石徹白未亜/ライター)という記事が出ていたようです。
この記事は、フラーの岡田雄伸・コンサルティング本部長に2018年第1四半期(1~3月)を中心にアプリの動向を聞いたというものでした。フラーというのは、ダウンロード数だけでは見えない「アプリの利用率」をモニターの利用動向から調べるサービス「App Ape」を提供している会社だそうです。
インタビューの中では「Tik Tok」の例を出した上で、「若者は上の世代が利用している既存サービスに乗っかりたくないのでしょうか」という質問が出ています。岡田雄伸本部長は「それもあるかもしれません」と肯定しつつ、利用動向がわかる「App Ape」で見ると異なるケースもあると指摘。それがLINEでした。
<今年1月の「YOMIURI ONLINE」に「なぜ? LINEからも逃げ出し始めた若者たち」という記事が掲載されました。(中略)
なので、「App Ape」で17年1月と18年1月を比較してみたのですが、10~20代ではLINEの所持者数、アクティブユーザーともに増えており、若者はLINE離れをしていなかったんです。月間利用率を見ても若者の利用率は上がっており、むしろ利用頻度は高まっています。ちなみに、30代以上を含む利用者全体の母数も増えており、利用率も同様にほかの年代でも上がっています。
「YOMIURI ONLINE」の記事では、「減少している」という根拠がLINEユーザーのそれぞれの世代の割合を16年と17年のアンケート調査から比較したもので、その結果「17年になり、若者のユーザーの割合が昨年より減少していた」としています。
しかし、LINEユーザー全体のなかで中高年の割合が増えれば相対的に若者の割合は減ってしまいますよね。そして、「若者の割合」は減っても「若者の利用者数」が減っているかどうかはわからない。この記事では、「割合」と「実数」を混同していたのでしょう>
インタビューアーは<「YOMIURI ONLINE」の記事は「ガセ」や「デマ」ではなく、実数と割合の混同という「誤解」によるものだと思われる>としていました。ただ、結果としては読売新聞が嘘を拡散してしまった格好になっています。
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