適量のお酒は健康に良く長生きするは誤解だという研究についての紹介。この研究では、少なすぎると不満になりそうではあるものの、一応「適度な飲酒量」も紹介してくれています。その後、"適度な飲酒でも脳の海馬に影響"という別の研究についての話も追加しました。
【クイズ】お酒好きのことを「何党」と言うでしょうか?
(1)右党
(2)左党
(3)中党
2016/5/28:
●適量のお酒は健康に良く長生きするは誤解
●飲酒は有益な効果があると専門家から反論
●研究によると、最適な飲酒量はいったいどれくらいなのか?
●酒好きを「~党」という理由がおもしろい
2017/06/08:
●適度な飲酒でも脳の海馬に影響
2020/06/24:
●日本人のアルコールの適量を否定する研究が医学雑誌に掲載
●さらに別の論文でも「基本的に飲酒量はゼロがいい」と結論

●適量のお酒は健康に良く長生きするは誤解
2016/5/28:お酒を全く飲まない人より少し飲む人の方が健康状態が良いという説は、ある程度支持されています。が、それを否定する研究が出たそうです。
衝撃!「酒は百薬の長」はウソなのか 長生きする「適度の飲酒」は雀の涙ほど : J-CASTヘルスケア 2016/4/ 8 11:30
研究をまとめたのは、オーストラリア国立薬物研究所のターニャ・クリスティー博士らのチームだ。国際アルコール薬物研究誌「JSAD」の2016年3月号に発表した。
酒と健康については、「適度の酒なら、まったく飲まない人より長生きする」とする研究が多くある。(中略)
クリスティー博士らは、酒と健康の関連を調べた過去の論文計87件を分析した。その結果、「重大な誤りに気づいた」という。「過去の論文の多くが、病気が原因で禁酒している人々のことを考慮の対象から除外している」というのだ。博士によると、酒を飲まない人々の中には次の事情の人がいる。
(1)糖尿病や心血管疾患などの病気で医師から禁酒をさせられている人。
(2)そのほかの病気を患ったり、もともと体が弱かったりして酒を飲めない(あるいは飲まない)人。
こうした人々は早死にする可能性が高いのに、酒を飲む人と全死亡率を比較する際、統計に反映されてこなかった。そこで、「病気による飲酒」を考慮しない論文をすべて除外し、残りの論文を改めて分析し直すと、「適量の飲酒が、酒を飲まない人より健康的で長寿をもたらす」という結果は得られなかった。
●飲酒は有益な効果があると専門家から反論
上記は説得力ある説明だと思いました。ただ、米の健康医療紙「ヘルスニュース」2016年3月31日号では、反論もありました。米ボストン大学のカーティス・エリソン教授は「人や動物の実験でも、適度な飲酒(特にワイン)が動脈硬化や冠動脈疾患のリスクを下げることが科学的に証明されている」としています。
でも、これ、特定の病気しか見ていないので、変な反論なんですよね。例えば、日本人の食事のの洋食化は健康に良くないと決めつけられていますが、一方で日本人特有と思われていた病気を減らしています。こういうのは特定の病気だけ見るのではなく、トータルで見なくてはいけません。専門家らしからぬ発言です。
一方、同じ雑誌に載っていたカナダ・トロント大学のダナ・ラナ教授は「飲酒に有益な効果があることは認めるが、乳がんなど様々な病気のリスクが高まるなど、効果が相殺されることも確かだ」としていました。こちらはちゃんと複数の病気の影響を考えています。
そもそも上記の調査がすべての死亡リスクを勘案したものであり、これに関して特定の病気によるリスクのみを挙げた反論は無理筋でしょうね。とはいえ、こういった統計調査ではごまかしがある可能性も一応ありますし、今後もう少しまともなな反論が出てくることもあるかもしれません。
●研究によると、最適な飲酒量はいったいどれくらいなのか?
なお、適量とされる値を今回の研究でも出していましたが、もっとも健康によい「適量の飲酒」は10日ほどで、ビールなら中ビン半分、日本酒なら0.5合程度だそうです。
しかし、"これでは、ほとんど飲まないに等しいではないか"と、記事では指摘しています。要するに、飲まなければ飲まないほど良いってことかもしれません。
さて、記事では、「左党をガッカリさせる研究」という表現がありました。クイズはこれです。
【クイズ】お酒好きのことを「何党」と言うでしょうか?
(1)右党
(2)左党
(3)中党
【答え】(2)左党
昔の大工は左手にノミを持っており、ノミ手と言われていたそうです。このノミと飲みを引っ掛けて、酒好きを左利きと言ったようです。左党への繋がりがよくわかりませんけど、このあたりと関係あるみたいです。
また、酒が飲めず甘い物の好きな人を右党とも言うそうです。これはたぶんさらに発展して…なんだと思います。大工さんの右手はは槌(つち)を持っており、槌手と呼ばれていました。こちらは甘いものには繋がりそうにありません。
でも、ダジャレなら「砂糖」と同じ発音の「左党」の方が甘党じゃないってのも変な感じですね。
●適度な飲酒でも脳の海馬に影響
2017/06/08:こういった研究は一つでは決まらず、多数のものを見る必要があります。ということで、別記事を紹介。
「節度ある」飲酒も脳に悪い? 流ちょうさに影響も 研究:時事ドットコム〔AFP=時事〕(2017/06/07-14:16)という記事がありました。
記事によると、"これまで「適度」とされてきた1日平均2~3杯の飲酒の潜在的悪影響についての研究は少なく、結論に達していない"そうです。
今回の論文は、英医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナルに掲載されたもの。"1週間に14~21杯の飲酒を数十年にわたり続けた男女は一切飲酒をしない人と比べて、海馬が萎縮する可能性が2~3倍高まる"ことがわかりました。海馬というのは、"記憶や自らの位置の把握などを司る脳領域"です。
ここで言う飲酒1杯(1ユニット)というのは、"10ミリリットル(8グラム)の純アルコールを含む量"。"大きなグラスのワイン1杯、アルコール5%のビール1パイント(約500ミリリットル)、ウイスキーやウオッカなどショットグラスに1杯がこれに相当する"そうです。
さらに、英国のオックスフォード大学とユニバーシティー・カレッジ・ロンドンの研究チームは、ホワイトホール研究IIにおいて、30年間モニターされた男女550人のデータを精査。そして、こちらでも、"14~21ユニットのアルコールが海馬に与える影響が、撮像技術によって明瞭に示された"そうです。
ただし、"知的能力試験ではそこまで決定的な結果は得られず、明らかな影響を示したのは言葉の流ちょうさ"のみ。また、"今回の研究は実験ではなく観察に基づくものであるため、因果関係について確固たる結論を引き出すことはできない"ものです。"さらに論文著者らは、標本数が小さいことも認めている"とのこと。
ということで、今回の研究は、適度な飲酒が健康に大きな影響を与えると、ただちに決定づけるものではありませんでした。
●日本人のアルコールの適量を否定する研究が医学雑誌に掲載
2020/06/24:
酒は百薬の長は嘘…そもそも由来は国による独占正当化の宣伝文句でやったように、「酒は百薬の長」は単なる宣伝文句。全然根拠はないのですけど、
「酒は百薬の長」のはずでは? 少量でもNGの最新事情:日経ビジネス電子版という記事が出ていました。
記事を見ると、話を書いているのが専門家ではなくてがっくり。酒ジャーナリストの葉石かおりさんです。ただ、お酒好きの医師に「健康的に飲み続ける方法」を聞き出した…というコンセプトだそう。また、ちゃんと論文にも触れていましたので、普通に良い記事でした。
出ていた論文は、、2018年4月に、医学雑誌『LANCET(ランセット)』に掲載された英国の研究。「死亡リスクを高めない飲酒量は、純アルコールに換算して週に100gが上限」と報告されました。ちなみに日本で「適量」と考えられていたのは1日当たり20gだそうですので、週に140gであり、これをオーバーしています。
この論文では、アルコール摂取量が週に100g以下の人では死亡リスクは飲酒量にかかわらず一定だったのに、週に100gを超えてから、150gくらいまでは緩やかに上昇し、それ以降は急上昇していたとのこと。日本で「適量」とされていた週に140gはついついオーバーすることもあるでしょうし、危ない基準でしたね。
●さらに別の論文でも「基本的に飲酒量はゼロがいい」と結論
さらに厳しいのが、同じ2018年8月に、これまた同じ『LANCET』に掲載された、「195の地域で23のリスクを検証した結果、基本的に飲酒量はゼロがいい」と結論づけた論文です。これについて、飲酒と健康についての研究を手がける筑波大学の吉本尚准教授が解説しています。
吉本尚准教授よると、虚血性心疾患(心筋梗塞など)は少量飲酒でむしろ発症リスクが下がっています。しかし、乳がん、結核などほかの疾患のリスクは少量飲酒においても高まっていくので、全体としてみると、良い効果がなくなるという説明。最初に私が指摘したように、このように全体のリスクを見なくちゃいけません。
吉本尚准教授は、「1つの論文で結論を出すのは危険です。いろいろなデータを見て判断する必要があります」ともおっしゃっていて、これはそのとおりです。ただ、最初の投稿で書いたように、それ以前にも同様の研究が出ていましたからね。比較的信頼性が高そうな感じに見えます。
【本文中でリンクした投稿】
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