シャープの話をまとめ。<鴻海のシャープ買収は稚拙で失敗? 知日派の戴正呉副総裁は無能>、<鴻海のシャープ買収が失敗しても、政府支援よりはマシな理由>、<鴻海に騙されたシャープ…と報道する日本マスコミの低レベルさ>、<巨額赤字を粉飾…騙したのは鴻海ではなくシャープの方では?>などをまとめています。
2022/08/02まとめ:
●鴻海に騙されたシャープ…と報道する日本マスコミの低レベルさ
●鴻海のシャープ買収は稚拙で失敗? 知日派の戴正呉副総裁は無能
2016/5/31:以前、<鴻海に騙されたシャープ…と報道する日本マスコミの低レベルさ>(同じページの後半にまとめ)という投稿を書いています。鴻海のシャープ買収の件、これまでダイヤモンド・オンラインはそれほど偏った報道ではなかったと思うのですが、ここに来ていきなり強烈な鴻海叩きの記事が出てきて戸惑いました。
その記事というのは、
シャープ新経営陣の人選に見える鴻海流再建策の稚拙|Close-Up Enterprise|ダイヤモンド・オンライン(2016年5月23日 「週刊ダイヤモンド」編集部 中村正毅)というものです。鴻海をボロクソに叩いていてびっくりしましたわ…。
<出資減額で社内が大騒ぎになる中、ホンハイは日本での印象悪化を食い止めようと奇策に出る。それは、家具小売りのニトリホールディングスに売却した、シャープ本社ビルの買い戻しだった。
指示をしたのは、ホンハイのナンバー2で、シャープの次期社長に内定している戴正呉副総裁。「創業者の記念館を建てよう」などと迎合してみせたが、シャープ側の反応は冷め切っていた。所有権が移った直後でもあり、実現するとは到底思えなかったからだ。(中略)
ホンハイの知日派──。次期社長候補の戴氏をそう表現しすり寄るメディアもあるが、食事を共にしたことがある政府関係者は、「(郭台銘会長の)大いなるイエスマン。経営の能力? そんなものあるわけないでしょ」と手厳しい。(中略)
4月2日の契約調印会見後、報道陣のぶら下がり取材に応じた戴氏は、ホンハイ傘下で液晶事業の群創光電(イノラックス)との連携策について問われると、「ホンハイの関連会社ではなく、郭会長の会社」「私は技術者じゃないから分からない」とけむに巻くだけで、中身のある話を一切しなかった>
後述するように、政府は鴻海にシャープを買収してほしくなかったので、政府関係者の話はそのまんま受け取れません。いわば敵の評価ですからね。一方で、作者の中村正毅さんは、ソニー出身の石田佳久さんを社外取締役の候補にしているのも、戴正呉副総裁の稚拙さだとしていました。
ソニーのテレビ向けに液晶パネルの供給を約束しながらシャープが裏切ったことがあるから…というのが理由だそうです。でも、ちょっとこの説明だけだと、よくわからず。過去に裏切られた会社の社外取締役をやるのは、ソニー出身者にはかわいそうだとか、報復のおそれがあるとかですかね? 説明が少ないのでよくわかりません。
●鴻海のシャープ買収が失敗しても、政府支援よりはマシな理由
感情的な鴻海叩きにも見える今回の記事でしたので、探して過去の中村正毅さんの記事も読んでみました。選んだのは、
シャープ・JDI液晶統合「新・日の丸液晶」に勝機はあるか(下)|Close-Up Enterprise|ダイヤモンド・オンライン(「週刊ダイヤモンド」編集部 中村正毅 2015年12月28日)という記事です。
<今回の統合は、革新機構を後ろ盾にして、好調なJDIが不調の続くシャープの液晶事業をのみ込むような印象を与えるが、実態はやや異なる。
JDIでさえ、構造改革の途上にあるのだ。15年3月期の最終損益は、在庫評価損や工場の閉鎖による減損などが響き、122億円の赤字。直近の15年4~9月期も、3億円の最終赤字だった。(中略)
本間充氏が会長に就任する以前、シャープの液晶事業との統合について、「スマホ向けに、G8の工場なんて必要ない」との声がJDIの社内で大勢を占めていた。G8とは最先端の第8世代の生産設備のことで、シャープの亀山第二工場に導入されているもの。改革途上のJDIにあって、過剰設備はリスクともなり得る>
JDIだって苦しいのですから政府主導の合併にも批判的な様子なのかな?と思ったら、最後は逆に以下のように超好意的。ひょっとしたら、中村正毅さんは、この日の丸液晶路線を支持していたのかもしれません。そして、日の丸液晶が実現しなかったがために、鴻海が気に食わないのかな…と思いました。
<そして次世代ディスプレイの有機ELは、IGZOとLTPSの技術融合により、スマホ市場をさらに開拓する余地があるとされる。それだけに、新・日の丸液晶連合への期待は大きい>
なお、私は鴻海のシャープ買収ならきっとうまくいくと思っているわけではないですよね。むしろ鴻海は楽観的すぎるのでは?シャープに期待しすぎでは?という考え。ただ、民間企業による純粋な意思決定であれば、失敗しようが成功しようが構わないというのが私の姿勢。いわゆる自己責任です。
一方で問題なのは、国が関わる場合。この場合、国は失敗の責任を取らず、リスクを国民に押しつけることができます。極めて不健全で、迷惑な話でしょう。自己責任論が好きな人は民間人については自己責任を要求するくせに、国民の支持なしに勝手にやった国の失敗は全部国民に押しつけなんですよね。
また、こうした論理的ではない意思決定は失敗しやすいとも言えるんですよ。例えば、もう一つ同じ業界で悪い話題を振りまいている東芝は、国の方針に従って原発重視に突っ走った末にコケて不適切会計に繋がりましたし、三菱グループは仲間だからという理由だけで三菱自動車を支援して痛い目に遭いました。
国が失敗しやすいというのは、
日本の公共事業が無駄で効果がないことは親自民党の学者が計算済みという話もやっています(ここだけ2022/08/02追記)。なので、たとえ鴻海がババを引いたのだとしても、日本政府の趣味に税金を使うよりはずっと良かったと言えるでしょう。
●鴻海に騙されたシャープ…と報道する日本マスコミの低レベルさ
2016/4/19:そんなに鴻海を叩く報道があった覚えはなかったんですが、今回の記事以外にも鴻海を悪く報道する日本メディアがおかしいという記事は読みました。で、検索してみると、「叩く」まで行かなくても確かにネガティブな報道がかなりありましたし、ネットの一般人なんかは「中国人の常套手段」などと明らかに敵意むき出しです。
ただ、こういう人たちは低レベルな人…みたいな感じですね。
シャープは騙された?「鴻海」を叩くメディアの「経済IQ」 小宮一慶のメディア・ウオッチ:PRESIDENT Online - プレジデント(2016年4月14日)という記事によると、鴻海のやり方は特に非常識なわけではなく、むしろ真っ当だそうです。
<基本合意した後、1000億円「値切った」ということで、鴻海がだましてシャープと基本合意したように受け取られました。しかし、これは買収交渉ではよくあることです。
買収交渉では、まず、基本合意をするのが通常です。ある時点での財務諸表などの状況をベースに、どれだけの株式をいくらで買い取るかを決めるわけです。そして、その後、被買収企業(今回ならシャープ)の事業内容を精査します。
シャープのケースでは、基本合意時に明らかになっていなかった「偶発債務」が3500億円程度あることと、業績見通しが違っていたことなどが判明しました。
偶発債務とは、将来裁判で敗訴しお金を払わなければならないなど、不確定だが将来損失を被る可能性のある出来事を指します。これがシャープの場合、3500億円ほどあることが判明したのです。
また、当初は2016年3月期決算で100億円の営業利益を予想していましたが、最終的には1700億円の赤字ということになりました。これらは基本合意時には判明していなかったことですから、最終合意に向けて買収価格を下げたのは、このような買収交渉を何度となく見てきた私には、それほど驚きに当たらないことでした。
買収交渉ではよくある話なのです>
●巨額赤字を粉飾…騙したのは鴻海ではなくシャープの方では?
"マスコミはじめ多くの日本人が、鴻海が基本合意後に買収価格を値切ったことを、「ハゲタカ」のように敵対的に受け止めていたこと"に驚いたと、小宮一慶さんは書いていましたが、それは確かに驚きです。だって、敢えてどちらかが騙していたと言うとすれば、騙していたのはシャープの方ですよね。闇株新聞なんかは「粉飾」「不正会計」といった言葉まで使っていました。東芝に近いものを感じているのかもしれません。
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まだまだ目が離せないシャープ | 闇株新聞 2016年03月30日
<偶発債務については3月22日付け「シャープの偶発債務とは?」で、シャープは巨額赤字を垂れ流しながら同時に「粉飾に近い」決算を続けており、この3500億円のなかには「隠れ損失」や「不正会計」が少なからず含まれていると予想しました。
巨額赤字を垂れ流しても経営陣の犯罪とはなりませんが、そこに「意識的に隠した損失」や「不正会計」などが含まれると経営陣が刑事責任を問われる恐れがあります。(中略)
だからこれらの「偶発債務」は、監査法人にも、東京証券取引所にも、有価証券報告書を提出する金融庁(財務局)にも、産業革新機構にも、そしてずっと鴻海にも言い出せず、いよいよ正式合意となった2月24日になってから「恐る恐る」伝えて鴻海の反応を見るしかなかったはずです>
さらに、むしろ鴻海だから今回のように穏便に済ましてくれたのかも…といったことまで書いていました。ここらへんの真偽はよくわからないものの、とりあえず、鴻海が悪いと一方的に叩くのがおかしいという点はご理解いただけたのではないかと思います。
<つまり仮にシャープに「隠れ損失」や「不正会計」があったとしても、鴻海は今回の1000億円の減額で「見事に」表に出ることなく処理してしまったことになります。そして2016年3月期に在庫評価損など堂々と落とせるものは必要以上に落として、2000億円規模の損失を傘下に入れる前に計上させてしまうようです。
産業革新機構だったら「大騒ぎ」されて最悪の事態になっていたかもしれません>
あと、今回こういう鴻海叩きの流れになったというのは、単純な知識不足というよりは、相手が海外企業という差別的な理由や感情的な問題というのもあるのかな…と感じてしまいました。とりあえず、理不尽でかわいそうなことになってしまいましたね…。
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