子どもの置き去りの話をまとめ。<子ども置き去り事件、海外の反応「両親は虐待で起訴されないの?」>などをまとめています。
2023/08/14:
一部見直し
●子ども置き去り事件、海外の反応「両親は虐待で起訴されないの?」
2016/6/7:先に書いた
子どもの置き去りはしつけじゃなくて虐待 目を離すこと自体危険に関連して、海外の反応を。ロイター通信日本支社テレビ部、シニア・プロデューサーのオリビエ・ファーブルさんによると、"事件発生当初から各国の注目は高く、毎日新しい映像を入手するたび、世界の放送局向けに情報発信し続けた"と言います。
(
しつけ?虐待?「小2置き去り」に英国も騒然:日経ビジネスオンライン 伏見 香名子 2016年6月7日より)
ただ、後で確認しますが、「両親が、今後ネグレクトで起訴される可能性」(イブニング・スタンダード紙)、「日本では、この少年の両親が親権を持ち続けるべきかが議論されている」(チャンネル4)といった報道は、誤報じゃないかと思いました。"ガーディアンの記事に反応したフェイスブック利用者からも、両親の刑事責任を問う声が多数明記されている"ともあったものの、欧米の常識であればそうであっても、日本ではそういう報道はなかったように思えます。
とりあえず、海外の反応の紹介をしますが、
子どもの置き去りはしつけじゃなくて虐待 目を離すこと自体危険でも書いたように、海外は子どもを放置することを虐待だと認識しています。
例えば、先述のロイターのファーブルさんは、「米国などではこれは子供の虐待にあたるのではないかとの指摘もあり、無事に見つかったとしても、子供は児童保護サービスに渡されるのかとの問い合わせも相次いだ」 と言っていました。児童保護サービスに渡されるというのは、恒久的かどうかは別として一旦親元から離すべきということでしょうね。
また、英国の大手新聞ガーディアン 東京特派員のジャスティン・マッカリー記者は、言うことを聞かない子供に堪忍袋の尾が切れてしまった親の単なる判断ミスだ、という意見があったことも伝えると同時に、厳しい見方があったことを指摘していました。この事件を子供の虐待問題だと捉え、警察による捜査が必要だとする意見です。
マッカリー記者は「一概には言えないが、このニュースに興味を持った人たちは、日本では法的に子供を守る術が少なく、また、子供の虐待に対する社会的な認識が英国より低いのではないかと感じていると思う」と分析しています。日本での虐待への認識の低さに驚きがあったようです。
●子供が危険になるリスクを負わせる時点でそれはしつけではない
英国児童虐待防止協会(NSPCC)は、イギリスにおいても「子供が一人で出かけて良いとする最低年齢は、法律で定められていない」ことや、それを決める権利は親にあることなどを最初に説明ていました。しかし、「子供が危険にさらされた場合、その親が子供の安全を守るための適切な段階を怠っていれば、ネグレクト(育児放棄)で起訴される場合もある」としています。
今回のケースは明らかに適切だったと言えませんし、そもそも「しつけや、子供を懲らしめるためにと危険にさらすことは、絶対に許されない」と断言していました。
"子供を守るための「児童虐待防止法」が制定され、親子の間に法的な介入を行うことが可能となったのが1889年"と極めて古く、"この時から警察は、子供が危険だと判断すれば家宅捜索を行い、危険に晒した大人を逮捕することができ"ました。
イギリスの場合、現在はすべてこれが当たり前と感じている世代ですので、日本とのギャップは大きいと思われます。日本では家庭への介入には及び腰だった期間が長く、流れが変わったのは児童虐待の防止等に関する法律が制定された2000年以降でしょう。
児童虐待が過去最悪というマスコミの嘘 虐待死減少というのが事実で書いたように、昔の日本は児童虐待に関してかなり寛容でした。
●児童相談所への通告から起訴の可能性
さて、日本で両親を起訴という報道があったか?と言うと、ロシア系メディアSputnikがそう報じていました。ただ、これは児童相談所への通告のことを言っており、間違いじゃないか?と思われます。
ただ、紀藤正樹弁護士の解説によると、ここから起訴に繋がる可能性があるそうです。これを私は理解していませんでした。
大和君置き去りで児童相談所への虐待通告は当然の流れ: 弁護士紀藤正樹のLINC TOP NEWS-BLOG版 2016.06.06
2016年6月5日になって、北海道警函館中央署は、3日、大和君が発見されたことを受け、心理的虐待の疑いがあるとして、同日、北海道函館児童相談所(函館市)へ書面で通告したことを明らかにしました。
大和君が無事保護されたことにより、おそらく、警察は、形式的に両親の刑事責任の有無を判断するのではなく、専門家である児相の判断をまって、保護責任者遺棄罪の処理(起訴不起訴の方針の決定)をする方針だと思われます。
●日本でもあった起訴可能性の報道
ロシア系メディアを除いて、起訴の可能性について報じたところとしては、東スポがありました。どうやら全く報道が無かったわけじゃないんですね。
【北海道・置き去り】両親の刑事責任どうなる? 2016年06月06日 19時00分
道警は「児童虐待防止法で、虐待の疑いがあれば必ず通告することになっている。今回は林道に置き去りにした行為が心理的虐待にあたる疑いがあると判断した」。
道警は置き去りが保護責任者遺棄容疑にあたるか慎重に調べていたが、大和くんを車から降ろして約5分で現場に戻ったことから、立件不要の意見も出ているという。(中略)
犯罪ジャーナリストの北芝健氏は「大和くんの両親は保護責任者遺棄未遂となる可能性が高い。“5分で戻ってきた”のが本当であれば『遺棄をやりかけたけどやめた』と判断される。防犯カメラなどの客観証拠がなく、子供側と証言が一致する必要があるが、大和くんはすぐに山道を駆けて行ったとのことなので5分でお父さんが戻ってきたかどうかは証言できない。今回は親の証言に依拠せざるを得ない状況だが、美談の方向になっていて司法側の判断も緩くなるのではないか」とみる。
また「別の2つのケースは、置き去りにする目的でわざわざ山に入っている時点で確信的で“未遂”とはいえない。嫌がる子供を無理やり車の外に出して置き去りにしたのであればなおさらだ。子供が『捨てられた』と被害感情を訴え、親が『すぐに戻った』と言って供述内容が親子で食い違う場合には、天候の推移などで“置き去り時間”の推定がされる」。
子供は日常と切り離された山中での記憶を喚起されることになり不利には違いない。こうした置き去りでは、刑事責任も親の“言い値”によって決まるのが実情なのだろう。大和くんは謝罪した父親に対し、「お父さん優しいから、許すよ」と話したという。
●保護責任者遺棄罪に問われる可能性
また、こうした問題で弁護士の話を聞くのがお馴染みである弁護士ドットコムも、法的な問題の可能性について検討していました。
「しつけ」で子どもを山に置き去り、親の行為は法的に問題ないのか? 2016年5月30日 15時19分 弁護士ドットコム
秋山直人弁護士に聞いた。(中略)
「親権者には、子どもをしつける権利があり、監護・教育に必要な範囲内で子どもを懲戒すること、つまり懲らしめることも認められています(民法822条)。
しかし、その年齢の子どもを1人にしては危険な場所に、『置き去りにされた』という不安を与えるかたちで置き去りにすることは、正当なしつけの範囲を超えてしまっています。
刑法上は、保護責任者遺棄罪(刑法218条)の問題が出てきます」
保護責任者遺棄はどんな罪なのだろうか。
「幼年者を保護する責任のある人が、幼年者を遺棄した場合、3カ月以上5年以下の懲役にあたる罪となります。
遺棄の結果、幼年者が死傷した場合、さらに重く処罰されることになります(傷害の場合3カ月以上15年以下の懲役、死亡の場合3年以上20年以下の懲役)。
『遺棄』したといえるかの判断の際には、子どもを置き去りにした現場がどのような危険のある場所だったか、置き去りにした時間がどの程度だったかが当然問題になります。
また、犯罪の『故意』の問題として、保護者が、現場に置き去りにした場合に子どもに危険がおよぶ可能性があることを認識していたかどうかも問題になります」
こちらは東スポとはニュアンスが異なります。どちらかと言うと厳しい見方で、「パニックになってしまい、車を追いかけて道に迷ってしまうような可能性も否定できない」としていました。私が前回書いた子どもは予測できない行動を取りやすいという指摘と似たものです。
ということで、確かに「起訴」に関する報道はありました。ただ、一方で親権に関しては特にニュースを見つけられませんでした。テレビは検索だとわからないので、そっちの方ですかね?
とりあえず、マスコミではそれほど親の責任の問題を深刻に見ていない感じに見えます。やはり欧米と日本では感覚がだいぶ異なるのでしょう。
ネットで一部懸念していたように個人叩きになるのはマズイんですが、「それぞれの家庭の問題ですから」と見過ごすわけにもいきません。一般論として、置き去り行為が犯罪である可能性があることくらいは、もう少し強調しても良いと思います。
(差し込むところがなかったので最後に書きますが、子どもが親を許しているからといった要素は、判断から除外すべきです。未成年者の場合、判断が未熟なため、信頼できません。例えば、ネグレクトによる飢餓や傷害といったケースでも、子どもが親をかばうことは十分考えられるでしょう。そういうケースで「子どもが言ってるから無罪」とは考えませんよね?)
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