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前向きな被災者の姿


 私はいわゆる三面記事があまり好きではなく、それが多いテレビは見る方じゃありませんし、ワイドショーなどはまず見ようと思いません。

 最初から見ないため、日々憤りを感じているわけではありませんのでくどくど書きませんが、他人の不幸を突っつき回すようなものは好みではないのです。


 今回の東日本大震災での被災者の方へのインタビューも、私はあまり見ないようにしていました。

 それは目を逸らすことになるのかもしれませんが、被災者たちが辛い状況にあるのはわかりきっていることですから、インタビュー自体が残酷な気がするのです。(むしろ何か言いたいという人も多いようですので、テレビに出ている方は全員熱望した人なのかもしれませんけど)


 ただ、それでもテレビ自体をいつもより見ていたため、被災者の言葉もよく聞くことになりました。

 そういうとき私がつい泣いてしまうのは、辛いという話をされるときより、前向きな話をされたときでした。


 どうして日本人は泣かないのかしら 2011年4月20日 日経ビジネスオンライン 福島 香織(閲覧に登録が要るかもしれません)での中国人記者が見た被災者の様子もそういった前向きさを感じさせるものでしたので、いくつか記しておきます。


 記事によると、放射能の影響を恐れて被災地から逃げ出す中国人が多い一方、退避命令が出るまで最前線で取材していた記者もいたそうです。これはそういった記者に作者が伺った内容です。(「」外は、一部内容を改めています)


広東の地方紙の女性記者

 「私は取材中、ずっと泣きそうだった。破壊され尽くされた町並みや、どれだけの人が亡くなったかを考えると、胸が押しつぶされそうだった。でも、泣かなかったのは、被災者が泣いてなかったから。正直言うと、悲嘆にくれる被災者、みたいな取材をするつもりで、そういう人を探したのだけれど」

 「気仙沼の避難所で何人も家を流された被災者を取材したけれど、誰も『政府が十分に面倒みてくれない』などの恨みごとを言っていない。みんな、誰かに頼るより、自分たちで何とかやらなくちゃ、と考えて、カメラを向けると、笑顔すら見せて、こぶしを突き上げて、がんばる、という。物を買いにスーパーに行って、棚が空っぽでも、怒るわけでもない」

 「大船渡の被災地で69歳のおじいさんに会った。彼は100メートルも流された家のがれきの山から家族のアルバムをさがしていた。ほかの財産には見向きもしないで、家族との幸せな記憶が詰まっているアルバムだけを探していた。おじいさんの目は潤んでいたけど、涙はこぼれなかった。それどころか、別れ際に私に微笑して『気をつけて取材しなさい。がんばって』と言ったのよ。その水の吸った厚い重いアルバムをビニール袋にいれて両手にさげて帰っていった。おじいさんの、その少し腰の曲がった後ろ姿が忘れられない」

 「どうして日本人は泣かないのかしら。あるいは怒らないのかしら。大船渡で中国の国際救援隊がこう感嘆していた。日本人の冷静さと微笑の裏にある、強さと楽観さは尊敬に値すると」


広州市の地方紙の記者

 編集長からはひっきりなしに電話があり「早く福島を離れろ」と怒鳴られた。その本社のうろたえぶりと、東京の公式発表の温度差に最初はとまどい、仙台市や福島市から逃げ出す中国人留学生や学者を取材していくうちに、「実は少しパニックになりかけた」。

 だが「福島市民の様子が非常に落ち着いていて、本当に逃げ出さなくてはならない状況なら、市民がまっ先に逃げ出すはずだ。編集長の判断より、現地に暮らす人たちの勘を信じよう」と思った。「被災者たちの落ち着いた姿が私を落ち着かせてくれた」

 「福島市もホテルは営業しており、コンビニやスーパーに物もあった。山形県はさらに普通の生活があった。未曾有の大被害を受けた被災地からそう遠くない地域と隣り合わせの都市で、人々が日常とあまり変わらない生活が営んでいることが驚きで、感銘を受けた。中国で同じような状況が起きれば、みんな争って街から逃げ出して、道路が大渋滞になっていただろう」


広東紙のZ記者

 「避難所の清潔さに驚いた。学校施設を利用していたが、床が磨かれて光っていた。みんな靴を脱いで中に入っていた。整理整頓も行き届いていて、日本人はこんな時でもきちんと生活している」

 避難所は覚悟していたほど悲惨な空気が漂っておらず、穏やかだった。爆発があった時、福島市内で取材していたが、誰もパニックに陥っていなかった。

 仙台では長距離を移動してくれるタクシーもなく、3日目にやっと見つけた。その日は燃料が足りないというので、翌朝にもう1度迎えにきてくれるという約束をした。

 「一番感動したことは、そのタクシーがきっちり時間通りに来てくれたこと。こんな非常時でも約束を守ってくれて、しかも値段を吹っかけたりしない。すばらしい」

 避難所に泊まっていて被災者とトラブルになったことはないかと聞くと「なかった。むしろ被災者から受けた親切が非常に印象に残っている。中国の留学生らからは怒られましたよ。『中国メディアの報道は、日本が危ないと煽りすぎだ。自分たちは日本に居続けたいのに、親らが早く帰って来いといって聞かない』とね」

 「避難所では誰も泣きわめいたりしていなかった。怒鳴り合いもなかった。中国の被災地では、泣きわめいたり、争ったり、人を罵ったりしている人が多いのに。日本人はセルフコントロールするのがうまいのだとつくづく思った」


 実際には全ての被災地で平穏だったわけではありませんが、それでもやはり諸外国と比べるとかなりの違いがあるのでしょう。


 記事では、「もう1度、被災地に行きたい。この短時間で日本はここまで復興した、と報道したい。日本のこの経験に中国が学ぶことは非常に多いだろう」と口を揃えていると、最後に書いていました。

 また、以前読んだ記事では、中国人(香港だったかも)の多くが「日本は間違いなく復活してくる」と見ていました。(一方で「日本は終わった」論を見かけたのも事実ですけど)


 被災者の方たちは無理をしてそういった態度を示しているのかもしれず、心のケアなどは必要だと思います。

 ただ、今まさに辛い目に合っている方たちがこうやって過ごしているのに、私たちが前向きにならないでどうするとむしろ励まされた思いです。


 関連
  ■その他の災害(地震など)について書いた記事
  ■原子力の父 正力松太郎
  ■反原発の歴史
  ■情報の質と量 ~情報隠しは駄目~
  ■とある原発推進派のデタラメ
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