インフルエンザはなぜ冬に流行し、夏には流行しないのか?といった話について。いろいろな説が出ており、完全には解明されていないようです。また、夏に流行しないことが多いとは言っても、ウイルスによっては長く流行しており、新型コロナウイルスについても定着する可能性が十分にありそうでした。
2020/03/10:
●ウイルスって実は強くない 動物の体の外では長く生きられない性質
●インフルエンザは冬に流行、なぜ?気温と湿度が高い環境などの理由
●楽観視は禁物!新型コロナウイルスが夏でも終息しない可能性がある理由
2020/03/22:
●新型コロナウイルス、エアロゾルという特殊な状態なら3時間生存可能
●なぜ対策として手洗いが一番大事なのか?物質表面の生存期間は長い
2020/03/29:
●日本の厚生労働省はエアロゾルによる感染を否定「証拠はいまだない」
2020/04/10:
●夏になれば流行が収束は希望的観測?南米やニュージランドでも…
●ウイルスって実は強くない 動物の体の外では長く生きられない性質
2020/03/10:現新型コロナウイルスは夏でも終息しない可能性があると言われていますが、そもそもなぜ通常のインフルエンザは冬に流行するのか?という話。インフルエンザに限らず、一般的なコロナウイルスもやはり気温の上昇とともに終息するのが常だそうです。
新型コロナ、「春に終息」と言えないこれだけの理由 | ナショナルジオグラフィック日本版サイト(2020.02.27)では、簡単に言うと、インフルエンザウイルスやコロナウイルスは、タンパク質と脂質の集まりだと説明。直接触れることで人から人へ感染する他、硬い物の表面や、感染者の飛沫のなかにもウイルスは存在しています。
無敵のような気がするウイルスですが、大きな弱点があり、実はあまり強くありません。いったん人体の外に出たら、ウイルスは外部の力を受けて劣化。「ウイルスは動物の体の外では長く生きられない」といった言い方をする人もいますね。
(2020/03/22追記:生存時間に関しては、後半で追記しています)
また、手指の消毒用アルコールはタンパク質や脂質を分解するため、ウイルスは不安定になり、感染力が弱まるという性質を持っています。
●インフルエンザは冬に流行、なぜ?気温と湿度が高い環境などの理由
さて、ここから、なぜ一部のウイルスは季節性なのかという話へ。昔からインフルエンザといえば冬と言われるように、その流行はだいたい10月に始まって翌年の3~4月まで続きます。これについて専門家は、様々な理由を挙げているようです。
まず、冬の間、人々は室内に閉じこもりがちで、人と人との接触が濃厚になるためという意見があります。また、緯度が高い、つまり気温が低い地域では冬期にインフルエンザの患者数が増加することは周知の通り。実際、実験においても、気温と湿度が高い環境で、ウイルスの感染が減速、さらには完全に止まることがわかっています。
暖かい空気には水分が多く含まれ、ウイルスが空気に乗って遠くまで移動するのを阻害します。また、咳やくしゃみと一緒に飛び出した飛沫は、空気中の水分を引き寄せて重くなり、浮遊できなくなって地面に落ちるという説明も出ていました。
また、冬に起こりがちな湿度の低下が鼻水の機能を阻害するという仮説もあるとのこと。鼻水は、ウイルスや細菌といった異物を捕らえて鼻の外に排出してくるものです。ところが、冷たく乾燥した空気は鼻水を乾燥させるので、ウイルスを捕らえる機能が低下する…という仮説でした。これは鼻からの侵入のみの想定で、微妙な気がしますけどね。
さらに太陽光の役割に着目する研究者もいるみたいです。。太陽光は物の表面に付着したウイルスの分解を助けるといわれていますが、冬の間はその恵みが十分に受けられないという説明でした。紫外線は、ウイルスの核酸を分解して、表面を殺菌する性質があり、これはすでに利用されています。
●楽観視は禁物!新型コロナウイルスが夏でも終息しない可能性がある理由
ただし、熱帯地方で雨期にインフルエンザの感染者数が増加するところがありますので、上記の説明が本当だったとしても完全に流行を止めるまでには至らないケースが存在することがわかります。気温の高さや湿度の高さは、飽くまで流行りづらいというだけで、絶対的なものではないのでしょう。
また、過去の例でも季節性が微妙なケースがすでにありました。新型コロナウイルスと90%近く同じで遺伝子を持つSARSウイルスの場合、流行は7月まで続きました。夏まで続いているんですね。これでも季節性があるようにも見えなくはないのですが、それよりも、早期に対応したことのほうが抑制につながった可能性があるそうです。
MERSの場合は、2012年9月に気温の高いサウジアラビアで発生。こちらの場合は、SARSと違って完全に封じ込められることすらなく、その後も新たな発症が時折報告されています。また、現在、中東においては、新型コロナウイルスが猛威を振るっていますよね。少なくとも高温だけでは流行を抑えられないことは確実そうです。
さらに、夏になると終息する普通のインフルエンザというのも、実は一年中流行り続けているという問題もあります。矛盾している!と思うかもしれませんけど、北半球と南半球では季節が異なるというのがミソ。典型的なインフルエンザウイルスは、北半球で流行した後に今度は南半球に移動して流行するそうです。
といった感じでしたので、新型コロナウイルスもこのように定着する可能性があるでしょう。そして、その場合は今のような厳戒態勢を一年中、あるいは毎シーズン行うというのは、難しいのではないかとも予想されます。個人的には、現在のインフルエンザのように、新型コロナウイルスも毎年存在することを前提とした生活を考えなくてはいけないのではないかと思います。
●新型コロナウイルス、エアロゾルという特殊な状態なら3時間生存可能
2020/03/22:インフルエンザやコロナウイルスなどのウイルスの生存期間に関する話がありましたので追記。これは、< 新型コロナ「エアロゾル」で3時間生存 米研究グループが発表>(2020年3月18日 9時23分 NHK)という記事にあった話です。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200318/k10012337251000.html
タイトルになっているのは、、NIH=アメリカ国立衛生研究所などの研究グループは、新型コロナウイルスについて、霧のように空気中に漂ういわゆる「エアロゾル」という状態でも、3時間以上生存できるとする論文をアメリカの医学雑誌に発表しているというもの。
こういう聞き慣れない言葉があると怖いと感じるでしょうが、一般人にはあまり関係なさげ。「エアロゾル」というのは、液体の粒が5マイクロメートル以下になった状態であり、日常でよく見られるような状態ではないようです。ただ、医療現場ではエアロゾルが発生しやすいために、大事な研究ではあります。
我々が最も気にしなくてはいけない普通のせきやくしゃみで出る飛沫の場合、ほとんどは粒が大きいためすぐに地面に落ちるとのこと。一方、エアロゾルのようなより小さい特殊な粒子は長時間、空気中に漂うため、生存時間が長くなるということでした。
●なぜ対策として手洗いが一番大事なのか?物質表面の生存期間は長い
記事は上記の説明がメインであったのですけど、より我々にとって身近な状態での生存期間に関する話もあったんです。研究グループはこのほか、プラスチックや金属、紙などの表面でのウイルスの生存期間も調べていました。これらの方が基本的により生存期間が長くなっています。
研究によると、まず、銅の表面では4時間、ボール紙の表面では24時間たつと生存しているウイルスは検出できない…ということがわかりました。つまり、銅の表面なら4時間程度、ボール紙の表面なら24時間程度でウイルスは死んでしまうようです。
一方、もっと長く生きられる場所もあります。ステンレスでは48時間、プラスチックの表面では72時間にわたり、ウイルスが大幅に減少しながらも生存することが確認されたということでした。前述の通り、ウイルスはだんだんと劣化していくわけですけど、それでも感染の可能性が十分あるほどは長生きします。そうじゃないと、そもそも流行するほど感染が広がりませんしね。
研究グループは「固体の表面でも長時間生存できることから、接触感染にも十分な注意が必要だ」としています。インフルエンザを含めて、ウイルスがついた手で目口鼻などの顔を触ることによって感染…というのは非常に多いパターンですので、手洗いは心がけて下さい。
●日本の厚生労働省はエアロゾルによる感染を否定「証拠はいまだない」
2020/03/29:ふたつ前で紹介したNIHなどがエアロゾルというなら3時間生存可能とした研究ですが、厚生労働省は「国内データではエアロゾルによる感染の証拠はいまだない」としており、エアロゾル感染の十分な科学的根拠があるとはみなしていない感じでした。
厚労省結核感染症課は、「エアロゾル中でウイルスがある程度の時間、生存し続けることと、エアロゾルによって感染することとはイコールではない。引き続き、国内でエアロゾルによって感染したことを示す証拠は見つかっていない」とコメントし、接触感染、飛沫感染の2種が感染経路であるとの従来の見解を堅持した、とされています。
なお、前述の通り、エアロゾルが特殊な状態であることも強調。「医療現場で気管挿管などの処置をするような場合などに限られる。日常生活でウイルスを含んだエアロゾルがスプラッシュのように発生することはほとんどない」とされていました。
(
新型コロナ、エアロゾルで3時間生存 厚労省「感染の証拠なし」:日経ビジネス電子版 2020年3月23日より)
●夏になれば流行が収束は希望的観測?南米やニュージランドでも…
2020/04/10:チリの4月6日日時点の感染者数は約4800人。中南米でブラジルに次いで多いものの、死者数は34人と比較的少ないため、死亡率として見ると低くなっていました。英BBC放送(スペイン語電子版)によると、チリの新型ウイルスによる死亡率は日本やドイツと並んで低いものだといいます。
2日時点で見たチリの人口10万人当たりの死者は0・09人で、同じ中南米のパナマの0・88人やエクアドルの0・7人より大幅に少ない数字になっていました。周辺地域では最も検査態勢が充実して、検査数が多くなっていることが大きな要因とみられているそうです。
(
東京新聞:コロナ死亡率低いチリに注目 中南米で検査態勢最も充実:社会(TOKYO Web) 2020年4月7日 15時24分より)
記事は以上のような内容だったのですけど、私が強調したかったのは、現在冬ではない南米でもすでに感染者がかなり多くなっているということ。他に南半球のニュージーランドも国家非常事態を宣言していますね。このことは、すぐに追記しようと思っていたのにすっかり忘れていて、この記事を読んで思い出しました。夏になれば流行が収束する…というのは、やはり希望的観測のように思えます。
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