ニーチェのルサンチマン(奴隷道徳)に関する話をまとめ。<不満持つ弱者の「社会が間違ってて自分は正しい」が奴隷道徳>、<ルサンチマン・奴隷道徳の具体例「敵を作り出して正当性を主張」>などをまとめています。
2023/07/23:
一部見直し
●わかりづらくて困る…ニーチェのルサンチマン・奴隷道徳とは?
2011/4/20:Wikipediaのルサンチマン(奴隷道徳)の説明はすっきりしませんでしたので、
はてなキーワードの方が良いと思います。はてなキーワードでは、<ニーチェの用語。被支配者あるいは弱者が、支配者や強者への憎悪やねたみを内心にため込んでいること。この心理のうえに成り立つのが愛とか同情といった奴隷道徳であるという。怨恨>短い説明でした。
ただ、はてなキーワードでもこれで終わりではなく、この後まだ説明が続いています。ニーチェが転用する前、ルサンチマンは、「恨みや憎しみが心の中にこもって鬱屈した状態」のことを指していたとのこと。これをニーチェが、弱い者への思いやりや自己犠牲を説く平等主義的な道徳の起源を説明するために用います。
ニーチェによればキリスト教道徳や、そこから生まれた近代市民社会のヒューマニズムや人権の思想は、弱者の強者に対する恨みや復讐心を道徳として表した奴隷の道徳なのだそうです。同様に、この延長上にある社会主義の思想も、このような奴隷道徳の一部にほかならないとしていました。
●ニーチェが理想としたのは、弱者ではなく強者の貴族的道徳
では、ニーチェが理想としたのはどのようなものなのか?と言うと、強者の道徳、貴族的な誇りや勇気を讃える戦士の道徳、君主の道徳といったものです。詳しいことは書いていませんでしたが、一方でこの考え方はファシズムによって悪用されてしまったとも書いていました。
とりあえず、「強者」の貴族的道徳をより具体的説明は、<「わたしはこんなことができる」だから「わたしはよい」ゆえに「わたしのようにある、できることはよい」という自己肯定から善をモデル化し、その欠如、不足として悪をイメージする。>といった感じでした。
一方、「弱者」の奴隷道徳というのは、大体、<「あいつは敵、迫害者だ」だから「あいつはわるい」ゆえに「あいつと対立するわれわれは正しい」という憎悪、他者の否定から悪をモデル化し、その否定、反対者として善をモデル化する>といった感じのようです。
そして、この「弱者」の奴隷道徳の善の基礎にある怨恨感情をニーチェは「ルサンチマン」と呼びました。奴隷道徳の善は、否定の意志、憎悪を常に隠し持っているため、抑圧的、欺瞞的、病的だとしてニーチェは批判していたといいます。
●不満持つ弱者の「社会が間違ってて自分は正しい」が奴隷道徳
Wikipediaの方も改めて見てましょう。こちらによると、ルサンチマンを持つ人は非常に受け身で、無力で、フラストレーションを溜めた状態にあります。そういう状態にあっては誰であっても、ルサンチマンを持つ状態に陥るとしていました。
しかし、社会的に強者であれば、嫉妬や反感といった感情に主体的に行動することができる(本当?とも思いますけど)ため、フラストレーションを克服することができると言います。そのため、仮にルサンチマンの状態に陥ったとしても、一時的なものでしかない…とされていました。
一方、社会的な弱者はルサンチマンを克服することができません。フラストレーションをむしろ肯定し、何もできないことを正当化するようになります。社会的な価値感を否定したり、反転した解釈を行うということもいます。こういった自分の陥っている状態を正当化しようとする願望こそ、奴隷精神の最大の特徴だとしていました。
●ルサンチマン・奴隷道徳の具体例「敵を作り出して正当性を主張」
はてなキーワードの説明の方でもそんな感じがしましたが、こういった思想はネットでよく見られるものです。この後の説明がまたそういったものを感じさせます。
Wikipediaで上げられていたルサンチマンの表れの具体例では、「敵を想定し、その対比として自己の正当性を主張するイデオロギー」を挙げていました。こういったイデオロギーは、敵が悪の元凶とし、だから反対に自分は道徳的に優れていると主張します。「彼らは悪人だ、従ってわれわれは善人だ」といったものです。
敵として想定される存在は、自分が無力だと感じさせる対象が選ばれます。例えば、貧しさに無力を感じるルサンチマンの敵は資本家や大企業になります。これは左派系の主張に近いでしょう。一方、別の例では、ネットでよく見られる女性蔑視を思わせるもので、こちらは右派っぽいところ。異性にもてないということに無力を感じるルサンチマンの敵は、自分を無視する異性や、もてる同性、あるいは恋愛そのものになるといった説明でした。
また、ルサンチマンの敵が拡大すると、対象が社会全体となり、「世界はどうしようもなく悪によって支配されている。したがってわれわれのほうが世界より優れている」と拡大解釈されるようにもなるそうです。いわゆる陰謀論系の話であり、これもまたよく見られるものでした。
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