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筋肉量を調節するミオスタチンって何?


 パソコン内の文書を整理していると、2004年06月24日の朝日新聞の記事で「筋肉2倍の幼児、3キロのダンベルも軽々 ドイツ」というものが出てきました。


 これは米独のチームが、米ニューイングランド医学誌24日号(2004年06月24日?)に発表したものです。

 ドイツの医師はこの発表の5年ほど前、手足の筋肉が異常に太く発達した男の新生児を発見しました。そして、この新生児は超音波検査をした結果、通常の約2倍の量の筋肉を持っていることが分かったというのです。

 男児は元陸上選手の母親から生まれ、ドイツに住むというほかに詳細は明らかにされていません。ただ、AP通信によると、5歳近くになり、3キロのダンベルを軽々と持ち上げるといいます。


 この男児の遺伝子を詳しく解析したところ、筋肉の増大を抑えるタンパク質ミオスタチンに関係する遺伝子の突然変異がありました。変異は母だけでなく、父母の双方からを受け継いだらしいです。

 遺伝子操作でミオスタチンをもたなくしたマウスは、筋肉量が2倍になることが97年に報告され、牛でも同様の研究があるそうです。しかし、研究チームは「人体でもミオスタチンが筋肉量を調節しているのが分かったのは初めてだ」と説明しているように、人間で確認されたのは初めてだったそうです。


 記事では最後に「ミオスタチンは、筋ジストロフィーの治療法の開発に役立つと期待される一方、運動選手の新たなドーピングにつながるとの懸念もある」と書いていますが、この子のように最初から突然変異になっている人はどうなんでしょうね?

 それ自体は仕方ないことですし、みんなといっしょに競技に参加して良い気がします。と言うか、今までもわかっていないだけで、こういった突然変異を持ったスポーツ選手はいたのではないでしょうか?


 ところで、ミオスタチンに関連する研究はその後も行われていたようです。

 「筋肉を2倍にする」新薬『MYO-029』 2008年2月20日 ワイアードビジョンという記事では、バイオテクノロジー企業の米Wyeth(ワイス)社が、筋ジストロフィー(次第に筋萎縮と筋力低下が進行していく遺伝性筋疾患の総称)患者やボディビルダーの筋肉増強に役立つ可能性がある新薬を開発していると伝えています。

 この薬は骨格筋の増殖を抑制するタンパク質ミオスタチンの活動を抑制することで、筋肉の増殖を促進させるものです。


 このタンパク質ミオスタチンは、これを持たないように遺伝子操作され、通常の個体の2倍の量の筋肉を備える「マイティマウス」が発表されたときに注目されました。

 ミオスタチン遺伝子が変異している人の例もいくつか報じられていることから、人間の場合にも臨床的に有効なのではないかと期待されてきたようです。

 この人の例としては、

・子供のうちから腹筋が6つに割れている人。

・生後5カ月のときに、腕を水平にして自分を支える「十字懸垂」ができた子ども。常と比べて4割増の筋肉があり、動作も敏捷。代謝は非常に盛んで1時間おきに食べるが、脂肪はほとんどないという。脳神経系の発達には脂肪が必要であることから、将来の成長には懸念もあるが、現在のところ問題は見られない模様。

 といったものがあります。


 このうち「1時間おきに食べる」というのもあまり良いことではありませんが、ミオスタチンを操作する薬には副作用があるようです。

 それは「アキレス腱」などの腱(骨格筋を骨に結びつける組織)もろくなり、けがをしやすくなる恐れもあることです。ミシガン大学の研究チームは、『米国科学アカデミー紀要』(PNAS)の1月8日号に発表した論文の中で、「ミオスタチンは、筋肉量と筋力を制御するほかに、腱組織の構造と機能も制御する」という説を打ち出しているそうです。

 そして、これがこの新薬の第1-2段階の臨床試験結果の発表が遅れていることと、結びつけて考えられているようです。

 記事の最後の補足では、その後Wyeth社からは、現在論文審査中で、今後数カ月以内に公表される予定という回答が来たとあります。また、Wyeth社が2005年に発表した、臨床試験に関するリリースによると、試験は米国と英国で108名の筋ジストロフィー患者を対象に行なわれ、結果は2006年後半に発表される予定となっていたそうです。


 さらに検索をかけてみると、筋ジストロフィー臨床研究班のページに報告がありました。

 それによると、無作為割り付けプラセボ対象二重盲検群間比較試験で116名の筋ジストロフィー患者に対して、プラセボと4段階の用量の抗体を投与し、評価されました。

 すると、臨床試験は安全性、忍容性には問題はなかったものの、一部の患者では筋量の増加がみられた以外に、全体としては筋力と運動機能の改善効果が証明することができませんでした。

 この結果にもとづき、開発をすすめていたワイス社は、抗マイオスタチン抗体「MYO-029」の開発を中止することを決定しました。(「ミオスタチン」でなく「マイオスタチン」となっているのは、英語読みと思われます)


 筋ジストロフィー患者を家族に持つ方などは、この結果を受けてがっくりされているようです。

 とはいえ、タンパク質ミオスタチンが関わっていることは間違いないんですから、どこかの製薬会社が挑戦してほしいと思います。


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